LIVE A LIVE 近未来都市編   作:Leni

22 / 35
閑話 とある姉妹の最終信号 下

 

「どうしてこうなった」

 

 御坂美琴は困惑していた。

 現在時刻は午後七時過ぎ。場所は見覚えのない施設。

 彼女は今自分がおかれている状況を確認する。

 

 拉致。

 そう、拉致されたのだ。

 ファーストの言葉にはいと答え、まるで愛の告白の返事にお友達から始めましょうとでも答えるみたいだと、恋愛経験のない美琴は内心でほほえんでいた。

 そうすると突然ファーストは立ち上がって美琴の横へとやってきて彼女の手を取り「外へ出かけましょう」と言った。

 美琴はテーブルの上の皿を見ながら、まだチーズケーキがと答える、が、ファーストは聞く耳も持たず美琴の手を引いて孤児院の外へと出た。

 その後美琴はファーストに案内されるままに街中をふらついて回った。

 姉妹として一緒に遊ぶのですと言われては反論することも出来ず、繁華街の一角にあるゲームセンターへと連れられた。

 クレーンゲームにゲコ太のぬいぐるみが入っているのを発見し目を輝かせていると、ファーストは「そのお子様センスはねーだろ」と美琴を馬鹿にする。

 同じDNAを持つ妹でありながらこの良さが解らないのかと憤慨する美琴をファーストは店の奥へと引っ張っていった。

 

 店の奥には四人用の大きなゲーム筐体があり、そこには二人のプレイヤーが座っていた。

 その二人を見て美琴は驚いた。二人は妹達(シスターズ)だったのだ。最大四人用のシューティングゲームを彼女達は二人でプレイしていた。二人分の料金を払って二機でプレイ、というのではなく四人分の料金を払い四機の戦闘機を二人で動かしていた。

 彼女達の言うところによると一人で二人分のプレイをすることをダプルプレイというらしい。最大四人でプレイ可能なこのゲームで二人同時にダブルプレイするのを名付けて双子ダブルプレイと名付けました、と妹達(シスターズ)は両手をゲームスティックの上で気持ち悪いほどに動かしながら言った。

 筐体の周りにギャラリーが出来ていたが、誰も同じ顔をした二人がゲームをやっていることについて話していない。お姉さん、オリジナルという単語が耳に届くところからして、注目されているのはむしろ美琴の方だ。その様子からこの妹達(シスターズ)のゲームセンターでの奇妙なプレイの常連度合いが伺えた。

 

 もしかすると妹達は自分の知らないところで、自分と同じ顔をしながらすんごいことを繰り広げているのではないかと美琴は心配になった。

 余計な噂を流されないようにミサカネットワークの管理者になったほうが良いのでは、と美琴が考えている横でファーストは筐体に座る妹達と何か言葉を交わし、そしてまた美琴の手を取ってゲームセンターの外へと連れ出した。

 

 その後もファーストに連れられるまま街中を歩く。

 

 パン屋に入ったかと思うと、また妹達の一人がいた。店の制服を着ており、どうやらここで働いているらしかった。

 ファーストが彼女に「来れますか」と言うと、彼女は「バイトです」と言ってファーストを睨んだ。

 何のことだろうかと美琴は考えるがファーストは何も買わないまま美琴の手を引いてパン屋を後にした。

 

 そして現在。

 彼女はなぜか銭湯にいた。

 なにがどうなってこうなったのか。番頭が妹達(シスターズ)ということもなく、ファーストはマネーカードで二人分の料金を払い脱衣所へと美琴を押していく。

 学園都市とは思えない昭和の香り漂う銭湯。瓦張りに長煙突という古めかしい外観の建物。中は板張りの床に曇りガラスの壁、衣服をいれる竹製の籠。人間工学の欠片も感じられないマッサージチェア。そこはあまりにも古すぎて一周回って新しいとも思える場所だった。

 

 美琴の困惑をよそに、ファーストはカッターシャツのボタンを外し服を脱ぎ始めた。

 

「……なんで、お風呂?」

 

「家族として仲を深めるなら裸と裸のつきあいが効果的です、とミサカはちびっこハウスでの経験を語ります」

 

「そう……」

 

「ご安心を。子供をお風呂に入れる手順はマスター済みです、とミサカは己の優位性を誇ります」

 

