今回はちょっと長めに書けたので、楽しんで読んでもらえたら嬉しいです。
それではどうぞ♪
「戦闘・開始!」
審判役の教官の掛け声でユウとリーズシャルテは同時に前へ出た。するとリーズシャルテは素早く上へ飛翔しこちらに大砲を向けてきた。
ユウは驚き慌てて後ろへ下がる。
「いきなり撃つ気かよ...!」
機竜息砲《キャノン》。
いわゆる、竜の吐く強烈な炎をイメージさせる主砲。動力たる幻創機核《フォース・コア》からのエネルギーを充填して放つ、高熱と衝撃を秘めた一撃は、家屋一軒をゆうに吹き飛ばせる威力を持つ。
だが、発射までに"溜め"を要する分、回避行動までに十分な距離を空けられるか、防御の体勢を取られてしまう事が弱点だ。
本来ならここで一気に攻める事も出来るのだが、あえてユウはそうしなかった。
「(よく考えられている攻撃だな…。メインを主砲と見せかけての...)」
チラリと横を向きユウの死角の位置に浮遊している小型の赤い兵器を見る。そして...、
ドウンッ!!
発射してきた。ユウの考え通りにリーズシャルテが放った攻撃はあえてユウには当てようとせずにその少し横へと逸れた。ユウは相手に気付かれないように意識を横にへと集中させている。
リーズシャルテが不敵に微笑み、左手に握られている機攻殻剣をすかさず動かす。そして、浮遊している小型の兵器が一直線にユウへと向かってくる。
「甘いな」
浮遊している小型の兵器の攻撃はユウの神装機竜《レスティア》の翼によって阻まれる。その一秒後にリーズシャルテの右手から放たれた主砲の一撃はユウの少し横を通過し爆発する。
ドオオオオン!!!!
リーズシャルテはこの光景を見ていてゾッとしていた。完全に虚を突いた攻撃。完璧に裏をかいた戦法。相手も神装機竜、あれで勝ったとは思っていなかったが、機竜息砲《キャノン》の一撃を喰らえばただではすまない...そう思っていた。だが、見事なまでに防がれた。
「今のを防ぐか...」
リーズシャルテは浮遊している小型の兵器、空挺要塞《レギオン》を手元に戻し、計四機を周りに浮遊させている。
「まさか、ここまで完璧に防がれるとは...プライドが傷ついたよ…」
「それ...空挺要塞《レギオン》だっけ?出すタイミングがもうちょっと遅かったら危なかったな…」
「嘘つけ...それでも防いだだろう?」
...プライドが傷ついた?冗談じゃない。リーズシャルテは頭を横に振り、冷静に考える。
「(小手先の技では通用しないか…面白い!だったら、力で押すのみ!)」
リーズシャルテは空挺要塞《レギオン》をユウへ向けて一斉に突っ込ませる。リーズシャルテ自身は主砲での攻撃に徹する。
ユウは空挺要塞《レギオン》の攻撃を避けつつ、リーズシャルテに近づこうとするが、主砲の一撃がそれを邪魔する。さっきの攻撃を完全に防いだとは言え、向こうも神装機竜の使い手。やはり操縦のテクニックや空挺要塞《レギオン》の動かし方が上手い。
「(なりふり構ってる場合じゃないな…)」
ユウはまず先に空挺要塞《レギオン》から破壊しようと思った。空挺要塞《レギオン》を破壊すれば、こちらの勝率がぐんと上がる。
ユウは空高く飛翔し空挺要塞《レギオン》との間合いを取る。そして、
「"黒の雷閃"《ヘル・ブラスト》」
構えたブレードの先から黒い雷が放たれる。追っていた四つの空挺要塞《レギオン》のうちその二つが焼き焦がされてしまう。
「なっ...!?」
リーズシャルテの口から驚きの声が挙がる。壊されたのは壊されたのだが、壊され方が異常だ。
「(あんなものを喰らったらひとたまりも無い......。どうする......)」
リーズシャルテは急いで距離を取りつつ空挺要塞《レギオン》を下がらせようとするが……、命令が行っていないのか、中々こちらに戻ってこない。
「返すよ」
「……えっ?」
ガシャァン!!!
