現在時刻13時21分。天気は雨。お腹は満腹。
そして場所はヨークシン郊外にコルトピが作ったアジトで、団員達と腕相撲をしている。
とはいえ私の番はもう終わって、どうせ今回もワースト1をコルトピと二人三脚するに違いない。
だから私には私なりの力試しをする事にした。
「ボノレノフが四角形でダウンだねー」
「念を使ってやっと三角形破壊だから・・シンの言う籠目で囲まれたら出れねぇな」
じゃあ次!
順位が決まって同じく暇になったシャルナークが進行役をしてくれたお陰で、難しいことは考えずに式札を配置できる。
今度は誰かな、と周りを見ると、肩の骨を鳴らしながら近付いてきたのはウヴォーギンだ。
「最初から全開で頼むぜェ?」
『お手柔らかにー』
「ウヴォーの場合、全開より全壊したいだけでしょ」
「違ェねェ!がっはっは!!!」
軽快に笑い飛ばしながら中央に立ってくれるウヴォーを確認して、丁寧に等間隔を意識して式札を貼っていく。
うぅん、ウヴォーなら五芒星スタートで良いかも・・。
『
「おおっ!来た来たぁ!」
練ったオーラで閉所を作られているのだから結構な威圧感で満たされている筈なのに、ウヴォーは至極楽しそうに壁を殴りつける。
周期の空気どころか手の平を合わせて祈る私の腕もビリリッ!!と痺れが走った。
それでも一応まだ壁は崩れちゃいない。
「耐えたなァ? ならもう一発だ!!」
『く・・ッ!!』
更に大きく振りかぶるウヴォーにビビりざるを得ないけど、だからって解いたら実践では死を意味する。
耐えなきゃ・・!!
ガツン!!!!!!
『ッくぅ~~・・・ッ!!』
「・・・んあ?まァだ壊れねぇのか!!?」
「あー、コレじゃあウヴォーの負けだね!」
「おいおい、マジかよ!」
悲嘆するウヴォーを余所に、右手を上げて終了を促すシャルナークを見てやっと発を解く。
直後に式札は光を止めてボロボロな紙切れに姿を変えた。
この式札は私の念を増強させる役目があるから、そのぶん時間と丹精を込めて作っている。
だから相当な事でもない限り、式札自体が発の最中に壊れてしまうなんて難しいのだけど・・・。
『危なかったぁー・・』
フー、フー、と熱くなった手の平を冷ますように息を吹きかけていると、今度は身体を覆うように影が掛かった。
条件反射でパッと見上げれば、そこには眉のない極悪人がいた。
「今度は俺だな」
『シャルー、フィンが私を苛めるよー』
「テメッ、逃げる気か!」
『ちぇー・・』
渋々といった顔で新しい式札を設置する私に、シャルナークは苦笑いを零す。
こうなったら意地悪しちゃうから良いもんね。
時間を掛けないようにさっさと式札を貼り付けて、フィンクスに真ん中に立つように声を掛ける。
くっくっく、そこに立ったが運の尽きぃー!
『
「・・・おい、ちょっ、待ちやがれ!シン!!!」
『待たないもん』
発をしながら焦るフィンクスに舌を出すと、当然ながら彼の額に青筋が浮かぶ。
何でかって?
それは今フィンクスを取り巻いてるのは10角の四複合正角形型・・・・・・つまり何かの結晶の如く幾重にもツンツンした非常に密度の高い芒星を、フィン一人の為だけに描いてあげたのだ
後が怖いけど、そうなったら逃げるのみ!
「これ、計算からして軽くウヴォーの三倍は厚い壁になってるはずだよ」
「はぁ!?何だソレ・・!」
最初から
ウヴォーだって硬くらいで
『フィン、大人気ない!』
「あ゛ァ゛!!?」
ビシッと指差して言えば、ドスの効いた声を上げながらもグルグルを止める彼にホッとする。
だけど油断は禁物だ。
すでに10回近く回してたのだから、生半可な攻撃の筈はないのだから。
「行くぜ・・!!」
『・・・!!』
腰を低く構えて一気に拳を突き出すフィンクスに、こちらも腰を低くして衝撃に耐える。
酷い破壊音と亀裂のような音がしたけど、流石に腕への衝撃はない。
そりゃそうだ、これだけの札を使って如何柄模様を作ったのだから、こちらに影響が出たら私は自信喪失で二度とコレを使わなくなるだろう。
「チッ、選手権は後1発かよ・・」
「無理だと思うけどねぇ」
シャルの追討ちに青筋を更に浮かばせて、もう一度腕を回し始めるフィンクスに心臓がバクバクする。
この実践のような緊張感と恐怖感・・最高だけど・・・・・・。
「おら、ッ『~~っ無理!』な・・ッ!!?」
ウヴォーの後で腕が痺れているのと、さっきの一撃に何の被害もなかったのが逆に怖くて、寸での所で左右の手平をパッと離す。
それによって、殴る予定の物が無くなったフィンクスは勢いそのままに床へと綺麗に ずっこけてしまった。
一部始終を見ていたシャルナークは勿論、ノブナガもウヴォーギンも抱腹絶倒し始める。
対して私は、フィンクスが地面を殴った事の揺れと空気の振動で震える鼓膜を塞いでいたのに、次の瞬間には背後に殺気を感じた。
振り見れば、眉のない鬼の様な眼光が私を見下ろしている。
刹那、滝のような汗が流れた。
「よう、どうした酷ェ顔色だぜ」
『あ、お気になさらずぅー・・・・・・駄目?』
「ああ、許されねェな」
最高に悪い笑みを浮かべながら片手で俵のように担ぎ上げられて、サーッと血の気が下がるのを感じるが、降ろされるはずもなくて。
『シャル助けてー!フィンに殺されるー!』
「うーん、これはシンが悪いかなぁ・・」
『ノブナガー!』
「受けてもねェ痛みを避けちまったのが最後だなっ!」
『ウヴォー!』
「実践なら死んでたかもしンねェぜ?」
『ボノー!』
「簡単な防御でも教わってこい」
『ぼ、防御なら土蜘蛛に任せてるから大丈夫だよー!!!』
広間からフィンの部屋に運ばれる私に、皆が小さく合掌をする。
この裏切りものー!!と叫ぶ私の耳には、慢心するなよーと茶々を入れるノブナガの声は届かなかった。
「で?どうしたのさ」
『結局、あのあとフィンの昼寝に付き合わされた・・うぅー・・・』
「ははっ、そりゃご愁傷様だね」
『笑い事じゃないよ、マチの馬鹿・・っ』
「悪いね、笑わずには居られないんでさ」
『酷いー・・!』