「誰が子供よ誰が」

 

 会話を続ける最中にもファーストは服を脱いでいく。

 動きやすそうな柔らかいデニムパンツをするすると脚から抜く。その姿に、美琴は奇妙な感覚を覚えた。

 自分と全く同じ姿をした人間が目の前にいる。服という違いがなくなりその印象がより強くなっていったのだ。

 

「って、こんなところ来なくても、あの施設に大きなお風呂とかあるんじゃないの?」

 

 ファーストがいるのは孤児院だ。大勢の子供達が入れる大きな浴場があってもおかしくはない。

 

「……一度来てみたかったので」

 

「……そう」

 

 少し恥ずかしそうに言うファーストに美琴はそう短く返して黙る。

 仕方がない、付き合ってやろうと制服に手をかけたところで、彼女はふと周囲からの視線を感じた。

 目立っている。すごい注目を浴びている。

 

 何だろう、と思ったところで彼女は自分の今の状況に気づく。

 全寮制の常盤台中学の制服を着た中学生と、それと全く同じ姿をしたもう一人の少女。確実に自分達が超電磁砲(レールガン)とそのクローンだということが周囲にばれているだろう。

 そして銭湯。住居にお風呂がないような学生達が来る場所。必然的に奨学金の少ない無能力者(レベル0)低能力者(レベル1)達が集まる。

 さらには超電磁砲(レールガン)の学園都市におけるイメージ。なぜだか知らないが美琴は清楚系お嬢様として学園都市のメディアに扱われている。低能力者(レベル1)から超能力者(レベル5)に努力でのし上がった超能力者ドリームの体現者でもある。

 結果。

 動物園にやってきたパンダを見るかのような視線が集まる。

 上気した顔でひそひそと会話する女子学生達。中には携帯電話を取りだして写真を撮ろうとする者までいる。

 

「って待てやー!」

 

 美琴は手近にあった籠を携帯電話の女学生に向けてぶん投げた。

 綺麗な放物線を描いた籠は見事に女学生の頭に命中する。

 

「脱衣所でカメラとか何やってるのっ」

 

「はっ、ご、ごめんなさいー」

 

 女学生はとても嬉しそうな顔をしながら美琴に謝った。

 同じ学生同士だというのにまるで芸能人扱いだ。怒るにも怒れず脱衣籠へと向き直る。

 

「……で、あんたは何やってるの」

 

 美琴はいつのまにか美琴のスカートを外しショーツに手をかけようとしていたファーストを見下ろす。

 

「お姉様は一人でお着替えができないようでしたので、とミサカはちびっこハウスで覚えた脱衣術を駆使します」

 

「だから子供扱いするな!」

 

 

 

 

 

 

 自販機で購入した使い切りのソープで身体を洗い、美琴は青いタイル張り湯船につかり脚を伸ばす。

 背中には富士山の大きな壁画。久しぶりの開放感だ。

 学園の寮では自室に備え付けられた一人用の浴室を使っているため、こう身体を広げることはできない。校内にあるシャワー室にも湯船はない。

 たまには銭湯も良いものだ、と身体の力を抜く。

 そういえばファーストはどこへいっただろうかと湯気でぼやけた視界で周囲を見渡す。

 身体を洗うときは執拗に洗いっこを迫ってきた妹。洗髪を彼女に任せたときは、どこのマッサージ師だと言いたくなるような手業を見せたりした。

 浴場を探すとファーストはすぐ近くに見つかった。

 

「ふぁにゃ~」

 

 彼女は隣の浴槽で謎の鳴き声を出すピンク生物をじっと見つめていた。

 女の子。

 どピンク色の髪をした女の子が浴槽でとろけた顔をしている。

 

「……ファースト、その小学生がどうかしたの?」

 

「いえ……」

 

「せんせーはしょーがくせーじゃありませんよー」

 

 美琴の言葉にピンクの女の子が言葉を返してきた。

 

「やはり月詠小萌先生でしたか、とミサカは納得しました。お姉様、こちらの方はこう見えて発火能力(パイロキネシス)の研究をしている高校教師です、と紹介します」

 

「え、教師って……」

 

 美琴は湯船にふわふわととろけている明らかに自分より年下の子供を凝視する。

 年の頃は十、十一ほどだろうか。もしかするとコンビニで立ち読みしている雑誌に載っていたような飛び級子供教師という者なのかもしれない。

 

