キリトは自分のホームの前に立っている。中にはセレナがいる。だからこそ、キリトは困っていた。
(さっき、ぶっちゃけると怖かったセレナが中にいるんだやな。多分、機嫌悪いし、キレたばっかの奴と一緒にいるとなんとなく気まずいんだよ。でもここ俺ん家だし、もう疲れて寝てたいし、風呂入って寝てたいし、飯食って寝てたいし……)
軽くむんっと気合いを入れると、部屋に入った。
「ただいまー……」
「お帰りー」
言いながらセレナは寝巻き姿に下半身はパンツ、ベッドの上でごろごろし、右手には煎餅、左手にはジャンプ、両耳にイヤホンが刺され、イヤホンはウォークマンに繋がっていた。
「ってリラックスし過ぎだろ!てかジャンプとウォークマンどっから持って来た⁉︎てか、毎度毎度言うけどここ俺の部屋……って突っ込みきれない!」
「そんなんじゃダメだろキリトてめっツッコミ役ならなんとかしろよ使えねーな」
「ぶっ殺すぞお前!ここが俺ん家でお前は居候だと言うことを忘れるな!」
「そう、そのツッコミだキリト。褒めてやるからアレだ、ケーキ買って来い」
「ふざけろバーカ!お前ほんとに腹立つ!」
ゼーハーと息を切らすキリトをまるで無視してセレナはウォークマンを止めて聞いた。
「キリト」
「あ?なんだ?」
「お前、俺が怖くねぇのか?」
「どういう意味だよ」
「さっき、お前とアスナが止めなかったら俺は確実にクラディールを殺してた。それはお前も気付いてただろ?」
「まぁ、な……」
返事を濁すキリト。
「何かあったのか?」
「殺されそうになったから殺そうとしただけだ。苛めっ子には同じ気持ち合わせてやるのが一番だ」
「苛めじゃ済まないから。殺しだから。てかそうじゃなくて」
「…………」
少し迷った素振りをするが、すぐにセレナは言った。
「俺は、さ。女じゃん?」
「そうだな」
「だから小学生の時、よくいじめられたんだよ。だから俺はよく………」
(家で泣いてたのかな……)
と、キリトは思った。
「返り討ちにしてたんだよ」
(数秒前の自分にそげぶだわ)
「別に返り討ちにするのは楽しかったからいいんだけど、一回だけブチギレちゃってさ。謝るまで黒板にそいつの頭叩き付けてたんだけど……てか、今思えば頭叩きつけてたら謝れねぇな……」
「いいから話進めろ」
「その時に気付いたんだよ。俺、キレたら理性飛んでやり過ぎるって事が。そんなんだから親にも捨てられて今は一人暮らししてんだけど………あー、ちなみにナーヴギアは高校生が目の前で買って喜んでたの見てたらイラっとしたからボコしてパクった」
「それ、犯罪じゃね?」
「ふざけんな。むしろ身代わりになってやったんだ。MVPだろ」
「いや意味わからんし」
「まぁ、だからそういう事だ。別に何かあったわけじゃなくて、普通にやり過ぎるってだけ」
「…………そうか。ちなみに、さ……親とかいなくて、寂しくないのか?」
「ねぇよ。俺がそんな奴に見えるか?」
「見える」
「………………は?」
「さみしいから、人に構って欲しいから、ドS行為働いてるように見える」
「………何言ってんだばーか。支離滅裂どころか支離が爆散して砕け散ってんぞ」
「いや意味わかんねーから。あ、お前どこに住んでるんだ?」
「埼玉の川越の孤児院。今年で15だから卒業だ」
「俺と同じじゃん。だったらさ、うちに来ないか?」
「……………は?」
「母さんに聞いてみないと分からないけど、うちに住まないか?」
「お前それ本気で言ってんのか。レイジが勝手にセイの家にアイラ誘ってたようなもんだぞ」
「いや分かんねーよ。………まぁでもそういうことなら大丈夫だって。妹もいるけど、いいよな?」
「いや俺は助かるけど………本気か?」
「本気さ」
「……………一応聞いとくけど、エロい事とかそういうの目的じゃないだろうな」
「お前俺のことなんだと思ってるわけ⁉︎」
「男はみんな獣だ」
「お前も半分男だろ!男前な胸板しやがって!」
「うるせーよ。大体、お前俺は着痩せするからアレだけどスリーサイズは85・53・はちじゅ……」
「わーわー!聞きたくない!聞きたくないからやめろー!」
顔を真っ赤にするキリトを見ながらセレナは軽く微笑んだ。そのセレナにキリトはドキッとする。
「じゃ、約束な。俺、居候」
「…………あ、あぁ」
二人は小指と小指を交わらせた。2秒後、キリトの小指は180°回転していた。