「何であんたがここにいるんだ?」
本来ここに居る筈の無い人物、バルゼリッド・クロイツァー。
彼が何故今回の
「何、今回の
ニヤリと口角を上げながらクルルシファーに視線を向けるバルゼリッド。
どうやらクルルシファーが参加する情報を何処かで手に入れ、最初の二つを理由に勝手について来たのだろうとユウは予測した。
それよりも、バルゼリッドの放った『我が未来の妻』に反応し、
「その未来のなんとかと言うのも、止めてもらえるかしら?私とあなたは赤の他人なのよ?」
クルルシファーは素っ気ない口調で答える。
バルゼリッドは予想通りなのか、肩を揺らし笑みを溢すと、次はユウの方に近づいていく。
「貴様の実力を間近で見られるのが楽しみだ、『女王の番犬』。オレを落胆させてくれるなよ?」
一方的に自分の言いたい事だけを言うとバルゼリッドはそのままユウから離れていく。
近くで見ていたルクスはユウに近づき、
「あの人がバルゼリッド・クロイツァー。……正直苦手だな、ああいう人は」
ユウも同感なのか、ルクスの言葉にそうだな、と答える。
「……でも『女王の番犬』って、ユウの事……だよね?また凄い名前だな……」
「ルクスの『無敗の最弱』の方が凄いと思うけどな。俺でも知ってたし」
「悪い方向なら……ね。しかしあの人がクルルシファーさんの婚約相手か。何だか思ったよりも大変そうだね?」
「ルクス君、婚約相手と言うのは止めてもらえる?ただの他人よ。他人」
クルルシファーはバルゼリッドの婚約相手と思われるのが嫌なのか、物凄い剣幕でルクスに迫る。
「ご、ごめん……クルルシファーさん」
「……ふぅ。正直あの人がここにいるのは予想外だったわ。腐っても四大貴族、権力なら誰にも負けないかしら?」
少し嫌みを込めた事を言うクルルシファー。いつもの彼女ならこう言った発言は控えると思うのだが、何やら焦っているようにも感じられる。
「どうしたんだ?クルルシファー。いつものお前らしくないけど……」
「確かに……クルルシファーさんが今回の作戦に参加するのも驚いたし、何かあるの?」
疑問に思ったことを問い掛けるユウとルクス。クルルシファーはそんな二人の言葉を自嘲気味に笑い、答える。
「……私の目的を果たせる数少ないチャンスの一つなの。……今回の作戦で……」
何やら思い耽ったような表情をし、拳を握り締めるクルルシファー。ユウとルクスはふたりで顔を見合わせると、今回の作戦の部隊長であるリーシャから全体に声が掛かる。
「……行くか」
リーシャが指揮を執る作戦が、今開始された。
△▼△▼△▼△
機竜を纏い、出発してから十数分後。
城塞都市から二十㎞ほど離れた新王国領の
荒野の地面から生えている、巨大な白亜の立方体。その周りには木々が生い茂るように森林が広がっている。
第六遺跡――『
そう呼ばれるその建物は、無機質な威容を備えていた。
ユウ自身も『
「あれが『
《レスティア》を纏い、『
『目標が確認できたぞ。皆、戦闘態勢に入れ!』
今回の部隊長を務めるリーシャが、竜声を介して警戒を促す。
十余年前から出現した
外海に浮かぶ、船型の『
辺境の大地より伸び、雲を突き破りそびえ立つ、『
そして城塞都市の近くにある、この『
少し前までは『
その為に『
ただ、そう思ってるのは大半の軍関係者の者ばかりで、一部はそう必須と思ってもいない者達もいる。
「さてと、今回の調査は何処まで行くのかね」
『
すると、《ワイバーン》を纏って隣を飛んでいたシャリスがユウに近づいてくる。
「このような
「そうですね……。今までのは本当にそのままの遺跡でしたから、『
「確かに『
シャリスの言葉になるほど、と唸るユウ。
その線は確かにあるかもしれない。
案外良いところに目をつけており、素直に頷いた。
「シャリス先輩。その線はあるかもしれませんよ」
「……えっ……?」
先程の事を肯定されたシャリスは少し驚きながら、ユウの続きを待つが、
『おい。みんな気をつけろ!前方に
直後、リーシャが全体に警戒を促す。
見れば、城の数倍はある『
「…………」
ユウを含む部隊の目に映ったのは、半身を岩の鱗に覆われた金属の巨兵。
通称、ゴーレムと呼ばれる
巨大な身体と怪力を誇る、大型の
速度はそれほど速いという訳ではない。寧ろ遅いと言っても過言ではないが、恐ろしく堅い硬質の金属で出来た堅牢な身体を持ち、その重量から繰り出される一撃は単調であるものの、致命傷を免れない威力を誇る。
最初の相手としては申し分無い。
リーシャも戦闘を始めようと、各部隊へ指揮を飛ばしている。
「それでは私たちも行くか」
作戦は《ワイバーン》で敵を撹乱させながら、地上の《ワイアーム》での
時間は掛かるが、実戦経験を積ませるにはいい機会だ。
ユウは昨日リーシャに言われた通りに、他の
「オオォオオオッ――!?」
突如ゴーレムがその巨体を捩りながら呻き声を上げ出した。
突然のことにより全部隊がその場で停止をし、その光景を見守る。
「……何だ?」
シャリスが呟き、目を細めた瞬間――
ドォオオオン!!!
