黒と白と壊れた心   作:東流

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あけましておめでとうございます。

前の投稿から約半年。本当に長い間お待たせして申し訳ありませんでした。
これだけ待たせてこの出来具合かよ?と思う方もいらっしゃると思いますが、これが作者の今の限界です。
すみません。

はっきり言って今回の話はリハビリも込めた話となっています。他でやれと思うかもしれませんが、その辺りはご了承下さい。
もっともっと作者自身練度を上げて参りますので、今年もよろしくお願いいたします。

それではどうぞ♪


堕天の白と緋色の炎

 全身白で覆われたフォルムから白い羽が舞い散っていく。

 翼を靡かせ、腰部から白い形状をしたライフルを取り出した。

 狙いをまだ覚醒しきっていない天使ウリエルへの頭部へ。

 

 そして――躊躇なくその引き金を引く。

 

 ダァン!!と銃特有の音を響かせ、銃弾はウリエルに吸い込まれるように向かって行くが、先程と同じ様に炎の壁に遮られる。

 

「……まぁ、当然だよな……」

 

 久しぶりに《エスト》を纏うので、ライフルの調子を確かめる、試し撃ちのようなものだ。それでも汎用機竜のライフルとは性能が違うため、傷を負わせても何ら不思議ではないのだがウリエルの炎の壁が一枚上手だったように見える。

 ライフルでは歯が立たない事は分かった。なら、ライフル以上の火力が出る武装を出すまでだと結論に至る。

 

「――エスト」

 

『はい。此方は問題ないです。……いつでもどうぞ』

 

「了解……なら、始めるか」

 

 ユウが言葉を放ったと同時に後ろの空間が酷く歪みだす。

 その歪みの出現は二つ。歪んだ空間の中から今現在手に持っているライフルのような物が姿を表す。

 

 白天極砲(アルカトロス)

 

 《エスト》が持つ特殊武装の一つで、特徴的なのはその大きさ。一般の機竜使いが使う機竜息砲(キャノン)の数倍は大きい。リーシャが扱う七つの竜頭(セブンズヘッズ)が二つ両脇に存在するようなものだ。

 

「――行くぞ」

 

『――吹き飛べ』

 

 ユウの合図と共に《エスト》が白天極砲(アルカトロス)を発射させる。

 

 

 ――――――――ッ!!!!

 

 

 辺り一帯に広がるのは轟音。空気が振動し近くの木々が揺れ動く。

 ただの幻神獣(アビス)などそれこそ跡形もなく消え去るような砲撃がウリエルへと迫る。あのゴーレムでさえ半分消し飛ぶような、そんな砲撃だ。

 瞬間ウリエルが炎の壁を更に大きくする。

 

 ――だが。

 

『――――ra!?』

 

 白天極砲(アルカトロス)から放たれた砲弾は炎の壁をゆうに貫通し、ウリエルに直撃した。

 ウリエルの真下に存在する木々が一面吹き飛ぶ。

 ユウはそれに満足すること無く追い討ちを掛けようと畳み掛ける。

 白天極砲(アルカトロス)を左右に浮遊させ、更に多くのライフルを空中へ展開させる。

 

 多重奏銃火機(マルチタスク・オン・ファイア)

 

 自分の意思で動かし撃つことが出来る謂わば遠隔投擲兵器のような役割を持つライフルだが、リーシャの持つ空挺要塞(レギオン)程の複雑な機動力は存在しない。ただ、数で言えば多重奏銃火機(マルチタスク・オン・ファイア)の方が勝っている。空挺要塞(レギオン)十六機に対し、こちらは五十を越える。それに余計な演算思考も必要ないので操作性にも優れている。

 

 高々く飛び上がり、銃口を未だに黒煙が上がっている場所へと向け、一斉に弾丸を放っていく。

 遠くから見れば一ヶ所だけ強い雨が降っているようにも見えるこの光景。これが全て銃の弾だと分かればゾッとするような感覚に陥る。

 いかにも過剰攻撃に見えるが、天使相手に情けを掛けるほどユウもお人好しではない。あれは人に見えるが、実際は全くの別物。そもそも根本から違うのだ。

 攻撃の手を休めること無く、更に白天極砲(アルカトロス)の充填していた砲撃も加える。

 

 

 ――――――――ッ!!!!

