黒と白と壊れた心   作:東流

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どうも
今さらですが最弱無敗の神装機竜を知っている人はどれくらいいるのでしょう?
作者は最弱無敗は面白いと思っています。
知らなかったら是非読んでみてください。オススメですよ。

では、本編へどうぞ


貴族子女達の学園 朱との決闘前

翌日

 

あの覗き騒ぎから翌日の朝。

ユウは固いベッドの上から身体を起こし背伸びをしていた。

場所は薄暗い地下室。石壁と鉄格子で囲われた、ベットとトイレ一つの簡素な独房。手枷や足枷こそはつけられていないものも、所持品は全て没収されていた。昨日の時点でユウは意識があったので、自分の荷物を三和音―トライアドのシャリスといった少女に全て預けた。機攻殻剣―エストとレスティアもその場で預けているので、この場には居ない。シャリスに預けたときに、まじまじとエストとレスティアを見ており、「素晴らしいな…これは。…綺麗だ…」とか言っていたので周りの少女達も関心を持ったのか、「綺麗…」とか「素敵だな~」とか次々に言葉を出していた。

 

後、大浴場で下になった少女だが…ずっとこちらを見ていた。視線に時々殺意を入れており、それに耐えるのが苦痛だった。向こうも一人の女の子。見ず知らずの男に裸を見られるのは苦痛でしかない。昨日は謝り損ねたので、今日中にでも謝りたいのだが…出したもらえるか分からない…。

ユウは天窓の方から差し込む光を見て、多分、朝食ぐらいだろうな~と予想していた。

 

 

 

「はぁ、……やっちゃった」

 

 

 

 

隣の独房からため息混じりの声が聞こえてくる。昨日の銀髪の少年もこの独房に入れられてた。

 

「…なぁ…あんた、昨日は大丈夫だったか?」

 

ユウは隣の独房に入っている銀髪の少年に話しかける。

 

「えっ?……あ、ああ…大丈夫…です。お互い捕まりましたね…」

 

「まぁ、しょうがないだろうな…。女子寮の大浴場に突っ込んだだ。独房でもまだ良い方だろう。下手すりゃ軍に捕まるからな…」

 

「…女子寮……はぁ…大変な事しちゃったな…」

 

こちらからは見えないが、明らかに落ち込んでいる雰囲気が漂ってくる。

 

「…そう言えば…まだ名前聞いてなかったな。俺は雨宮ユウだ。あんたは?」

 

「あっ、僕は…ルクス…、ルクス・アーカディアです」

 

「…アーカディア?…なるほど…だからその首元のチョーカーか…」

 

ユウはある事情でそう言った歴史は疎い方なので、アーカディア帝国や旧皇帝一族の『咎人』などの話は女王から少し聞いた程度だ。

後…『黒き英雄』の事も女王本人から話して貰った。

 

「…ええ…まぁ。新王国には良くしてもらってます。こんな身分だけど…衣食住にはあまり困らないし…。感謝してるほうです…。そう言えば、貴方の名前…この国じゃあまり聞かないような名前ですね?」

 

「ああ…東方出身だからな…ファミリーネームが前で、自分の名前は後にくるんだ」

 

「そうなんですか。じゃあ…雨宮、さん?」

 

「ユウでいいよ…。俺もルクスって呼ぶから。後、ため口でいいよ…そっちの方がやりやすい」

 

「…分かった…。よろしく、ユウ」

 

「ああ、よろしく」

 

雨宮……。ユウが自分で勝手につけた名字だ。愛着はあまり無い。それに元々ユウは自分の名前をユウとしか覚えていなかった。と言うか、自分の名前ですら怪しくなってくる…。

本当の自分は何なのか?昔の記憶はあの地獄のような思い出しか無い。まぁ別にあまり気にするような事では無いので、どうでもいいのだが…。

そう考えていると独房の扉の方から足音が聞こえてくる。扉を開けるのは昨日の大浴場の時の金髪の少女だった。

 

 

 

 

「お目覚めかな?変質者二人」

 

 

 

 

独房の外に一人の少女がやって来た。一部を黒のリボンでくくった金髪と、剣先のように鋭い真紅の瞳。白を基調とした制服に身を包み、どこか影のある笑みを見せてくる。

 

「…いや、銀髪の君は『王子様』…と言った方がいいのか?」

 

「…やっぱりバレてる…」

 

ルクスは肩を落とすと、はぁ~、とため息をつく。金髪の少女はこちらに顔を向けると剣先のように鋭い瞳が更に鋭くなり、影のある笑みも更に深くなる。

 

