LIVE A LIVE 近未来都市編   作:Leni

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『欠陥電気』⑦

 

 セイカツヨウ モジュール

 リヨウシャ カクタ

 

 ショインノ カクタサン ハ

 ザンネンナガラ ナクナリマシタ

 

 シツナイヲ カイシュウスルタメ

 ロックハ カイジョサレマス

 

 ヘヤノ デイリヲ キョカシマスノデ

 IDヲ テイジシテクダサイ

 

 ......

 

 トウロク カンリョウ

 ヘヤニハ ジユウニ ハイレマス

 

 

 

 4.

 

「死者をとむらう……か。そんなことしてやれるだけ幸せってもんだ」

 

 部屋のテーブルの上を見ながらダース伍長はそんなことを呟いた。

 冷暗所に死体を収める際、共に入れるための遺品探し。

 彼は男性であるため棚や引き出しの中を布束とキューブに任せ、テーブルの上の愛用の品を目で探した。

 

 角田の私物は多い。

 着の身着のままで研究所へとやってきた研究員達の中で、角田だけは鞄いっぱいに物を詰め込んでここへとやってきたのだ。

 テーブルの上には紅茶のポット、写真立て、携帯音楽プレイヤーなどが置かれている。

 キューブがダース伍長の背後から机の上を覗く。

 写真立てに飾られていたのは、レイチェルの部屋にあったものと同じ昔の二人の写真であった。

 

 布束は棚の上を探る。

 本立てに並ぶのはとても研究職とは思えない娯楽小説や漫画本ばかり。

 ただ、その中のある古い一冊のハードカバーの本が彼女の目に付いた。

 

なんだろう(what)、この本? 『ワープ航法は実現するか?』か……」

 

 昔に学園都市で書かれたワープ理論の学術書であった。

 

「角田さんらしいわ」

 

 本の表紙を撫でながら布束が言う。

 

「そういえば口ぐせだったわ。角田さんが物事を急かすとき、『何やってるの、そんなのワープでやっちゃえばいいのに』って……」

 

 布束は角田のことが解らないと、そう芳川に言っていた。

 そしてまた、悪い人ではないとも言っていた。

 キューブの目からみた布束の様子は、彼女が角田のことを思い出して悲しんでいる、とそう思えた。

 

「こんなところ勝手にいじったらレイチェルさん怒るかしら……」

 

 そう言って布束が机の引き出しを開いたときのこと、彼女の携帯端末に所内通話の着信を知らせるコール音が鳴った。

 白衣の胸ポケットから携帯端末を取り出すと通話ボタンを押し耳へと当てる。

 

「…………。え、何ですって?」

 

 端末から届いた声に布束は顔を強ばらせる。

 

「遺体が……!?」

 

 携帯端末を固く握りしめながら、布束は驚いたようにそう端末へと叫んだ。

 

「おい、どうした!」

 

 ただ事ではない布束の様子に、ダース伍長が布束へと詰め寄る。

 彼の迫力に一瞬怯えるような表情を見せるも、布束ははっきりと言葉を告げた。

 

「角田さんの死体が、医務室から消えたそうです」

 

「……くそ、なんだっていうんだ!」

 

 ダース伍長が部屋を飛び出していく。

 それに続くように布束とキューブも扉をくぐり廊下へと出る。

 

 生活エリアと医務室は同じ二階(レベル2)にある。

 彼女達は廊下を駆け、医務室へと向かう。

 その途中、キューブはふと奇妙な感覚を覚える。AIM拡散力場の端に何かが引っかかるような。

 そして違和感の正体を視界の中に見かける。廊下に赤い染みがあるのだ。まるで死体を運んだときに血をこぼしたような染みが。

 

 それを布束に言うべきか迷っている間に、二人は医務室の前へ着く。

 足の速いダース伍長はすでに中へと入っている。

 医務室の一枚目の扉をくぐる。そこは小部屋になっていて、医務室の中へ入る前に殺菌を行う。

 殺菌のエアーとライトが二人を照らし、作業の終了を知らせる電子音が鳴る。

 それと同時に二枚目の扉が自動で開き、布束とキューブは医務室の中へと入っていった。

 