 

 

 再び空気を振動させる轟音。

 吹き飛んでいた木々が更にこの砲撃で吹き飛んでいく。一面木々が生い茂っていた場所は現在更地になりつつあった。所々で地面が抉れ出ている。

 近くで見ていたらここまでする必要があるのかと問いたくなるが、次の光景でそんな淡い考えが砕け散る。

 

『…………』

 

 翼が焼け焦げ、あちらこちらに銃弾の痛々しい傷跡が見えるが満身創痍と言ったらそれは違う。

 

 明らかなる敵意。

 

 緋色の瞳はユウを逃がさずにジッとその姿を脳内に焼き付けていた。

 出現当初は眼中に無く、ただ塵を払うだけの作業に過ぎなかった。現に辺りを飛び回っていたのは塵なのだから。それっぽいのがちらほら映ったが、結局は塵。自分達に勝てる存在など居ないのだから。

 

 居ない……()だった。

 

 ()

 そう認識したのはいつ以来だろうか。

 ここまで傷付けられたのはいつ以来だろうか。

 ここまで悔しく、無様な気持ちになったのはいつ以来だろうか。

 ここまで怒りに燃えるのはいつ以来だろうか。

 ここまで恐怖するのはいつ以来だろうか。

 ここまで歓喜するのはいつ以来だろうか。

 

 ウリエルの中で感情という感情が起き始める。

 

 ――ああ、勝利に餓えるとはこの事か。

 

 久しぶりの感覚に嬉しさを隠せなかった。

 ニィと口角を上げ敵を見据える。

 敵には全力で応えなければいけない。それがウリエルの――天使一同の答えである。

 

 

 だから。

 

 

「……()()()()()()。お兄ちゃん」

 

 

 翼が焼け焦げた?――知るか。

 全身傷だらけ?――興味ない。

 

 今は全力で敵を討つのみ。

 

 ウリエルの炎が翼へと纏まり始め、六対十二枚の()()()が完成する。

 

 それを見ていたユウは即座に障壁を展開させた。

 今、白天極砲(アルカトロス)で砲撃しても簡単に防がれる。そう思えるほどの威圧感をウリエルから感じ取っていた。

 

 ――そして。

 

「……は?」

 

 ギャリィィイイン!!!

 

 砕かれた障壁。更に白天極砲(アルカトロス)片方の破壊。それらを行った炎の天使ウリエルはユウの後ろへと漂っていた。

 視認出来たか、出来なかったかと問われれば即座に視認出来なかったと答えざるにはいられない。

 《レスティア》の黒天翼(ヒメール・フェルガ)と同等かそれ以上の速度。

 

「……完全に寝た子を起こしたな……」

 

『これが天使本来の速度……』

 

 ウリエルはユウに向かっていかず、その場からただジッと見据えるだけ。

 

『raaa♪raaa♪』

 

 歌うように口ずさむその声は、まるでこちらを挑発するかのように聴こえてくる。

 

 何を驚いている?こんなものでは無いだろう?……と。

 

 もし、天使の言葉が判るのならそんな風に言っているのかもしれない。

 

「……『槍』の接続は……まだだよな」

 

『……もう少し掛かるわ』

 

 あまり期待はしていなかったが、こちらの『切り札(ジョーカー)』を切るには時間がまだ足りていない。更に、白天極砲(アルカトロス)の修復はこの戦闘中には無理だろうと判断する。

 詰んだ――とまではいかないだろうが、ピンチには変わりなかった。

 今までの攻撃も前の状態なら有効打になっていたが、それも今の状況では無に等しくなっている。

 

「神装か」

 

『切り札』は切れなくても『奥の手』ならまだ残っている。

 《エスト》の神装。その一つを使う。

 本来なら覚醒しきる前に通常状態の高火力の物量で押しきる。もしくは『槍』の接続まで時間を稼ぎ、『槍』を使う。この二択の選択肢ではあったが、その中に神装という選択肢は入っていなかった。

 一番のベストは通常状態の高火力で押しきることであったが、ウリエルの覚醒により不可能。高火力で押しきれなかった保険として『槍』の接続を試みていたが、時間が足りずそれも不可能。

 よって残ったのは神装の一択のみ。だが、神装の能力上『槍』か神装この二つの内どれを使用するかとなったときユウは迷わず『槍』を取るだろう。『槍』も都合上あまり使用したくは無かったのだが、状況が状況だけに仕方が無かった。

 それでも《エスト》の神装を発動することに、ユウは忌避感を抱いていた。

 

『大丈夫ですよ、ユウ』

 

 不意にエストから声が掛かる。

 

『私は()()()りしませんから』

 

 微笑むその表情は覚悟を決めた証し。

 それに答えられないなんて男じゃ無いよなと同じく微笑むユウ。

 

「痛いのは、俺も一緒だ」

 

『はい』

 

 覚悟が決まった。

 そのユウの表情にジッと止まっていたウリエルが何かを感じ取ったのか、即座に動き出す。

 それに慌てること無く、優しく機攻殻剣(エスト)を撫でながら――

 

