黒と白と壊れた心   作:東流

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久々に早く投稿できますが、そこまで話は進んでいません。

セリス先輩のファンの方申し訳無い、彼女の出番は次回となります。

それでは、どうぞ〜


黒と閃光の騎士姫
黒と闇夜の侵入者


「––––クッ……んっ!!?」

 

「––––ッ」

 

 カァン!!と金属のぶつかり合う音が響き合う。

 一人は黒剣を、一人は氷の刃を。

 黒剣を持つ少年は焦らず丁寧に立ち回るのに対して、氷の刃を持つ少女は不慣れな接近戦なものもあって、上手く立ち回れないでいた。

 装甲機竜(ドラグライド)による学生の模擬戦。中心にいるのは装甲機竜を纏っているユウとクルルシファーの二人であった。

 お互いがお互いに病み上がりの為、二人は模擬戦と称して今までの感を取り戻す()()()()を行なっている。

 

 バルゼリッドの件から祝日を挟んで一夜明け、学園ではそれなりの騒ぎになっていた。何しろユウとクルルシファーが二人揃って包帯巻きで現れたからだ。クルルシファーは見た目ほど酷くはなく、軽傷で済んでいるのだが、ユウは違う。騎士団(シヴァレス)のメンバーなら判るが、先日の遺跡(ルイン)攻略の際に多大な被害を負ったユウ。その傷を負ったままバルゼリッドとの決闘に向かったので、様子を見に来た保険医から抜け出した事に対して文句を言われた程だった。そこに何故かユウが寝ていたベッドにノクトが寝ておりそこでも一悶着あったのだが、今は置いておこう。

 

 ユウが傷を負った噂が流れていたのか、殆どの人が知っていたらしく、あれやこれやと大騒ぎ。騎士団のメンバーからはあの時言えなかったと、謝り、感謝をしてくる人が殆どだった。痛々しいユウの姿にその場に居なかったクラスメイトや学生達はどんな事が起こったのか容易に想像がつく。一年生からは「ご無事で何よりです」と涙を流す生徒達までいた。

 

 そう、ユウの事は判った。判っていたのだが––––

 

 何故かクルルシファーも包帯巻きで現れた。

 

 ––––うん、なんで?

 

 と、首を傾げる生徒が殆ど。別に心配をしていないという事でないのだが、疑問が尽きなかった。

 事情を知っているのはルクスとリーシャ、ノクト達三和音(トライアド)にルクスの妹であるアイリ。そのメンバーの必死のフォローが入りつつ、クルルシファーの疑問はなんとか解決(?)した。

 数日ほどは二人とも不便であったが、周りの助けもあり、ようやく日常らしい日常に戻っていた。

 

 クルルシファーは数日もあれば完治とは言わずともそれなりに回復して、ユウに至っては今まで包帯を巻いていたのだ。二人とも装甲機竜を使っての授業は万が一に備え休んでいたのだが、今日二週間ぶりに、装甲機竜を使っての授業に参加している。

 

 そして、()()()()と称して模擬戦を始めたのだ。

 

 何度も金属のぶつかり合う音が闘技場に響き渡る。

 生徒達は観覧席でその模擬戦の光景を見ているのだが、

 

「何これ……」

 

 生徒の一人が呟くのも無理はない。

 明らかに模擬戦の域を超えているのだ。

 二人とも全力––––とはいかないが、少なくともクルルシファーは本気だし、ユウもユウで今出せる実力を発揮する。

 

「––––ッ!!?」

 

 一瞬で打ち合いをやめ、距離を取るクルルシファー。自らが駆る神装機竜《ファフニール》。その特殊武装である《凍息投射(フリージング・カノン)》を出現させる。

 それを構えて、引き金を引くまでかかった時間は一秒にも満たない。余程洗練された動きで無ければこうはいかない筈だ。二週間ぶりとは言え、よくそんな動きが出来るなと逆に恐怖すら覚える。

 

 引き金を引き、蒼き軌道がユウ目掛けて向かって行く。

 ユウが纏う神装機竜である《レスティア》の羽を最大限動かし、《ファフニール》の射撃を躱す。

 クルルシファーはその場にとどまる事なく動きながら常に先を予測して引き金を引いていく。

 ユウも負けじと黒剣を振るい、全方向からやって来る蒼き軌道を()()()()()()()()

 

 二十分程続いただろうか?最終的にはユウがクルルシファーを追い詰め、首に黒剣を突き付けた所で模擬戦が終了した。

 

「……はぁ、はぁ––––私の負けね」

 

 二人とも神装機竜を解除して、座り込んでいるクルルシファーに手を差し伸べるユウ。

 

「まぁ、リハビリにはお互い良かったんじゃないか?」

 

「そうね、でも普通あれを撃ち落とすかしら?あれじゃあ手の打ちようが無いわね」

 

「そこはまぁ、技術って言うか……」

 

 模擬戦を終え、二人で感想を言い合う。その様子に模擬戦を見ていた生徒達は––––

 

 ––––リハビリ?模擬戦?……あぁ、基準が違うのか!

