黒と白と壊れた心   作:東流

14 / 24
どうも一週間ぶりの投稿です。ここ一週間忙しく、中々投稿する暇が無かったのですが、ようやく投稿することが出来ました。

お話も原作の二巻と入っていきます。前巻はリーシャ巻だったので、今回からはクルルシファー巻となっています。大体最後の方まで流れは決まっているので、早く投稿できると思いますが、二月に入るまで忙しいのは変わらないので、次出せるのかは未定となると思います。もしかしたら数日で出せるかもしれません。なるべく早く投稿したいと思っておりますので、ご理解の程よろしくお願いします。

アニメがついに始まりましたね。OPに夜架がいたので結構進むのかな?と思っています。これからどうなるか楽しみです。

それでは本編へどうぞ!


蒼の願い

「……なにしてんだ……ルクス?」

 

 翌日の昼休み。

 ユウはルクスの食事光景に圧倒されていた。ルクスとその隣に座っている―フィルフィ・アイングラム。この学園の学園長を勤めているレリィ・アイングラムの妹で、ルクスの幼馴染み。ルクスとフィルフィは並んで食事をしており、ときどきルクスの方からフィルフィへの口へと、食べ物が行き来している。どうやらルクスがフィルフィに食べさせてあげているようだ。

 リーシャから話を聞くと、ルクスを一週間自由にする権利を手に入れたのはフィルフィらしい。どういった依頼を聞いているのかはわからないが、食堂のあちこちから、ルクス達へと視線が突き刺さっている。中には涙を流すものもいれば、その手があるなと頷いている子もいる。この多くは一年生と二年生で、三年生からは不快な目で見るものもいれば、羨ましそうに見ている生徒達もいた。その『不快な』目はユウにも届いており、嫌になることも時々あり、内心めんどくさいな~と思っているユウである。

 

「…まぁ、ルクスも嫌々にしてる訳じゃ無さそうだし…と言うか寧ろ嬉しそうだな…」

 

 コーヒーを口に入れると苦味が口の中に広がっていく。この苦味が中々癖になり、殆ど毎日と言っていいほどコーヒーを飲んでいる。が、しかし、今日に限ってはコーヒーの売れ筋がとんでもないほどに良くて、何時も三回ほどおかわりをするのだが、今日は一回もしていない。理由は簡単。ルクス達の食事風景を見てしまった女子生徒達の殆どがコーヒーを飲んでいる、しかもブラックで。仕方無いと言えば仕方無いのだが…。

 残り少ないコーヒーを楽しみながら、午後の授業なんだっけ?と考えていると、クルルシファーが此方に近づいてくる。

 

「…ユウ君少しいいかしら?」

 

「クルルシファーか。どうした?」

 

 クルルシファーはいつも通りに平静を装っているようだが、少しばかり表情が優れていない。

 

「いえ…大した話では無いのだけれど……いや、ごめんなさい出直すわ…」

 

 クルルシファーは何かに対して焦っているような、そんな気がした。

 ユウは何だったのだろうか?と不思議に思うが、こっそり影から何やら見たこともない機械を持ったレリィがその機械を使って何かをしていた為、意識がそちらへ向かう。時折カシャッ、という音が聞こえてきて、側を通る女子生徒達が驚いている。

 

「何してんだ、あの人…?」

 

 気になるは気になるが、声を掛けたら大変な事になりそうなので、ユウも早々とこの食堂から教室へと向かった。

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△

 

 

 

 

「ルクスと天然娘め…昼休みからイチャイチャするとは…」

 

 リーシャは食堂でシャリス達三和音(トライアイド)の三人とアイリで食事をしていた。

 その光景をシャリスは感心した様子で、ティルファーは少し羨ましそうに、アイリは兄さんめ…と嫉妬を込めた瞳でそれぞれ見ている。後の二人はと言うと…。

 

「(…いや、待てよ…?これってユウにも出来る事じゃないのか?前例がああやってあるのだ…。それにユウには奉仕の仕事もさせなければならない…そうしたら…)」

 

「(……ルクスさん、大胆ですね。アイリが泣いてますよ…。それにしても、ユウさんはああやった事をするのでしょうか?もしそうなったら…)」

 

