「一先ず、此処を出るぞ」
「おうよ!」
『なん・・で、や、嫌ぁ・・・ッ!』
殺してくれと
黙っている内に外が騒がしくなったのに気付いた彼らは、私を強引に連れ去った。
何が目的か聞いても答えてくれず、最早恐怖しかなかった。
屋敷は愚か、5つの頃から牢屋からも出れなくなっていた私にとって、人間など畏怖の対象でしかない。
されるがままに運ばれていく内に、意識は暗闇へと落ちていった。
「・・起きたか」
『ッ・・!』
「いま団長呼ぶね、此処で待つよ」
次に目が覚めたのは、薄暗い部屋だった。
視線を巡らせれば見るからに廃墟と言える場所なのに、雲のような心地良シーツやマットに寝かされている。
横で本を読んでいた黒髪の男性は、訛りのある口調を隠そうともせずに私に声をかけて部屋から出て行った。
逃げなければ。
半ばパニックになりながらも そう考え、掛けられていたシーツを捲って初めて自分の格好に気付く。
綺麗で着心地の良い布が私の身を包んでいて、楔の打たれていた足首に目を向ければ、丁寧に包帯が巻かれていた。
「調子はどうだ?お姫さん」
『!!?』
あまりの優遇に目を白黒させていると、不意に真横から声をかけられる。
悲鳴も出ないほど驚いて見上げれば、額に包帯を巻いた男性と目が合った。
先程の彼と違う、と、そのまま見つめ合うこと数十秒。
先に口を開いたのは包帯の彼だった。
「予定では君に色々聞かれる筈だったんだけど、上手くいかないね」
『っえ、あ、ごめんなさい・・』
肩を竦めて笑いかけてくる彼に恐縮して謝れば、別に気にする事じゃないと頭を撫でられる。
だが私はそれにも驚いてしまって、つい頭を振って逃げてしまった。
相手がどんな人間かも分からないのに そんな事をするなんて自殺行為に等しいだろう。
「・・俺ってそんなに嫌われてる?」
「その子からしたら当然の反応だろ」
冷や汗を掻く私と、頬を掻く彼の背後から桃色の髪の女性が現れた。
いちいち身体をビクつかせる私と違って、目の前の彼は驚く素振りも見せはしない。
「マチ、どうして此処に?」
「服が出来たからね、最後にサイズを見合わせようと思ったら・・・起きてたのは都合がいい」
「あぁ、なら俺は出て行くよ」
「そうしてくれると助かるよ、団長」
素っ気無い返事の彼女に、団長と呼ばれた彼がブツクサと文句を言いながら出て行く。
それを見届けたあと、マチと呼ばれていた彼女が折りたたまれた着物を差し出してきた。
「一人で着れるかい?あ、あと今アンタが着てる襦袢(肌着)のサイズは?」
『え?えっと、サイズはピッタリで、一人で着れます・・』
「ならコレも丁度良いね、着終わったら声を掛けてくれ」
言うだけ言って彼女も部屋から出て行ってしまい、中には着物を渡された私が一人だけ。
冷静に考えれば、地上で数知れない気配が無くなっていって、彼らは主犯だ。
逃げられる筈も無い。
とりあえず刃向かって殺されるのは嫌だから、とベッドに着物を置いていく。
一瞬だけ不安が過ぎったけど、広げる其れらは私でも知っているものだった。
今着ている
把握して、着替えるのに時間は掛からなかった。
『お、終わり、ました・・・』
「ん?ああ、やっぱり似合うね」
アタシの見立てに狂いは無いね、と言いながら部屋に入ってくる彼女と、それに続いて入ってきたのは先程の黒髪の男性と、団長と呼ばれていた男性だ。
そのまま彼女に、アンタはこっち、と手を引かれてベッドに座らせられると、背後で手際よく髪紐を弄り始められる。
されるがままの人形になっていると、コホン、と目の前に座った団長さんが咳払いをした。
「あー・・、起きたばかりなのに済まない、俺はクロロ。幻影旅団団長を務めている」