「・・・よし、使い魔に発信機はつけれた」
かろうじて敵の察知に成功したので、最低限の目的は達成できただろう。
とはいえこの状況下はいくら何でもよくない。
明らかに正気を失った連中が、鉄パイプ片手に暴れまわっているのはどう考えても問題があるだろう。
なんだこの混戦状態。あ、アサシンを見つけた。
「・・・仕方がない。死なない程度にボコるとするか」
俺は魔術を利用して両手を帯電させると、1人ずつ無力化にあたる。
リミッターが解放されているのかどいつもこいつも人間離れした動きで襲い掛かってくるが、こっちも人間離れしていることには変わりない。
偽聖剣抜きでの不殺で切り抜けるには問題ない相手だし、魔術礼装・駒王衆を使って集団を無力化にもかかっている。
にしてもこいつ等を用意した連中が聖杯戦争参加者だとしたら馬鹿としか言いようがない。
マスター相手なら確かに有効かもしれないが、一般人を戦力として投入とかいくらなんでもまずくないか?
下手をすれば監督役が動くと思うのだが、いったいどういう事だろうか?
まあいい。とりあえずこれで片付いた。
「・・・見事な手際だ。鍛え方は甘いところがあるが、判断は鋭い」
ランサーがそうほめてくれるが、まあ、このぐらいはできないとな。
「俺も一応、死線の一つや二つはくぐってるんでな」
今更チンピラ数十人程度に手こずっているようで話にならない。
さて、とりあえずは帰るとするか。
それから二日ぐらいすぎた。
一応の注意のためか監督役から呼び出しが来たが、明らかにえこひいきしている連中のいうことを聞く奴がいるわけがなく、当然全員無視。
そして、下手人がアインツベルン関係者だということが発信機でわかったので、その辺をリークしたり警察に情報を流したりして牽制しながら待っていたわけだが、そこで何やらわけのわからんことが発生した。
「・・・確かに、日本語理解用の実験品である礼装を俺は二人に渡した。雁夜とのコミュニケーションもあるし、日本語が通じたほうが桜ちゃんも怖がらないという判断だ」
うん、その辺はちゃんと説明した。
「加えてキャスター《俺たち》についての情報もある程度説明した。これは共闘する以上必要なことだから当然だ」
足並みそろえたいなら、こっちから歩み寄るのは当たり前のことだろう。
「そしてこういう時だからこそコミュニケーションを取るのも当たり前だ。俺もそれを否定したりはしない」
まあ、価値観がずれてるところがあるから最低限にするのも選択肢ではある。とはいえどうずれているのか理解しないと足並みもそろわないし、その辺のさじ加減は大変だろう。
だが、
「・・・なんでケイネスが久遠と一緒に少女漫画読んでんだよ!!」
確かに日本語も読める礼装ですけどね!? お前なんでそんな趣味に目覚めてんだ!!
「貴様、私を何だと思っている。これは趣味などではない、もう一人のキャスターが提示した、私の今後の未来のために絶対に必要な事柄なのだ!!」
すごい剣幕で怒鳴るな! 説得力がない!!
「久遠説明!! 何がどうなったら魔術師の未来に少女漫画が必要になる!!」
本当に訳が分からない。
「いやねー? いろいろと話を聞いてみたら、ケイネスさんってソラウさんにベタ惚れしてるみたいなんだよねー」
ほう?
高位の魔術師家系同士の婚約だから政略結婚かと思ったが、意外とケイネスはマジで愛しているのか。
「だけどさー。話を聞いてみるとソラウさんは普通に政略結婚のノリなんだよー。っていうか、たぶんアレあまり強い欲求とか持ってない感じかなー」
「・・・人が作った料理にケチつけまくりでいろいろ要求されたんだが」
日本人に紅茶の入れ方で要求入れすぎなんだよブルジョアめ。
「いや、あれはたぶん貴族の嗜みてきな感じじゃないかなー?」
「・・・本気で商品として育て上げたらしいな」
さすが有名な魔術師、外道だ。
で、それが何で少女漫画。
「・・・認めたくないが認めるしかない。今、ソラウの心はランサーに向いている」
ああ、熱っぽい視線向けてたもんな。
「たぶん、理由がどうあれ今までにない衝動を感じたからそれにしっちゃくしてるんだよー。ランサーさん美形だから、気分はまるで少女漫画のヒロインかなー」
・・・人生が灰色だった道具のようなヒロインが、出会った伝説のイケメンヒーローに恋してしまう。
なるほど、確かに少女漫画でありそうな展開だ。
「だけどケイネスさんのアプローチはいろいろ間違ってるから完璧に空回りだからねー。これは勝てないよー」
「と、言うわけで、私はソラウの気に入るアプローチを勉強するための資料を調べているのだよ」
「ケイネス! 知り合いから聞いてきた、今一番女性から好まれている少女漫画を買ってきたぞ!!」
「外出するな雁夜」
やべえ、雁夜の奴も恋愛方面では似たようなもんだから共感して暴走してやがる。
いくら魔術師殺しのホテル爆破未遂を警察にリークしたとはいえ、相手は魔術関係者なんだぞ!? 動きにくいことはあっても動けないことはないだろう。
あれ? もしかして俺は同盟相手を間違えたか!?
と、言うわけで俺は英気を養うためにお茶を飲むことにした。
「・・・ふう」
一応ソラウの方も見に来たが、これまた誰が取り寄せたのかわからない恋愛ゲームをしていた。
なぜかナツミも桜ちゃんを連れて参加していた。あいつ意外とこういうのに興味あったのか?
因みに内容は、窮地に陥ったところを助けに来てくれたヒーローたちとのラブロマンス。
・・・微妙に心当たりがあるのだがどうしたものか。
まあ、そういうのは後にして今は一服するか。
「・・・キャスター、外の警戒は終わったぞ」
と、ランサーが外から戻ってきた。
「少し小耳にはさんだのだが、少しきな臭いことになっているようだ」
ん? なんだ?
「ここ最近の冬木で、行方不明事件が続出しているらしい。短期間に数十人が行方不明になったといわれている」
「このタイミングでってのがきな臭いな。・・・警察から情報を聞き出しておこう」
まったく、面倒なことがたくさん出てきそうで困ったもんだ。
ギャグを挟んだかと思えば後半でシリアスに。
ケイネスは女性の扱いを勉強していたらあそこまでひどいことにはならなかったような気がするのです。