 リーシャとノクトの二人は、ユウに御飯を食べさせてもらってる事を想像し、

 

「(死ぬな。ある意味悶え苦しむな)」

 

「(……余りの幸福さに死んでしまいそうです)」

 

 頬を赤らめ少しばかり想像の世界に浸っていた。

 それに気づいた三人は溜め息をつくとまたか、と頭を抱える。シャリスとティルファーも別段そういうわけではないが、ユウ自身顔立ちが端正なので、少しの仕草にドキッとはしてしまう。またルクスとは違う魅力を持っているので、ファンが多い。特に一年生辺りに。

 アイリは自分の兄と規格外なユウに、溜め息しかつけないほど、頭を悩まされていた。

 

「…所であの人は一体何をしているんですか?」

 

 いち早くこの状況を変えようと、アイリは物陰に隠れている学園長レリィ・アイングラムを見つける。手には見慣れない機械を持って何かをしていた。

 レンズの様なものが見え、その方向は自分の兄ルクスと、その幼馴染みフィルフィを向いている。

 

「学園長か…。何やら伝で異国から新しく入手した物らしいな。確か『カメラ』だったか?」

 

 その問いに先程までお花畑にいたリーシャが答える。

 帰ってくるの早っ!と三人は驚きつつも、意識はそのカメラといった機械に集中している。

 

「…カメラとは、なんですか?リーシャ様」

 

 ティルファーが質問するとリーシャはカメラについて説明する。

 

「…私も聞いただけだが、あれは周りの風景や人物を『写真』といった紙に写すことが出来るらしく、それを保存出来るらしい」

 

「ということは学園長は今、自分の妹とルクス君の食事風景をカメラで撮っていると…」

 

「ああ、そうみたいだな」

 

 ちらりと一瞥。すると、

 

「…いいわよいいわよ、その調子よフィルフィ。そのままくっつきなさい。…って、照れてるフィルフィも可愛いわね…。これはこれで撮っとかなくちゃ。それにしてもルクス君、もっと行きなさいよ男なの?そのまま押し倒すとか、あ、ここじゃ無理か。よし、じゃあ今夜はしっかりセッティングしないといけないわね。でも、初日からはちょっと早すぎかしら?…じゃあ二日三日、しっかり時間を掛けて…。おっとこれは見逃せないシーンだわ――」

 

 いつの間にかノクトも帰ってきており、五人は物陰で自分の妹とルクスを撮りながらあーだこーだ言っているレリィを見て、

 

「……あれが本当に学園長ですか…。見なかったことにしましょう」

 

 アイリの一言にただただ頷く四人だった。

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△

 

 

 

 

 午後の授業は、実戦形式の演習だった。

 校舎や寮から離れた演習場へ向かい装衣に着替えて機竜を纏う。

 

「それでは、今日は二週間後に行われる校内選抜戦へ向けての、実技訓練を中心に執り行う。

 

 クラスの全員が整列すると、ライグリィ教官の凛とした声が、広い演習場に響いた。古代兵器と技術の眠る遺跡(ルイン)は、誰でも気軽に調査できる場所ではない。遺跡(ルイン)を発掘する権利と機会は、数年前国家間の協定により形式化され、国を挙げての対抗戦の結果が、遺跡(ルイン)調査権に反映される。

 端的に言えば、大会でより良い結果を残した国が、より多い調査権を獲得出来るのだ。

 ユウの場合は元々調査権がある遺跡(ルイン)や危険すぎて何処も手がつけられないと言った遺跡(ルイン)の調査を行っていたので、協定には違反していない。

 今日はその実戦向けての訓練をする予定だったらしいのだが――。

 

「おい貴様!そんなぬるい動きじゃ、戦場じゃ的にしかならねえぞッ!?ふざけてるのか?あぁ!?」

 

「どうした!?もうへばったのか?その程度で機竜使いが務まるとでも思っているのか!」

 

「甘えてるんじゃねぇぞ!人に教わるな!自分で考えてやり直せ!」

 

 開始から数十分。この演習場に『男達』の厳つい声が響き渡る。王都から来た臨時講師らしいが、最初の話によると、この訪問は元々予定に入っていなかったものだそうだ。

 訓練最初は、機竜の基本的な操作や動作、障壁の展開、飛翔または加速、などの基本技術の練習、そして武装による射撃や近接格闘に発展していくが、

 

