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聖杯戦争の真の初戦、三騎士の一角であるセイバーとランサーの戦いは、すでに佳境を迎えていた。
ランサーの槍によって不治の傷を負わされたセイバー、アーサー王ことアルトリア・ペンドラゴン。
治癒されたとはいえ、その一瞬で手傷を負わされたランサー、ディルムッド・オディナ。
しかし二人の英霊は、それよりも白い目で一人の大男をにらんでいた。
白熱していた二人の戦いに水を差すのは、ライダーのサーヴァント、アレクサンドロス大王こと征服王イスカンダル。
彼は二人の戦いに割って入り、とんでもないことをのたまった。
曰く、臣下になれ。
一応説明すると、セイバーのサーヴァントは仮にも騎士であり、マスターには毛嫌いされているがその妻アイリスフィールとは友好な関係を結び、聖杯を取ることを誓っている。そもそも聖杯に賭ける真剣な思いでいえば、この聖杯戦争でも上位に入るだろう。
そしてランサーのサーヴァントは騎士道に生きる男。生前愛を取り忠義を貫けなかったことを悔やみ、第二の生を忠節の騎士として生きることに決めたランサーにとって、主の鞍替えなど言語道断である。
「待遇は応相談だが?」
「「くどい!!」」
二人がかりで仕掛けないだけ非常に抑え込んでいた。
そしてさらに状況は一転。
ライダーの暴走にツッコミを入れたそのマスター、ウェイバー・ベルベット。
かれはランサーのマスターであるケイネス・エルメロイ・アーチボルトから触媒を盗んで参戦していた。
直接姿を見せていなかったとはいえ、その光景を監視していたケイネスは、殺気すらにじませてウェイバーを脅しにかかる。
それをかばったのは、あろうことか盗んだ触媒で召喚するなどという非礼を働かれたライダーだった。
曰く、自分のマスターとなる者は、自分とともに戦場に立つものでないといけない。陰に隠れてこそこそするなど愚の骨頂。
その言葉にケイネスが怒りを表すより早く、それは現れた。
「いやいや、この聖杯戦争でそれはどう考えても悪手だろ。ロード・エルメロイのほうがまともな方法で臨んでいる」
・・・その姿は、蒼い刃だった。
全身がブレードを思わせる鋭角的な形状をもった鎧に包まれている。
その全身鎧に身を包んだ男は、大仰に手を広げると、その場にいたものすべての注目を集めた。
「どれだけ英霊が強大であろうとその身は一つ。かばえる範囲に限界がある以上、マスターはサーヴァントから隠れる必要がある。冷静に考えれば単独で行動でき遠距離からマスターを狙撃できるアーチャーが最優だ。その戦車がなければ馬鹿と断言させてもらうぞ、イスカンダル王」
「ほう? なかなか口の立つ男が現れたな。バーサーカーやキャスターとは思えんし、エクストラクラスというやつか?」
その姿と言葉で周囲の注目を集めた男は、ライダーの言葉に首を振った。
「あいにくこの身はキャスターだ。・・・以後よろしく頼むぜ、好敵手ども」
その光景を見ていた、セイバーのマスターである衛宮切嗣は絶句していた。
「キャスターのサーヴァントがこの場に単独で現れた・・・?」
ありえない。そう断言する。
キャスターのサーヴァントは魔術によって戦闘するサーヴァントだ。
その存在は対魔力スキルという魔術の天敵があるこの聖杯戦争においては最弱であり、正面からの戦闘など愚の骨頂だ。
しかもステータスも非常に低い。魔力のステータスですらキャスターとしてかろうじてレベルのBランクだし、その大半はEランクだ。
それが真正面から現れるという状況に、切嗣の思考にノイズが走る。
「・・・舞弥、キャスターのマスターの姿は見えるか」
自身の片腕に連絡を取るが、しかし返事が返ってこない。
「・・・舞弥? どうした、返事を―」
次の瞬間、衛宮切嗣は後頭部を強打して意識を失った。
ふむ、派手に登場する機会をうかがっていたが、馬鹿が派手に登場したのならそれにアンチテーゼをぶちかますのが一番いいか。
とりあえずつかみはOKだな。
「・・・次点で漁夫の利を狙ってマスターを殺せるアサシン。御三家なら前もって用意しているアジトを運用できるキャスターもいい線行ってるな。そもそもマスターを全員殺せばそれで片が付く聖杯戦争で、わざわざ倒しにくいほうを選ぶのは合理的でないのは事実だろう? それはアンタらも否定すまい」