 中では芳川とダース伍長が手術台を見下ろしていた。

 手術台の上からは手術の際に飛び散った血の後だけを残し、角田の遺体が忽然と消えていた。

 

 床には、死後も固まっていなかった血が遺体からこぼれたのか、血の跡が点々と模様を付けていた。

 

「どういうことです!?」

 

 そう布束が芳川に問う。しかし。

 

「私に聞かれても困るわ」

 

 芳川は首を振ってそう答えるだけ。

 冷却用のコンテナが用意でき、遺体を運ぶための用意をしようと医務室へ訪れたところ、すでに遺体が消えていたというのだ。

 

「それより、レイチェルとか言ったな」

 

 そう横からダース伍長が口を挟む。

 

「彼女は呼ばなくていいのかね?」

 

 その言葉にもしや、という顔で彼に振り向く布束と芳川。

 キューブはレイチェルの部屋で聞いた言葉を思い出す。

 

『角田は……死んでなんかいないわ』

 

 彼女が角田の死を受け入れていないのだとしたら。

 遺体を運んだのは。

 

 

 

 5.

 蛍光灯の光が照らす個室。

 レイチェルは部屋のベッドに角田を眠らせながら、彼女の顔を眺めていた。

 

「角田……、フフ……よく眠っているわ……」

 

 ベッドで眠る角田の顔は、生きている人のそれではない色をしていた。

 それでも、レイチェルは生きて眠っている人にでもするかのように、角田の肩に優しく毛布をかけた。

 レイチェルの服は血に濡れていた。

 医務室から角田を背負って自分の部屋へと運んだ結果、真っ白だった白衣が赤く染まっている。

 

 そんなレイチェルと角田二人の空間に、部屋のドアを叩く音が響いた。

 だがレイチェルは聞こえていないのかベッドの上の角田を見つめ続けている。

 

「待ってて、私クッキーを焼いてくるから……。あなた大好きでしょう?」

 

 血に塗れた手も拭わぬまま、レイチェルは部屋に据え付けられたキッチンへと向かう。

 彼女が歩くたびに、床に赤い靴の跡が残る。

 

 ドアを叩く音が激しくなる。

 だがレイチェルは気にもとめずキッチンの調理器具を手に取る。

 金属のクッキーの型を手に彼女は再び角田の元へと戻る。

 ドアからは機材を動かす音が鳴り始める。

 やがて、ロックされていたドアがこじ開けられ、芳川が部屋へ足を踏み入れた。

 

「な……」

 

 血まみれの部屋とレイチェルを見て、芳川は絶句する。

 レイチェルは彼女が部屋に入ってきたことにも気づかず笑い続けていた。

 

 芳川に続き布束、ダース伍長、キューブが部屋へと入ってくる。

 赤黒い色が点々と彩りを加えられた部屋をキューブは目にした。

 つい先刻までレイチェルが座り込んでいた場所も、靴底の模様が血で浮かび上がっている。

 

「何をしているの、レイチェル!」

 

 芳川がレイチェルの肩を掴んで無理矢理に振り向かせた。

 焦点を結んでいなかったレイチェルの瞳がぐるぐると動き、やがて正面に経つ芳川の顔を視界に収めた。

 

 そこでやっと芳川の存在を認識したレイチェルが後ずさり、ベッドの脇へと立つ。

 そして顔を歪めて芳川を睨み付けた。

 

「……この子は、誰にもわたさないわ」

 

 腹の底からこみ上げたような声でレイチェルは言う。

 

「芳川……、あなたの考えはわかってるのよ。角田を殺せば……私があなたの部下に戻ると思ったのね……!」

 

 角田を殺したのはお前だろう、と憎悪を込めた瞳で芳川を睨み続ける。

 

