黒と白と壊れた心   作:東流

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先日感想をいただいたとき、日間ランキングに載っている事を初めて知り、驚いていた作者です。

その時見たのは50位でした。今は無いです。はい。

でも日間ランキングにこの作品が載って、とても嬉しく思っています。
これからも頑張っていくのでよろしくお願いしますm(__)m


白と蒼の竜姫
白と閃光と白銀と


 あの事件の後リーシャはユウに自分に起きたことの全てを話した。ユウはそれを黙って聞き、納得し、話してくれたリーシャに感謝をした。ユウも自分の事を話そうか迷ったが、

 

「…今はいい。お前の話は私のとは比べられん程の内容だ。おいそれと話していいものでも無いだろう?あの歓迎会の時ほど時間って止まるんだと思ったことは無い。本当にあれは寒気がしたぞ。…お前が迷わず自分から話してくれるときを待つよ。その時は、ルクスやクルルシファー達も居るだろうけどな」

 

 その言葉に安堵した自分がいた。そう思うのは自分の過去を話してくれたリーシャに対して失礼だとわかっているが、それでも容易く話せることでも無い。

 

「…ああ、わかった」

 

 リーシャの強さと自分の弱さを痛感した時だった。

 

 

 

 

 

 そして、今現在。ベルベットの事件から二週間が経ち五月に入っていた。

 

「助けてえええぇぇぇ!!ユウうううぅぅぅ!!」

 

 助けを求める友人を傍目に少し遅い朝食を楽しんでいた。

 熱々のトーストにバターを乗せゆっくりと滑らせていく。バターの香ばしい味と熱々のトーストが合わさり、舌の中で優しく溶けていく。そこにコーヒーの苦味がギュッと喉を通り、いい具合に喉を潤していく。

 

「聞こえてるでしょ!?…って、来た!」

 

 ルクスは後ろからやって来る様々な武器(捕獲用の網)を持った敵(女子生徒)に見つかり、脱兎の如く食堂を駆けていく。窓を開け、不謹慎だよねと思いつつも自分の事を守るためだ仕方ないと言った表情で外へ移る。

 

「…このまま逃げ切らなきゃ…」

 

 ルクスは後ろを振り向き、自分を追い掛けてくる敵(女子生徒)を確認し、その中でこちらに頑張れと口パクしてくる友人を殴ってもいいよねと心の中で思ったのは悪いことでないだろう。

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△

 

 

 

 

「終了時刻です!今、赤い依頼書を手にしている女子生徒が、ルクス君を一週間自由にする権利が手に入ります」

 

 何処からともなく聞こえてくる女子生徒の声。それと同時に「キャアアアアァッ!」という女子生徒特有の可愛らしい悲鳴がユウの耳を突き刺す。

 

「……御愁傷様だな、ルクス」

 

 別に助けに入ってもよかったのだが、何分いらん噂がチョロチョロと耳に入ってくることがしばしばあった。やれユウ×ルクなの、ルク×ユウなの…少しばかり耳が痛いのなんの。年頃の乙女なら『そういう』のを考えても不思議ではないが、それが自分となるとまたこれが複雑な気持ちになる。

 

「…今度埋め合わせでもするか」

 

 ユウは食器をいつもの棚へ直すと、アイリに呼ばれている図書館へと足を進めた。

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△

 

 

 

 

「こっちです。ユウさん」

 

 アイリはユウを図書館の地下へと案内する。

 元々図書館は校舎とは別に建っている。学園の授業で何回か利用したことはあったが、図書館に地下があるとは知らなかった。

 書架の通路をくぐり抜け、突き当たりの扉に辿り着く。

 そして、鍵を使い、扉を開ける。地下へと続く階段を降りると、そこには石造りの広い空間があった。

 

「こんな場所があるなんてな…」

 

 そこには書架だけでなく、鉄製の作業台や昇華用の炉、無数の実験器具が並んでいた。同時に鼻を突く薬品の匂いもする。

 

「この場所の事は秘密でお願いします。一応、ちょっとした研究室でもあるんですから」

 

「わかった。一応ルクスにも知らさせてるんだろ?」

 

「ええ、まぁ…」

 

 何処か不機嫌気味に答えるアイリ。何か嫌なことでもあったのだろうか?