「確かに合理的ではあるが、それは騎士の行いではないな。キャスター、貴公はその外見でありながら騎士ではないというのか?」
ランサーからそうツッコミが入るが、しかしそれは俺には通用しない。
「あいにく、俺は兵士であって騎士ではない。それになにより、この聖杯戦争で騎士道が優先されると考えるほうが問題だぞ、ランサー」
予想通りというかなんというか、やはり聖杯戦争を魔術儀式としか認識していないものが多すぎる。
もともと生贄として呼ばれてるわけだし、ちょっと同情したから間違いはただしてやるか。
「これは願望機を狙う殺し合いだ。まさか尋常な果し合いだとでも本気で思っているのか? だとするなら全員馬鹿だといわせてもらおう」
そもそも聖杯戦争とは、御三家が世界に穴をあけるための生贄を利用した儀式だ。
それが一人しか使えないから殺し合いになり、願望機としての特性がほしいから奪い合いになる。
その辺を理解させなければ、こっちの目的も果たせそうにない。ちょっとツッコミを入れたほうがいいか。
「ランサーの言葉を返すようで悪いが、これは英霊と魔術師が聖杯をめぐる争いではないのか? 古今東西の英霊たちがそのような非道をわざわざとる必要は―」
「セイバー。冷静に考えてくれ。お前ら騎士ならいざ知らず、魔術師とは非道にいき外道を歩く存在だ。独自の価値観による貴族社会を形成しているが、彼らは騎士とは違った生き物。そういう容赦はしない」
というか、そういう容赦ができるなら殺し合いなんてしない。
前もって御三家と一緒に七つの魔術師の家系で協定を結んで、順番に聖杯を遣えばいいだけだ。魔術師とは自分が着くのもそうだが家系に根源到達を狙っているのだから、時間が来れば必ず根源に到達できるというのは十分すぎる報酬だろう。
それが我慢できなかったり、何より願望器に見せられる俗物が多いからこんな騒ぎになるわけだ。
「だから令呪なんてものがあるんだ。絶対命令権がなければ英霊を呼ぼうなんて考えない。高貴な魔術師にとって英霊など、しょせんは自分たちが維持させてやっている使い魔にすぎん。そんなやつらに騎士の矜持など考える脳みそがあるわけないだろう」
英霊に
実際、第一次はサーヴァントがいう事を聞いてくれなかったから敗退した。最初から自決させるつもりなのに、それを強制するための準備すらしていないという時点で、サーヴァントをいう事を聞く使い魔程度にしか見ていない証拠だ。
「これが正々堂々とした魔術師同士の果し合いなら、最低でも監督役である教会が用意した触媒を用いて、トーナメント形式が行える人数で、同じサーヴァントの性能をどこまで引き出し、そしてどこまでうまく運用するかの戦いになるだろう。そうじゃない時点でこれはただの奪い合いだよ。教会だって神秘の秘匿を徹底するために呼ばれてるだけだしな」
大仰に肩をすくめて注目を集める。
やれやれ面倒なことだ。
そして、俺の耳に念話でナツミからの報告が届く。
『2人覗き見している人がいたから気絶させといたよ? 銃火器もってる馬鹿どもだったから、とりあえず全部奪っといたぞ?』
でかした。
しかし魔術師の殺し合いに銃火器持って出てくる奴が俺以外にいたとは思わなかった。
どこの魔術使いだ? こんな怪しい儀式に参戦する魔術使いなんていないと思うんだが。
まあいい。とりあえずとどめを刺しておくか。
「そもそも、暗殺者がレギュラーメンバーに入ると公言されておいて、尋常な果し合いになるわけないだろ? どいつもこいつも馬鹿かお前ら」
「「「「「「あ」」」」」」
全員気づいてなかったよ、オイ。
搦め手担当のサーヴァントが存在する時点で御前試合じゃないことぐらいは気づいてほしかったんだが。
・・・まあいい、ここまで抜けてる連中が多いなら、うまく乗せることも不可能じゃないだろう。
取り合えず、念のために教会の信用は潰しとかないとな。
「そもそも監督役が不正ぶちかましている可能性がある状況下で、どいつもこいつも堂々とやり合ってる場合じゃないだろうが」
「・・・へえ、そこに気づいている人がいたんですか。それは俺としてもうれしいですね」
はいすみません。アーチャーちょっと魔改造しています。
どうしてもこいつをそのままにするとどうしようもなかったんだ。俺の技量ではどうしようもなかったんだ(涙)