大きな爆発と共にゴーレムの右腕が破裂した。
『何……ッ!?』
リーシャの声が霞むほどの爆発が起こり、ゴーレムの身体のあちこちから炎が漏れだしていた。漏れだすよりも、内側から突き刺さる、と言った方が自然だろうか?
兎に角普通ではあり得ない事が、今目の前で起こっている。
『リーシャ!どうする!?』
『どうすると言っても……何が起こったのかさっぱりこちらも判らんぞ!』
その通りだよな、と苦笑する。
ユウですらこんな状況に立ち合った事が無いので、少し動揺を隠せない。
――だが、次の光景でその動揺が一気に吹き飛んだ。
『――――raa……♪』
歌声のような音色が爆発の中から聞こえてくる。
本来あるはずの無い出来事なのに、全員がこの音色に聞き入っていた。
一人を除いて。
「……天使……?」
ユウだけがこの状況の異質さに気付き、そして――
「――ッ!?」
誰が声を呑んだのか判らないが、ゴーレムの上から、巨大な炎の球体が生まれていた。
爆発の煙が晴れ、その中心に居たのは、三対六枚の翼を靡かせた一人の少女。
背は十代前半頃で、特徴的なのは六枚の翼と、赤い緋色の髪。
そして、周りを漂う荒々しい炎。
間違いない。
四大天使の一角、『第一の天使ウリエル』。
何故このような上層、しかも地上に『扉の向こう側』の化け物がいるのか検討も着かない。
『raaa……raaa――』
ドンッ!!とまた炎の球体は大きさを増す。
リーシャ達を含む全部隊が何が起こっているのか判っていないようで、現にバルゼリッドですら目を大きく見開いたまま固まっている。
「……くそっ!」
天使が現れた以上リーシャ達をここには置いてはいけない。すぐに竜声を使いリーシャに指示をだす。
『リーシャ!今すぐ全員に撤退の命令を出せ!今すぐだ!』
『ど、どういうことだ……ユウ……?』
『いいから!!』
ユウはそれだけを伝えると、天使の方へと向かっていく。
その行動にシャリスが驚き、声を上げ止めるが、ユウは気にせず速度を上げる。
すると――
炎の球体が此方へ向かって物凄い速度で迫ってきた。だが、その球体は直接ユウではなく、ルクスやノクトを含めた部隊の方向へと変わる。
「……やろう……っ!!」
正直、今のルクス達にあれを止める手段は無い。ルクスが《バハムート》を使えば判らないが、それでも難しいだろう。
ユウは速度を上げ、ルクス達の前へ出る。
「ユウ!?」
「ユウさん!?」
二人が驚くなか、ユウは神装を発動させる。
「『
六つの内の一つの棺を開き、拒絶の壁を目の前一面に作り出す。
それと同時に炎の球体が拒絶の壁に突き刺さる。
物凄い音を立てた後に、炎は壁に遮られ、綺麗に無くなってしまった。
「ルクス、今すぐ全員をこの場から撤退させろ。リーシャにもそう伝えた」
「な、……ど、どうして?ユウはあれが何だか知ってるの?」
「知ってるって言えばそうだけど……今はそんな悠長な事を言ってる暇は無いんだ。あれは俺が食い止めるから急いで撤退しろ!」
訳が判らないルクスであるが、ユウの尋常ではない焦りに相当厳しい状況であることは確かだと理解する。そもそも、ゴーレムが内部から爆発した時点で様子が可笑しいと理解はしていたが、ここまでだとは思いもしなかった。
ルクスはユウに言われた通りに動き出す。リーシャにも声を掛け、竜声を使い、全員を一時この場から撤退させる。
「……ユウさん……」
ノクトは後ろ姿のユウを見ながら、心配を願うと同時に、あの炎を操っている緋色の少女から目が離せなかった。