 

「アイリちゃんはルクス君が自分のところに来なかったから焼きもちを妬いてるのよ」

 

 学園長レリィ・アイングラムが奥の小さなテーブルの前に立っていた。レリィの言葉にアイリは顔を真っ赤にし、

 

「ち、違います!何を言ってるんですか!」

 

 必死に弁解するものも、この調子だと図星みたいで説得力が皆無だ。

 

「あー、納得です」

 

「納得しないでください!」

 

 はぁはぁと息を荒げ溜め息をつくアイリ。少しからかいすぎたかなと思うユウとレリィだが、アイリがコホンと咳払いをすると、本題に入ろうとする。

 

「学園長、そういうのは今はいいですから」

 

「それもそうね。じゃあここから先は、他言無用でお願いするわ」

 

 レリィはそういうと、テーブルの上に金属の小箱を載せ、錠に鍵を差し込む。

 

「これは…」

 

 箱に入っていたのは奇妙な形をした、黄金の笛だ。二週間前にユウがベルベットから戴いた物だった。ユウはルクスとアイリを通し、レリィに見てもらおうと渡しておいた物なのだが…。

 

「二週間前にこの都市を襲った元帝国近衛騎士団長、ベルベットが所持していたもの。ユウ君を通してルクス君から渡して貰ったのを解析してる途中よ」

 

 この笛は遺跡(ルイン)から出現する幻獣――幻神獣(アビス)を喚び、操る力を持っている。

 ユウ達はつい先日、それを目の当たりにし、戦った。主に騎士団(シヴァレス)の面々だったが。

 

「一応上に報告はしたのだけれど、こちらの方が遺跡(ルイン)に近いし、ラフィ女王陛下から、ここで解析を進めながら研究してもらうよう言われたのよ」

 

 先日女王に報告した時も同じ様な事を言われた。『笛』の解析はこちらで行うらしい。

 

「本当ならベルベットに話してもらおう考えていたのだけれど…」

 

 そう言いながらレリィとアイリはユウを見る。ユウも当然わかっている。

 ベルベット及び、反乱を起こした帝国の機竜使い百名の死亡。これは本来なら女王だけに報告するつもりだったのだが、手違いと言うより、何者かがユウに変わりベルベット達を殺害していた。この事は女王にも予想外の出来事だったので、このままで通そうという事になった。

 

「十中八九これはベルベットの持ち物じゃない。それはアイリ・アーカディア、お前もわかってるんだろ?」

 

「はい。ちゃんと見るのは初めてですが、ベルベット程度の人物の持ち物だとは到底思えません」

 

 少しきつめの言いぐさにレリィは苦笑いをし、ユウもルクスの妹なのか?と思うほどだった。どうやら二人の性格は真逆みたいだ。ただ、根本的な性格二人ともは一緒のようだが。

 

「『角笛』。確かそう呼ばれてたと思う。それに、これの能力に似た幻神獣(アビス)も発見されている」

 

 えっ!?とレリィとアイリは驚きを隠せないでいた。

 

幻神獣(アビス)自体、わからないことだらけなんだ。遺跡(ルイン)と一緒でな。それこそ、幻神獣(アビス)を操る幻神獣(アビス)がいても不思議じゃない」

 

「そ、それは本当なの?」

 

 もしそれが本当なら幻神獣(アビス)に対する認識を改めなければいけない。基本幻神獣(アビス)は群れでの行動は殆どと言っていいほど無い。単独行動が主になる。しかも知識も獣以下で、考えて行動などもっての他だ。もし仮に幻神獣(アビス)を統率できる幻神獣(アビス)がいたら近隣の国や街などものの数分で壊滅されてしまう。今は遺跡(ルイン)付近、または内部でしか確認されていないため、出てきたとしても一匹、または二匹なので対処は出来ていた。しかし、もしそうなってしまえば…。

 

「統率できる幻神獣(アビス)について詳しいことはまだ…。ですが他には数種類の新種の幻神獣(アビス)が確認されています。それこそ、学会で発表すればまる二日議論できるほどの…」

 

 頭が痛くなってきた。もし、そんなのが地上に出てくれば、危ういところではない。

 

「その情報は確かなんですか?」

 

「まぁ、『見てきた』からな。それに実際そこまで心配することもない」

 

「はい?」

 

 アイリはユウが何を言っているのか理解できなかった。確かにユウの実力なら幻神獣(アビス)の対処は簡単かもしれないが、何も知らない者達からすれば驚異以外の何物でもない。

 

「あいつらは遺跡(ルイン)の深層や、二桁の階層にしか現れない。これは確認済みだ。いつも調査をしている二階層から上にはほぼ現れないと思っていい」

 

「それは…断言できるのですか?」

 

「断言できるかと言われれば悩むところもある。所詮人の子だ。万能じゃない。何か俺の見落としがあるかもしれないし、幻神獣(アビス)の概念を引っくり返す幻神獣(アビス)だっているかもしれない。でも、あいつらに限ってそれはない。『絶対』に」

