死の森。なんてナントカポッターに出てきそうな名前じゃなくて、どっかの墓場。俺とアスナはそこに到着した。
「つまり、耐久値がなくなるタイミングで転移結晶で消えたと?」
「そうだ」
「なるほど……それなら……でもよくわかったわね」
「おかしいと思ったのはヨルコさんがやられた時だ。ヨルコさんは昨日の夜から圏内から出てない。それなのに腰にあんなパチモンくせぇ剣が刺さっただけで死ぬとは思えないだろ。俺の投剣でも攻略組に入ろうとしてた奴らを一撃で殺すなんて出来やしねぇ」
「なるほどね……」
「で、マズイってのはカインズの周りに6人プレイヤーがいる。内、二人はおそらくカインズとヨルコさんだ。となると、残りの四人は誰か分からない。いや、グリムロックかな?その周りに不自然に配置された三人は気になるだろ。お前は少し離れたところの1人を頼む。残りの奴らは俺がやる」
「分かった……無理はしないでね」
で、俺とアスナは森で別れた。しばらく走ると、シュミット、ヨルコ、カインズ、そして見たことある三人の仮面のプレイヤー。倒れてるのはシュミットか。
「頭ぁ、なんか近付いてきますよ」
「あぁ?」
「なんだ。誰かと思ったら棺桶か」
歩いて近付く。
「おい、誰だありゃ」
「血盟騎士団の総隊長ですねィ。ですが、そんな強くねぇっすよ。目立った戦績もありませんし」
「死体が、増えるだけだ、な」
「まぁいい。kobの総隊長っていうなら少しくらい楽しめるよなァ」
と、まぁ舐め腐った声が聞こえる。俺はゆっくり太刀を抜いた。
「おい、お前らに一つ教えといてやる」
「アァ?」
「俺はボス攻略含めて、これまで本気で戦ったことなんて、実はなかったりするんだぜ」
その瞬間、俺は太刀を抜いて斬りかかった。慌てて向こうはガードするが、その剣をすべて破壊した。
「ンなっ……!」
「さて、お前らは何人もプレイヤー殺して来たんだ。お前らがここで殺されては文句は言えねぇよな」
言いながら俺は太刀をラフコフの連中に向ける。
「ま、待てよ!こいつらぶっ殺すぞ!」
「何勘違いしてやがる。俺はそんな奴らどうだっていい」
「…………ッ‼︎」
そんなときだ。
「セレナくん!早まらないで!」
アスナがグリムロックを連れてやって来た。
「チッ、副団長まで来やがったか……退くぞ」
そのままラフコフの連中は消えた。すると、アスナが俺の後頭部にパンチを入れる。
「馬鹿なこと考えないで!あなたがレッドプレイヤーになったら……!」
「大した問題はねぇだろ」
「あるわよバカ!」
すると、ヨルコさんがこっちを見た。
「全部終わったら、あなた達に報告するつもりだったの。ごめんなさい」
「ふざけんな。全員ケツバットだコラ」
「そう言われて仕方ありません。しかし……」
「良いから全員こっちにケツ向けろ。さもないと生のケツに……」
「やめなさい!バカ!」
で、アスナはシュミット、ヨルコ、カインズに向き直る。
「さっきの連中はこの人が呼んだのよ。貴方達を殺せと」
その男は恐らくグリムロックだろう。
「それだけじゃないわ。グリセルダさんを殺したのもこの人」
「そんな……」
声を漏らすのはヨルコさんだ。
「グリムロック!どうしてあなたはリーダーを……奥さんを殺したの⁉︎どうしてお金のためなんかに……!」
「……………金?金だって?金のためではない。私は……私は、どうしても彼女を殺さねばならかった。彼女がまだ、私の妻でいるあいだに」
話を要約すると、この世界にとらわれてからグリムロックは怯えたものの、グリセルダさんは怯えるどころか生き生きしていたらしい。それにビビってブッ殺したそうだ。
「うわあ………」
思わずドン引きしたような声が出てしまった。
「何かな?探偵くん」
「いや探偵じゃねえし『くん』でもねぇよ。……なんか気持ち悪いなって思って…」
「ふん。君にもいずれ分かるさ。愛情を手に入れ、それが失われようとしたときにね」
「いや分かりたくねーよ」
と、言った俺の前にアスナが出て来た。
「いいえ、間違ってるのはあなたよ、グリムロックさん」
「そうだよお前。女ってのは少しくらい隙がある方が……」
「黙ってて。あなたがグリセルダさんに抱いてたのは愛情じゃない。ただの所有欲だわ!」
すると、肩を小さく震わせるグリムロック。ふぅ……これで終わりかな。その後、元黄金林檎の三人が、グリムロックを連れて去っていった。
「あーつっかれたぁ……」
「ねぇ、セレナくん」
「あ?」
「もしきみなら、仮に誰かと結婚した後になって、相手の人の隠れた一面に気づいたとき、君ならどう思う?」
「はぁ?別にどうも思わねぇよ。もう結婚しちまったんだから諦めて……あっ、いや物によっては慰謝料と子供の教育費ふんだくって離婚」
「あなたらしいわね……まぁいいわ。お腹空いたわ。どこかに食べに行きましょう」
「お前の奢りな」
「まぁ、今回はあなたのおかげだし、いいわよ」
「え?いいの?」
「ん」
思わず目をぱちくりさせてしまった。で、そのまま二人で森を出ようとした。が、その俺の襟を掴むアスナ。
「なんだよ」
振り返ると女性が立っていた。
「………あれ、確かここって、グリセルダさんの墓だったよね……」
俺の呟きを無視してアスナはその女性に言った。
「あなたの意思は、私たちが引き継ぎます。だから、見守っていてください。グリセルダさ……」
「おっ、おおおおお化けぇぇぇーー‼︎あ、あす、あすあすアスナ助けてコノヤロォォォッッ‼︎‼︎」
「えっ、お化け怖いの?」
「はぁ?怖くないけど?てか怖いって何?誰か教えてくれ、怖いという感情を……」
「はいはい、怖いのね……」
いつの間にか、亡霊は消えていた。