微妙に軌道が修正されて酒盛りが激しくなったが、いい加減つまみも少なくなってきたのでお開きになりそうだ。
もう少し煮物を多くするべきだったか。根菜が少なかったので量が作れなかった。
まあ二度目はないだろうが、その時はチーズやトマトでオードブルを作ってワインでも飲もう。アクの濃い連中の会話は聞く分には面白かった。
「さて、じゃあ締めに作っておいたそばを食べるといい」
キャンプ用のコンロを用意しておいてよかった。やはり酒にはシメがないとな。
「あ、その前にボクトイレ!」
といって、ナツミが城の中に入っていく。
アイツトイレの場所知ってないと思うんだが、これは時間がかかりそうだ。
「・・・ふむ、もう少し時間がかかりそうだしな。それでは最後に一つ聞いておくか」
と、おかきをバリボリむさぼりながら、ライダーがそう言い放つ。
「なんだライダー。セイバーの願いについてはもはや平行線なんだから一一言い合っても手間がかかるだけだと思うんだが」
「いや、それとは別で聞きそびれたことがあったのでな。それは終わらせておいてもよいではないか」
といって、ライダーはその視線を俺に向ける。
そばを渡しながら俺はどうしたものかと思った。
そういえば、あの流れであるべきことがまだなかった。おそらくそれについて聞くのだろう。
「・・・キャスターよ。貴様は聖杯に何を望むのだ?」
ふむ。
「ちっとばかし面倒なことだが、俺は聖杯をゲットしようとか言うわけじゃない」
「ほう? ランサーにしても結果的とはいえ聖杯を手に入れることは目的だ。だがそれすらないと?」
「別におかしなことではないさ、ライダー。・・・盆の概念がある日本の英霊が呼び出せるのなら、未来の世界に興味があるという軽い理由でも召喚される可能性はある。戦闘狂なら強敵との戦い、殺人鬼なら快楽殺人で、食い意地が張ってる奴なら外国の飯に興味があった。そういう理由でも、英霊が召喚されるのは聖杯戦争レベルだから参戦する必要があるだろう」
「ああなるほど。確かにアーチャーも理由としちゃあれだもんな。触媒がピンポイントなら、もらえるなら欲しいレベルでも呼び寄せることがあるか」
ライダーのマスターは理解が速くて助かる。
それにちょうどいい。
ほかの連中の嫌がらせにもなるし、ここらでちょっと黒いことをするか。
「俺が召喚されたのは半年ぐらい前。マスターが召喚のための実験を行っていた際に、事故的な感じで召喚されたのが原因だ」
「・・・事故、ですか?」
「ああ、そういうわけだから聖杯戦争には興味がなかったんだが、手違いで参戦せざるを得ないことになってな」
俺は思い返すだけでため息をつく。
「いや、目の前でぶっ倒れてるマスターにあわててたら、明らかに元凶っぽい外道が出てきたんでついぶっ殺してしまってな。・・・そしたら虚数属性の適性を持った女の子を発見しちまったんだよ」
「きょ、きょ、虚数属性!?」
「嘘でしょ・・・!?」
ライダーのマスターとアイリスフィールとか呼ばれた女性が目を見開く。
まあ、魔術師の属性としては非常にレアだからな。
「坊主、きょすうぞくせいとか言うのはすごいのか?」
「お前が機能やってたゲームでいうならSRがつくぐらいのスーパーレアだよ!!」
彼は本当にわかりやすいたとえを用いてくれる。説明が省けて大助かりだ。
「なんでも、盟約を結んでいる魔術師の家系が、すでに五大属性の姉がいるのにも関わらずワンモアセットしてな。素質が強すぎるから魔術教えないわけにはいかないし、かといって跡継ぎいるから一子相伝の魔術は教えられないし、下手な家系に養子に出してもハンターからは守れないしで跡継ぎいなかったその家に送られたんだが・・・」
俺は言葉を切って深呼吸してから、ポツリとつぶやいた。
「・・・教育方法が蟲姦なんだよ」
「・・・・・・・・・うわぁ」
アイリスフィールが何とも言えない表情になった。
「いや、結構合理的だから魔術師としては意外とありなのは認めるけど、魔術師の価値観を理解してもいない女の子にそれはあれだろ? ただその実家の方の評判を聞く限り、意外とOK出しそうだし、送り返してもまた養子に出して今度はもっとやばいところ・・・なんてありそうじゃん?」