 

 と何か悟った様な顔で終始笑顔で拍手していた。

 

 

 

 

 ○○○○○

 

 

 

 

 その日の夜。

 模擬戦の後に色々質問攻めにあい心身共疲れ切ったユウ。その疲れ切った身体に鞭を打ちながら夜の見回りに参加していた。

 本来なら衛兵の仕事なのだが、手が回らない事が多々ある為、学園で自警団を作っている三和音(トライアド)のシャリス、ティルファー、ノクトの三人から依頼を受けて、ルクスと共に見回りをしている。

 ルクスとは別行動でお互いが見回れない位置をカバーしながら警戒していた。

 

 シャリス達からは病み上がりなのにすまないと謝ってくれているが、こちらとしても不便だった頃大いに助けて貰っていたので、恩返しと思って快く引き受けた。

 近々、男の変質者が女子寮辺りをうろついているらしく、その関係もあり、三和音(トライアド)の三人も警備を強化したいとの事。それは賛成なのだが、何故ルクスが女装して見回りをしなければいけないのかが分からなかった。

 

 シャリス達曰く、

 

『ルクス君が女装して変質者を惑わせその隙に変質者を捕まえる!!』

 

 何その作戦?と頭にハテナマークが浮かび上がる。これではどちらが変質者か判ったもんじゃない。確かに油断させるという手としては有りなのかもしれないが、こんな事がまかり通っていいのだろうか?

 存外に三人はやる気だったらしく、巻き込まれたルクスは正直ご愁傷様だ。

 しかしながらどうだろう。いざ女装をしてみるとあら不思議の摩訶不思議。

 

 めちゃくちゃ似合っていた。

 

 ウィッグと女子生徒の制服だけなのだが、どこからどう見ても女の子に見える。

 着替えを手伝っていた三人も驚くくらいの出来映えだった。

 元々ルクスも中性的な顔立ちをしているので違和感が無い。

 

『これは……イケる!!』

 

 シャリスが少し暴走しかけたが、警備の時間という事もあり、各々の持ち場に散らばった。

 

 そして、現在に至る。

 

「こっちの方は異常は無いみたいだな」

 

「そうですね。私の索敵にも入らないですし」

 

「う〜ん!久し振りに自分の身体を動かすわね」

 

 ユウは現在、レスティアとエストを実体化させて一緒に辺りを見回っていた。

 ユウが担当する場所は生徒達の出入りが無い場所なので、実体化させるのには丁度都合が良い。

 エストは装甲機竜になっている時よりも距離は落ちるが、実体化している時でも索敵は充分に行える。今のところ不審者らしき人物は見当たっていない。

 レスティアはレスティアで久し振りに身体を動かせるのが嬉しいのか、機嫌が良かった。若干エストからも機嫌が良いのを感じる。

 

「でも、()()()()()()()()()

 

 レスティアの身に纏う空気が少し変わったのをユウは感じ取った。それに釣られエストもピクッと眉を顰める。

 

「ああ」

 

「やはり……ですか」

 

 レスティアとエストは決闘の時の記憶が抜けている為、それを補うようその日起こった出来事をユウは二人に話ていた。

 案の定というか()()()()()()が二人にあった為、何が起こったのかは薄っすらと理解している。

 

「ユウ、()()の方は」

 

「少し()()()()()だけだ。特に問題は無い」

 

 エストが心配そうに訊ねるとユウは問題無いと笑顔で微笑む。それに、「でも……」とレスティアも心配してくるが、

 

「大丈夫だ。心配無い。––––ある意味、アイツの事は()()しているからな」

 

 その発言に納得しつつも、何処か機嫌が悪くなるレスティアとエスト。

 

「ふん!あーそうですか」

 

「これは高級レストランの特上パフェをご馳走して貰うしかなさそうですね」

 

「……何でそうなる?」

 

 理由がいまいち判らないユウを背にトコトコ歩みを早める二人。

 つーんとした態度が滲み出ており、「何で?」と首を傾げるユウ。

 すると––––

 

