Fate/chaos world   作:グレン×グレン

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第15話

 

「・・・俺の王道ね。まあ、最近まであまり考えたことがなかった」

 

 別に俺は王様ってわけじゃないし。

 

「さっきの説明でわかってくれたかもしれないが、俺は政治体制にはあまりこだわりはない。専制君主製だろうが立憲君主制だろうが独裁政治だろうが民主主義だろうが、支配される民のことをちゃんと考えてくれるならそこまで文句ないな」

 

 別に民主主義が必ず最良ってわけじゃないしな。

 

 結果的に民が被害を受けることが多いからその解決策として生み出されたわけで、アドルフ・ヒトラーみたいに支持率八割以上の反英霊だって存在したわけだし。

 

 民主主義だろうと衆愚政治になって悪性敷くなら、暴君でも善政敷いてくれる方がいいに決まっている。

 

「っていうか、俺は俺の目的のためなら犯罪犯すことだってためらわないし? 政権っていうのはどうしても後手に回るタイプだから、本気で大事なダチを守るんだった清濁併せのんだ裏の視点が欲しくてたまらない性分でね」

 

「まあ、それはなんとなくわかる」

 

 ライダーのマスターがそういい、全員なんかうなづいた。

 

 そんなにわかりやすいか。猫の皮かぶるのは得意なんだが。

 

「・・・まあ、そんな俺にも使えている主や、その上に立つ王様ってのはいる。そうだな、参考までにそいつの話をしてやろう」

 

 そばの汁をすすりながら、俺はそういう話をする。

 

「俺のいる業界は、いくつもの勢力が敵対し、とくに三つの勢力が争っていた。俺らの王様はそんな中で王となった人物だ」

 

 ふと、主と同じ紅い髪を思い出す。

 

「基本方針は平和主義で、貴族主義の強い当時のあり方を変えようと奔走。その圧倒的な戦闘能力や、同胞が同じ思想だったこともあって反対派を抑えてよりよく変化しようと思っている」

 

 もちろん、それがすべてうまくいっているわけでもない。

 

 彼らにしてみればうまく言っているのだから、変えようと思わないのはまあ普通のことだ。

 

「もちろんそうせざるを得ないときは冷徹になることもできる。・・・まあ出が遅いといわれるときもあるし、平時向きの指導者だから乱時には向いてないんだが、それでも指導者としてはああいう人物にこそ率いてもらうべきだとは思う」

 

 うん、理想的な指導者であることは疑いようもない。

 

 ・・・外見は。

 

「ただひどいシスコンで妹に萌えまくりでな。・・・うん、プライベートではライダー並みにはっちゃけてる」

 

 いつかイッセーが被害にあいそうであれなんだが、大丈夫だろうか。

 

「まあ、とりあえずそれは置いておくとして、大きな方針といういうものもある」

 

 うん、話そらそう。

 

 以前聞いてみたことがあったりする。なんでも似たような悩みを持った人がいるとかで、その時に応えた言葉があるらしい。

 

「好きに生きていいが、それが民を苦しめるというのなら自分の手で倒すとよ。で、これは俺の主の方の話だが・・・」

 

 そう、これはあくまで俺たちの魔王の話。

 

 次は部長の話だ。

 

「俺たちは欲を持ち、欲をかなえ、欲を与え、欲を望むもの・・・だそうだ。それが人様の迷惑にならない限り、好きに生きていいものだそうだ。もちろんセイバーの願いだってそれが人様の迷惑にならない限り好きに適えればいい」

 

「ほう? だがそれは欲ではなく理想ではないか?」

 

 ライダーがそう聞いてくるが、それ違うだろう。

 

「欲し望むと書いて欲望。自分のためだろうが誰かのためだろうが、そうしたいと望んでするのなら貴賤問わず欲望ではあるよ。・・・それにこれは俺個人の価値観だが、人間ってのは自己満足のために生きているようなもんだ。誰かに強制されるのだって、断って損したくないという自己満足のためだといい返れる」

 