「…昨日はどうも、変質者さん。良い夜を過ごせたよ」

 

「あっ、いや…あれは事故であって…故意にしたわけじゃ…」

 

金髪の少女は怒気を更に強くし、ユウは冷や汗が背筋を伝うのを感じる。

 

「ふっ。まぁいい。お前らに言いたいことは死ぬほどあるけど、その前に学園長から話があるそうだ。ついてこい」

 

金髪の少女はフッと笑うと、牢の鍵を開ける。

 

「……あの、学園長って?」

 

ルクスが疑問を問いかけると、金髪の少女は、ほうと顔を向ける。

 

「純朴そうな顔をして、口も立つようだな。知らずに忍び込んだとでも言うつもりか?この学園の女子寮に」

 

「…女子寮…そうだった…てことは、ここは…」

 

ルクスは自分の懐から手帳を取りだし、スケジュールを確認していた。

どうやらルクスは元々仕事でここに来る予定だったらしい。ユウと状況が似ている。

 

「リーズシャルテ・アティスマータ」

 

「……?」

 

「…え?」

 

目の前の金髪の少女から言葉と笑みが返ってくる。

 

「私の名前だよ。新王国第一王女―通称、朱の戦姫。お前の帝国を五年前に滅ぼした、新王国の姫だ。よろしくな、王子様。と、変質者」

 

「ええぇぇぇええっ!?」

 

「…何で俺は変質者なんだよ…」

 

ユウはため息を溢すと、新王国の姫と言うところに反応した。

 

「(女王の娘…か…マジかよ…)」

 

もし昨日の事とかバレたら殺されるんじゃね?と思いつつユウは金髪の少女―リーズシャルテについて行っ

た。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「ふう……。それじゃ結局、今回のは不幸な事故、ということでいいのよね?ルクス・アーカディア君、雨宮ユウ君?」

 

学園長室へ通されたユウとルクスは、この騒ぎに至った経緯を話すと同時に、ルクスは予定していた仕事先であるこの学園そのものの説明を、学園長のレリィから受けていた。

今学園長室にいるのは、ユウとルクス。リーズシャルテに学園長。後、三和音の三人もこの場に在席していた。

 

ここは、アティスマータ新王国の管理する、機竜使い士官候補生の学園。所謂、士官―武官と文官を含めた、役人の中でも序列の高い人間を育成する場所であり、更に詳しく言えば―。

 

「装甲機竜に携わる人間を育成する学園…か…」

 

「そういうことになるわ」

 

ユウの言葉に、レリィ学園長は笑顔で頷く。

学園長と言ってもまだ若い。年は二十代後半ほどだろうか?教師といっても差し支えない風貌の女性は、名前をレリィ・アイングラムと名乗った。

 

 

 

 

装甲機竜と機攻殻剣は、それぞれ一対となって使用される兵器だ。

装甲機竜は普段は各地の『格納庫』と呼ばれる場所に安置されており、機攻殻剣を鞘から抜き、グリップにあるボタンを押すことで、対応する機竜を転送―召喚する。

装甲機竜以外の兵器でそんな真似は出来ない。

光と化し、空間の転移を可能とする金属、幻玉鉄鋼と機竜の動力源である核石、幻創機核があるからこそ可能な芸当だ。

転送自体の構造は、未だに解明されていない。

装甲機竜が、遺跡から発掘された古代兵器であること、ある事情によって、遺跡の調査自体がなかなか進んでいないのが、主な原因だ。だが、それでも装甲機竜の持つ力は『技術が解明しきれていない』という理由で使用を控えるには、あまりに途方もない威力を秘めていた。

故に、機竜の構造、原理解明の調査も、各国で激しく競争が行われている…そうだ。

 

エストとレスティアについてはそもそも装甲機竜に当てはまるのか謎だ。『格納庫』はエスト、レスティア自身であり、グリップについてあるボタンを押さなくても彼女達の意図で簡単に装甲機竜になることが出来る。

まぁ、彼女達自身については本人から直接聞くので、エストとレスティアが話さない限りは、無理強いをするつもりはない。

 

「装甲機竜が遺跡から発見されて十余年。私達女性は、旧帝国が敷いてきた男尊女卑の風潮と制度により、その使用は殆ど禁じられてきたわ。でも―」

 

レリィが言葉を区切ったところで、ユウの隣に立っていたリーズシャルテが、ふっと口を開く。

 

