別に忘れてたとか、やるのがめんどくさかったとか、でも今思えばユイがいないとALOクリア出来ないから仕方なくここでそう言っとこうとか、そういうのではありません。断じて。
「偵察隊が、全滅……⁉︎」
俺とアスナとキリトはヒースクリフに呼び出された。で、聞いたのはその一言だ。75層のボス部屋が発見され、慎重に五ギルド合同のパーティ20人に偵察させたらそのままサヨウナラだったらしい。
「……いよいよ本格的なデスゲームになってきたわけだ……」
「だからと言って攻略を諦めることはできない」
ヒースクリフはそう言った。
「攻略開始は3時間後。予定人数は君たちを入れて32人。75層コリニア市ゲートに午後一時集合だ。では解散」
「3時間かー。どうしよっか」
アスナが聞いてきた。
「じゃ、俺はその辺で寝てるから。時間になったら起こしてくれ」
「ブレないねー君は」
アスナに言われるが、俺は無視して屋根の上に登る。ようやくおもしろそうな敵と殺り合える。そう思うとつい、頬がニヤリと歪む。
「セレナ」
声がかかり振り返るとキリトが立っていた。
「………なんだよ」
「頼む。今回のボス攻略はここで待っていてくれないか?」
「却下」
「即答かよ」
「当たり前だろ。こんな面白いことに参加しないバカがいるかよ」
「お前は本当にブレないな……」
何を今更。俺はこのゲームを恐怖したことなんてない。いつだってゲーム感覚だ。
「で、なんでそんなこと言うの。今更何?」
「すまない……でも、お前には死んでほしくないんだ……」
「はぁ?テメェ俺が死ぬとでも思ってんのか」
「思ってない。でも……」
「そんなことより、お前こそ死ぬんじゃねぇぞ。俺の帰る家が無くなる」
「…………あぁ」
珍しく弱気なキリトに俺はなんとなくイラッとしたが、流す事にした。
で、3時間後。集合場所にキリトにおぶられて向かった。
「あぁもう!世話が焼ける!」
「きぃとぉ〜もうちょいゆっくり〜……」
「寝てる場合じゃねぇんだよ!」
ようやく到着。俺はキリトに降ろしてもらった。
「ふわあぁぁぁ……」
「お前、これから未知のボス戦だぞ……もう少し、なんつーのかな……キチッと出来ない?」
「寝過ぎた………」
「ほらセレナくん。総隊長として挨拶しなきゃダメだよ」
「えぇ〜……」
仕方ないので全員の前で挨拶する。
「俺たちの戦いには全プレイヤーの未来がかかっている!今、ボス戦もクリアし、また現実への第一歩を踏み出そうではないか!光へ手を伸ばし、希望を掴み、未来を勝ち取れ!俺たちがなぜここまで戦ってこれたか、それは信念と努力、そして硬い絆と、後は、まぁ、運だ!今回も、なんだ、そのっ、運で……いやウンコじゃなくて運と、絆と、努力と……なんだっけ、運と……そう信念と運で勝利を勝ち取ろう!えーっと、あとは………そうだ。この戦いも勝利すれば、かつて!じゃなくて、これまで亡くなってきた勇敢なる戦士たちも浮かばれよう!あとは、えーっとー……あれだ!信念と運と絆と運と……あれ、努力と運で勝利を勝ち取ろ……勝利を勝ち取るってなんだよ。握り潰そう!ジーク・ジオン!」
「長ぇよ!あと運が多い!ほぼ運か⁉︎ていうか後半になるに連れてグダクダ過ぎだ!」
『ジーク・ジォォォォォンッッッ‼︎‼︎‼︎』
「お前らもノルなよ!」
ツッコミが忙しいキリトとノリがいい周り。俺は仕事をやり遂げた顔でキリト達の元へ。
「よう!」
景気良くキリトでもアスナでもない声がした。振り返るとエギルとクラインがいる。
「なんだ…お前らか」
「なんだってことはないだろう!」
キリトの呟きに二人は反応する。すると、俺の肩にクラインが腕を回してくる。
「しかしセレナ!お前いい演説だったぜ!」
「あれって良かったの?完全にその場しのぎだったけど」
「みんな緊張もほどよく解けたみたいだし、これからの攻略の時は毎回あれやってくれよ!」
「いや毎回あんなんやってたら緊迫感なんてあったもんじゃなくなるんだけど」
褒めてくれるクラインと一々ツッコムキリト。そして、俺たちはボス部屋へ向かった。
部屋に入ると、中は真っ暗だった。全員が警戒したように辺りを見渡す。その瞬間、全員の頭上で爆発音が響いた。セレナがいち早く敵を見つけて斬撃を放ったのだ。