「な、何を言っているの……しっかりしなさい、レイチェル!」

 

 芳川は必死にレイチェルに呼びかける。

 だが、正気を失ったレイチェルはうなり声を上げるだけだ。

 

 そのとき、部屋に取り付けられていた通信端末の電源が入る音が鳴った。

 端末は軽快な音を立てて回線が繋がったことを知らせる。

 赤いランプを点す端末に、レイチェルの視線が向く。それと同時に、端末のスピーカーからノイズ混じりの声が響いた。

 

ソコカラ ニゲテ レイチェルセンパイ

ヨシカワガ アナタヲ ネラッテイル

 

ワタシハ イマ チカフロアノ マエニ イル

ハヤク カラダヲ トリモドサナクテハ

 

スグニ キテクダサイ

 

 拾った声を無理矢理につなぎ合わせたような、違和感のある角田の声が室内に響く。

 あまりにも奇妙な事態に部屋にいる面々の思考が止まる。

 ただ、レイチェルは狂った思考でその声を正面から受け取り、ふらりとよろめいた後こじ開けられたドアから全速力で飛び出していった。

 

「レイチェル!」

 

 芳川が悲鳴を上げるように叫んだ。

 明らかな異常。角田らしき声はレイチェルを地下フロアへ誘い込もうとしていた。

 地下は先ほどケーブルが爆破されたばかりだ。何があるか解らない。

 

 レイチェルを追って真っ先にダース伍長が部屋から走り去る。

 芳川と布束がさらにそれを追う。

 状況を理解できずにまた一人取り残されたキューブは、ベッドの上の角田へと一度振り向くと、芳川達を追うために駆けだした。

 キューブが見た角田は、やはり死んだままだった。

 

 

 

 6.

 キューブが廊下に出たとき、そこにはすでにレイチェル達の姿は無かった。

 白い廊下の上に浮かび上がった血塗れの足跡も、すぐにかすれて見えなくなっている。

 彼女の能力を応用したマイクロ波レーダーも屋内では何の役にも立たない。

 キューブはレイチェルが向かった場所を考える。

 角田のあの通信を聞いて駆けだしたのだから、当然地下フロアに向かったはずだ。

 となれば、キューブが知る限りで地下フロアに繋がる先は一階(レベル1)の第一ブロックのみだ。

 

 生活フロアのほど近くにある南側階段を飛び降りるように駆け下り、第三ブロックへと入る。

 そのまま第二ブロックまで駆け抜けようとしたとき、キューブの脳裏に何かがよぎった。

 第六感とでも言うべき予感。

 キューブの能力は発電能力(エレクトロキネシス)予知能力(ファービジョン)に連なる類のものではない。

 となれば、この感覚はキューブが無意識のうちに発している微弱な電磁波、AIM拡散力場に何かが引っかかっているのだ。

 研究所の建材の性質上、キューブの能力範囲は狭い。

 

 このブロックに何かがある。

 キューブの感覚はそう告げる。

 ここに何があるのか。キューブが思いつくのはただ一つだった。

 

 ベヒーモス。

 

 生命工学が蘇らせた、太古の恐竜。

 人間など丸呑みにしてしまいそうな巨大な顎門を持つ獣。

 キューブはその巨体を思い出しながら、フロアの片隅にある〇二番コンテナへと近づく。

 空調の動く音を聞きながら、キューブはゆっくりとコンテナの扉を開けた。

 足を踏み入れ、見る。

 

 そこには何もなかった。

 

 そう、何もない。ガラスの檻を満たしていた培養液も、その中にいるべきものも何もなかった。

 ベヒーモスが姿を消した。

 その意味が告げる重大さにキューブは気づく。コンテナの奥には、あの恐竜が通れるような大きさの隔壁が開いていた。

 

 急いで知らせなくては、そう思いきびすを返す。

 コンテナの扉をくぐり第二ブロックの扉を目指す。

 その視界の端。身体を揺らす緑色の化け物がいた。

 ベヒーモス。

 