「そこまで来ると屁理屈になってる気もするけど、確かにそういえばそうだな」

 

「すごい割り切り方もあったものです。けどまあ、人らしい浅ましくも真実を突いた意見ですね」

 

 と、ライダーのマスターとアーチャーがそういった。

 

「ま、そういうこった。んでもって最終的に俺個人の価値観なんだが・・・」

 

 と、最後にこれだけは言っておこう。

 

 俺はライダーに視線を向ける。

 

 ああ、これだけは言っておこう。

 

「俺はあいつに救われたことはあっても導かれたことはない。照らされた場所で夢という道を選んだのは俺自身だ。・・・と、言うわけで個人的に夢まで押し付けて引っ張るおまえの方針を認めるつもりはない」

 

 ああ、必要のために方向をある程度固定化させたことは多いが、だからといって迷惑を加えるわけでない夢まで否定したことはないのでな。

 

 そういう観点において相いれないことだけは断言しておこうか。

 

「なるほど。・・・セイバーの王道にしろお主の王にしろ、その観点は他者の夢を守る王道ということだな。夢を魅せる夢へ進ませる余の王道とは確かに相反する。・・・ならばよし! 是非もなし! 王と認めるかはともかく、余の王道に立ちはだかる益荒男と認めるとしよう!」

 

 そういってから、ライダーはそばの汁を飲み乾した。

 

「馳走になった! かといって手を抜いてはやれんが悪く思うな!」

 

「構わん。こっちも別に手加減するつもりはないからな」

 

 さて、そろそろナツミも戻ってくると思おし帰るとするか・・・。

 

 ガサリと、音がした。

 

 見れば、そこかしこにアサシンが現れてこちらを取り囲んでいる。

 

「・・・時臣も無粋なことをする。やはり彼の道と俺の道は合わないようだ」

 

 アーチャーが溜息をついているということは時臣の独断か。

 

 アサシンの正体がばれた以上、使いつぶしてでも敵を一人倒せれば良しという考えなのだろう。

 

「・・・ライダー。一応言っておくがあいつらはイスラム教徒だから酒を勧めるのはなしの方向で」

 

「む? 酒がダメなのか? 人生の多くを損しておる連中だ」

 

 といってから、ライダーは立ち上がると胸をそらして声を挙げる。

 

「すでに終わりであったとはいえ、酒宴に無粋なまねをしたのだ。これ以上の狼藉はその首で払ってもらう。・・・覚悟はあるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこから先は一方的な蹂躙劇だった。

 

 数十人はいたであろうアサシンの全方位攻撃ならこちらもやばかったが、それ以上にライダーの切り札が規格外すぎた。

 

 ・・・自身と心象風景を同じくする、死してなお忠誠を誓う英霊を独立サーヴァントとして連立召喚する宝具、王の軍勢。

 

 かなりやばい宝具だ。真正面からでは勝ち目がない。

 

 が、その分欠点も見えた。

 

 これだけの英霊を呼び寄せるんだ。維持するだけなら召喚された英霊全員で負担すればいいが、発動そのものに対する消費は非常にデカい。おそらく連発するには相応のインターバルが必要になるはずだ。戦車と併用しなかったのも消耗がでかくて使えないってところだろう。・・・マスターに気を使ったのかそれを言ってないのも欠点になるはずだ。

 

 それに、どうやらクラスをもったサーヴァントとして召喚されているわけでもないようだ。宝具は持ってないようだから一人一人の爆発力はそうたいしたことがないだろう。

 

 そして、魔術師でないライダーが固有結界という形で召喚していることは心象風景が共通していることが肝だ。やれるか否かはともかくとして、構成人数をごっそり減らすことができれば維持も難しくなるはずだ。

 

 やるとするならば機動力でかく乱しつつ確固撃破。体力を無茶苦茶消費するだろうがまあ仕方がないだろう。

 

 あまり趣味じゃないがマスター狙いが一番か。とにかくこいつには聖杯を取らせるわけ二はいかないだろうし、最悪の場合は泥をかぶることになるだろうな。桜ちゃんのみの安全だけは何としても確保しないと。

