軍の背中を俺たちはしばらく見つめていた。
「大丈夫なのか?あの連中……」
クラインが声を漏らした。
「平気だろ。ちゃんと帰ってくるよあいつら……土に」
「不吉なこと言ってんじゃねぇよ!」
キリトが声を荒げる。
「一応、様子だけでも見に行っとくか?」
クラインの判断で俺たちはここからボス部屋に向かった。
ボス部屋に着くと、なんつーか……惨劇?状態だった。
「おい、大丈夫か!」
キリトかま叫びつつ半身を乗り入れる。軍の連中はすでに二人消えてて、もはや戦いというより一方的な虐殺だった。
「何をしている!早く転移アイテムを使え!」
「だめだ……!く、クリスタルが使えない‼︎」
「なっ………!」
キリトが絶句する。なるほどね。とうとうそうなってきたか。と、思ったらコーバッツが声を張り上げた。
「何を言うか……ッ‼︎我々解放軍に撤退の二文字はあり得ない!戦え!戦うんだ‼︎」
「馬鹿野郎……‼︎」
「かぁーっこいいじゃん」
「言ってる場合か!」
「な……何とかできないのかよ……」
クラインが声を漏らす。そして、コーバッツが口を開きかけた時だ。
「全員……突げ……」
と、言い掛けたコーバッツの尻をセレナはケツバット。黙らせた。
「な、何をする……!」
反論しかけるコーバッツの胸ぐらを掴んだ。
「てめーの下らねぇ誇りのために人の命すてるんじゃねぇよ」
それだけ言うと、コーバッツを入り口にいるキリトに投げ渡す。
「おい、お前ら全員逃げろ。俺が食い止めてやるから」
「やめろセレナ……!」
「ちょうどいいじゃねぇか。俺だってボスとタイマン張りてぇし」
セレナは言いながら刀を抜いた。
「全員、出口へ走れッ!」
そう吠えると、エクストラスキルの斬撃をフルパワーで放った。それがボスに直撃し、一気に奥の壁まで飛んで行く。その隙に、風林火山の皆様が軍の連中を入り口まで逃した。奥にはまだ軍が2人ほどいる。
「セレナ!お前も戻って来い!」
キリトが声を張り上げるがセレナはむしろ突撃していった。
「オラァッ‼︎」
ボスとタイマン張るセレナ。その途中、軍の奴がボスにロックオンされるのに気づいた。
「チィッ!」
「うわぁっ!」
狙われてるのに気付き、腰を抜かすそいつ。それをセレナは庇って吹っ飛ばされた。
「ぐあっ!」
入り口まで吹っ飛ばされる。HPは三分の一ほど削れる。
「一撃でこれかよ……!」
さらに、ボスは逃げ遅れた軍の奴をロックオンしてる。
「クライン、アスナ、セレナ。十秒稼いでくれ!」
キリトが声を張り上げる。
「おう!」
「分かった!」
「なめんなよキリト。10秒どころか一時間は保たせてやらぁ」
「へっ、上等!」
そのままセレナとアスナとクラインは突撃。しばらく攻防戦。そして、10秒経った。
「全員下がれ!」
キリトの号令で三人はとりあえず下がる。すると、キリトは剣を二本持って突撃した。
「スターバーストストリーム……ッ‼︎」
キリトのエクストラスキル、二刀流が発動し、キリトはボスに斬られるのも構わずに16連撃叩き込んだ。
「…………ぁぁぁああああああ‼︎」
叫び声と共に最後の16連撃目をぶち込んだ。
「ゴァァァアアアアアアア‼︎」
叫び声を上げるボス。だが、お互いにHPがレッドラインまで残っている。
「キリッ……!」
声を上げ掛けたアスナ。その瞬間、クラインがキリトを担いで入り口に戻ってくるが、ボスも追いかけて来る。
「クライン!俺はいいから……!」
「馬鹿言うな!死んでも死なせねぇぞ!」
そして、ボスがトドメに剣を振り上げた時、ボスは真っ二つに割れた。セレナが正面から叩き斬った。ボス戦は、終わった。
「終わった、な………」
キリトが声を出す。相当お疲れのようだ。
「お疲れセレナ」
「おう」