「あれーせんせーのことしってるですかー?」

 

「はい、二年B組月詠先生を拝見しました、とミサカはネットワーク越しの記憶を思い出します」

 

「あわっ!? あれを読んだですか!? 恥ずかしいです十年も前に書いた本ですよ!」

 

「十年!?」

 

 小萌先生から告げられた言葉に、美琴は驚愕の声を上げる。

 恥ずかしそうに水面を叩いていた小萌先生は、美琴の様子を見て今度は機嫌悪そうに頬をふくらましはじめる。

 

「むー……これでも先生は車の免許も持ってますし、お酒も煙草もおっけーな大人の女性ですー」

 

「もしかして第七学区七不思議の――」

 

「先生は不老不死研究の実験体でも完全型サイボーグ人間でもないですよっ!」

 

 両手を水面に叩きつけながら小萌先生が主張する。

 だがその姿はどう見ても小学生が癇癪を起こしているようにしか見えなかった。

 そんな小萌先生をファーストは慣れた動きでどうどうとたしなめる。完全に子供扱いであった。

 

「むーむむ……、ところでもしかして貴女達は御坂ちゃんです?」

 

 ファーストにあやされながら小萌先生が言った。

 名字を当てられ美琴がはっとする。

 美琴は考える。そうだ、目の前の先生を七不思議だとか言っている自分も、その七不思議に数えられても不思議ではない存在なのだ。

 同じ姿をした少女が百人超学園都市に存在する。今回の一連の事件だって、数年後には余計な尾ひれが付いて壮絶な都市伝説に変わって人々に語られているかもしれない。

 そんな可能性に、彼女は少し怖くなった。

 だが小萌先生はそんな彼女の心中も知らずにファーストにマッサージを受けながらふにゃふにゃとしている。

 

姉妹達(シスターズ)ちゃん二人一緒で入浴ですか-。姉妹仲むつまじいようで良いですねー」

 

「いえ、ミサカとお姉様は今日が会うのが初めてなのです、とミサカは告白します」

 

「ちょっ……」

 

「? どういうことですー?」

 

 話が見えずに首をひねる小萌先生の横で、美琴は今日までの逃避を急に暴露したファーストにつめよる。

 だが、ファーストは美琴に言った。

 

「月詠小萌先生はこう見えて他校の生徒の人生相談にも乗ってくれる人情派教師です、とミサカは斜め読みの知識を開示します」

 

「…………」

 

「……お姉様がクローンであるミサカ達にどう接して良いのか解らないのは理解しています、と包み隠さず言いました」

 

「えっ……」

 

「ミサカにはその答えが出せませんが、ここは人生の先達に相談してみるのも良いのではないでしょうか」

 

 ファーストの言葉に難しい顔で考え込んだ美琴の横で、小萌先生は一人クエスチョンマークを頭の上に浮かべ浴槽に身を浸していた。

 

 

 

 

 

 

「そうですねー、先生は実際に自分のクローンを目の前にしたことがないので、第三者視点のお話しになりますけど」

 

 美琴とファーストにコーヒー牛乳を渡しながら小萌先生が言う。

 ファーストの説明を聞きながらお風呂から上がった小萌先生は、奢りです、と二人に飲み物を振る舞った。

 古風なガラス瓶に入ったコーヒー牛乳。ここまで来るとこの銭湯は狙って昭和を演出しているとしか美琴には思えなかった。

 

「クローン人間の製造を禁止する法律や、クローン人間に対する権利関連の法律は存在しますが、自分のクローンを目の前にした人間という哲学的命題は未だ有力な言説が唱えられていないのです」

 

 そう良いながら小萌先生はコーヒー牛乳の蓋を開ける。

 それに習って美琴とファーストも瓶から蓋をとった。

 空気が解放される心地よい音が脱衣室に響く。

 

 こう腰に手を当てるのですよ-、という小萌先生の言葉に従って二人は左手を腰に当てる。

 そして瓶を上へと傾け、冷たいコーヒー牛乳を一気に喉の奥へと流し込む。

 瞬く間に瓶の中身が空になった。

 

「ぷはーっ」

 