「――――」

 

 その声は果たして、キューブとベヒーモスのどちらがあげたものだったろうか。

 反射的にまるで転がるようにして扉へと駆け出すキューブ。

 一方ベヒーモスは、培養液に濡れる身体を揺さぶりながらキューブの元へと動き出す。

 それが四本の足を床へ踏み降ろすたび、キューブはまるで地面が大きく揺れているかのような錯覚を覚えた。

 

 巨躯の化け物と小さな少女。その歩幅は絶望的なほどであった。

 首の裏がじくりと溶けるかのような感覚がキューブを襲う。

 

 キューブが一歩踏み出す間にベヒーモスは二歩近づく。

 二歩進む間に背後から四度足音がする。

 

 足がもつれそうになりながらも扉へ向かって走る。

 頭の後ろで三つ編みが重たく揺れる。

 髪の毛があの化け物の爪先に触れでもしたら。そんな焦りがよぎる。

 

 キューブの中に新しく生まれた感情が、彼女の思考を埋める。

 それは人と同じ脳を持つキューブの、巨大な化け物に対する本能的な恐怖だった。

 入力された記憶でも、体験した知識でもない、初めから身体に備わっていた野生の感覚。

 それが彼女の足をただ闇雲に動かし続けた。

 

「――――」

 

 咆哮。

 頭に直接音を叩きつけられたかのような音の衝撃がキューブを襲う。

 ただそれでも彼女は足を止めることはなく、扉の元へと辿り着き、開き、そして身体を滑り込ませた。

 扉を叩きつけるようにして閉めると、走る勢いのままキューブは第二ブロックの床に倒れ込んだ。

 

「――あ」

 

 喉の奥から声が漏れる。

 それに遅れるようにして全身から汗が噴き出してきた。

 

「――っ、はぁ、はぁ」

 

 乱れた呼吸を整えようと胸に手を当てる。

 服の向こうからは心臓が脈動する強い鼓動が感じられた。

 

 キューブは扉へと振り返る。

 人が通るための、あのベヒーモスの巨体と比べたら小さな扉。

 あれがこちらへやってくるには、扉でなく壁を破壊してこなければならない。

 さすがにそれはありえない、と結論づけてキューブは立ち上がる。

 

 呼吸は乱れたままだが、何よりも先にベヒーモスのことを伝えなくては。そう震える足を前へと踏み出す。

 

 第一ブロックの扉にIDカードを掲げ、扉をくぐる。

 先ほどの扉がID管理でロックされていたら生きていられなかっただろう、と考えながら第一ブロックへと入った。

 

 フロアの奥、室内管理端末の前に、レイチェルはいた。

 ダース伍長、芳川、布束の三人に手首を掴まれて暴れている。

 

「馬鹿な真似はよしなさい!」

 

 レイチェルの腕を抑えようとしながら芳川が怒鳴る。

 それでもレイチェルは彼女達から逃れようと腕を滅茶苦茶に振る。

 

「は、離してーッ!」

 

 地下フロアへ行こうとしているのだろう。

 芳川はレイチェルを冷静にさせようと声を投げかけ続ける。

 が、そんなことをしている場合ではない。

 キューブは乱れた呼吸を整え、叫んだ。

 

「そんなことをしている場合ではないとミサカは警告します! ベヒーモスが逃げ出しています!」

 

「何だとベヒーモスが!?」

 

 キューブの言葉にダース伍長の力が緩む。

 その一瞬、レイチェルが三人の間をすり抜け、管理端末の開閉ボタンを押した。

 

「いけない!」

 

 芳川がそう言った瞬間、突如キューブは足下の感覚を失った。

 管理端末から離れた地下フロアへの作業口、その上にキューブは立っていたのだ。

 作業口が開いていき、キューブを奈落へと引きずり込もうとする。

 彼女は咄嗟に開いていく作業口の端を片手で掴んだ。

 