「訓練て言うより、最早あいつらの自己満足の為のものになってるな」

 

 ユウは今の状況を見ながら悪態を吐く。

 今はまだ機竜を纏っておらず、演習の途中で数人のグループを作り、それぞれで訓練を行っている。ユウは今、小休止を取っている最中だ。装甲機竜の連続使用は身体に負担が掛かりすぎるので、二回ほど各グループで休みを取っている。

 それに神装機竜の使用者は汎用機竜での訓練には色々と性能面でも違いが生じるので、基本的な訓練以外は各自の訓練になっていた。神装機竜が事情で使えない時には学園から練習機を借りることも出来るが、そもそも神装機竜と汎用機竜では性能に差があるので、殆ど皆無と言っていい。例外としてルクスや自分で装甲機竜を製作して使用しているリーシャなんかは話は別だが。

 

「それにしても…。本当只の八つ当たりだな…あれ」

 

 ユウの視線の先には訓練と称して女子生徒に対し只の憂さ晴らしをしている大の大人が三人見受けられる。

 

「国の思想はそう簡単には変わらない…か」

 

 そう呟くと、黒の機攻殻剣《レスティア》と白の機攻殻剣《エスト》が反応をした。

 

『あー、確かあの人達…先日セリスティア・ラルグリスにやられてた人達じゃない?』

 

 レスティアが思い出したかのように三人の男軍人達を見る。エストも悩みながら、彼らを見ているが、覚えていないようだ。

 

『……いたっけ?』

 

『ユウに同感です。あんな人達、いました?』

 

 ユウとエストは二人でいたっけ?と呟きながら、レスティアに答えるが、レスティアは溜め息を吐きながら頭を抱える…ようなポーズをしているだろう。

 

『…そうね…。ユウとエストは興味が無い人にはとことん興味がないですもんね…』

 

 レスティアに言われ、先日の事を思い出そうとするが、

 

『…知らねぇ』

 

 覚えていないようだ。

 

『まぁ、あんな小者共どうでもいいんだけど…』

 

 そう話が終わりかけると、一人の生真面目そうな女子生徒が男達に腹をたてたのか、抗議をしている。どうやら、授業で習っていない技の不意打ちや、倒れている生徒へ向かっての追撃など、訓練から逸脱しているものだ、そう言いたいらしい。先程の訓練で倒れている大人しそうな女子生徒が不安そうにそのやり取りを見ている。自分が引き金となってしまって罪悪感を感じているのか、生真面目そうな女子生徒を止めようとしていた。それでも収まらず、機竜勝負にまで持ち上がる。

 ライグリィ教官が慌てて止めるがそんなものを知りもせず男性軍人と《ワイアーム》を纏っている生真面目そうな女子生徒の勝負が行われる。

 女子生徒は一直線にブレードで斬りかかるが、

 

「はっ!そんなものか?」

 

「えっ……!?」

 

 《ワイアーム》のブレードで斬りかかった瞬間、男性軍人はうまく身を引いて間合いを取り、振り切った装甲の手首を狙った。

 

「…まぁ、当然の結果だよな」

 

 いくら男性より女性の方が装甲機竜の適性値が高くても、一般の女子生徒が男性軍人に勝つのはほぼ不可能だ。

 理由は大きく分けて三つほどある。

 一つは戦闘経験と場数の違い。訓練と実戦では大きくその意味はかけ離れる。男性軍人の方は幻神獣(アビス)との戦闘経験が全く無いという訳ではない。寧ろ常に戦闘に参加している。それだけ命の危険はあるものも、得られる物はそれだけの価値があるというものだ。

 二つ目は純粋に身体の問題。一見装甲機竜の勝負には関係が無さそうに見えるが、これが大きな差に繋がる。いくら装甲機竜の性能が良くても、操縦者がダメなら装甲機竜を上手く扱えないのは当然だ。確かにこの学園でもしっかりとした運動は取っているが、現役軍人には軽く劣る。身体の鍛え方がそもそも違いすぎるのだ。神装機竜と汎用機竜の勝負なら殆ど性能差で神装機竜が軽く勝ってしまう。でも、汎用機竜同士での戦闘となれば場数は勿論、操縦者自身の身体と精神が勝負の分け目となる。