俺はそんな素っ気ない返事をした。アスナがクラインに聞く。
「何人、死んだ?」
「二人、だな……」
「そっか……」
その瞬間、俺の胸ぐらをコーバッツが掴んだ。
「貴様!余計な真似をしてくれたな!貴様さえいなければ、あのボスは我々軍が……!」
と、言い掛けたコーバッツの腕を俺は斬り落とした。
「なっ……!」
「うるせーよ。てめーらがモタモタしてたから俺が先に殺しただけだろうが」
「貴様……ッ!」
「先に手を出したのはそっちだ。次はその首を飛ばすぞ」
言うと、コーバッツは悔しそうに手を離し、軍を引き連れて引き返した。
「大丈夫かセレナ?」
クラインが声を掛けてくれた。
「平気だ。ていうかあいつが大丈夫か?腕そこに落ちてるけど……あっ、消えた」
「チッ、あの野郎……礼も言わねぇで……」
ぺっと唾を吐き捨てるクライン。と、思ったら思い出したようにキリトと俺の方を見た。
「そりゃあそうと、オメェらなんだよさっきのは⁉︎」
「いやだから腕取っただけ」
「いやそっちじゃなくて。どっかの鷹の目みたいなことしてたじゃねぇか!キリトもだ!」
騒いでるクライン。
「……言わなきゃダメか?」
「ったりめえだ!見たことねぇぞあんなの!」
キリトが聞くがクラインは当然とでも言うかのように言った。
「エクストラスキルだよ。二刀流」
おお……とざわめきが走る。ていうかこいつのエクストラスキルカッケーな。
「しゅ、出現条件は」
「分かってりゃ公開してる」
キリトが声を漏らした。
「で、セレナ。オメェのは?」
「エクストラスキル、斬撃だ」
「そっちも出現条件は……」
「知らね。気付いたら出てた」
「しっかし……お前ら水クセェな、黙ってるなんてよ」
「いや聞かれなかったし……ていうかお前と俺、今日初めて会ったし」
「セレナ、何回かボス攻略で顔合わせてるぞ」
「へ?そなの?」
キリトの台詞に思わず声が出た。
「じゃ、俺は75層の転移門をアクティベートして行くけど、お前らは?」
「任せるよ。俺はヘトヘトだ……」
「ふざけんなクライン。俺が新たな大地に最初に足を踏み込む……」
言いかけた俺の口を塞いで、アスナが「お願いします」と、いった。そのままクラインは行ってしまった。
数日後のグランザム。俺とキリトはヒースクリフに呼び出された。俺の隣にアスナとキリトが座ってる。
「なんすか?」
「まずはこの前は大変だったね。お疲れ様。で、その事だがセレナくん。この前、軍から苦情が来たよ」
「はぁ?」
「ボスの討伐を横取りされた、と」
「ッ⁉︎何を勝手な……!」
それにアスナが反応して立ち上がった。
「団長、違います!セレナ君は軍を助けて……!」
「それは分かるが、軍はすでに街で君のあることないことをばら撒いている。血盟騎士団総隊長たる君が嫌われると、次のボス攻略から指揮が取りずらくなる」
押し黙るアスナ。
「だからセレナくん。君とキリトくんの二人掛かりで私とデュエルしたまえ。負ければセレナくんは総隊長から一般兵に降格、キリトくんは血盟騎士団に入ってもらおう」
「は、はぁ⁉︎ちょっと待った!それ俺関係ないじゃねぇか!」
キリトが立ち上がる。そりゃそうだ。
「もちろん、君達が勝てば褒美を与える。何がいい?」
それを聞くと、キリトは押し黙る。そして、顔を赤くしながら俺をチラチラ見つつ、いった。
「セレナを、しばらく…俺と一緒にいさせてくれ……」
「いいだろう」
おいキリトどういうつもりだ。
「それで、セレナくんはどうする?」
「俺、か……なら、俺が勝てば俺を団長にしろ。あんたは平だ」
「なっ……⁉︎」
「セレナくん⁉︎」
キリトとアスナが大きく反応するが、団長は顔をすましている。
「いいだろう。では、デュエルは明日だ」
さて、気合入れないとな。これで血盟騎士団は俺のもんだ。