もし、俺がリンクスタートしたら   作:単品っすね

2 / 95
腹黒

 

 

 

三人はコボルトの群れを撃退し、街に戻っている。ていうか、あの後、フードの女の子がぶっ倒れて、キリトが女の子を運ばざるを得なかった。

 

「で、その女どーするんだ?」

 

「とりあえず、街の圏内に寝かせてやるしかないな」

 

「俺は帰って寝るから。じゃあな」

 

「待て」

 

「なんだよ」

 

「あんた、相当強いよな?だったら、攻略会議に来ないか?」

 

「会議?」

 

「今日の夕方、迷宮区最寄りのトールバーナの街で開かれるらしい。一緒に行かないか?」

 

少年は迷った。別に自分は攻略なんてどうでもいい。自分が楽しめればそれで。だから、素直に答えた。

 

「気が向いたらな」

 

「前向きに頼む。それと、名前教えてくれ。俺はキリトだ」

 

少年は答えた。

 

「セレナだ」

 

「そっか、よろしくな」

 

それで、セレナはその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺(セレナ)はしばらく町を歩く事にした。夕方から会議、か。一層のボス。まぁ、楽しむ目的で行けばいいか。

このゲームはデスゲーム、と周りは言うが、俺はそう思わなかった。死んだら終わり、なのは人生だってそうだからだ。むしろ、死んだら一発アウトのゲームをプレイなんてこれほど面白いことはない。だから、おれは楽しめる。

 

「おい、誰だ。そこの雑貨屋に隠れてるやつ」

 

声を掛けると、そいつは素直に出て来た。フードを被り、顔にペイントしてる奴だ。性別までは分からない。

 

「やるナ。オレッチの尾行に気付くナンテ」

 

「生憎、人の悪意には敏感だからな。で、何の用だクソガキ」

 

「なに、面白そうなヤツを見付けたから仲良くなろうと思っテナ。情報屋のアルゴだ」

 

「ほう。じゃあその情報とやらを見せてもらおうじゃねぇか。つまんねぇ情報だったら足を紐で括り付けて迷宮区うさぎ跳び二周させるからな」

 

「ホウ、やれるもんならやってミナ」

 

「………いいんだな?」

 

「えっ?……ちょっマジでやるの……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夕方。俺はキリトに言われた通り、トールバーナに行った。そこでは四十四人のプレイヤーが集まっていた。

 

「結構、人いるんだな」

 

「お、来たのかセレナ」

 

「えっと、誰だっけ。毛糸だっけ」

 

「キリトだよ!ていうかどんな間違い?」

 

で、咳払いするとキリトは若干笑って言った。

 

「やっぱり来てくれたか」

 

「まぁな。こんな面白そうなこと、参加しないほうがおかしい」

 

「面白そうな、こと……?」

 

フードの女が聞いてくる。

 

「あなた、分かってるの……?ここにいる人、全員命掛けてるのよ……?」

 

「それは俺も一緒だ。だからおもしれぇんじゃねぇか」

 

「怖く、ないの?」

 

「? 何が」

 

「死ぬのが……」

 

「死んだら終わりなんて現実でも同じだろ。一々、そんな事でビビってられるかよ」

 

「……………」

 

黙り込まれた。

 

「はーい!それじゃ、五分遅れだけどそろそろ始めさせてもらいます!みんな、もうちょっと前に……そこ、あと三歩こっちに来ようか!」

 

慣れた声がした。いや聞き慣れてるんじゃなくて、こういう場を纏めるのを慣れたような声。

 

「今日は、俺の呼びかけに応じてくれてありがとう!知ってる人もいると思うけど、改めて自己紹介しとくな!俺はディアベル、職業は気持ち的にナイトやってます!」

 

