ソードアート・オンライン【狂戦士と竜使い】   作:AIthe

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一応前置きとして、この時のアスナさんは攻略の鬼です。性格が違うとなるかもしれませんが、よろしくお願いします。


レベリングと【閃光】

 

「トウヤさん。」

「しっ!静かにしてろ。」

「は、はいぃ……」

 

2人は50層のサフダンジョンでレベリングをしていた。【吸血鬼の洞窟】と名のつくダンジョンで、文字通りダンジョン内が薄暗い。夜目のきくモンスターや、目が退化し、温度に反応するモンスターがうじゃうじゃと潜んでいるそうだ。

普通に考えれば視界が悪いのはプレイヤーにとってマイナスで、好んで入るプレイヤーはいないだろう。

しかし、彼曰く「レベリングに最適の場所」らしく、無理矢理に連行されたのだ。

そして、現在。彼はダンジョンに入ると私を小脇に抱えて猛ダッシュし、ダンジョン内を駆け回った。やがて何かを見つけたのか、突然止まり、私をひょいっと下ろした。その後、「ここに居ろ。」と言われ、訳も分からず待ち惚けを食らった挙句、戻って来た彼に「静かにしててくれ。」と言われてしまった。頭の上に乗っかったピナも、鳴き声を出さずに静かにしている。

思い切って、ヒソヒソ話で話しかけてみる。

 

「と、トウヤさん!」

「何だ?」

「今は何をしてるんですか?」

「待ってるんだよ。」

「な、何を待ってるんですか?」

「モンスター達。」

 

“達”という表現が気になったが、聞いたら静かにしろと一蹴されそうなので口をつぐむ。

暗くてよく見えないが、彼は何処かを凝視しているように見える。

しばらくすると、彼が向いている方向から何やら物音がするようになってきた。

 

(うう……怖いなぁ………)

 

寒さと怖さに身を震わせながら、私は彼の合図を待つ。

すると、突然彼がシステムウィンドウを開き、アイテム【松明】を取り出す。メラメラと燃える火で辺りが明るくなり、彼の鎧姿がよく見える。

そして、彼はこちらを向き、耳を塞ぐジェスチャーをする。真似して耳を塞ぐと、満足そうに頷く。

 

「うおらぁぁぁぁ!!」

 

突然声を張り上げ、その【松明】を文字通りぶん投げる。空を舞う炎が辺りの洞窟生物を模したモンスターを映し出し、その気色の悪さに自分の身体を抱く。

そして、それが弧を描いて落下、ダンジョン内をコロコロと転がり、何かにぶつかって───

 

「耳を塞げ!」

 

ドオオオオオオオオオオン!!!

 

彼の叫びとほぼ同時に、ダンジョンを揺らす程の爆音が鳴り響き、この洞窟ではあり得ない程の光を放つ。

その爆発でダンジョン内の“何か”に火が着火し、ダンジョン内を見違える程に明るくする。

 

「!?」

 

そして、彼の言っていた通り、そこにはおぞましい数のモンスター“達”が悶え苦しむように蠢いていた。

 

「細けえ説明は切り倒しながらしてやる!ほら、キリキリ動け!」

「ええっ!?は、はい!ピナ!」

「きゅるる〜!」

 

彼はモンスターの大群に突撃し、両手で大剣を振り回す。私とピナもそこに加わり、ほぼ無抵抗のモンスターをソードスキルで倒していく。

 

「どういう!こと……なんですか!?」

「俺は、このゲームをやっていて!っ!おらぁ!……気づいたんだ!」

「何に……やぁっ!……ですか!?」

「この世界を作った茅場はよお!おらぁ!うおらぁぁ!!……子の世界に現実を求めているんだぁ!」

「ラウンド・アクセル!……どういうことですか!?」

 

私は短剣全方位攻撃技【ラウンド・アクセル】を発動しながら、彼に質問を続ける。

 

「だから!敵は攻撃を学習する!うぉらぁ!…それと同じだ!」

「正直全然意味がわかりません!ファッド・エッジ!」

 

短剣上位剣技【ファッド・エッジ】で隙だらけの敵に4連撃を加える。敵は着々と減っている筈なのだが、まだ終わりが見えない。もしこれが現実世界なら、辺り一面がメチャクチャな事になっているだろう。

 

「ここの敵は!おらぁ!……体温や超音波で敵を察知するっていう設定だ!だから!爆発で器官をぶっ潰した!」

「そんな事が可能なんですか!?やぁっ!」

 

今まで考えたこともなかった。敵はポリゴンで、異常は状態異常のみ。そうだと思っていたし、それ以外の情報は特に開示されていなかった。

しかし、良く考えればあり得ない話ではない。ユニークスキルという解放条件がわからないスキルが存在したり、確率でモンスターをテイムする事が可能だったりと、完全に公開されてはいないが、存在するものがこの世界には溢れている。