「ユウ、索敵範囲内に異物が引っ掛かりました」

 

 エストの無機質な声色がユウとレスティアの耳に入った。

 すぐ様二人の実体化を解き、機攻殻剣(ソードデバイス)に戻す。

 

『背後からやって来ます。––––どうやら、()()()()()()()の様です」

 

「了解」

 

 ユウもエストに合わせる様に感覚を研ぎ澄ましていく。

 耳を澄ませ––––

 

『今です』

 

 エストの合図共に背後から走って来た異物––––侵入者に、壁を蹴り上げそのまま膝をお見舞いする。

 

「ガァッ!?」

 

 侵入者は急いでいたのか、前に居たユウに気付かずそのままユウの居た場所を通り過ぎようとするが、ユウは壁を蹴り上げ、空中に居たので侵入者がある通り過ぎた同じタイミングで背後から膝蹴りをお見舞いできた。

 

 威力はそこまででは無いが、完全に油断していた為、二転三転と地面に転がって行く。

 

「あんたがここ最近うろちょろしている変質者か。大人しく捕まって貰うぞ」

 

「グッ……、テメェ!?」

 

 焦げ茶色のコートを頭から羽織った男は、受け身を取り、すぐ様体勢を整える。

 懐から刃物を取り出し、こちらに向けてくるが、

 

『ユウ!後ろからもう一人!!』

 

「––––は?」

 

 振り返ると、黒いコートを羽織った人物が刃物を此方に突き出してきた。

 間一髪のところでそれを避け、地面に付いた左手に体重を乗せ左脚で蹴りをお見舞いするも、避けられてしまう。

 

「危な……急に現れたな」

 

『どうやら()()()()()()()()()()()様です。見つけるのが遅れてしまい、すみません』

 

『これはエストより、相手の実力を褒めるべきよ。完全にアイツの職業()()()じゃない』

 

 ジリッと相手の出方を見るべく様子を見る。二対一という不利な状況だが、存外にもそれは相手二人が思っていた事だった。

 

「今の避けるか?普通……」

 

「それが()()()だ。これくらい出来る。だが……」

 

 特段この場所で事を構えるつもりは無いが、まさかここで出会うとは思っていなかった。

 ()()()()()()()()()()()()が、タイミングが悪すぎる。

 引くにも、背中を見せれば確実に捕まる予感はあった。

 

「強いなアイツ」

 

「当たり前だ」

 

 そんな当たり障りの無い会話をしている二人だが、少しづつ後ろへと下がっていく。

 すると、そこへ––––

 

「ユウ君!!」

 

 遠くから足音と、聞き覚えるのある声が聞こえてきた。

 

「シャリス先輩」

 

 焦げ茶色のコートの男を追ってきたのだろう。シャリス以外にも衛兵と騎士団のメンバーも何人か見受けられる。

 ふと視線を侵入者二人から外したユウ。その一瞬を見逃す侵入者では無かった。

 コロンと足元に転がってきたのは卵状の球体。それがボンッ!と小さい爆発を起こすと、白煙と共にユウ達の視界を遮る。

 

「––––クソッ!!」

 

 視界が遮られたが、まだ気配が残っているので、足元にある小石をその気配に向かって投げつけるも、空振りに終わった。

 

「……エスト」

 

『ダメです。両者とも完全にロストしました。チラッとは反応しましたが、完全に街中です。ここからでは追うことは出来ません』

 

「分かった。悪いな、付き合わせて」

 

『いいえ、問題無いです。報酬としてパフェを頂きますが』

 

『それ私もね』

 

「……あのね」

 

 いつも通り平常運転な二人に頭を抑えつつ、シャリスからの謝罪が入る。

 

「…すまない、ユウ君。私が咄嗟に声を掛けなければ」

 

 逃してしまった責任があるのか、あの場面での不用意な声掛けはマズかったと反省しているシャリス。

 だが––––

 

「いえ、大丈夫です。仮に捕まえられたとしてもあの身のこなしです、すぐに装甲機竜を展開するでしょう」

 

「機竜使いだと?」

 

 コートの内側からチラリと見えた機攻殼剣(ソードデバイス)。あれは機竜使いで間違いなかった。

 

「……捜索は此方の方で行う。ユウ君、病み上がりなのにすまなかったね」

 

 微笑むシャリスに、大丈夫ですと一言。

 焦げ茶色のコートの男は判らないが、あの黒コートの人物には見覚えがあった。

 

「……あの時のか……」

 