「五年前のクーデターで新王国が設立したのを境に、その認識は一変。操縦に使う運動適性はともかく、機体制御自体の相性適性は女の方が遥かに上というデータが報告され、以後、専門の育成機関を設立し、他国に負けない機竜使いの士官を揃えるべく、その育成に力を注いでいる―というわけだな」

 

「ええ、その通りです」

 

リーズシャルテの補足に、レリィが頷く。

 

「で、でも、何で僕なんかが呼ばれたんですか?」

 

ルクスは困惑した表情でレリィに問いかける。ルクスは『咎人』としての仕事でここに来るよう依頼されたのだ。

 

「あらあら。かの『無敗の最弱』ともあろうものが、随分と謙遜するのね」

 

王都のコロシアムで月に一度行われている、装甲機竜を用いた公式模擬戦。

戦績次第では賞金も出るその場で、最多の出場回数を誇り、その戦闘スタイルからつけられた異名で、ルクスは呼ばれていた。

無敗の最弱の事はユウも耳にしていた。王都に近い…と言うか王宮の方に住んでいたので、その手の噂や話などは嫌と言うほど入ってくる。

 

「(へぇ…ルクスが『無敗の最弱』か…。一度戦ってみたいな…)」

 

ユウは王都のコロシアムには出れなかったので、そう言うビッグネームとは是非戦ってみたいと思っていたのだ。

 

「この学園でも屈指の使い手であるリーズシャルテさんにも劣らない実力でしょう?けして場違いな仕事ではないと思うけれど?」

 

「……ほう」

 

レリィの言葉が不服だったのか、リーズシャルテが肩をピクッと震わせた。

他にも三和音のシャリスもルクスの方を見て、「ほう…かの有名な無敗の最弱か…」と感嘆の声を溢していた。

 

「…ルクス君の事は分かっているのだが…」

 

レリィが急に神妙な顔になり、ユウの方を見てきた。そして、取り出したのは一通の封筒。

 

「これは先日この学園宛に届いた推薦状です。この子をこの学園に編入させて欲しい…と…」

 

レリィの言葉にユウ以外の全員が頭を傾げている。ユウは差出人が誰だか分かっているので、そのまま話を聞き続けた。

 

「…差出人は…この国の女王陛下」

 

「「「「……ええぇぇぇええええっ!!」」」」

 

ユウ以外の全員が声を出し驚きを見せる。王女であるリーズシャルテは勿論、ルクス、三和音の三人の中で無表情だったノクトですら驚きの声を揚げる。

 

「そして、女王陛下からの推薦状に…君の名前が載っている…これはどういう事なのか詳しく知りたいのだけど…」

 

この場にいる全員から視線を浴びるユウ。特にリーズシャルテからの視線は痛いのなんの。

ユウは、はぁ~とため息をつくと、その事について話し出す。

 

「…ええと…まぁ、色々話すと長くなるので…簡単に説明すれば…俺と女王の関係は…友人です」

 

この言葉でこの場にいる全員の時間が止まった。ユウを覗いて…。

女王陛下と友人。そんなことを言えるのはこの国に何人いるだろうか?正直、そんなことを言えるのは本当に一握りの中の一握りの人間だけだ。まず、信じられない…。だが…、

 

「…ほ、本当…なの?」

 

レリィは恐る恐る聞くとユウは、この人たちは何を怯えているのだろうか?と思いながら、そうです。と答える。

これに反感したのはリーズシャルテだった。

 

「ふ、ふざけるなよ!!母と友人だと!?何をバカな事を言っている。そんなこと信じられるわけ―」

 

「だけど、推薦状が来てるだろ?これが何よりの証拠だ。王女殿下なら自分の親の字くらいわかるだろ?」

 

ユウはそう言うとレリィから推薦状を受け取り、リーズシャルテに渡す。リーズシャルテは中を開き、推薦状の文字を確認していく。

 

「……間違いない……母の、字だ……」

 

ぷるぷると震える手はその手に持っていた推薦状を落とした。

ルクスは驚きで目を見開いており、三和音の三人もまじまじと、ユウの事を見ていた。

 

「けど…何でまた女王陛下と、その…友人…?なのかな、雨宮君」

 

「ユウでいいですよ。雨宮って言われるのはあんまり好きじゃないですから…。ええと…女王には命を助けて貰ったことがあるので、それで恩返しでずっと女王に仕えてたんですよ。女王の命令で各地の遺跡を回ったりして…。で、ある時、女王の方から友人になってくれ、と言われたので断る理由もなく、そのまま友人に落ち着いた…というわけです」