もしかしたら、彼の言う通り、モンスターに隠された弱点があってもおかしくはない。実際に、見える弱点なら今まで大量に見つかっている。

 

「目の前の光景が証拠だ!おらぁ!」

「でもそんな事どこで知ったんですか!ラウンド・アクセル!」

 

こんな感じでおかしな会話と作業化された攻撃を続け、私のレベルは知らぬ間に大きく上がっていったのでした。

 

 

★★★

 

 

「まさかあの洞窟の敵が弱く設定されてるとは思いませんでした……」

「そりゃ当たり前だろ?プレイヤーにとって視界が悪いだけでマイナスなんだから、普通の強さのモンスターだったら攻略難しすぎるだろ。」

 

私とトウヤさんはあの大量のモンスター達を全て倒し、多大な経験値を得た。こんなやり方でレベルを上げているのは彼くらいで、どう考えても普通じゃない筈だ。

でも、実際にレベルは4も上がったし、この調子で行けば彼のレベルにも追いつけるかもしれないと、微かな希望を持てた。

 

(そもそも、トウヤさんってレベル幾つなのかな?)

 

トウヤというプレイヤーには謎が多い。パーティを組んでるといえどまだ組み始めたばかりなので、知っている情報は少ない。それでも、全プレイヤーの中でも一番彼のことを良く知っている自信はあった。何故なら、彼は私以外のフレンドはたった1人───情報屋しかいないからだ。

 

話を戻すと、今は50層の街でアイテムの整理をしていた。手に入ったアイテムは殆ど売り、代わりに大金を払って回復結晶や転移結晶を買い込んだ。いつ何処でどんなミスを犯すか分からない。念には念を、だ。

 

「トウヤさん、買い物終わりました!」

「おっし……じゃあまたレベリングしに行くぞ!」

「ま、またあの洞窟ですか……」

「やっぱ今日は疲れたし寝よう。爆弾作らないといけないし。」

「あ、そうですよ!あの爆発なんだったんですか?」

「だから爆弾だって。」

「爆弾なんて売ってないですよ!」

 

爆弾など聞いたことがない。というより、そもそも爆発自体起きることがない。

 

「27層に売ってる打ち上げ花火を樽に詰めて導火線纏めただけだぞ。あと、中にモンスターを誘い出す為の花を入れたかな。」

「それだけでドッカーンってなるんですか?」

「ダンジョン内に松脂を塗り塗りしてたからな。ダンジョン内は破壊はできないけど、アイテム設置ならできるから。」

「ほへぇ〜………」

 

そんなこと思いつきすらしなかった。松脂なんて、松明につけて明かりにするくらいしか思いつかないし、ダンジョン攻略の打ち上げ等で使う花火を、そんな事に使おうとは思いもしなかった。というより、打ち上げ花火に攻撃判定が存在していることに驚いた。

 

(なんか、トウヤさんの戦い方って…………)

 

彼の戦い方。それはまるで───

 

「狩り……みたいですね。」

「だろ?ハンティングスキルがあったらカンストしてるレベル。あ、ついでに罠作成も。」

 

彼はそれを冗談っぽく話す。実際にありそうなのが怖いところだ。

 

「じゃあ、今日は切り上げだ。また明日な。」

「おやすみなさい、トウヤさん。」

 

彼に1日の別れを告げ、私は宿の扉を開いたのであった。

 

 

★★★

 

それから1ヶ月後。

朝からダンジョンを周回し、夜は死んだように眠る。といったサイクルを繰り返し続け、私のレベルは60を越し、現在の最前線に行けなくもないレベルに達した。前のように洋服をたくさん買ったりせず、機能的なものを着回している。新しい服は、余裕が出たら買うつもりだ。

勿論、毎日のレベリングは疲れたし、時々嫌になる事もあった。でも、トウヤさんは毎回私を驚かせるような仕掛けを作ってきて、説明までしてくれた。多分、彼なりの配慮だったのだろう。

 

(本当に優しいなぁ………)

 

彼を横目でチラリと見ながら、そんな事を考えていると、メットが動いてこっちを向く。慌てて両手をワサワサと動かし、この場を乗り切ろうと話しかける。

 

「ト、トウヤさんトウヤさん。」

「んだよ56層に見学しに来たのに文句あるのかよ?」

 

ついこの前、55層が死亡者無しで突破され、56層が解放された。今回は最前線の様子を見に行ってみようと、ピクニック気分で来てみたのはいいのだが───

 

「なんか殺伐としてますね。」

「一度しかドロップしないレアアイテムとかあるしな。余裕がないよな、全く………」

 

ここにいる大体の人が“階層踏破”を目標にしている為か、人はいるのに活気がなく、殺伐としている。

 

