選択肢の一つには間違いなくこれがあるでしょう。
まず、妨害する
多くのサーヴァントが召喚される数日前、ナツミが泥だらけで間桐邸へと戻ってきたことがあった。
その姿を見てほとんどのものが驚いていたが、しかし兵夜だけが冷静だった。
「お帰りナツミ。それで、例のものはちゃんと仕込めたか?」
「出来たよ。ほめて、ご主人♪」
・・・直後、秘密主義に切れた数名によってボコられてから、兵夜は何をしたのか話し出した。
「いや、相手が召喚してくるであろう場所が事前にわかってるなら、前もって対策をしておくのが当然だろう? ナツミには前から行動してもらっていたんだよ」
「具体的になんなんだよ? せめて教えてくれてもいいんじゃないか?」
雁夜のいう事ももっともなので、兵夜はきっぱり言い切った。
「召喚魔術ならぬ強制帰還魔術を遠坂邸の地下深くに仕込んだんだ。これでやつが英霊を召喚すれば、自動的にカウンターが叩き込まれる」
「・・・汚ぇ!?」
そもそもサーヴァントを召喚させないとか鬼にもほどがある。
「まあ、聖杯の補佐も受けている状況下で召喚阻止とかは不可能だが、引き出せる英霊の情報ははるかに低下するだろう。間違いなく弱体化するだろうな」
くっくっくと笑いながら、兵夜は自分の作戦を自画自賛した。
実際有効な手ではある。
御三家ともなれば数百年前から英霊の召喚準備を行っているのだ。そうなれば普通に考えて強力な英霊が呼び出されるのは当然だろう。
それを黙ってみているのも馬鹿げてはいる。シード権を持っている相手にだからこそ出来る手段であった。
「アニマルソウルでモグラの力を使えば地中を移動できるナツミがいるんだ。それを生かさない手はない。いやぁ、召喚されたのが半年前で良かった良かった」
半年というアドバンテージを維持するのには非常に苦労した。
聖杯の加護もゆるい状況下で、強化されたとはいえ弱い部類に入る雁夜では出来る事は少ない。
そのための対策も含めて、兵夜は全力で行動した。
まずはある程度の未来を知っていることから、間桐の財産を使って株式投資を行い財産を大幅に増やす。これは成功率9割でうまくいき、結果として間桐の資産は数倍に膨れ上がった。
そして、雁夜も桜も魔術に積極的でない事を利用して、間桐の魔術遺産を餌にして多くの魔術師の協力を仰いだ。
虫を利用して魔術特製すら改造できる間桐の魔術は、雁夜や桜からすれば最悪以外の何物でもないが、古い魔術師にしてみれば気分的にはやりにくいが、それだけの価値がある内容に過ぎない。
ゆえに多くの魔術師の協力を得ることに成功し、今の間桐邸は要塞化している。
宝石魔術を利用することで一時的に結界の強度を跳ね上げることができるようになり、旧式の爆撃機程度の攻撃ならやすやす防ぐことができる様になった。対軍宝具でも突破は困難だろう。
警備のゴーレムは一流の魔術師が一年かかるほどの代物で、全部投入すればサーヴァントといえど手こずらせるほどのものだ。
さらに兵夜自身がサーヴァントを召喚した結果培った魔力パスのノウハウを利用することで、莫大な魔力供給を可能としている。これで聖杯戦争が始まれば、魔力は使い放題になるだろう。
さらに人質作戦を考慮に置いた結果、久遠の契約対象を桜に切り替えるなど事前準備も抜かりない。
メインで動くのを自分にすることで、万が一敗退しても二人の存在は隠すことができる。さらに間桐の秘奥を利用することで、最悪の場合は霊格をさらに分割することで独り減っただけなら一回だけなら蘇生も可能になった。
そして敵に対する情報も収集しまくっている。
参戦してきそうな魔術師の辺りはすでにつけており、さらにその来歴に至るまで情報収集に抜かりはない。
莫大な資産をつぎ込んだ情報収集の群れは、参戦予定の魔術師の多くを把握していた。
さらに顔写真をばらまいて情報収集をとれるようにもしている。念には念を入れて冬木の周辺にも用意しているため、そう簡単には逃がさないだろう。
「相変わらずこういった手腕は天才的だよねー。兵夜くん最高ー」
「もっと褒めていいぞ。自分でも最近は家事もほとんど俺がして働き過ぎだと思う。もっと報いろ」
人材不足で召喚される前よりも働く羽目になったことで、兵夜はわりと本気でうっぷんがたまっていた。
聖杯戦争ではぜひ大暴れしたいところだ。マジこのストレスを解消したい。
「ありがとう。キャスターさん」
「桜ちゃんはいい子だなぁ」
最近口角がちょっとだけ上がるようになった桜の笑顔に癒されながら、兵夜はソファに座り込む。
「とはいえ、遠坂時臣が召喚しようとしているサーヴァントが俺の予想通りならこれでもたりんぐらいだ。想定される宝具が予想通りなら、個体戦闘能力を下げた程度ではどうにもならん」
「俺様たち三人がかりでもやばいのか? どんな奴なんだ? っていうか、なんで知ってんだ?」
「3億も出せば買収できる奴なんてどこにでもいる。・・・なんでも世界最古の蛇の抜け殻の化石だとよ。触媒になるであろう伝承から推測して、一番可能性があるのは恐ろしい存在だ」