 

「根拠は?」

 

「『扉の守護』」

 

「…え?」

 

 ユウが言った『扉の守護』という言葉。それがどういった物を示すかわからない。そのままの意味なのか、または別の意味なのか。アイリは更に追求するが、

 

「これ以上は機密事項だからな。言えないんだ」

 

 軽く断られた。聞けばユウは女王陛下の側近で、様々な遺跡(ルイン)に行っていたと言う。しかもあの実力だ、中間層では 終わらないだろう。その証拠が、二桁の階層と『扉の守護』という意味ありげな言葉。ここは大人しく引き下がった方がいいだろうとアイリは素直にこれ以上は聞かなかった。

 結局『角笛』がどういった物なのか深くはわからなかったが、ユウの話はとても興味深いものだとアイリは思った。文官志望なので、先程の話はどれも気になるものばかりだ。

 

 それ以前に何か引っ掛かっている言葉があるのだが、アイリはそれを見つけ、顔を青くする。

 

「…確か…ユウさんは、二桁の階層とか言ってました…よね?」

 

 その言葉にレリィもハッとし、おなじく顔を青ざめる。

 

「うん?…ああ、確か正規の調査は『二階層』までだったけ?鍵が無くて」

 

 驚いた?いやいや、驚いたどころの表現では済まされない。

 アイリは分厚い古文書を捲ると、三階層以降への到達は『鍵』が必要とされている。

 

「まぁ…そこは…強行突破って言うか何て言うか…。それにアティスマータ領の遺跡(ルイン)は何時でも調査出来るから一部を除いて俺は殆どやってないんだよ。俺が担当していたのは危険度がやたら高い遺跡(ルイン)や国外のどの領にも属していない遺跡(ルイン)、それに国境付近に『近づいた』遺跡(ルイン)だけだったからな」

 

「動く遺跡(ルイン)

 

 レリィは思い出したかのようにその名を呟く。

 

「海をさ迷うかのように徘徊する『方舟(アーク)』ね」

 

 一つは海に存在している遺跡(ルイン)――方舟(アーク)。そしてもう一つ確認されているのが、

 

「空をさ迷う遺跡(ルイン)――『空園(リィエル)』」

 

 それぞれの遺跡(ルイン)はどの国も手を出していないものばかりだ。理由は簡単、動くから。常に移動しており、それぞれの遺跡(ルイン)が何処に行くかは天候や風向きなどを調べることによって把握することが出来るが、ときどき遺跡(ルイン)が意思を持っているかのように違うところへ方向を転換することがある。それに加え、海と空というどちらも行きにくい場所にあり、現にユウは海の方舟(アーク)の調査を行っていない。空の方は神装を使えば別段行けない距離ではないので、何回か調査をしたことがある。

 

「それに、鍵はもう入手しているしな」

 

「…え?」

 

 ユウはそれだけ言うと、これ以上は言えないというポーズをとる。

 

「所詮人の子万能ではない…でしたっけ?…充分すぎるほど貴方は万能ですよ」

 

 ジト目で見てくるアイリに苦笑いをしつつ、レリィもその通りねとうんうんと頷いていた。

 

「…それよりも、最近また視線が痛いんですけど…何か知ってますか?」

 

 ユウの言葉にレリィはあー、と頷き、

 

「三年生が帰ってきてるからでしょうね」

 

 王都へ演習に行っていたという三年生。確かに一ヶ月前程に王都で出会っている。

 

「今はまだ様子見と言ったところだけれど、セリスティアさんが帰ってきたらわからないわね」

 

「わからないとは、何が?」

 

「ユウ君とルクス君の編入。貴方は女王陛下から推薦だから余程の事でも無い限り出ていってもらう事は無いでしょうけど…ルクス君はなんて言われるか…」

 

 その言葉にアイリが沈んだような表情を見せる。

 セリスティア・ラルグリス。男嫌いで有名なこの学園最強の機竜使い。今はまだ演習から帰ってきておらず、王都で見つかった逆賊討伐のために何名かの生徒と残っているそうだ。その他の三年生は全員帰ってきており、更に女子生徒の数が増えた。

 

「大丈夫じゃないですか?」

 

「大丈夫とは…?」

 

 怪訝そうな表情でユウを見るレリィ。

 

「いえ…そう思っただけです」

 

 ユウはそれだけを言うとこの場を後にした。

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△

 

 

 

 

「は……はくちゅッ!」

 

