もし、俺がリンクスタートしたら   作:単品っすね

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決戦

 

 

 

 

セレナとヒースクリフ。互いに睨み合い、刀を握る。そして、ヒースクリフの表情が引き締まり、姿勢を低くした時だ。

 

「ちょっとタンマ」

 

「え?いや今から攻撃しようと思ってたのに……」

 

「ごめん。ちょっと最後に話がしたいから」

 

「まぁ、仕方ないな……」

 

セレナはキリトに向き直った。不安そうにセレナを眺めるキリトとそれをいつもの表情で見るセレナ。

 

「な、なんだ……?」

 

キリトが声を上げる。セレナは中々口を開かない。そのまましばらくして、ようやく口を開いた。

 

「ごめん。何言おうと思ったか忘れたからやっぱいいや」

 

「いやそりゃないだろ!最後になるかもしれないんだぞ⁉︎それを、忘れたからって……!」

 

「おい、何が最後になるだうんこタレ」

 

セレナはそう言うと言葉を切った。

 

「リアルで引き取ってくれんじゃねぇのかよ」

 

「……………あぁ」

 

で、再び刀を抜くセレナ。それに応じるようにヒースクリフも構えた。お互い、無表情のまま動かない。

 

「なんか、動かねぇぞ……」

 

思わず声を漏らすクライン。

 

「隙を伺ってるのかタイミングを合わせてるのか頭の中で戦略を練ってるのか分からんが……どうなんだ……」

 

そして、ようやくヒースクリフが一歩踏み出した時だ。セレナがキリトに振り返った。

 

「思い出した!言おうと思ってたこと!」

 

「後ろおおおお!志村……じゃなくてセレナ後ろおおおおッッ‼︎‼︎」

 

「え?」

 

振り返ると、ヒースクリフの剣が迫っていた。その瞬間、セレナの目付きが変わる。その一撃を躱して刀で斬りかかった。

 

「むうっ……!」

 

盾でガードするが、後ろにズザザザッと下がるヒースクリフ。そのままセレナは追い討ちを掛ける。刀で攻撃し、盾でガードされる。そしてくる反撃を横に回りながら躱して、その勢いで刀を振り回した。が、それを盾でまたガードされる。

 

「背中を見せたな」

 

ヒースクリフがそう言うと剣を振り上げた。が、そのヒースクリフの顎にセレナは刀の鞘を下から突き上げた。そして、さっきとは逆に回転しながら刀を振るう。

が、ヒースクリフは盾を前に構えてそのまま突進した。盾が直撃し、後ろに吹っ飛ぶセレナだが、空中で受け身を取り、壁を踏み台にしてヒースクリフにまた突っ込んだ。

その様子を見ながらクラインは呟いた。

 

「すげぇ、二人ともほとんど互角だぞ」

 

「そりゃセレナは戦闘のセンスだけは凄いからな……ゲームマスターが相手でも関係ないだろう……」

 

キリトが答えるように返す。

 

「これは完全に隙を一瞬でも見せた方が死ぬ……」

 

なんて言ってる中、勝負はドンドンと白熱する。ヒースクリフの神聖剣を平気で躱すセレナ。だが、反撃の暇はなく防戦一方になって来た。

 

「どうしたセレナくん。反撃しなければ勝てるものも勝てないぞ」

 

そう言われるも黙って避けるセレナ。そして、ヒースクリフの突きがセレナの頬を掠めた。

 

「チッ」

 

舌打ちしてセレナは怯む。その隙をヒースクリフは逃さず、さらに盾で突進し、盾の後ろに突きを控えさせる。

 

「終わりだ」

 

だが、セレナはそこからジャンプし、盾の突進を側方倒立回転飛びで躱した。

 

「よっと」

 

「なにっ……⁉︎」

 

「終わりですね」

 

そのままセレナは刀を振り上げる。だが、ヒースクリフは無理矢理、剣を後ろに振り上げてガードしようとした。だが、セレナの振り上げた刀は囮だ。セレナは足でヒースクリフの足を払い、転ばせた。

 

「ムウッ……‼︎」

 

そして、セレナはそこからゼロ距離で斬撃を放った。

 

「切り札は最後まで取っておくもんだぜ」

 

そのまま直撃し、煙が舞い上がった。そのままセレナはしばらくヒースクリフのいた所を見下ろす。だが、そこから剣が突き出てきた。左肩に刺さり、セレナは後ろに吹っ飛ぶ。

 

「ッ‼︎」

 

そのまま距離を取り、ヒースクリフを睨んだ。

 

「やるなセレナくん。お陰で私は盾を失ってしまったよ」

 

「あんたこそ。あの状況でガードするとかどうなってんだ」

 

「だが、私の強さがあの盾のお陰だと思わないことだ。剣一本でも十分戦える」

 

「そうかよ。ところであんた、一つ忘れてないか?」

 

「? 何をかな?」

 

「盾がないってことはさぁ、俺のエクストラスキルを防ぐ術はあんたにはもうないんだよね」

 