ナツミに答えるその表情はわずかに暗い。
「古いという事が文字通りスペックの上昇につながる魔術の理論で言うならば、奴は間違いなく超強力なサーヴァントだ。下手な知名度補正や経歴よりもはるかに凶悪だな。なんてったって、文献に残る世界最古の英霊だ、最初の英霊としての立場が宝具化していた場合、英霊の原点としてすべての英霊の能力を必要に応じて引き出せるとか普通にあり得る」
それは、世界で最も古い英雄。
世界中を旅したとも、優れた英知を持つともいわれる、英雄の原初。
「始めまして。世界最古の英雄、ギルガメッシュと言えばいいのかな?」
俺がそう尋ねると、その英雄は微笑した。
「これは嬉しいですね。この俺の威光を目にしながら、この辺りの人たちは僕の正体に気付きもしないので困っていたんです。まったく、この王が来ているのだから、全力を挙げて正体に気付くのが礼儀だとはおもうんですがね」
口調こそ丁寧だが、そのあり方は傲慢そのもの。
一見人当たりが良さそうだが、それは自分が一番上だという確信があるからこそできる、超上から目線だな。
まあ油断と紙一重の余裕になりそうだし、適当に調子に乗らせるのがいいか。
「俺の真名に気付いたことと言い、時臣の召喚を邪魔したのは君の手腕かな? まあ、全盛期の俺は間違いなく使い魔には向いてないから、そういう意味では時臣にとっては願ったりかなったりだけどね」
「だとすると苦労が水の泡か。まあ、スペックは下げることができたみたいだしまあいいかな?」
―下がってるよな? 低いよな?
―自信ないならブラフ建てるなよ。大丈夫、幸運と宝具以外はB未満だ。
雁夜からの報告を聞いて、正直心底ほっとした。
これでフィジカル面がAとBだらけだったら、マジ最悪だった。
よし、それなら助かった。
「ようやく俺の真名を知ってくれる人がいて助かりましたよ。お礼と言っては何ですが、今からなら何でも一つだけ質問に答えますよ?」
余裕を見せまくるギルガメッシュはツッコミどころはあるが、しかしそれならちょうどいい質問がある。
こいつの度量を知るにもいい機会だ。
「・・・アサシンはあと何回、あれと同じ真似ができる?」
その言葉を聞いて、多くのものが沈黙した。
そして、それを破ったのはギルガメッシュの高笑いだった。
「・・・あっはははははははははははははははは!! やはりばれてましたか! やはり俺の真名に気付くだけのことはある! お見事!!」
「ど、どういう事だキャスターにアーチャー! アサシンはアーチャーが倒したのではなかったのか!?」
慌てたランサーが声を上げる。
ふむ、どうにも正直者が多いな。
「まあ簡単に説明してやる。いいか? そもそもあれは怪しい点がいくつもあるが、それに気づいた一番の理由は、戦略的側面だ」
聖杯戦争は少人数で戦う争いだから、どちらかというと戦術に重きを置いているところが多い。
だが、実際の所戦闘というのは戦略が物をいう。
レーティングゲームでも事前の情報収集は当然行っている。それでも戦術が有効なのは、悪魔の駒という存在ゆえに、圧倒的な戦力の開きが、潜在能力においては起こりにくいからだ。
だがそれでも情報収集は行う。それはとても大事だからだ。
「俺が収集した情報によれば、アサシンのマスターである言峰とかいう男は、第三次聖杯戦争でも監督役をし、この聖杯戦争でも続投している男の息子で代行者。そして一年前に遠坂時臣に弟子入りしている。加えて遠坂時臣がサーヴァントを召喚する直前まで入り浸っていた」
ここまでは、調べようと思えば簡単にできる。
「ここまでの経歴から俺が疑問に思ったのは、異端を滅ぼすためならば手段を選ばぬ傾向のある代行者が、さっき俺が言ったアサシンの運用方法をしなかったことと、そもそも暗殺するなら召喚前に殺し、娘の遠坂凛をだまして参戦させてキリスト教の聖人を呼び出して聖杯奪還の名目でタッグマッチを組んだ方がよっぽど勝率が上がるということだ。加えて言うなら、監督の息子が参戦など誰がどう見てもえこひいきを連想してしまうから本来避けるべきだしな」
つかどう考えても裏がある。
「そして、そもそも魔術師に弟子入りするという事態がおかしい。奴らにとって魔術とは神の奇蹟を汚す行いだから、自分から積極的に学ぼうとするのはあれだろう。やるなら魔術師対策担当で少数精鋭だ」
それがわざわざ魔術を学ぶ。
・・・どう考えても聖杯戦争のための下準備だ。魔術師としての力量を挙げることで、サーヴァントの能力を引き出そうという魂胆としか思えない。
「そして、本来警戒厳重であろう遠坂邸にあっさり使い魔が潜入できたこと、あまりにも手際が良すぎること、そして歴史ある一流の魔術師が、弟子の裏切りに対して何の報復もしないこと。そもそも教会に逃げ込むまでがスムーズなことから考えて、あれは八百長試合だと考えたわけだ」
冷静に考えれば三流の話だといわざるを得ない。
聖杯戦争でマスター同士がチームを組むという発想がないのは魔術師の思考の隙だろうが、もう少し怪しんでもいいんじゃないか?