 そして、三つ目。装甲機竜を理解、もしくは熟知しているか。二つ目の言う通りなら、身体の違いすぎる男性と女性では数値では女性が勝っていても、男性に勝てないのでは?となってくるが、ここで更に違いを分けるのが、自身の装甲機竜の性能を理解、熟知しているか、となってくる。例えば、この方向に攻撃するのだったら、次の動きはこうするとか、防ぎ方はこうしたほうがいいとか、謂わば自分の動きを自分がしっかりと理解することが大切になってくる。そうなれば、相手の動きがどう動くか予想もしやすいし、戦略も立てやすい。

 それに実際違いを挙げれば数えきれない程出てくる。この三つ以外にも、戦術、戦略、戦場の動き方、フェイントの出し入れ、自身の気持ちの持ち方など…。

 だが、決して勝てないとも言えないが、それこそ血の滲むような訓練が必要になってくるだろう。

 神装機竜の使い手は汎用機竜を扱う以上に自分自身の訓練も怠っていない。そうしないと逆に喰われて死ぬ可能性が出てくるからだ。だから神装機竜の使い手は純粋に強い。

 

 だから――。

 

「ルクスには勝てないよ」

 

 男性軍人三人がルクス一人に翻弄されていた。しかもルクスには重りの枷付きのハンデまでついている。こうなってくれば男性軍人の面目は丸潰れだ。

 先程、ブレードを飛ばされた一人の女子生徒と男性軍人の間に割って入り、自分が変わりに勝負を引き受ける、ということなり、最終的にはルクス対男性軍人三人の勝負になった。端から見ても、圧倒的な不利の状況でさえ、ルクスは涼しげに男性軍人達と戦っている。だが、急にルクス達の動きが止まった。何やら竜声を使い話をしているようだが…。

 

「……呆れを越えてある意味尊敬するよあいつら…」

 

 ユウは一人呟き、男性軍人達から一直線に見えている観客席へと急いだ。構えた銃口に動こうとしないルクス。

 悪い予感は的中するものだと、染々思う。

 多分、あの銃口はルクスを狙っているものではなく、

 

 ――観客席にいる女子生徒を狙ったものだ。

 

 別に確実に狙ってくるという保証は無いが、向かって損は無いだろう。

 

 そして――。

 

 ユウの思った通り、銃口から弾丸が放たれた。その弾丸はルクスに当たらず、観客席へと向かっていき、障壁を広く展開していたティルファーに――。

 

 当たらなかった。

 

「………は?」

 

 弾丸を放った男性軍人が間の抜けた声を漏らす。それ同様に他の男性軍人も驚いた様子でユウを見ていた。その状況にルクスや観客席にいた他の女子生徒、それに狙われていたなんて全く分からなかったティルファーは一同に首を傾げる。

 

「…何でユウっち機竜を展開してるの?」

 

 障壁を張っていたティルファーが疑問を抱きユウに尋ねた。

 《レスティア》を纏ったユウが右手を握り締めてティルファーの前に立っていた。

 

「いや、ちょっと…ね」

 

 右手を開くと静寂したこの演習場にカランと弾丸が落ちる音が響く。その事に男性軍人を除いた全ての人間が驚きを隠せないでいた。

 

「……手元が狂ったなんて言い訳が通用すると思ったら大間違いだぞ?」

 

「…と、と…特尉殿…な、何故ここに?」

 

 男性軍人の一人が驚きながら自分達より上の存在であるユウに向かって疑問を問いただす。

 

「特尉…?……あー、お前らそういやガルジスの所にいた奴等だったな」

 

 一人の男性軍人がユウの事を『特尉殿』と言ったので、ユウはあの時の奴等かと、思い出すように男性軍人三人を見る。

 

「…まぁ、どうでもいいけど…。それより、これは何の真似だ?」

 

 《レスティア》を解除し、演習場の中心へと近づく。観客席を狙った男性軍人は装甲機竜を纏っていながらも、ユウの圧力により後ずさる。他の男性軍人達も同じ気持ちのようだ。