 火照った身体に甘くそしてほのかな苦みのある冷たい味が染み渡っていく。

 昭和もいいかも。そんなことを美琴は思った。

 小萌先生は瓶をゴミ箱に放り投げ、脱衣所の片隅に置かれた旧式のマッサージチェアに座る。

 料金を入れる場所は見あたらない。銭湯が提供するサービス設備であるらしい。

 エアーバッグに包まれていないむき出しのマッサージパーツが、座高の低い小萌先生の肩口で動き始める。

 本来なら肩ではなく背中をマッサージするために動いてるのでは、と美琴は思ったが口に出すのはやめた。、

 

「昔、学園都市から流出した技術で作られたクローン人間が戦争に使われたことがあるんです。先生が新任教師だったころですね。美琴ちゃんが生まれるよりもっと昔です」

 

 一体何歳なのだろうか、と目の前の珍生物を美琴は見る。

 その年齢不詳の珍生物はマッサージチェアに肩をもみほぐされ気持ちよさそうな顔をしていた。

 

「それはもうすごい泥沼の戦争だったのですが、終戦後使われたクローン兵が大問題になりました。それこそ世界全部を巻きこんでです」

 

 マッサージパーツが小萌先生の頭の上に移動する。

 本来ならば首の後ろをマッサージするための位置だろうか。

 

「結果、作成を禁止する国際法ができ、生き残ったクローンに対する人権宣言が出されたりと世界中てんやわんやだったのですが……、踏むべき段階を無視して学園都市の外に出現してしまったクローン技術は、一つのプロセスを無視してしまいました。それが哲学と思考実験です」

 

 真面目な顔で小萌先生が語る。マッサージチェアは彼女の頭の上で動き続けている。

 

「ある倫理的な問題を抱える技術が確立されようとしたとき、現代の人々はまずそれを使うことでどのような問題が起きるかを細かく考えるのです。思考実験をしたり、討論をしたり。SF小説の題材にして問題提起するなんていうのもあるですね」

 

 しかし、と間を置いて言葉を続ける。

 

「学園都市ではその問題提起過程を無視して次々と新しい技術が確立していきます。技術の発展速度が早すぎて、それがどういう問題を持つのかを考えている時間があまりにも少ないのです。美琴ちゃんが普段から受けてる『開発』だって、学園都市の外に出てしまえば人間の脳をいじくる鬼畜の所業扱いです。昔ロボトミー手術なんていう馬鹿げた精神外科手術がありましたね」

 

 そんなことを言われ、美琴は開発のカリキュラムを思い浮かべる。

 静脈にエスペリンを打ち、首に電極を貼り付けて、イヤホンでリズムを刻めば『開発』された人間のできあがりだ。それは美琴にとって当たり前の情景であったし、殺されるためのクローン人間を作るような非人道的な行為とは思えない。

 

「そんな学園都市から流出し突然世界に登場した人間のクローンは、クローン兵士という衝撃とクローン製造の禁止という結果を生んだのです。世界の哲学者さん達はそれに引っ張られて“現実的”な問題ばかりを考え、もっと小さな、美琴ちゃんが直面しているような個人的なもしものお話しは片隅に追いやられてしまったのです」

 

 自分のクローンが作られ、目の前にあらわれたらどうするか。

 それは、クローン人間を製造すること自体の倫理的問題や、生まれてきたクローン人間を人間として扱うべきかの人権的問題と比べると、現実離れした話なのだ。

 自分のDNAがいつの間にか盗まれ、知らぬ間にクローンが作られ姿を現す。

 まるで小説の中のできごとだ。だが、実際に美琴はそれを体験している。

 

姉妹(シスターズ)ちゃん達の事件は学園都市の外でも報道されているようです。ですので、美琴ちゃんの抱えている問題……、自分のDNAマップが勝手に悪用されたら、という命題に多くの人達が挑むはずです」

 

 マッサージチェアに背中をこねくり回されながら、小萌先生は言う。

 

「先生は問題に直面して正面からそれに向き合おうとする子羊ちゃんは好きです。でも……先生のような大人達が答えを出せていないような問題に無理して挑戦する必要はないと思うのです」

 

 マッサージチェアが止まる。

 小萌先生は、はふうと息を吐くと椅子を降り、脱衣籠の元へと向かう。

 それを美琴とファーストの二人は素足でぺたぺたと歩いて追った。

 