金属が叩きつけられるような鈍い音がリーズシャルテの真横で響いた。
リーズシャルテがそちらへ振り向くと先程まで無事であった筈の二機の空挺要塞《レギオン》が、ボロボロになって転がっていた。
「………」
言葉も出ない。後ろへ下がろうと少し視線を逸らした間に、無事であった二機も簡単に壊されてしまっていた。
最初は自分の方が強い…。そう思ってた。
男なのに女王陛下のお気に入りの騎士。それも…自分の母の。
戦闘が始まる前、純粋に強いと思った。
だから…。
「…ふぅ…私の《ティアマト》の本当の姿を見せよう…。本性を顕せ!《ティアマト》!!」
リーズシャルテが高らかに声を上げると、同時に周囲の観客席で、大きなざわめきが波紋のように広がっていく。
直後、《ティアマト》の周囲にパシッと光が走り、何かが転送されてくる。普段は負担が大きいため、使用を避けている付属武装。さっき構えていたキャノンよりも、更に二回りほど大きな主砲。それが《ティアマト》の右肩と右腕部に、連結――接続された。
「……へぇ」
七つの砲口を持つ、巨大な砲身。
女神ティアマトは、魔物の軍勢を生み従え、更に自身も七つの首を持つ竜となる。
「…七つの竜頭《セブンスヘッズ》。私の付属武装だ」
そこには、先程の絶対的な自信と威圧的な笑みはなく、相手を自分より格上だと認め全力を持って立ち向かう…挑戦者の姿があった。
その周囲には、先程まで四つだった空挺要塞《レギオン》の数も増え、十二機になっていた。本来なら十六機なんだろうが、ユウが四つとも壊してしまったため、空には十二機の投擲兵器が漂っている。
どうやらこちらの武装も、機攻殻剣によって追加転送されたらしい。
武装の数に比例して、負担や操作難度も倍増するのだが…。
「…流石…だな」
「これでも王族の神装機竜の使い手だからな…相当苦労したんだぞ?」
「…ハハッ、だろうな」
両者笑いながら話しているが、端から見ていた監査役の教官達はそれどころでは無かった。
「…ちょ、ちょっと待ちなさい!リーズシャルテ姫!相手を殺す気ですか?確かに雨宮君は強いですが…《ティアマト》の付属武装まで使ったら、いくら手加減をしても模擬戦の域を越えてしまう」
慌てて止めに入るが、リーズシャルテが手で制する。
「安心しろこの程度ではこの男は死なん。寧ろ武装の方が少ないくらいだ」
その言葉に監査役の教官達は驚きを隠せない。
「さぁ…第二ラウンドだ。行くぞ!!」
リーズシャルテが叫ぶと同時に機攻殻剣を振るう。瞬間、くるくると辺りを浮遊していた投擲兵器――、十二機の空挺要塞《レギオン》が一斉に攻撃を開始した。
◇◇◇◇◇◇
「…嘘でしょ?」
シャリスは冷や汗をかきながら、この模擬戦を見ていた。始まったと思えばいきなりのキャノン。そして死角からの攻撃を簡単に防ぐ。リーズシャルテ十八番の空挺要塞《レギオン》を破壊。今に至っては《ティアマト》の付属武装まで出す始末。
最早模擬戦の域を軽く越えていた。
「……ユウさん…凄いです」
「凄いわね…完全に模擬戦の域越えてるわよ…」
ノクトとレリィは驚きを隠せず模擬戦(?)を見守っていた。
「…で、でも…止めなくていいの?」
普段は軽い調子のティルファーも今回は慌てたように言う。
「…で、ですが…両者共普通に戦ってますし…」
アイリはチラリと横に座っている自分の兄を見る。思った通りに自分の兄ーールクスも驚く様子で試合を見ていた。
「…兄さん…。この試合…と言うより、あの雨宮ユウという人物をどう見ますか?」
「……わからない…。最初に会ったときはあまり気にはしなかったけど…。正直、あの強さはとんでもない…。一体どうしたら……」
ーーあんな強さを手に入れられるんだろう。
ルクスの呟きは妹のアイリにしか聞こえなかった。アイリは今のところルクス以上の機竜使いを見たことが無い。『あの人』は別だが…。だが『あの人』ですら雨宮ユウに勝てるか…。
「……アイリ?」
「あっ、いや…大丈夫です。兄さん」
いやいやと首を横に振る。自分の考えすぎだ、と…。
ユウ、リーズシャルテ両者の模擬戦(?)はもうすぐ佳境に突入する。しかし、二人の模擬戦(?)は違う形で幕を閉じることとなる。
◇◇◇◇◇◇
演習場のリングの中で、激しい熱風が渦巻いていた。発射された後、それ自身の推進力で攻撃を行う空挺要塞《レギオン》。追加された付属武装を含め、計十二機からなるその一斉攻撃を、ユウは剣や翼を使い器用に避けていく。
「ハハッ、流石だな」
リーズシャルテは楽しくて楽しくて仕方なかった。自分以上の相手が居ないとは言わないが、それでも自分を満足させてくれる相手は出てこなかった。
だからこそ楽しい。
ここまで楽しいと思えるのは何年ぶりだろうか?いや楽しいと思えた感情すらあっただろうか?