 

「お前らは臨時と言えど『講師』なんだろ?現役の軍人、しかも大の大人が聞いて呆れるぞ」

 

 ユウの言葉に何も言えなくなる男性軍人達。

 

「それに、訓練と言えば訓練なんだろうが……周りから見ればただの、憂さ晴らし、自分達の自己満足の為のものにしか見えない」

 

「そ、それは…」

 

「お前らの仕事は何だ?日頃の不満や鬱憤を晴らしに来ただけか?学生相手に?笑わせんなよ」

 

 少しばかり強めの口調で男性軍人達に言葉をぶつける。

 

「……しかも最後のあれ。観客席への攻撃…」

 

 撃った男性軍人は必死になって弁解しようとするが、

 

「銃も撃ったこと無い、機竜も動かしたことが無い素人がやってしまったならまだ分かる。それでも、目の前の敵から観客席に銃弾が行くなんて事は殆どあり得ない。それにお前らは銃の訓練は徹底的にやってる筈だ。素人じゃない。そんな奴が何で目の前の敵に銃弾一つ当てられないんだよ?」

 

「…て、手元が狂ってしまって…」

 

「どうやって手元が狂うんだよ。ルクスは近くにいたけど、お前に触ってないぞ。お前自身もその場から動いていない。もう一度聞くぞ?どうやって手元が狂ったんだ?」

 

 男性軍人は顔を真っ青にし、滴る汗が止まらない。他の男性軍人も同じ様に顔を真っ青にしている。

 

「…あなた達臨時教官の方々には、後で話を聞かせてもらおう。新王国の軍人である人間が、観客席の生徒をわざと狙ったというのは大きな問題だ」

 

 ライグリィ教官の言葉が、男性軍人三人に突き刺さる。男性軍人達はユウを怒らせてしまったという恐怖と、自分達が没落王子である筈のルクスにハンデありの勝負で逆にボロボロにされてしまったという羞恥で、顔が見るも悲惨な状態になりながら演習場を出ていく。

 男性軍人達が出ていった後には少なからずの歓声が演習場に響き渡る。ルクスは安堵の声を、ユウは呆れた声をそれぞれ演習場中心で溜め息を吐きながら呟く。

 

「ありがとう、助かったよユウ」

 

「こっちこそ悪かった。ああいう奴等が居ることは分かってたけど、まさかここまでするとは思ってなかったからな」

 

  ルクスも機竜を解除し、機攻殻剣を鞘に納めた。

 すると、ライグリィ教官がこちらへとやって来る。

 

「アーカディアに雨宮、今回は助かった礼を言う」

 

 ライグリィ教官がお礼を言いながら頭を下げてきた。だが――。

 

「だからと言って余り無茶はしてくれるなよ」

 

 それだけを言うとライグリィ教官は演習場を出ていく。男性軍人の元に向かったのだろうか、他の教官数名を呼び集めていた。

 

「あ、あの…」

 

「うん?なに、かな?」

 

 ルクスの元に先程男性軍人と勝負をしていた《ワイアーム》を纏っている女子生徒が機竜を解除し寄ってくる。

 

「さっきはありがとうございました」

 

 バッと頭を下げる女子生徒を見てルクスも「どういたしまして」と答える。

 

「僕自身もああいったのは許せなかったから」

 

 男性軍人達が居なくなった事で空気が軽くなったのか、観客席や他の場所で訓練をしていた女子生徒達も中央へと集まってくる。

 

「いやー、ユウっちさっきはありがとね。狙われてるなんて全然分からなかったよ」

 

 ティルファーが笑みを浮かべながらお礼を言う。その事にルクスも含めた全員がユウの方へと視線を向ける。

 

「そう言えばユウは何でわかったの?観客席が狙われるって」

 

「あー、勘…かな?」

 

「勘!?」

 

「なんかあいつらが含みのある笑い浮かべてたし、何より不思議に思ったのはルクスとあいつらの勝負にも関わらずルクスに竜声を使っていたことだ」

 

 ユウの言葉に驚きを隠せないルクスと女子生徒達。

 

「何で竜声を使ってたって…」

 

「《レスティア》の能力。機竜を展開してなくても近くの竜声位なら少しだけど拾えるんだよ」

 