「なので、問題から逃げちゃっても良いのです。ネットワークの管理者にならなければいけないというなら、目を背けちゃいましょう」

 

「目を、背ける……」

 

「です。姉妹(シスターズ)ちゃん達が自分のクローンだっていうことも忘れて、いろんな人達から注目されていることも忘れて、ファーストちゃんを幼い頃生き別れた双子の妹くらいに考えちゃっていいのです」

 

「…………」

 

家族(おねえさま)になってくださいというファーストちゃんのお願いに、答えたのですよね。でしたら、自分はお姉ちゃんなんだってこと以外はぜーんぶぜーんぶ忘れちゃいましょう」

 

 小萌先生が服を籠から出す。

 ピンク色のそれはどこからどう見ても子供服で、美琴の悩みに答える先生のイメージとは酷くミスマッチだった。

 

「ネットワークだって別に美琴ちゃんが背負う必要もありません。能力に脆弱性があるなら先生のような大人の開発者が対処するべきなんです。今の美琴ちゃんは大人のことは信じられないかもしれませんが……」

 

 子供用のショーツを履きながら大人と主張する姿に、美琴は吹き出しそうになった。

 隣のファーストも肩が震えている。

 

「もし美琴ちゃんにオリジナルの責任がどうとか言う人が居たら、いつでも先生に言ってください。駆けつけてお話し合いするですよ」

 

 服を着替え終え、籠の鞄の中から名刺入れを取り出す。

 そして名刺を二枚取り出し、美琴とファーストにそれぞれ手渡した。

 

「これはどうもご丁寧に、とミサカは初めての名刺に胸を高鳴らせます」

 

 名刺には月詠小萌という名前が中央に大きく書かれており、高校名、そして携帯の電話番号が書かれていた。

 

「何か悩み事があったらいつでも電話してくださいです。……美琴ちゃん、先生の話は参考になったですか?」

 

「あ、はい、すごく!」

 

 美琴は名刺を両手に掴んだまま深くお辞儀をする。

 とても珍妙な人物であったが、話す言葉は彼女の心にとても深く響いていた。

 その美琴の答えに小萌先生はにっこりと満面の笑みを浮かべ、鞄を肩にかけた。

 

「それでは、またどこかでお会いしましょう」

 

 そう小萌先生はまだ裸のままの美琴達へと別れの言葉をつげる。

 

「はい、街中でミサカ達の誰かと会ったときはお気軽にお声をおかけください、とミサカネットワークに生中継しながら別れの言葉を告げます」

 

 そんなことしてたですかっ、と叫びながら小萌先生は彼女達の元から去っていく。

 残された美琴とファーストはそこでようやく服を手に取った。

 先ほどまで飛び交っていた幼い声が消え、二人は無言で服を着る。

 そしてブレザーを羽織り首元のリボンをまっすぐ整えたところで、美琴はぽつりと呟いた。

 

「……ミサカネットワーク、接続お試し期間ってあるかな?」

 

 カッターシャツを着たファーストが美琴へ顔を向ける。

 その表情はどことなく嬉しそうに見えた。

 

「はい、今ならキャンペーン期間中でクーリングオフも可です、とミサカは旬の商品をお勧めします」

 

「それと、あんたに拉致されたせいで寮の門限ぎりぎりなんだけど……」

 

「それはご心配なく」

 

 ファーストの言葉に美琴はほっと息をついた。

 常盤台中学の寮は門限にとても厳しい。門限破りをした者はとても大変なことになってしまうのだ。

 一方通行かファーストが何か届け出をしてくれたのだろうか、と美琴は考えた、が。

 

姉妹達(シスターズ)期待のホープ御坂美々がお姉様の代わりに寮内に潜入済みです、とミサカは驚きの事実を報告します」

 

「なにやってんのー!?」

 

「あ、ちなみに強能力者(レベル3)判定を受けたミサカ三名が四月から常盤台中学に編入および入学しますので、とも報告します」

 

「聞いてないわよっ!」

 

「聞かれませんでしたので」

 

 しれっと答えるファーストに美琴は頭を抱えた。

 小萌先生の話は横に置いて、妹達の暴走を抑えるために最終信号になるべきではないかと美琴は本気で悩み始めるのだった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。