 

「…とどのつまり、君は女王陛下お気に入りの、騎士という事でいいのよね?」

 

「…まぁ、そういうことになりますね」

 

「けど、何でまた編入なんか…」

 

「女王曰く、貴方くらいの年齢なら皆学校に通っています。話はつけておくので、貴方は学校に通ってください…だそうです」

 

「……はぁ~。なるほど…分かったわ。貴方の王立士官学園の編入を認めます。…よろしく、ユウ君」

 

レリィは手を差し出すとユウはよろしくお願いしますと言いながら彼女の手をとる。

 

「話は分かった」

 

ユウの後ろからリーズシャルテが少し怒気を含ませた声を出してきた。

 

「だが、『わたしたち』はまだ、この者達を認めた訳じゃないからな?」

 

鋭い眼差しがユウとルクスを見据える。その口端は微かな笑みを作っていた。

 

「私の疑いは晴れてないぞ、貴様らは覗き、痴漢、下着ドロの変態で犯罪者だ。そんな『男達』をこの学園で働かせるなど、あり得ないな」

 

その言葉にシャリスら三人は、うむ…一理あるな、とか言っていた。

 

「…ちょっと待て、お前らで話を大きくしすぎだろ。まぁ女子風呂に突っ込んだ事は謝るし、覗き…というカテゴリに入るのかもしれないけど、痴漢と下着ドロまでした覚えは無いぞ」

 

「だが、王子様が女物の下着を持っていた所を何人かの生徒が目撃してるんだぞ?」

 

「あ、あれは…猫に盗られたポシェットが女の子の物で…中身が下着だなんて知らなかったんだよ」

 

「…う~んこのまま終わる気配が無そうね…ルクス君の事はよくわかっているつもりなんだけど…実際、今回の事故が偶然起きたなんて断言できないのよね~」

 

「そこは断言してくださいよ!?」

 

やや涙目で、ルクスは訴える。

 

「でも実際、故意かどうかと言われると、誰にも証明できないのよね。なら、本件の被害者でもあり、二年の首席でもあるリーズシャルテさん。彼らの処分は、貴方の裁量に任せてもよろしいかしら?」

 

「ええぇぇぇ!?」

 

「ふっ」

 

ルクスが慌てるのを見たリーズシャルテは、小さく鼻で笑い、ユウをキッと睨むと、指を指してきた。

 

「では、決闘だな」

 

「…はっ?」

 

「…えっ?」

 

ユウとルクスは二人で情けない声を漏らした後、リーズシャルテは帯剣の柄に触れ、同時にゆっくりと、学園長室の扉の前に歩いていく。

 

「雨宮ユウ…貴様が私に勝てれば無罪放免でわたしたちもお前の編入を認め、王子様が働くことを許してやる。だが、負ければ二人揃って犯罪者として牢獄行きだ。勝負は装甲機竜を使った、短時間一騎打ちの模擬戦。―それでいいな。野次馬たち!」

 

そう言って、リーズシャルテが部屋のドアノブをひねった瞬間、沢山の女子生徒達が転がりこんでくる。

どうやら、噂で聞いたユウとルクスの処遇が気になって、外で聞き耳を立てていたらしい。

 

「学園の皆に伝えろ。観客は多いほどいいぞ。新王国の姫が変質者一人ををやっつける見世物はな」

 

きゃあああっ!!

 

と、それを聞いた女子生徒達は、楽しそうに声を上げて去っていく。

 

「大変な事になったわよ!リーズシャルテ様が今回の痴漢と装甲機竜で決闘を―」

 

「相手は、女王陛下お気に入りの騎士だそうよ。詳しいこと誰か知ってる?」

 

「そもそも、相手は男でしょう?リーズシャルテ様の相手が務まるのかしら?」

 

「見た目はすごい好み何ですけれど…惜しいですわね」

 

部屋から出ていくリーズシャルテと共に、そんな声が聞こえてきて、ユウはため息をつく。

あの勢いだと、決闘の前には、学園中に話が伝わっているだろう。

 

「…代わるか…ルクス?」

 

「頑張ってね、ユウ。応援してるよ」

 

あっさりスルーされ、ユウは本日何度目か分からないため息を溢すのだった。

 

 

 

 

 




どうだったでしょうか?
誤字脱字、おかしいところや間違っている所があったらご指摘よろしくお願いします_(..)_

次も読んでくれたら嬉しいです。それでは。
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