仮にも御三家の結界が使い魔の侵入を許すとかありえないだろう。
だが、それならアサシンを脱落させる意味がない。
最初から脱落させるのなら、魔術師として強化する必要はない。
アサシンの暗殺とアーチャーの大火力はきわめて凶悪な組み合わせだ。運用しないなんて馬鹿げている。
「まあ、そういうわけでアサシンには死亡偽装の能力、蘇生能力、そして分裂能力のどれかがあると踏んだわけだ。死亡偽装の能力以外なら回数制限はあると考えるのは当然だろう」
「・・・お見事」
ギルガメッシュは拍手で俺を称賛する。
「真面目に数を数えたことはないけど、あと少なく見積もっても50はいるはずです。なんでも多重人格で組織をまとめたとかで、宝具化したことで分裂したみたいですよ。時臣たちは偵察に便利とか言ってましたね」
・・・反則ギリギリだろ。そんなの聖杯戦争にいたら積むぞ。
たとえ数十分の一だろうと、その戦闘能力は並のマスターをはるかに凌駕する。
それが複数同時に仕掛ければ、いくらサーヴァントといえどマスターをかばい切れないだろう。
「しかも専門分野が色々あるそうです。短剣の投擲とか武術とか短剣での戦闘とか持っているみたいですね」
「なあ、遠坂家って「常に余裕をもって優雅たれ」が家訓だよな?」
なんでサーヴァント逆じゃないの?
「様々な分野に長けたものたちが、連携をもって襲い掛かる。なんと凶悪な能力だ。アーチャーよりはるかに強敵だぞ」
「事実上、分裂した数だけ専門家がいるようなもの。それらすべてに対処するなどなんという苦行か」
「芸達者な奴がいるものだ。うむ、ぜひ余の配下に加えたくなった!!」
セイバーもランサーもライダーも警戒しているのを見ればわかる通り、残るサーヴァントが同盟を組んでも対処が難しい非常に凶悪なサーヴァントだ。
マスターがサーヴァントと戦える俺らの聖杯戦争ならともかく、マスターとサーヴァントの差が大きすぎるこの世界じゃチートだろチート。
「多くの専門家たちを的確に運用し、采配をとって聖杯戦争を操作する。どう考えてもそっちのほうが優雅だろ? 遠坂時臣は馬鹿なのか?」
ウェイバー・ベルベットの感想がすべてを物語っている。
なんていうか、戦争なめてるだろ遠坂時臣。
しかもそんな生贄戦術を飲み込んで、いうこと聞くとかなんて忠実なサーヴァントだ。どう考えてもこの傲慢が一周している奴より扱いやすい。
―時臣って殴るまでもなく敗退するんじゃないか?
―いうな。俺は敵を過大評価しすぎたと反省しているところだ。
ああ、この聖杯戦争、もしかしたら結構簡単に勝てるかもしれない。
ギルガメッシュは、幼年期と青年期の中間として召喚しました。
ぶっちゃけ大人ギルガメッシュが出てくると直接介入できない言峰をどうしようもない。
子供が出てくると勝ち目がない。
と、いうことで頭を悩ませた結果、足して二で割った感じのご登場と相成りました。タグの半オリジナルサーヴァントとはこいつのことです。
性格は傲慢が一回転して礼儀正しくなった感じ。超上から目線なので愚か者はおろかなのだから仕方がないというすごい形の諦観により穏健という性格。
戦闘能力はいろいろ理由があって大幅に低下していますが、それでも20mmガトリングガンが20mm重機関銃になった程度なので、下手なサーヴァントを凌駕する火力はあるという非常に危険な存在です。
あと四次ハサンはどう考えてもアサシン最強候補。
こいつらを戦術的に使いこなしたほうがよっぽど優雅だったのではないだろうか?