撤退の声が聞こえる。自分に声が掛かっているのも判っている。
なのに――
「…………」
あの炎の天使に何故か、惹かれるような何かを抱いていた。
その理由は判らない。
△▼△▼△▼△
「……なんで?……どうして?……邪魔をするの?」
クルルシファーは突如現れた謎の少女に内心見せない怒りを表していた。
普段怒りを露にするような彼女ではないが、相手が相手だけに怒らずには要られなかった。
「あなた達は……また……っ」
今回の
こんな程度で遮られては困る。
しかし、ふと気付くことがあった。
何故自分はここまで怒りを露にしているのだろうと。
「……
自分は今まであのような少女と会った事が無いのに。
何故?
しばし考えた後、後回しにしようと頭を切り替える。
今目の前に出現しているのは、前に見せてもらったユウの神装の一つだ。今のままではここを通り抜ける事は不可能だろう。
『クルルシファーさん!今はここから離れないと』
ルクスがクルルシファーに向かい竜声を飛ばすが、クルルシファーは尚も動かない。
『ルクス君。私はここで、ユウ君の手伝いをするわ』
『手伝い……?どうやって……』
『私の神装を使うのよ』
それだけ答えると、クルルシファーはもう少し近付くため、壁が出現しているギリギリまで迫っていく。
△▼△▼△▼△
「はぁああああっ!!」
ブレードを振りかぶり、緋色の少女――ウリエルに斬りかかるが……
『――raa♪』
突如出現させた炎の壁に阻まれる。
そのまま炎が針状へと変化し、ユウを貫かんと放たれた。
それをかわしながら、こちらも黒雷を放つが、やはり炎の壁に遮られる。火力が向こうの方が高いのだ。
「……流石、四大天使だな。隙がねぇ」
『何でこんなところに天使がいるのよ!?』
「知らねぇ。本来なら扉の向こうにいる筈なんだけどな」
『どうやって出てきたのでしょう?しかも、
レスティアとエストも天使の出現に驚きを隠せないでいた。
本来向こう側からやって来ることは珍しくは無いのだが、地上に出てきたのは初めてのケースだ。確かに
さらに――
「
最大出力では無いとはいえ、黒雷をこうも簡単に防がれてはこちらも拉致があかない。
しかも、まだ向こうは『起きたばかり』の状態なので、速く片付けないと面倒な事になる。
「……あれを使うか……」
正直ここでは人目に着くのでやりたくは無いのだが、非常時なので仕方がない。現にリーシャ達をここから撤退させたのも、その理由の一つだ。
「レスティア、神殺しの槍への接続は出来るか?」
『ちょっと時間は掛かるけど、問題ないわ。という事で――』
「ああ、判ってる」
《レスティア》を解除し、空へと投げ出されるユウ。
しかし、空へ投げ出されたにも関わらず、ユウはもう一本の
「行くぞ、エスト」
『はい、ユウ』
「……接続、開始」
ユウの呟きと同時に白い光がユウを包み込む。
そして現れたのは……
「神装機竜《エスト》。向こうも高火力ならこっちも高火力だ」
レスティアと対なす白い天使が緋色の天使へと牙を剥く。
どうも随分とお久しぶりです。
前の投稿が四ヶ月前程でしょうか?本当に遅くなり申し訳ありませんでした。
色々と忙しく、やっとの事で投稿出来ました。
少々急ぎ足で書いたものですから、誤字脱字がありましたらご指摘よろしくお願いします。
エストの機竜モデルですが、レスティアと同じくシャーマンキングから持ってきました。
ミカエルをベースとした天使シリーズをイメージしています。
それでは、また読んでくださったら嬉しいです。m(__)m