「なるほど、私の時代にも跡を継げない男子が跡継ぎとして養子となる事態はあった。そして、貴族というものの中には民を家畜としてしか扱えぬ者もいる。・・・外道に当たる可能性はあり得るな」
「相手側の指導方針を知ってた上で送ったならアウトだし、知らずに送ったのなら馬鹿だ」
セイバーとライダーのマスターが理解してくれて助かる。うん、そうなんだよ。
「と、言うわけで聖杯を使うことも視野に入れていろいろ動いてたんだが、手に入らない可能性も考えて平行作業で後ろ盾は確保しようとしていてな。・・・消去法で頼れそうなのが一人しかいなかったんでケイネスと同盟を結んだんだ。・・・まさかオタクルートを進み始めるとは思わなかったんだ」
正直悪いことをした。
「・・・なるほど。その親はとてもあれですね。自分の信念を確固として持っているが、それゆえにそれ以外の道を知ろうともしない、そもそも理解する機能がないつまらない男ですね。いわゆる視野狭窄の典型例です」
うんうんとうなづきながら、アーチャーはふふふと笑うと酒を飲む。
「・・・ええ、時臣は罰を与えることにしましょう。子とは宝でありゆえに俺の物。そのようは失態を犯したものに聖杯を渡すわけにはいきませんから」
よし、これでアーチャーは無力化で来た!
ふはははははははは! 悪く思え遠坂時臣! 全ては子の教育方針を間違えたお前が元凶なのだよ!
「・・・と、言うわけでこちらとしてはケイネスを優先するのが筋何でな。悪いがお前らに聖杯はやれん」
と、シメのそばをすすりながら俺は断言する。
「第一今の時代に征服戦争なんてやらかされたら、勢い余って核戦争で人類が滅亡しかねないからライダーの願いは無理がある。せめて原子力兵器が実用化の余地がない第一次か第二次に召喚されていたらよかったのだが、この時期は無理だ」
そんなことになったら桜ちゃんが大変なことになるなんてもんじゃない。
おれだって人類絶滅とかさすがにやらせられないよ。うん、それぐらいの良識はある。
「で、セイバーについては悪いがお前の協力者の魔術師殺しが信用できない。どうせ世界との契約ならセカンドどころかサードチャンスもあるだろうし、悪いが次の機会に頼む」
魔術師殺しの目的がわからん以上危険すぎる。金でやとわれた程度の魔術師に令呪が宿るとも考えられんし、何らかの願いを持っている可能性がある。
目的のために手段を選ばない典型例みたいなやつに聖杯は渡せんな。うん、危険すぎる。
「そういうわけにはいかんなキャスター。余の覇道を邪魔するというのなら、蹂躙するほかあるまい」
「意見があったなライダー。私も救済を待つ民のために負けるわけにはいかん。いずれかなえられるとしても、それが遅くなっては民に示しがつかない」
ま、それはまあ当然のことだ。
「まあ、できればセイバーには願いをかなえる前の試行結果を得てからにしてもらいたい。お前の起点がカムランの丘である以上そこから分岐する平行世界が誕生する程度で済むだろうが、だからといって万が一があるしな」
第二魔法の理論的な視点からすればそのぐらいで済むだろうが、実際やってみて実は違いましたでは笑い話にもならない。念には念を入れてそれぐらいはやってもらえると実に助かるものだ。
「・・・なるほど、確かにそれが筋というものだな。心得ておこう」
と、いつの間にやらそばを完食していたセイバーがそのまま頭を下げる。
「馳走になった。このような美食をブリテンにもたらすことも救いの一つになるかもしれん。私一人ではライダーに言い負かされていたかもしれんし、感謝しよう」
「なに、それぐらいはいいってことよ」
これで本当に終わりになるかと思ったが、そこにライダーが手をあげる。
「ふむ、ではついでに聞きたいことがある。・・・ああ、別に聖杯を譲れとかそういうわけではない、ちょっとした興味だ」
「なんだよ? あまり手の内をさらしたくない性分なんだから過去を話せとかいうのはなしだぞ? 本来それが常道戦術だ」
ここにいる連中のほっとんどが真名ばれてるなんてのはあくまでイレギュラーなんだからな。
「・・・貴様は民の側から王について語ったが、ではお主にとっての王道とはなんだ? いい機会だから聞いておこうと思ってな」
どさくさに紛れて時臣を攻撃する兵夜。さすがひょうや汚い