 

「・・・さて、最後がなんというか閉まらん幕引きになったが、そろそろ娘っ子を連れて帰るとするか」

 

「え? 送ってくれるの?」

 

「なに、つまみとシメの駄賃変わりだ。乗っていけ乗っていけ」

 

「ライダー!? お前なぁ」

 

 ライダーのマスターが何か言っているが、面倒なので素直に乗って帰ることにしよう。

 

 よし、久しぶりに空を眺めながら優雅に帰るとするか。

 

「・・・さて、ナツミはまだか?」

 

「ひょ、兵夜~」

 

 お、噂をすれば・・・影・・・

 

「・・・さて、それでは交渉しようか」

 

 なんか、黒コートを来た男がナツミちゃんに銃を突き付けていた。

 

 ナツミ、お前なあ。

 

「ああ、撃ちたければ撃っていいよ。ほらさっさと引き金を引け」

 

「そう、撃たれたくなければ素直に自害を・・・ええ!?」

 

「マスター! さすがにそのような卑劣な行いは・・・ええ!?」

 

 黒コートとセイバーが同時に度肝を抜かれた。

 

「まてキャスター! 確かにナツミ殿は大丈夫だろうが、いくらなんでも扱いが雑ではないか!?」

 

「そういう問題かよ!?」

 

 ランサーがツッコミをいれてそのツッコミにライダーのマスターがツッコミを入れる。うん、ややこしくなってきた。

 

 でもなぁ。

 

「お前なら、出てきた瞬間に十回は殺せてるだろ。なんだその体たらく、飯で釣られたか?」

 

「ちょ!? いい機会だから獲物を連れてきた忠猫にご褒美は!?」

 

「いや、帰るところだったし?」

 

 それになぁ。

 

「別にこいつがここにきてたのはすでに把握してたから釣り上げる気満々で隙すら見せてたんだが。狙撃場所候補もすでに調べ上げてたし、撃って来たらその瞬間に仕留めてたぞ?」

 

「おまえ!? そういうことは先に言えよ!?」

 

 いや待てライダーのマスター。お前敵だろう何を期待してる。

 

「・・・まあいい。ちょうどよかったセイバーのマスター」

 

「ってオイ待て! セイバーのマスターってその女じゃないのかよ!?」

 

「いや、たぶんこっちだ」

 

 うん、それは想定の範囲内だった。

 

「卑怯未練恥知らずで有名な魔術師殺しともなれば、聖杯戦争でサーヴァントとともに行動するなんて派手なまねは避けるはずだ。大方マスターと行動させるブラフを用意して釣り上げるという観点だろう。・・・気づいていればナツミがボコったあの時点で仕留めれてたんだが、雁夜に気を使って殺しを極力避けたのが裏目に出たな」

 

「なるほど。・・・もう少しセイバーと相互理解を深めたほうがいいのではないか?」

 

「ごめんなさい。キリツグったらセイバーに対してある種の同族嫌悪とかがあって・・・」

 

「・・・・・・心中察する。貴殿も苦労しているようだ、セイバー」

 

「・・・心遣い、痛み入る」

 

 魔術師殺しは何も言わなかったが、うん、いろいろと心中複雑だろう。

 

 まあいい。とりあえずその間に行動するか。

 

「・・・聞きたいことは単刀直入。お前の聖杯に賭ける願いはなんだ?」

 

 ああ、それを聞いておきたかった。

 

「嘘偽りなく答えてくれればそれでいい。内容次第で譲ってやっても構わない」

 

 それについては嘘偽りない本音だ。

 

 そう、それをもってしてですら確認したい。

 

 現実問題として、別に聖杯を譲っても構わないのだ。さらにケイネスに関しても、ある程度の譲歩を引き出している以上譲ること自体は条件次第で可能だろう。

 

 そう、だから答えを知りたい。

 

「・・・・・・」

 

