血盟騎士団本部。なんだかんだて俺はここが一番落ち着く。屋根の上でお昼寝中だ。そんな俺にゴチン☆とゲンコツが降ってきた。不機嫌そうにそっちを見るとアスナが腰に手を当てて怒っていた。
「…………何」
「何じゃないわよ。これからフィールドボス攻略会議って言っておいたはずよ」
「俺はパスだと言ったろ。暇じゃねぇんだよ」
「暇オーラ全開の姿勢で言う台詞!?」
「今日は昼寝の日なんだよ。月、火、水、金、土曜は昼寝の日だ」
「昼寝ばかりじゃない!」
「日曜と木曜は非番だ」
「それ毎日非番じゃない!」
「そもそも、団長からは俺は自由にしてていいってちゃんと許可もらってんだ。副団長様に何か言われる筋合いはねぇよ」
「総隊長のあなたがその態度だと、他の血盟騎士団の指揮が上がらないのよ!」
「そんなの俺のせいじゃねぇだろ。俺を総隊長にした団長が悪い」
「そもそも、どうしてあなたが総隊長なわけ?あなたの実力なんて私は少なくとも見たことないんだけど?」
「少なくともお前よりは強ぇーよ」
それだけ言うと、俺は再びゴロンと転がる。が、バランスを崩して止まらない。
「ああああっ‼︎お、落ちるぅううううッッ‼︎‼︎」
そのまま屋根から落ちそうになったが、ガッと足をアスナに掴まれた。おかげで、プラーンとぶら下がる俺。
「お、おお……助かった」
「あなた、さっきのは聞き捨てならないわね」
「………あ?」
「勝負しなさい」
「やだよ」
「怖いんだ?負けるのが」
「超怖い。俺の負けでいいから」
「わたしがよくありません。戦いなさい」
「なんでもいいから起こしてくれない?」
で、屋根の上。
「じゃあこうしましょう。わたしが勝ったら会議に参加しなさい。負けたら好きにしていいわ?」
「じゃ、会議に行くか」
「は、はぁ!?」
「そんなめんどくせー事するくらいなら会議に参加してやるよ。おら行くぞ」
「………ッ」
で、会議。しばらく会議が進む中、セレナはただ天井を眺めていた。
(なんで洞窟で会議やってんの……)
なんて思いつつ、セレナはハナクソをほじくる。
「フィールドボスを、村の中に誘い込みます!」
アスナがそう言うと、周りのプレイヤー達は騒つく。
「ち、ちょっと待ってくれ!」
と、言うのはキリトだ。
「そんな事をしたら村の人達が……」
「それが狙いです」
アスナがキリトの台詞を遮る。
「ボスがNPCを殺している間に、ボスを攻撃、殲滅しま……」
言いかけたアスナのおデコに何か黄緑のものが付着した。首を傾げてそれを取ると、ハナクソだった。
「あ、悪い副団長様」
ブフッと吹き出す周りのプレイヤー。
「と、とにかく!」
と、赤面してアスナは言った。
「この作戦で行きます。いいわね?」
その後も会議は進み、キリトとアスナがぶつかりながら、いやアスナとセレナもぶつかったけど(別件で)、会議は終わった。
59層。そこの屋台。俺はたこ焼きを買うと、その辺のフィールドに出た。すると、バッタリキリトと出くわした。
「あっ」
「……」
「何してんだこんな所で」
「見りゃわかんだろ。たこ焼き買ったんだよ。せっかくだから外で食おうと思って。お前は何してんのこんな所で」
「昼寝だ。今日はアインクラッドの最高の季節の、さらに最高の気象設定だ。こんな日に迷宮に潜ってちゃ勿体無い」
「あーそれ遺憾ながら同意するわ」
「お前は今日に限らずいつも迷宮区にはいないだろ」
なんて話しながら、キリトはその場で昼寝し、俺は木の上でたこ焼きを食べる。
「何してるのよあなた」
声が掛かった。見ると副団長様がキリトを見下ろしている。どうやら俺には気付いてないようだ。
「攻略組のみんなが必死に迷宮を攻略してるっていうのにあなたはどうしてこんなところで居眠りこいてるわけ?」
「また同じこと言わなきゃいけないのかよ……」
「何言ってんの?」
「さっきセレナにも同じ事言ったんだよ」
「あなた、セレナくんを見たの?何処にいたの?」
すると、キリトはまっすぐ上を指差す。釣られて上を見るアスナ。俺はたこ焼きを(わざと)落とした。それがアスナの口にポフッと納まる。
「あっづ!」
ぽえっとたこ焼きを吐き出すアスナを見下ろしつつ、俺はたこ焼きを頬張った。
「たこ焼き……?って、セレナくん!あなたは血盟騎士団総隊長でしょ!?こんな所で何してる……ってかなに食べてるのよ!」
「あっふ……ふぁふぉやき」
「そうじゃなくて!あなたも攻略を手伝いなさい!」
「もっちゃもっちゃ……ゴクッ……ふぅ、もう一個、あむっ」
「いやもう一個じゃないわよ!」
「副団長も食べまふ?」
「その『まふ?』がムカつく!」
「おーいセレナ。一個ちょうだい」
キリトが手を大きく振る。
「もぐんぐっ……ゴクッ……欲しけりゃ頭地面に擦り付けて土下座しろ」
「誰がやるか!そんな事するくらいなら自分で買うわ!」
で、さらにもう一つ口に入れる。
「だから食べてないで手伝いなさいよ!」
「ふざけんな。そんなめんどくせーことするくらいなら下の毛の本数数えたほうがマシだぜ」
「その方が100倍めんどくさ……っていうかなんて例えするのよこのヘンタイ!」
顔を真っ赤にするアスナとキリト。俺はたこ焼きをさらに頬張る。
「うまっ」
「いやだから食べてないで……!」
「まぁそう言うなよ副団長。ようは考え方だ」
俺はそう言った。すると、怪訝な顔をするアスナ。
「確かにデスゲームだなんだって言うのも分からなくないけど、俺からすればこれは現実となんら変わらない」
「えっ?」
「死んだら終わりなんて現実と変わらないだろ。ていうか、現実の方がつまらない。いつも同じことの繰り返し、起きて学校行って帰って来る。そんなんならこっちの方が全然刺激がある。そう考えればこの世界も楽しめるだろ」
「……………」
「今は、俺たちにとってこの偽物の世界が本物なんだから」
言うと、二人は何故か黙ってしまう。
「そうか、そんな考えもあるのか……」
キリトが納得したように呟く。
「でも副団長。あんたは俺やキリトみたいにちゃらんぽらんにはなるな」
「えっ……?」
「俺から断言させてもらうけど、このSAOのプレイヤーの中でキリト、アスナ、ヒースクリフ、俺の四人はズバ抜けてる。団長は何考えてるかわからないし、キリトは呑気だ。トッププレイヤーでまともなのはあんただけなんだよ」
「えっ………」
「だから、もっと肩の力抜いていいとは思うが、あまり気は緩めるな」
「「………………」」
気が付けばしんみりしていた。
「なんだよ」
「なんか、セレナが……」
「まともなこと言ってる……」
「てめぇらぶっ殺すぞ」