「――神装発動」

 

 その名を紡ぐ。

 

『モード堕天取得。――執行します』

 

 最初は淡く白い光が、黒く、黒く染まって行く。

 一対二枚の翼が広がり始め、五対十枚の翼へと変化を遂げた。そして、右半分の白い翼が真っ黒に染まって行くのがわかる。それに伴いユウの左半分の顔に黒いアザが出来上がっていく。

 

 ウリエルの攻撃が届く一秒前。

 

「…………」

 

 ユウは、笑っていた。

 何故笑っているのかが判らない。一秒も満たない内に、振りかざした必殺の拳がユウの顔面へと撃ち込まれる。

 

 ――なのに。

 

『――――ッ!!?』

 

 吹き飛んでいたのは攻撃したウリエルの方だった。

 一瞬の驚愕。

 ――馬鹿な、有り得ない。何故だ?

 ウリエルが吹き飛ばされる要因など一つも見当たらなかったが、瞬時に思考を切り替え体勢を整える。

 

『…………?』

 

 体勢を整えながらもウリエルはユウの姿を視界に入れておこうと、目を向けるがどこにも見当たらない。

 先程までいた筈なのに。

 そして、その疑問を抱いた数秒にも満たない時間が、致命的となる。

 

 ドンッ!!

 

『――aa!?』

 

 後頭部に固く鈍い衝撃。

 攻撃されたと気付いた瞬間、ウリエルは地面に吸い込まれるように大地に叩き付けられた。

 地響きのような音を盛大に鳴らしながら、パラパラと小石や砂が舞い散って落ちていく。

 

「気を抜くなよ」

 

 遠くからの声。それが何故か近くに感じる。

 

「本気を出していなかったのはお前だけじゃ無いんだよ」

 

 白と黒の翼。その混じりあった翼を背負う天使が今、目を覚ました。

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△

 

 

 

 

 バルゼリットを含めたリーシャ達騎士団(シヴァレス)のメンバーは、突如起こった出来事に動揺を隠せないでいた。

 遠目に見える半透明の壁はユウの神装能力だということは理解している。

 ユウから撤退の指示を出されたリーシャは、慌てながらも最初の中間地点まで全員を撤退させていた。ユウのあの慌てよう、あれが尋常じゃ無いほどに切迫した事態だと物語っているのが判る。その事から、このまま騎士団(シヴァレス)のメンバーだけで対処するのかしないのか、悩みあぐねていた。

 

「リーシャ様。ここは一旦学園へ連絡し、王都から救援を待つべきです」

 

 メンバーの一人が救援を待つべきだと進言する。

 それもその筈、ここ数分で現在ユウが戦闘を行っているであろう場所から二回の轟音が鳴り響いていた。ここまでの距離に関わらず、鳴り響いた音と吹き荒れた衝撃はこの中間地点まで届いている。最早学生の機竜使いが対処するには荷が重すぎるものだと、この場の殆どが判断していた。現にユウが発言した撤退は正解だったと誰もが思っている。

 

「……どうする、姫」

 

 シャリスが問い質す中、リーシャは決断を決めきれずにいた。はっきり言ってこの事をどう報告すればいいのかが判らない。相手は見たことが無い未知数の幻神獣(アビス)。これに軍が動くかどうか。

 そして、それよりも厄介なことが今この場で起こっていた。

 

「さっきから竜声を使ってルクっちとクルルシファーさんに声を掛けてるけど、全然駄目です」

 

 ティルファーがリーシャにそう伝える。他の者達も同様全員首を横に振る。

 ルクスとクルルシファーの行方不明。部隊で動いていた彼らだが、いきなりの出来事と混乱により離れ離れになっていた。竜声の通信も轟音や衝撃により、声を拾えずにいる。ルクスはともかく、クルルシファーに至っては向こうから竜声の通信を拒んでいるようだ。

 最後にルクスと通信を行った者は『クルルシファーを探しに行く』と答えたと言っているので、ルクスとクルルシファーは一緒にいるものだと仮定していた。

 

 ――せめてルクスだけでもこの場にいたら。

 

 そんな考えが浮かぶが、竜声を拾えない以上――

 

『――リーシャ様!』

 

 不意にティルファーの竜声から声が聞こえてきた。ルクスの竜声をどうにか拾えたようだ。

 リーシャはティルファーに駆け寄り声を掛ける。

 

「ルクスか!今どこにいる?」

 

『そちらへ向かっている途中です。クルルシファーさんを探していたら砲弾の衝撃で見失って……。竜声にも出ないですし、もしかしたらそっちに戻っているのかも……と』

 