「チョロっと見たら帰るぞ。」

「ええーっ!ダンジョンやりましょうよー!」

「ヤダヤダ。攻略組に横取りされそうだし……取り敢えず飯でも食おうぜ。」

 

そう言って彼は歩き出す。慌ててついて行くと、誰かと肩をぶつける。直ぐさま頭を下げ、揉め事を起こさぬように謝る。

 

「す、すいません!」

「別にいいわ。」

 

顔を上げると、その顔は彼女でも知っている、寧ろ知らない人はいないと断言してもいいプレイヤーだった。

栗色の髪に、細長いレイピア。攻略ギルド血盟騎士団(KoB)の制服。そして、この男が多いゲームの中でも珍しい女性で、更に端麗な顔立ちを兼ね備える人物。それは───

 

「【閃光】のアスナ!?」

 

血盟騎士団(KoB)の副団長、全プレイヤーの中でも指折りの強さを誇る、【閃光】と謳われた少女であった。

 

「ああ、【閃光】か。名前なら聞いた事があるが───」

 

そして、彼の口からとんでもない言葉が飛び出す。

 

「こんなガキだったとはな。」

「なん……ですって?」

 

彼女は怒りに満ちた目で彼を睨む。それを煽るかのように彼は話し続ける。

 

「言葉のまんまだよ、こんなガキだとは思わなかったって事だ。」

「ひいっ!ト、トウヤさん!」

 

そして、彼女は私をギロリと睨む。ピナもそれに恐怖したのか、首筋に頬を沿わせてくる。

情けない声を出して彼に助けを求めるが、彼は微動だにしない。

 

「おっと、こんないたいけな子供を睨む程余裕がないのか。流石【閃光】様───」ガキィィン!!

 

彼の鎧に赤いエフェクトが走る。閃光と呼ばれた少女はそのレイピアを抜き切っている。今の一撃、安全圏内でなかったら死に直結する程のダメージだろう。

 

「デュエルよ。」

「お?」

「早くデュエルを受けなさい!」

「はぁ……仕方ねえな………」

 

【閃光】の怒号に彼がたじろぎ、渋々といった風に背中の両手剣を抜く。

 

「ト、トウヤさん!」

 

攻略組自体珍しいが、その中でも有名な【閃光】がデュエルをするとあって、人がわらわらと集まってくる。場がガヤガヤと騒ぎ始め、私が彼の名前を呼んでも届きそうにない。

しかし、彼はチラッとこちらを向き、コクリと頷く。

 

(頑張って………)

 

「じゃあ、デュエルスタートだ。」

 

彼がシステムウィンドウを押すと同時に、【閃光】が空を切る速度でレイピアを突き出す。彼は両手剣を構えながら後方に飛び、彼女と距離を取る。

 

「ソードスキル───発動。」

 

彼の口からもぞもぞと音が漏れると同時に、両手剣をぶんぶんと振り、片手を離す(・・・・・)

そのシステム上あり得ない挙動に、集まったプレイヤーがざわつく。

片手でその大剣をまるで重さを感じさせずに振り回し、レイピアを構える強者を威圧する。

 

「うぉらぁ!」

 

両者同時に地面を蹴り、空中で衝突する。片方は細身の剣身をねじ込むように突き出し、片方は大剣を器用に回してレイピアの軌道を逸らす。

 

「せいっ!」

 

レイピアを引っ込めながら着地し、姿勢を低くしたまま連続で突き出す。彼は空中で1回転しながら大剣を振りかざし、地面に破壊不能のオブジェクトを出現させ、レイピアと衝突。大きなエフェクトが発生する。

 

「おらぁぁぁ!」

 

着地と同時に突き上げるように大剣を振り回す。それをすれすれで回避すると、細身の剣身に青い光が灯る。

どちらも引かない戦いに、この場の全てのプレイヤーが息を飲む。

 

「ハアァァァァァ!!!」

 

レイピアが視認不能な程の速度で突き出され、彼を襲う。

 

「隙も作らずソードスキルかよ、がっかりだ。」

 

大剣を大きく振り上げ、エフェクトと共にレイピアの軌道を大きく逸らす。【閃光】が苦虫を噛み潰したかのような顔になり、大きな風圧と共にソードスキルをキャンセルする。

 

「終わりだ。」

 

その一瞬の硬直を見逃さず、表情の読めない彼の大剣が白く輝き、横に一閃、いとも簡単に振り切り、少女の身体を切り裂いて───

 

ガキィン!

 

突如、盾に防がれたような音が場を支配する。その2人の間に現れた影。その正体は───

 

「ヒースクリフ……何の用だ?」

 

そこには、血盟騎士団(KoB)団長、【神聖剣】と呼ばれたヒースクリフの姿があった。

 




オリ主が勝てた理由は次話で説明します。
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