 改めて出鱈目な神装機竜とそれを扱えるユウに身震いをするルクス。ユウならもしかしたら――と思うルクスだが、いきなり方向は別の方へと向かう。

 

「でも、あいつらの言っていることも分からない訳でもないんだよな」

 

「どう言うこと?」

 

「『ふらふら動くな戦場の的になるぞ』、『動きが甘い』、『自分で考えてもう一度やり直せ』。実際にあいつらが言っていたことは理にかなっている訳だ」

 

 その言葉にほぼ大半の生徒が俯く。その事は自分達でも分かっているつもりなんだろう。

 

「だからと言ってあいつらを助けてるつもりは無いぞ。それはお前らを想っての訓練だったらの話だ。あんなの自分達が満足するためだけのものでしかないからな。訓練とはほど遠い」

 

「ちゃんとユウも皆の事考えてるんだね」

 

「どういう意味だよそれ」

 

 暗い状況から一転賑やかな楽しい状況へと変わる。それと同時に何人かの女子生徒がルクスを取り囲む。

 

「ルクス君、私達に放課後、機竜の練習してくれるんでしょ?」

 

「是非ともご指導をしていただきたいものですわ」

 

「よろしく、先生~」

 

「え、えーっと……」

 

 先程のルクスが男性軍人に言った言葉。『僕が教える約束をしていますから結構です』…と。ルクスなりにはあの場を切り抜ける言葉の綾だったのだろうが…。

 ルクスは助けを求める視線をユウに向けるが、

 

「(がんばれ)」

 

 と口パクで返されるだけだった。

 ルクスは溜め息を吐きながら頭を抱える。どうしてこうなっちゃうんだろう…と。

 すると、先程の《ワイアーム》を纏っていた女子生徒が疑問を呟く。

 

「でも、何でさっき私負けちゃったんだろう。…訓練はしっかりしてたし、適性だって私達の方が…」

 

 それにルクスが反応する。

 

「確かに適性じゃ女性の方が高いけど、汎用機竜の場合は性能が同じ分、適性だけじゃ勝負は分からなくなるんだ」

 

「えっ!?」

 

 ルクスの言葉に周りの女子生徒達のざわめきが強くなる。

 

「一番違ってくるのが命を懸けた実戦経験の差。向こうは仮にも現役の軍人でしょ?幻神獣(アビス)とだって何度か戦ってると思うし、何より身体の鍛え方が違う。機竜の性能も大事だけど、それを扱える身体を作らないといけない」

 

 ルクスの説明を一字一句聞き逃すまいと真剣に聞いている女子生徒達。確かにその通りだとユウもルクスの言葉を聞いている。

 

「それじゃあ体格が劣っていたら勝てないの?ってなるけど、そこを補うのが自分が扱う機竜をどれだけ理解しているか、どれだけ操作できるかって事になってくる。ようは操作技術の問題。けど、経験の差だけは訓練じゃ絶対に追い越せないから、今皆がすることはしっかりとした身体作りと装甲機竜の操作技術、この二点に絞られてくるんだ。適性が男性より高い分、操作などは幾分楽になると思うけどね」

 

「じゃあ私が負けたのって…」

 

「単純に経験の差と操作技術の差。もっと大雑把に言えば向こうが強かった、というだけ…になるのかな?」

 

 その言葉にズーンと言う重りでも背負ったかのように肩を落とす女子生徒。だが、

 

「だったら尚更教えてあげなくちゃな先生」

 

「ユ、ユウ!?」

 

 これを機にドッとルクスの元へ集まる女子生徒達。ルクスは先程と同じ様にユウに助けを求めるが、もうこの場からユウは姿を消していた。

 ルクスはやっぱり一発殴った方がいいんじゃないんだろうか?と心の中で呟く。

 今日の授業はこれで終了なので、このまま放課後へと突入する。

 ルクスの特別授業が演習場で受けられると言う噂を耳にした他のクラスの生徒達も放課後急いで演習場へ向かったのは言うまでもない事だろう。

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△

 

 

 

 