「キューブ!」

 

 布束が慌てて駆け寄る。

 が、身体を支えていたキューブの手はすぐに力を失い作業口の上を滑っていく。

 十三歳相当の少女の握力は、片手で体重を支えるには余りにも弱すぎた。

 

 淡いLEDの光に照らされた地下へとキューブは落ちていく。

 頭上から布束の絶叫が響く。

 

 頭上の穴が少しずつ遠くなっていく。キューブはそれを無言で眺めていた。

 先ほどのような恐怖は欠片もない。

 彼女はただ淡々と己の能力を行使した。

 

 五感を使い彼女だけの現実を観測する。

 観測されたズレた現実が本当の現実と重なり、無から電子が生まれる。

 電子は磁場を生み出し、磁性物質との間に力を生み出す。

 

 キューブは上に伸ばしたままの手の先から、磁力の糸が伸びるのを幻視する。

 磁力線を見るためのゴーグルは額の上にかけたまま本来の役目を果たせていない。ゆえに彼女は足りない部分を演算と想像で補う。

 

 彼女の視線の先、今も開き続ける作業口に糸は結びつく。

 落下が止まる。肩が外れないよう己の身体全てを磁場とし、“上”へ向けて落ちる。

 

 第一フロアの明るい照明の光が、再び彼女の視界を埋める。

 今度こそキューブは作業口の端をしっかりと掴み、身体を持ち上げた。

 

 作業口の縁に足をかけ身を乗り出したところで、膝を付きかがんだ布束と視線がかちあう。

 

「あ……」

 

 布束は僅かに涙の浮かんだ目元を白衣の袖で拭うと、キューブへ右手を差し出した。

 

「大、丈夫?」

 

「問題ありません、とミサカは己の性能を誇ります」

 

 キューブは布束の手を取り、布束を地下へ引っ張り込まないよう脚に力を入れてフロアの上へと乗り出す。

 そして手を握ったままゆっくりと立ち上がった。

 

 フロアの上では、ダース伍長がレイチェルの腕を取り動けないよう関節を固めていた。

 芳川はキューブが無事に這い上がってきたのをほっとした顔で見た後、管理端末の開閉ボタンを押した。

 キューブの背後で作業口が駆動音を立てて閉まっていく。

 

 キューブと布束は管理端末のレイチェル達の元へと歩いていく。

 暴れるのをやめたレイチェルの腕をダース伍長はゆっくりと解いていく。

 芳川が管理端末の電源を落とすのを確認すると、彼はレイチェルを解放して、言った。

 

「いいか……落ち着いて良く聞くんだ」

 

 彼の低い声は空調の音のみが満たすフロアに良く響いた。

 

「あんたがさっき医務室で見たのは何だ?」

 

 そうレイチェルに問いかける。

 そして彼女の答えを待たずにダース伍長は言葉を続けた。

 

「あのベッドに横たわっていたやつだよ……。いいか、冷静になるんだ。悲しいかもしれんがあの女はもうこの世にはいないんだ」

 

 ぺたりと、レイチェルがその場に膝をついた。

 脱力したように両肩をさげ、床へ尻をつける。彼女の表情にはもう狂った感情は宿っていない。

 

 それを見届けたダース伍長は、芳川の方へと振り返った。

 

「あとは大丈夫だな? 私は向こうを見てくる」

 

 そう言って第二フロアへの扉へと向かおうとするダース伍長。

 

「あ、あの……」

 

 そんな彼の背後に、芳川が声をかける。

 

「ありがとうございます」

 

 そう言って芳川は腰を折り深い礼をした。

 

「フン……私もこんな場所で死にたくはないからな」

 

 そんな言葉をダース伍長は返す。

 そしてフロアを出ようとする彼に、キューブは言った。

 

「あれは第一フロアを徘徊していました、気をつけてください、とミサカは注意を促します」

 

 返事は返ってこなかった。

 

 

 

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