いや無かったな、とリーズシャルテは心の中で苦笑いをする。『あんなこと』が有ったのだ。しょうがない。
「なぁ…一つ聞いていいか?」
「どうした?」
「その神装機竜についてなんだが……。見せてもらう事は出来ないだろうか?」
「……えっ?」
ユウは一瞬ポカンとなるが各方向から来る空挺要塞《レギオン》により意識をハッとさせる。
「どう言うことだ?」
「いや…これでも私は技術者なんだ。技術者としてその神装機竜が気になってな…。この試合が終わったら少し見せてくれないか?」
なるほど、技術者か…。
『どうだ?レスティア』
『……遠慮しとこうかしら』
だよな~。バレたらちょっとめんどくさいからな。
「悪いな。この機竜はちょっと訳アリでな…」
「そ、そうなのか…」
戦闘の真っ最中なのだがリーズシャルテはズーンという効果音が似合いそうな程落ち込んでいた。初めて見るタイプの神装機竜だったので技術者として見てみたいと思ったのだろう。
「っと、それどころでは無かったな」
リーズシャルテは空挺要塞《レギオン》を下がらせると、少し距離を取る。
「……?」
「そろそろ終わらせないとな…」
リーズシャルテが呟くと、ユウめがけて機攻殻剣を振るう。
「雨宮ユウ。お前の強さに敬意を表し、私の《ティアマト》の神装を見せよう」
「……っ!?」
神装ーー。
その言葉を聞いた瞬間、ユウはほんの一瞬硬直する。
「神の名の下にひれ伏せ!天声《スプレッシャー》!」
高らかな声と同時にユウの身体は一気に空から地面に落ちた。
「……マジかよ……?」
とっさに踏み込んだ装甲脚がその足場ごと沈み込んだ。余りの力に手をつく始末。
改めて神装の力は絶大だなと考えさせられるほどだ。
『神装』
神装とは、神装機竜だけに秘められた特殊能力。その能力は神装機竜の種類だけ存在すると言われ、個々の正体はほとんど知られていない。
装甲機竜と共に全身にかかった強烈な負荷、それに地面を陥没させるほどの力、《ティアマト》の神装は、重力を制御するみたいだ。だが、重力を制御するだけでは無さそうだ。他にもある気はするが、今は追及しないでおこう。
ユウはどうやったら抜け出せるものか周りを見るが、周りには十二機の空挺要塞《レギオン》が浮遊している。
まぁ俗に言う詰みというやつだ。
「(さて…どうしたものか…)」
ユウはここで自分の神装を使ってもいいなと思ったのだが、
「(無理…。範囲広すぎるし、何よりこんな『大勢』の前では使えない)」
ユウは思考を切り替え、どうにか脱出しようと試みる。
「ふっ…流石のお前もこれにはお手上げだな」
リーズシャルテは七つの竜頭をユウに向ける。リーズシャルテはこれで勝ったと思ったのだが、
ガクン!!
不意に《ティアマト》を纏ったリーズシャルテが横に傾いた。
それと同時にユウにかかっている重力の力が解除される。
「……えっ?」
リーズシャルテは何が起こったのか分からず自分の機竜を見つめていた。
「(不味いな……。暴走か?)」
ユウは一瞬でリーズシャルテの機竜の状態を読み取り、完全に暴走する前に装甲機竜を解除させようとリーズシャルテに注意を促そうとするが、そこに決して起きる筈のない異変が起きた。
ギィイイイイエエエエェェエアアアアァァッ!!!!
「……!?この声はーー」
雲を縦に貫き、獣の絶叫が降りてくる。
演習場の高い空から人ならざる乱入者がリーズシャルテめがけて突っ込んできた。
どうだったでしょうか?
感想、ご指摘がありましたらよろしくお願いいたします。
あと、最弱無敗の神装機竜のアニメ化が決まりましたね♪とても嬉しいです♪
罪と罰の方も近々投稿しようと思ってます。
次も読んでくれたら嬉しいです♪それではまたm(__)m