そう言ったのは青い髪の男。その瞬間、周りからドッと笑いが起こった。まぁ掴みは悪くないが甘い。俺はリアルで生徒会に入っているが、掴みを良くするために学年集会の生徒会長の挨拶の時に、後ろからズボンを脱がした事がある。結果、先生に無茶苦茶怒られそうになり、書記に責任なすりつけた。

 

「さて、こうして最前線で活動してる、言わばトッププレイヤーのみんなに集まってもらった理由は、もう言わずもがなだと思うけど……今日、俺たちのパーティがあの塔の最上階へ続く階段を見付けた。つまり、明日か、遅くとも明後日には、ついに辿り着くってことだ。第1層の……ボス部屋に!」

 

へぇ、もうそんなところまで来たのか。ただ暇潰しに俺はコボルト相手にSMプレイしてたから気付かなかった。

 

「一ヶ月、ここまで一ヶ月掛かったけど……それでも、俺たちは、示さなきゃならない。ボスを倒し、第二層に到達して、このデスゲームそのものもいつかきっとクリア出来るんだってことを、始まりの街で待ってるみんなに伝えなきゃならない。それが、今この場所にいる俺たちトッププレイヤーの義務なんだ!そうだろ、みんな!」

 

その声に、周りは手を叩く。まぁそれは俺も分かる。始まりの街にいる連中は全員、死ぬのが怖くて何もせずにジッとしているだけだ。そうなるのもわかる。すでに2000人が死んでいるから。そいつらを解放してやらなければならないのは確かにこのトッププレイヤーの連中だろう。

 

「ちょお待ってんか、ナイトはん」

 

関西弁が聞こえた。小柄ながらもガッチリした体格の男がディアベルの隣に立った。

 

「あの髪型、どうやってセットしたんだよ」

 

「俺に聞くなよ」

 

なんて俺とキリトがこそこそ言ってるが、そんなの聞こえてるはずもなく夜空に輝くお星様みたいな頭した男は言った。

 

「そん前に、こいつだけは言わしてもらわんと、仲間ごっこだけはでけへんな」

 

「こいつっていうのは何かな?まあ、なんにせよ意見は大歓迎さ。でも発言するなら一応、名乗ってもらいたいな」

 

「…………………ふん。わいはキバオウってもんや」

 

その瞬間、俺は思わず噴き出してしまった。

 

「ぶっ」

 

いやキバオウってなんぞや。てかモヤットボールでキバオウかよ……。頭からキバいっぱい生えてますけどォーー。

 

「なんやそこの黒髪!」

 

ビシィッ!と指を刺されてしまった。聞こえてたようだ。だが、反応はしない。

 

「………………」

 

「………………」

 

「お前や黒髪や!」

 

「呼んでるぞキリト」

 

「え!?いや俺!?」

 

「どっちでもええ!笑った方や!」

 

「おら呼んでるぞ」

 

「お前だろ!お前が笑ったんだろ!」

 

「お前それはねぇよ。人のせいにするのは良くないだろお前」

 

「お前っ……」

 

ビクビクするキリトと睨むキバオウ。

 

「まぁそれは後にしてキバオウさんの言いたいことを優先してくれないか?」

 

ディアベルが言うと、キバオウも「まぁええか」と呟いて全員に向き直る。

 

「チッ」

 

「お前舌打ちしたか?舌打ちしたよな?」

 

キリトが俺を睨むが、俺は平気な顔してキバオウを眺める。

 

「こん中に、5人か10人。ワビぃ入れなあかん奴がおるはずや」

 

「詫び?誰にだい?」

 

「はっ、決まっとるやろ。今までに死んでいった2000人に、や。奴らが何もかんも独り占めしたから、一ヶ月で2000人も死んでしもたんや!せやろが‼︎」

 

その瞬間、さわめいていたメンバーがピタッと押し黙った。あーなるほどな。要はベータテスターのことか。

 

「………キバオウさん。君の言う奴ら、とはつまり……元ベータテスターの人たちのこと、かな?」

 

「決まっとるやろ」

 

