あれから丁度6年が経った。
今日はシンの誕生日だ。
言っても、彼女の本当の誕生日なんて知らないから、旅団に入った日が誕生日という事になっている。
しなくても良いと彼女は言うが、毎度盛大に祝うのは最早 習慣と化していた。
地獄のような人生を たった一人で歩いてきた彼女と、それをパクノダを通して目の当たりにした俺達。
これでもまだ足りない等と思ってしまうのは贔屓に他ならないだろうけど。
それでも俺の横で嬉しそうに本を読むシンに、つい頬が綻ぶ。
まあ、それも俺だけではないから、何も言われる事等ないのだが。
「ああ、シン此処に居たのかい」
『マチ、どうしたの?』
「いや、パクが探してたから伝えておこうと思ってね」
『分かった、行ってきます』
マチの言葉にパタンと本を閉じて、駆足で出て行くシンを見て、マチも感慨深いといった顔をしていた。
そして俺の視線に気付いたのか、照れくさいとばかりに顔を背けられる。
奴もまた、旅団に入ったばかりの頃のシンを思い出すのだろう。
「随分と立派に育ってくれたものだ」
「爺臭い台詞だね・・・分からなくもないけどさ」
肩を竦めてからかう奴に笑みが零れる。
俺にとっても、結成時のメンバーにとっても、彼女を育てたと言った所で過言ではない感情を持っている。
「名を与え、生きていく術を与え、過ごしてきたんだ。当然だろう」
「それ、どうせ名を与えたのは団長なんだろ?」
「当たらずとも遠からずって所だな。まだ誰にも言ってなかったのか、アイツは」
実のところ情報をくれたのはフェイで、決めたのが俺。
よって俺一人が与えた名前ではない。
〔呼び名が鬼子じゃ可哀想だと思わないか?フェイ〕
〔・・ワタシに何させるつもりカ?〕
〔さーてなんだろうな?〕
〔・・・〕
〔・・・〕
〔・・鬼は子だけじゃないネ〕
〔ああ、いつかの文献にも鬼の神という言葉を見たことはあったな〕
〔・・・〕
〔・・・〕
〔・・神、シンとも読むヨ〕
〔決定だな〕
偶々貸した本を返しにきたフェイタンを捕まえてそんな会話をしたのは、確か連れ去った初日だったか。
奴が嫌がるのは目に見えていたから、シンには名付け親の事は秘密だと言っていたのだ。
未だに黙止しているとは思わなかった。
「そういえば、パクは何でシンを探していたんだ?」
「ああ、そりゃあ・・〔きゃーっ!!〕・・・な、何だい!?」
そのまま話し続けて数分、未だ戻らないシンを不審に思って聞いてみる。
それに答えようとマチが口を開くが、それは正に当の本人の悲鳴で掻き消された。
驚きつつも即その場から離れてマチと共にシンの元に向かうと、広間で馬鹿デカいテディーベアを抱えて喜ぶシンが居た。
日ごろ無表情の彼女からは想像も出来ないほどの笑顔が見える。
「あら、団長・・・どうしました?マチも汗掻いてるけど、何かあった?」
「・・いや、何でもない」
「心配して損したって所さ」
「なるほどね」
絶を用いて全力で走ってきたからか、俺達の言葉を聞いてから納得するパクに若干の照れくささが出る。
シンの実力は知っているが、知っているからこそ悲鳴には驚かされた。
それほどまでに喜んでいるなら別に良いのだが。
「喜んで貰えて何よりだぜェ!」
「楽勝だったしなァ!」
「こうしてみると、シンの方が小せェな」
「縫い包みの話ならワタシ見るの止めるヨ」
確かにシンの身体より二回りほど縫い包みは大きいが、ウヴォーが運べばもっと小さく見えていたのだろう。
シンが喜ぶのを嬉しそうに見るウヴォーとノブナガ、フェイタンを挑発すつフィンクスも広間に居た。
大の男が4人も揃ってクマの縫い包みを盗りに行ったのか。
「今年も愛されてるねぇ、シン◇」
『あ、ヒソカ』
段々と団員が集まり始めた頃、ごく自然な流れを装ってヒソカがシンに近付いていく。
シンを青い果実と言う奴が近付いて、警戒するのは皆同じか。
「今年は青い薔薇を持ってきたよ☆」
『わ、わ、ありがとう・・!』
いや、本人だけは違ったか。
頭上で指を鳴らして青薔薇を降らせるヒソカに、シンは素直に喜んでいる。
その周辺は柄の悪い殺気で篭っているというのに。
「君は会うたびに美味しそうになるね☆」
『本当に?やった、皆のお陰だね』
「んー、ボクが言ったのは強さの事だけじゃないんだけど・・・◇」
縫い包みに身体を沈ませて薔薇を堪能しているシンを見下ろして、ヒソカが舌舐めずりをする。
そこまでされて危機感が無いなんて、世界中でも彼女くらいだろう。
現に不自然に伸ばされている奴の腕に気付いていないのだから。
「そこまでだぜ、ヒソカぁ・・」
「シン、ケーキ買ってきたよーっ」
『ケーキ・・!?』
「あらら☆」
そんな奴の腕を掴んだのはフランクリン、シンを呼んだのはシャルナークだ。
どうやらバースデイケーキを買ってきていたらしい。
ソレに見事に反応したシンはクマを抱えてシャルと厨房に消えていってしまった。
勿論、青薔薇の花弁を振りまいて。
「毎度思うけど、シンってこの日だけは人が違うみたいだよねー」
「シン曰く、自分が生まれ変わった日らしいからな」
「言い得て妙だが、間違っちゃいねェな!」
シンを見送ったあと、シズク、フランクリン、フィンクスの会話を聞いて、改めて思った。
彼女が、