「上だ!」
「全員構えろ!」
なんて声が響く中、ボスが降りてきた。
「来やがったな」
セレナは不敵に笑い、ボスに突っ込む。その後ろに何人か付き、五人がファーストアタックを取りに行く。
「っ!」
いち早くセレナは攻撃を察知した。勘を頼りにし、ジャンプして攻撃を躱した。
「全員躱せ!」
セレナは声を張り上げる。後ろの二人は躱したが、残りの三人は直撃。その瞬間、三人とも消えて行った。
「一撃、かよ……!」
空中に舞い上がったセレナは空中からソードスキルを発動し、ボスの頭に叩き込んだ。さらに、後ろからキリト、ヒースクリフ、アスナ、クライン、エギルと続き、ボスとの決闘は始まった。
一時間後、ようやくボスは倒れた。全員が疲れたように腰を下ろした。
「あー……流石に疲れた……」
セレナも壁にもたれ掛かりながら座り込む。その横にキリトが座った。
「………14人」
不意に数字を言うキリト。セレナが視線で「なんの数字?」と、問うと答えた。
「死んだ奴だよ。これがあと25回もあるんだ……」
「100層の相手とかどんな奴なんだろうなぁ」
「本当にブレねぇなお前は……」
で、セレナはなんとなくヒースクリフを見た。凛として部屋の中央でただプレイヤーを、穏やかに見下ろしていた。無傷、というわけではないが、精神的な消耗など皆無と思わせるものがあった。
また、その視線はまるで精緻な檻の中で遊ぶ小鼠の群れを見るような。その時、セレナは思い出した。ヒースクリフと最初に出会った時、自分を一発で女だと見抜いたこと、そしてデュエルの時のあり得ない反応速度。その瞬間、キリトが動いていた。だが、その肩をセレナは掴んで、首を横に振る。キリトが驚いてるうちにセレナがが動いた。
ヒースクリフに向かって斬撃を放った。飛んでいき、ヒースクリフに直撃する。が、その前に壁が出てきた。ビームシールドのような。それと共に文字が出てくる。
【immortal mbject】
不死存在。それが全プレイヤーに暴露された。
「セレナ……お前っ」
もし、推測が違っていて攻撃したら叩かれる。その時にセレナやキリトみたいなトッププレイヤーが2人も叩かれるのはマズイ。そう判断したセレナはキリトを止めたのだ。で、自分だけ行動した。
だが、その心配も消えた。当たりだからだ。案の定、周りは騒つく。
「不死属性……?どういうことですか団長……?」
アスナが声を漏らした。そりゃそうだ。システム的に死なないんだから。そんな属性があるのなら、ヒースクリフ1人に戦わせたほうがいい。
「えーっと、茅場晶彦ってことでいいんだよな。ヒースクリフ」
「………どこで気付いたのか、参考までに教えてくれるかな……」
「二つあるんだけど……両方聞く?」
「そうしてくれると嬉しいね」
「や、でも片方はほら、余り知られたくない事だから……」
「知られたく……あぁ、もしかして性べ……」
と、言いかけたヒースクリフにセレナはバックドロップした。が、後頭部が床に直撃する前に【immortal object】。
「なるほど、もう一つは?」
「デュエルの時、で分かるだろ?」
「なるほどな……あれは私にとっても痛恨のミスだった」
で、開き直るように言った。
「いかにも、私は茅場晶彦だ」
その言い草にイラッとしたのか、1人の血盟騎士団の男が立ち上がった。
「貴様…よくも、よくも俺たちの忠誠心を!」
と、斧を構えて殴りかかったが、ヒースクリフの指ぱっちんで全員が倒れた。麻痺毒だ。が、セレナだけ立っている。
「どうかなセレナくん。ここで私と戦い、勝てば全プレイヤーを解放しよう。負ければ君はリタイアでゲームは続行だ」
「えーっと、一応確認するけど、あんた100層のボスなんだよな?」
「そうだが?」
すると、セレナは口を歪ませた。そして、何か言おうとした時、
「ダメだセレナ!よせ!」
キリトの声が響いた。
「やめろ!頼む……やめてくれ……!」
「ふざけんな。俺はやるぞ」
「お前少しは迷えよ!」
「では、楽しませてもらおうか。なんだかんだ、君とは決着が着いていない」
言いながら盾を構えるヒースクリフ。
「いいぜ。やろうぜ団長」
セレナも刀を抜いた。