12月。俺は無事、桐ヶ谷家に居候して一ヶ月ちょっと。俺は直葉の部屋で暮らしている。
「ただいま〜って、えれな。ベッドの上でお菓子食べないでよ」
「うるせーよお前。相変わらず剣道?」
「ん……まぁね。えれなはニート?」
「まぁな」
「そこは否定しなよ……」
で、直葉は俺の隣に腰を掛ける。
「ねえ、エレナ」
「なに」
「お兄ちゃんのこと、どう思ってる?」
「もやし」
「いやそうじゃなくて……」
「だってそうじゃん。あれもやし300本あれば作れそうじゃね?」
「ほう……」
振り返ると和人が仁王立ちしていた。
「てんめぇ!お前だって大してかわらねぇだろ!」
「変わりますー!俺は細マッチョですー。ついでにおっぱいも直葉よりありますー!」
「「は、腹立つ……!」」
ふふんと俺は胸を張る。
「おやおや直葉さん。女の子らしい女の子なのに私より小さいとは……」
「へ、平均以上はあるもん!」
「自分より下の者と比べてる時点でたかが知れてることに気付きましょう」
「んぎぎっ……!これ以上大きくなっても邪魔なだけなのは分かってるけど腹立つ……!」
「な?弱点なしだろ?」
2人に睨まれ、俺はさらに優越感に浸る。すると、お母様が部屋に入ってきた。
「あら、ここにみんないたの」
「こんにちは。お母様」
「あらいいのよ。そんなかしこまらなくて。私だって息子救ってくれて感謝してるんだから」
「いえ、それでもお母様には感謝しきれません。私が役に立てることがあればいつでもお呼びください」
「あの変わり身の早さも腹立つ……」
後ろでなんか言ってたが無視。実際のところ、俺はこちらのお母様にかなり感謝している。普通、見ず知らずの女の子を養ってくれるなんてあり得ない。だから、そのお礼として俺は基本的に家事全般を全てこなしている。
「それでね、商店街の福引を引いてきたんだけど、これ三人で行ってこない?」
言いながらお母様はチケットを三枚取り出した。
そんなわけで、長野県。
「久しぶりだな、スキー」
「そだねー」
和人と直葉が声を漏らす。
「俺は来たことないし」
「じゃ、あたしが教えてあげるね。スノボーとスキーどっちがいい?」
「ソリとトナカイ」
「サンタさん⁉︎」
「いいから行くぞお前ら。はぁ……妹と弟が出来た気分だ……」
言いながらリフトに乗った。なぜか三人乗れる。座ってる順番は、和人、俺、直葉の順。あの……なんで俺が真ん中?で、山頂。
「で、スキーってどうやんの?」
「えーっと、まずはボーゲンからだね。足を……」
「じゃ、えれな。俺は先に降りてるから」
言いながら出発しようとする和人の後頭部にストックを投げ付けた。
「ふざけんなお前。妹達を放置して先に行くのが兄貴のすることか」
「俺に妹はひとりしかいねぇ!」
喚く和人を捨て置いて、俺は直葉に教わる。
「スキーの板を、こう…八の字にして滑るの。これが基本だよ」
「なるほど……」
で、いざ初滑り。俺は勇気一つを共にして坂に突入!しゃあぁぁぁ………っと、雪の上を滑る。
「そうそう、そういう感じ」
隣で直葉がついてくれる。
「………………」
「? どうかした?」
「あれだ。人間はやっぱり限界を超える生き物だと思う」
「はぁ?」
「トランザムッ!」
俺はスキー板を平行にした。その瞬間、加速。
「ば、バカ!危ないよー!」
案の定、前で滑ってる和人に突撃してしまった。めでたしめでたし。