「……クルルシファーはこちらに戻っていない」

 

『えっ!?』

 

「その前に何故クルルシファーを探しているんだ?何かあったのか?」

 

『それがクルルシファーさん、ユウの事を手伝うと言って……』

 

「はぁ!?」

 

 ルクスの発言によりこの場の全員が驚愕を露にしていた。バルゼリッドも例外ではない。

 リーシャとルクスの会話に割って入ろうと、無理矢理ルクスの竜声を拾う。

 

「おい、没落皇子その話は本当か?」

 

『クロイツァー……卿!?』

 

 急に割り込んで来たため一瞬驚くルクスだが、冷静さを取り戻し瞬時に答える。

 

『ええ。その通りです』

 

「…………ッ!?」

 

 仮にも婚約者が死地へ向かっていると言うのだ。黙っていられるほどバルゼリッドも気が長い訳ではない。

 

「王女殿下。直ぐ様王都から救援を呼ぶべきです。あの幻神獣(アビス)。あれをそう呼んでいいのか判りませんが、あの未知数の敵に闘いを挑むほど我々の戦力は整っていません。経験豊富な王国軍を呼び全軍であれを叩くべきです。雨宮卿一人奮闘しているともなれば女王殿下もこちらに兵に送ってくれる筈です」

 

 最初は会話に割り込まれ、機嫌があまりよくなかったリーシャだが、バルゼリッドの発言に一つ気付く事があった。

 

「……そうか。ユウは軍属だったな。……よし、学園長へ今すぐこの事を伝えてくれ。あの人を通してなら直ぐに女王殿下へ話が通る筈だ」

 

 名目上ユウはアティスマータ新王国の軍人として籍を置いている。そのユウが一人緊急事態に対処しているともなれば話は違ってくる。

 リーシャ達が甲斐甲斐しく動き回る中、バルゼリッドは一人奥底で舌打ちをついていた。バルゼリッドにとって大事なのはクルルシファーの安否のみで、ユウの事など微塵の欠片も気にしていない。寧ろやられてしまった方が、バルゼリッドとしても自分の障害が減ってくれるのでありがたい事この上なかった。

 

「あの女は俺の物だ。あんな餓鬼に使い潰されてたまるか」

 

 ふつふつとその心が醜い独占欲に染まっていく。

 そもそも例の約束があるためクルルシファーをこんなところで失うには痛すぎる損失とも考えていた。

 それに、あの壁がある限りクルルシファーは向こう側へ行けないという事も聞いている。

 

「女王の番犬……。確かに実力は本物だな」

 

 遠目からでも凄まじい戦闘が繰り広げられているのはここにいる全員が理解していることだ。勿論、バルゼリッドもその凄まじさは感じている。遠目でこれなのだ。もっと近くならば目も開けられないような激闘なのだろう。

 

「……だが、勝つのは俺様だ」

 

 神装機竜《アジ・ダハーカ》。その神装能力はバルゼリッド本人が使っていてもゾッとするような能力である。

 この能力が負けてることは無い。そう自負しているくらいだ。

 

「精々足掻いて時間稼ぎ頑張ってくれよ、女王の番犬」

 

 このまま潰れてくれるなら良い。生きていたとしても三日後の決闘まで機竜の回復は追い付かないだろう。

 運命は自分に味方してくれている。そう信じて止まないバルゼリッドだったが――

 

「……な、何……あれ…?」

 

 一人の少女の呟きにより、それは打ち砕かれた。

 

 

 この場の誰かが呟いた。

 彼女が目にしている方向に全員が顔を向ける。

 

「…………私は夢でも見ているのか、姫」

 

「……奇遇だな。私も同じ夢を見ているよ」

 

 夢。今の状況を表すのにこんな最適な言葉はない。

 ああそうだ。私たちは夢を見ているんだ。夢を見ているのに違いないんだ……と。

 一同が同じ空を見上げる。

 

 

 リーシャ達の視界に入ったのは――

 

 

 白色(天使)緋色(天使)が激突し合っている絵だった。

 

 この光景は二度と忘れることは無いだろうと誰もが思ってしまえる程のモノ。ここまで来ると驚愕を通り越して笑えてくる。

 

「ハハッ……一体お前は何者なんだ?……ユウ……」

 

 リーシャ達は暫し我を忘れ、今の光景から目を離せないでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 




どうだったでしょうか?
戦闘描写が薄く、もっと頑張らないとなと思っています。

誤字脱字、ご指摘などがありましたらご報告下さい。

次回もこの作品を読んでくれたら嬉しいです。

それでは、またの機会にm(__)m
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