「え………あっ」

 

「言っただろ?切り札は最後まで取っておくもんだ」

 

ニヤリと邪悪に笑うセレナ。それに引き換え、周りのプレイヤーは顔を引き攣らせる。そこからセレナは鬼の如く斬撃を乱発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数秒後、アインクラッド中に【ゲームはクリアされました】のアナウンスが響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が気が付くと俺はよく分からん場所にいた。透明の水晶板の上。そこで俺は立っていた。

 

「セレナ」

 

振り返るとキリトが立っている。

 

「何これ、俺死んだのか?」

 

「分からない。でも俺がいる時点で死後の世界じゃないだろう」

 

「な?俺、勝っただろ?クリア報酬とか貰えんのかな」

 

「お前なぁ……しかもなんだよ。あの最後の勝ち方」

 

「いいだろ別に。あ、お前も助けてやったんだからなんか奢れよ」

 

「住む場所提供してやるんだからいいだろ」

 

「ふざけんな。それはただの約束だろ」

 

「お前、意地汚いどころか意地がヘドロまみれになってんぞ」

 

「いや意味わかんねーから」

 

「は?」

 

「あ?」

 

キリトとメンチを切り合った時だ。

 

「中々に、絶景だな」

 

「「何が!」」

 

振り返ると茅場晶彦が立っていた。

 

「あそこにいた人たちは、どうなったんだ?」

 

キリトが聞く。

 

「生き残ったプレイヤー、6147人のログアウトが完了した」

 

「それはそうと茅場。最後のは俺の勝ちだからな?しかし100層のボス様も大したことあらへんなぁ、えぇ?」

 

「………君にとっては、そうだったかもしれないな」

 

………そこは怒るなり泣くなりしてくれないと困るんですけど……。

 

「なんで、こんなことしたんだ……?」

 

キリトがまた聞いた。

 

「なぜ、か。私も長い間忘れていたよ。なぜだろうな。フルダイブ環境システムの開発を知った時、いやその遥か以前から、私はあの城を、現実世界のあらゆる枠や法則を超越した世界を創り出すことだけを欲して生きてきた。そして私は……私の世界の法則をも超えるものを見ることが出来た」

 

「現実世界の枠や法則を越えちゃうって、それただの反則ってことじゃねぇの?」

 

「セレナ静かに」

 

キリトの冷静なツッコミ。

 

「子供は次から次へいろいろな夢想をするだろう。空に浮かぶ鉄の城の空想に私が取り付かれたのは何歳の頃だったかな……」

 

「テレビ放映されたラピュタをあんたが初めて見たときだと思うぞ」

 

「セレナお前ほんと黙れ」

 

「その情景だけは、いつまで経っても私の中から去ろうとしなかった」

 

「あー分かるわ。最後にラピュタが飛んでっちゃうところはいつ見ても切ないよな。あ、もしかしてアインクラッドの形って龍の巣だったりする?」

 

「年経るごとにどんどんリアルに、大きく広がっていった。この地上から飛び去って、あの城に行きたい……長い、長い間、それが私の唯一の欲求だった。私はね、キリトくん。まだ信じているのだよ。どこか別の世界には、本当にあの城が存在するのだと……」

 

「ああ、そうだといいな」

 

「いやしてるじゃん。ジブリの世界に」

 

そのまましばらく三人で崩壊するアインクラッドを眺める。

 

「言い忘れていたな。ゲームクリアおめでとう、キリト君、セレナ君。さて、私はそろそろ行くよ」

 

そのまま茅場は消えていった。

 

「んー……っ!終わったぁ!」

 

「いやお前校長の話聞いてたわけじゃねんだから……てか一々うるせーよお前!」

 

「悪いか?」

 

はぁ……とキリトはため息をついた。

 

「よくこんなのと一層から付き合ってられてたな……あ、そうだ。名前、教えてくれよ。お前のこと引き取るんだから」

 

言われて俺は少し微笑んで答えた。

 

「瀬田えれな。来月で15歳」

 

「せた、えれな……それでセレナ、か……」

 

「いや名前は俺がナーヴギア手に入れた時にたまたま俺の横を通った車がセレナだったから」

 

「そうかい……。俺は、桐ヶ谷和人。先月で16歳」

 

「いや俺、本当は17歳」

 

「そういうのいいから……」

 

「じゃ、そろそろ現実で会うとしよう。お前も川越なんだろ?」

 

「あぁ。じゃあ……あ、いや最後に一つ聞かせてくれ」

 

「なに?」

 

いや現実で聞けよ。とは思ったが一応答えることにした。

 

「茅場と戦う前、俺になんて言おうとしたんだ?」

 

「あー……」

 

今更言うのもなんか照れ臭いが、この際だから言うか。俺はキリトに向かって再び微笑みながら言った。

 

 

「居場所をくれて、ありがとう」

 

 

それだけ言って、俺は現実に戻った。

 

 

 

 

 

 

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