その瞬間、俺には関係ないと悟り、俺はぼーっと空を眺めることにした。しばらく空を眺めながら寿限無を心の中で唱えてると、キリトに服の裾を引っ張られた。

 

「………なんだよ」

 

「そういえばお前、アルゴと何かあった?」

 

「アルゴ?」

 

誰だっけ……あー、情報屋の鼠か。

 

「あいつがなんだよ」

 

「いやあいつがこのガイドブックを無料配布してたからな。絶対何かあったと思うんだよ。あいつが金も貰わずに情報を渡すなんて考えられないからな」

 

「お前の人のこと疑いすぎだろ。最低だぞ」

 

「人を身代わりにする奴に言われたくねぇよ!」

 

にしても、アルゴ…アルゴねぇ……。

 

「あぁ、つまんねー情報売ってきたから両足縛って迷宮区一周させた」

 

「…………は?」

 

「あの髭の意味を教えて来たからな。興味なかったからやらせた。まぁ興味あってもやらせてたけど」

 

「お前……ドSか?」

 

何を今更。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。アルゴによって配られた攻略本によって会議が再び始められた。また、ディアベルのパーティが迷宮区のマッピングをすませ、大胆にもボスの部屋を開けて顔を見てきたらしい。

まぁ、そんなこんなで会議が始まった。

 

「それじゃ、早速だけど、これこら実際の攻略作戦会議を始めたいと思う!何はともあれ、レチドの形を作らないと役割分担もできないからね。みんな、まずは仲間や近くにいる人と、パーティを組んでみてくれ」

 

ディアベルがそう言うと、俺はとりあえずキョロキョロを周りを見た。だが、周りはほとんど知り合い同士らしく、俺に声が掛かることはなかった。とりあえずテキトーに声を掛けようとすると、後ろから肩を掴まれた。

 

「セレナ。組まないか?」

 

「お前かよキリト……」

 

しかもこいつ誰とも組んでない。使えねー……。

 

「なんだよその言い方。俺だって人を盾にする奴となんか組みたくねぇよ」

 

「はぁ?」

 

「あぁ?」

 

二人で睨み合う中、「ねぇ」と声が掛かった。見ると、昨日のフードの人。

 

「…………あんたもアブれたのか」

 

「…………アブレてないわよ。周りがみんなお仲間同士みたいだっから遠慮しただけ」

 

「それをアブレたっていうんだよバカ」

 

俺は思わずそう言ってしまった。その瞬間、睨み付けて来る。

 

「バカ……?偏差値70以上をキープしてる私が、バカ?」

 

「俺だってそんくらいキープしてる。やだねー学力が高ければバカじゃないって思ってる奴」

 

「あぁ、それわかるわー」

 

俺とキリトが言うと、そのフードの女性は睨み付けてくる。

 

「あなたが、偏差値70……?」

 

「そうだ」

 

「…………問題。弥生時代の日本の名前」

 

「倭国」

 

「…………正解」

 

そんなん常識だろ。

 

「じゃあ俺から問題。天王星の衛星の名前を三つ答えろ」

 

「…………えっ?」

 

「分からなかったら20秒以内にパンを買ってこい。もちろんお前の金でな」

 

「……………っっ‼︎‼︎」

 

「はい、5、4、3、2……」

 

「…………い、いお…」

 

「それは木星だバーカ。はい、今から30秒以内にパン買って来い。遅れたら一秒ごとに500コル」

 

「え、ちょっ……」

 

「30、29、28……」

 

「お、覚えてなさいよー!」

 

「おい、その前にパーティ登録だけさせてくれ」

 

で、これから俺がパシる奴の名前が分かった。

 

【asuna】

 

「じゃ、今ので20秒過ぎた。あと10秒な」

 

「えぇっ!?今のは……」

 

「早くしろ」

 

「うわーん!もー!」

 

結局、6000コルもうかった。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。