 金髪碧眼の少女、セリスティア・ラルグリス。彼女は今逆賊討伐のために逆賊が根城にしている森の上空に佇んでいた。可愛らしいくしゃみをしながら。

 

「どうしたのセリス、風邪?」

 

 そう答えたのはセリスの隣に汎用機竜《ワイバーン》を纏った一人の少女。背はセリスより少し低く、流れる綺麗な白銀色の髪が風に揺れ、いっそう彼女の品格を上げている。

 レン・ヴァルトルート・アルヘイム。

 セリスティアの友人で、騎士団(シヴァレス)の参謀を勤めている。童顔でセリスティアと同じ三年生とは余り思われないが、装甲機竜の使い手として学園で二番目の強さを誇るほどの人物だ。神装機竜の使い手なのだが、ある事情で今は汎用機竜を纏っている。

 

「いえ、大丈夫です。気にしないでください」

 

 セリスティアは気を引き絞めようとするが、度々王都の方を向き集中が出来ていないようだった。

 

「まぁ、王都にいるあの子が気になってしょうがないんだよね」

 

「――ッ!?な、何を言ってるんですかレン!」

 

 顔を真っ赤にし、慌てて否定するセリスティア。レンはセリスティアの男嫌い『ではない』事を知っている数少ない人物で、唯一気が許せる謂わば親友のポジションに立っている。

 

「すぐに今言った言葉の撤回を要求します」

 

 ビシッと指をレンへ向けると、レンはやれやれと言った表情になる。

 

「確かにセリスの考えもわからないとは言わないよ。何て言ったって、全力を出しても勝てるかどうかわからない相手なんだからさ」

 

「そ、それは…」

 

 指を降ろしながら、うつ向くセリスティア。

 

「でもさ、毎日余った時間にあの子を探すのはどうかと思うよ?」

 

 更にレンの発言により顔を赤くするセリスティア。この場にはこの二人しかおらず、堂々と周りを気にすることなく喋れる。

 

「それに、あの子セリスに会った日から何処かに行ったみたいだったし」

 

「……はい!?」

 

 いつもの凛とした口調ではなく、素が出てしまったセリスティア。レンはこの状況を楽しんでいるのか、悪い笑みを浮かべながらセリスティアに話し掛ける。

 

「いや、偶然あの子が出ていくのを見たから。…それにしても、いない筈の子を必死になって探すセリス初々しくて可愛かったなあ」

 

 その言葉にセリスティアは呆然とし、一秒後には必殺の槍を構えていた。

 

「逆賊の前にレン、貴方にしっかりとお灸を据えないといけないようですね」

 

 笑顔だが、目が笑っていなかった。少し涙を溜めており、やりすぎたかとレンは少しばかり後悔をしている。

 

「でも、こっちの身にもなってよね?セリスの男嫌いは学園中どころか、新王国内でも有名だから…フォローが大変大変。特にあの子を探してる時なんかが一番疲れた」

 

「レンが早くから言っていればそうはならなかった筈です」

 

 今のところレンが少し優勢のようだ。流石に親友の扱い方は熟知している。

 

「まぁセリス的にはドストライクだったんじゃないの?」

 

「…何がですか」

 

「自分より背が高くて、端正な顔立ちだけど少し童顔っぽくて何より強い。後は…多分年下だから全部セリスに当てはまってるじゃない……好みが」

 

 瞬間槍が振るわれ、レンはそれを避ける。

 

「後はあの子…笑ったら多分可愛いだろうから…それも当てはまるわね」

 

 悠々とレンはセリスティアの槍を避けていく。まぁ本気では無いにしろ、神装機竜の攻撃を避けているところから、彼女の腕前も相当なものだと確認できる。

 

「それに年下っぽいから、自分好みに育てることも出来るし…。

 

 

 逆にあの子好みにされるのも――」

 

「貴方には本格的な『教育』が必要のようですね」

 

 瞬間、後ろから相当な怒気を含めた声が聞こえてきた。後ろを振り向くと、セリスティアの目からハイライトが綺麗に消えている。

 しかも懇切丁寧に『神装』まで使って。

 

「(……やり過ぎたか)」

 

 後悔しても後の祭り。何時もはここまでとはいかないが、どうにも今回は熱が入りすぎたみたいだ。

 

 二人は数分逆賊討伐の事を忘れて、戦いあっていたが、それを遠くから見ていた逆賊達が白旗を上げて出てきたのは後に有名な話になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




誤字脱字、おかしな所がありましたらご指摘のほどよろしくお願いしますm(__)m

それでは!またm(__)m
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