 魔術師殺しは迷っているようだった。まあ、普通に考えれば何かあると考えるのが普通だろう。

 

 そして少し口を動かそうとした瞬間。

 

「》」

 

 ぐちゃりとつぶれる音とともに、崩れ落ちた。

 

「「・・・はい?」」

 

 何があったのかわからなかった。だがこれだけはわかる。

 

 致命傷だ。

 

「き、キリ・・・ツグ・・・っ!?」

 

「マスター!?」

 

 完璧な不意打ちだった。

 

 崩れ落ちる魔術師殺しを飛び越え、条件反射でナツミが攻撃を放つ。

 

 マルショキアス状態で放たれたその一撃は、放った存在を一撃で貫いた。

 

 そこにいたのは全身が漆黒で彩られ、明らかに人間の物でない長い右腕を持った髑髏の仮面。

 

「アサシン・・・だと!?」

 

「いや違う!? いくらなんでもあんな明らかな宝具を持ってるとかおかしすぎる!?」

 

 多重人格による分身宝具を持っているアサシンなら、それぐらいしか持ってないだろう。よしんばほかに持っていたとしても全員がその宝具を持っていなければおかしいはずだ。

 

 なのになんだあれは!?

 

「・・・ここまでか。マスターを守り切れず、聖杯も手にできないとは何たる無念」

 

 セイバーは目を閉じ瞑目する。

 

 その魔力は急激に霧散し、すでに消滅が秒読みであるのは明白であった。

 

「・・・セイバー。一応、俺が代行すればマスター権を委譲することはできるが」

 

「いや、どうやらその余裕もなさそうだし、そこまでの余力もそちらにはあるまい。無理はするな」

 

 そういいながら首を振るセイバーは、しかし静かな視線を俺やライダー、ランサーに向ける。

 

「だが、せめてアイリスフィールの命は助けてほしい」

 

「いや、そっちから何かしてこない限りこっちからサーヴァントすら失った連中を積極的に殺す理由はないから安心していいが」

 

「そうか。それならいい」

 

 そういって、セイバーは空を見上げる。

 

「この聖杯戦争は望む結果を得ることこそできなかったが、我が願いを見直すいい機会になった。キャスター、改めて感謝を」

 

 そうセイバーは言い残すと、その姿が勢いよく消えていく。

 

「アイリスフィール。申し訳ありませんが、私はここまでです。・・・マスターを守れず申し訳ない」

 

「・・・いいえ、あなたには何の非もないわ。私たちがもっと連携を取っていればこんな簡単に負けることはなかったのだもの」

 

 呆然としながらも、しかしアイリスフィールと呼ばれた女はそう告げる。

 

「ああ、もしブリテンの救済を遂げてもなお願いをかなえる余地が次の聖杯にあるのなら―」

 

 最後の一瞬、彼女は―

 

「―あなたたち親子の幸せを願いたいものです」

 

 ―どこにでもいる一人の女の子のような表情を浮かべて消えていった。

 

 




兵夜がライダーを気に入らない最大の理由・イッセーに救われたからある今の自分を否定された気になる。

兵夜らしい子供っぽい理由です。イッセーが絡むと合理的思考になり切れない。

兵夜にしてみればイッセーは道を提示するのではなく道を見ることができるぐらい明るくしてくれるという観点なので、道まで引っ張ってくるライダーのやり方に賛同できないという設定です。兵夜もなんだかんだで道まで提示してますが、同胞とかそういう形ではなく基本的に下僕でもない限り引っ張り込むような真似は避け、提示する程度で抑え込んでいるため敵視する観点です。









・・・そして急展開。セイバー陣営はここで敗退。

最初からセイバー陣営は早期敗退させる予定でした。兵夜はあくまで取りうる可能性から最善を選ぶタイプですので、イッセーがいなければ無理難題をひっくり返すことはできません。ゆえに全員救済は最初から書くつもりはありませんでした。

この作品は、あくまで第四次聖杯戦争い兵夜たちと大きなイレギュラーが参入した場合の流れを書いております。
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