 ベルベットを撃ち落とした時、森に現れた少女の様な人物。

 

 その素顔を見るときは案外近いのかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 ○○○○○

 

 

 

 

 

 同時刻、学園の敷地外。

 人気のない路地裏の暗がりに一組の若い男女、そして黒コートを羽織った人物がいた。

 どこか剣呑な気配を纏ったその三人は、周囲を警戒しながら潜みつつ、静かに言葉を交わしている。

 

「しかし、俺たちも運がないねぇ。よりにもよってこのタイミングで学園の最強が帰ってきちまうとはな」

 

 焦げ茶色のコートを羽織った赤髪の男が、やれやれと大げさに肩を竦める。

 そして一度周囲に視線を配ると、正面の少女に向き直った。

 

「呆れているのはこちらの方だ。何のために警備を突破させてやったと思っている?」

 

「おいおい、先に見つかりかけたのはキルリの方だぜ。あのか弱そうな女の子が鋭かったんだよ。平和ボケしたお嬢様の学園なんてバカにしてたが、こりゃ認識を改める必要があるぜ」

 

「……ふん」

 

 と、対面に立つ少女は不機嫌そうに鼻を鳴らし、男に背を向ける。

 

「というかなんだアイツ?学園には最強以外にもバケモンがいんのかよ」

 

「……何?」

 

 背を向けていた少女がどういう事だ?と男に再び顔を向ける。

 

「あの嬢ちゃんの背後からの一撃を躱して尚且つ一撃入れるもんな。というか俺も膝貰って背中痛いんだよ」

 

 イタタと、背中をさする赤髪の男。少女は視線を黒コートの人物へと移す。

 

「説明してもらおうか」

 

「……一つ訂正をしておく。運が無かった訳じゃない。逆だ。()()()()()()。一歩間違えば私達二人共捕まっているからな」

 

 肩をさすりつつ、訂正を入れる黒コートの人物。白煙で視界が遮られている中、気配だけでこちらに攻撃を当てたユウに怒りを覚えつつも、どこか納得している。

 赤髪の男は「そりゃ違いねぇ」と肩を竦めながら賛同。現にあの時後ろから声が掛からなければ、二対一とは言え、最悪どちらかが捕まっていた。それ以前に黒コートの人物が間に合わなければ、自分は完全にあの男子生徒にやられていたと思っている。

 気配を完全に殺した背後からの攻撃を躱し、すれ違いざまに一撃入れるその反応速度。

 実際、学園最強のセリスティア・ラルグリスと対峙した赤髪の男でさえ、あの男子生徒は異常だと判断する。

 声を掛けてくれた女子生徒には少なからず感謝していた。

 

「下手すりゃあれ、完全に()()()()の人間だろう?何であんなとこにいるんだ?」

 

 赤髪の男からすれば疑問が尽きないが––––

 

「あの人の相手は私がする。––––いいな?」

 

 黒コートの人物が二人に睨みを利かせると、少女は「好きにしろ」と一言。赤髪の男は「頼まれてもやんねぇよ」と首を振る。

 

 最後に一言二言話し終えるとその場で解散した。

 

 一人歩き出す黒コートの()()

 

「あの人が……()()()()()()

 

 少女の呟きが夜の風に掻き消されていく。

 ふと空を見上げると無数の星々。

 

「……そう言えば、こうやっていつも夜空の星を見てたっけ……」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ––––()()()()()()()()()()()()()()

 

 笑い合って、一緒に泣いて、地獄を乗り越え、死んでいった。

 

「私だけが残った」

 

 そんな絶望感に苛まれる日々は今もまだ続く。

 

 あの人を、殺すまでは。

 

 仲間の中心で、いつも優しく、時には厳しかったけど、みんなが憧れ、恋い焦がれ、希望だった()()()

 汚れ仕事を全員分背負い、決して弱音を見せる事なく、ボロボロになりながらも、前へ進んでいく。

 そんな、()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ユウ、兄さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かつて恋い焦がれたその名を紡ぎ、キュッと唇を噛む。

 

「兄さんを殺すのは……私だ」

 

 止めていた足を再び動かす。

 もう、あの時には戻れないと理解している。分かっている。後ろから()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少女が選んだ道は正しく、修羅なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




如何だったでしょうか?
話進んでねぇよ!?と思われますが(自分でも思います)、次回から、次回からはちゃんと話は進みますのでご容赦を。

誤字脱字などがございましたらご連絡ください。

それでは、また読んで頂けたら幸いです。

ではでは〜
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