 その日の夜、ユウは一人屋上で風に当たっていた。レスティアとエストは珍しくユウの自室で二人揃って眠っている。

 レスティアとエストも常に機攻殻剣になっている訳ではない。時折人間に戻って、しっかりとした休みが必要になる。

 王都にいた頃は女王の計らいで、常にユウ達三人だけの空間を作ってもらっていたので、機攻殻剣になるのは遺跡(ルイン)調査や大規模な訓練の時だけだった。だが、この学園に来たことで状況が一気に変わる。殆ど二人は機攻殻剣になっていないといけない。機攻殻剣の抜剣は校則上禁止だが、帯剣することを義務付けられている。授業や訓練で使うことは勿論、異常事態の時のために機攻殻剣が無かったら大変な事になるのは間違いない。それにユウは騎士団(シヴァレス)のメンバーになっているため、校内の見回りなどで機攻殻剣を持っていないといけなくなる。まぁ一番の懸念は実体化してレスティアとエストが学園を見て回るかもしれない、と言う所にあった。二人とも好奇心は旺盛な方なので、もし万が一見つかってしまったら大変以上にややこしい事になるのは目に見えている。そうなれば必然的に機攻殻剣にしないといけない。

 今日はその疲れが一気に来たのだろうか、ユウが自室に戻ってきたときから二人は実体化し、ベッドに潜り込んだ。

 

「…丁度明日は休みだし、あのまま寝かせるか」

 

 夜の気温は冷え込むが、今の時期そう寒いと言うほどでもない。寧ろユウにとっては丁度良い位だった。

 背伸びをし今日の出来事を思い出す。

 

「…ルクスには悪いことしたかな…」

 

 あの後ルクスがユウの事を見つけ、

 

『…辛かった』

 

 と一言。

 本当にマジで辛そうにしてたので流石にからかいすぎたなと反省している。まぁ後悔はしていないが。

 

「ルクスも実際教え方は上手いしな。案外先生とかに向いているのかね」

 

 まるでユウは誰かに話しているかのように、そして、後ろを振り向く。

 

「どう思う?クルルシファー」

 

 ビクリと建物から覗く影が一瞬動いた様な気がした。そんな影も隠れ続けられないと悟ったのかコツリと言う足音を立て建物から出てくる。

 

「…どうして分かったのかしら?」

 

 蒼髪蒼眼の少女、クルルシファー・エインフォルクが姿を現す。

 ユウは肩を竦めながらクルルシファーを見据える。

 

「尾行するのが雑すぎる。いつものお前ならそんな初歩的なミスしないと思うんだけどな」

 

 クルルシファーはクスリと笑みを浮かべると、参ったわねと呟く。

 最近ここ数日のクルルシファーの様子が少しおかしかった。何か悩んでいる様子で心ここに有らず、そんな感じがするのだ。クルルシファーは周りには気付かせまいと気を配っていたようだが、

 

「貴方にはバレバレだったと言うことね」

 

「ルクスもリーシャも気づいてたぞ」

 

 そう言うとクルルシファーは少し驚いた様子で目を見開く。

 

「…ルクス君は兎も角、リーズシャルテさんにまで気づかれてたなんて、ちょっと私も詰めが甘かったかしら?」

 

 それリーシャに失礼じゃね?と思いつつも、ユウはクルルシファーが何故悩んでいるのか問いただす。

 

「ユウ君、改めて私の事でちょっと話があるのだけれど…」

 

 どうやら相当難しい問題のようだ。こう言うのはルクスに頼めば?と思いながら今朝のフィルフィの事を思い出し、『無理か』と自分の中で答えを出す。今朝と言えばクルルシファーが食堂で何やら話をしたがってはいたそうだったが…。

 クルルシファーが決意を決めたのかユウを見据え、

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ユウ君、今から数日間、私の恋人になってくれないかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうだっでしょうか?

今回の話で少し自分なりの解釈をいれましたので独自設定と独自解釈のタグを追加しました。穴だらけかもしれませんが…。
確かに強い武器をゲットしても使用者が駄目だったら宝の持ち腐れですからね。この辺りは自分なりにもうちょっと深めていきたいと思っています。

誤字脱字やおかしいところがありましたらご指摘お願いしますm(__)m

それではまた読んでくれたら嬉しいです。

ではm(__)m

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。