夜。温泉。
「気持ち良いね、エレナ〜」
「あぁ。硫黄臭くて気持ち良い」
「……それって気持ち良いの?」
直葉に突っ込まれる。露天風呂なうだ。
「スキー、楽しかった?」
「まぁな。結局、上級者コース行けたし」
「初めてやって一回も転ばずにって本当にエレナ何者なの……?人?」
「うん。俺のこと人外扱いするのやめようか」
で、俺はふぅ……と、息を吐いてから聞いた。
「お前さ、和人と仲悪いのか?」
「………なに急に」
「いや見てて思ったから。飯の時以外にどっちかがどっちかに話し掛けることなかったしな」
「よく、見てるね……」
「持ってない奴ほど、そういう所には敏感なんだよ」
「持ってない……?」
「………なんでもない」
で、直葉は少し俯く。
「あたし、ね……なんでか分からないけど、お兄ちゃんに避けられてるんだ……理由はよくわからないんだけど……ていうか元々、義妹だからそういうの気にしてるのかもしれないんだけどね……」
「まぁ思春期だからなぁ。でもSAOで俺と一緒に寝てる時はそんな仕草見せなかったぞ」
「…………ちょっと待って。一緒に寝たの?」
「え?うん」
「…………ヘンタイ。そういう関係だったんだ」
「はぁ?何言って……あーそっか。いやそういうのじゃなくて。大体、俺が女だってばれたのは最後の方だし、ベッドだって別で寝てたし」
「ふぅん。ヘンタイ」
「そういう風に考えるお前の方が数倍変態だ。エロい身体しやがって」
「あんたに言われたくないわよ!」
避けられてる、か……あいつがそんな事する奴には見えないんだけどな。
和人の部屋。
「もっちゃもっちゃ、和人……お茶入れろ」
「殺すぞお前本当に。てか自分でやれ」
「俺は客人だぞ」
「客人はベッドの上で浴衣をはだけさせたまま煎餅を食ったりしねぇ」
「あっそ……」
俺は口の中の煎餅をゴクッと飲み込むと、和人に聞いた。
「和人。お前、直葉となんかあんの?」
「…………急になんだよ」
「いや明らかに避けてるように見えたから」
「…………」
「いいたくないなら言わなくていいけど。でもほら、一応、俺は居候してるわけだし、いずらい環境は嫌だから」
「……元々俺とスグは本当の兄妹じゃないんだ。従姉妹なんだけど、祖父が厳しい人でね。俺とスグに剣道をやらせたんだけど、俺は勝手にやめちゃったんだ。それはもうボコボコに殴られたよ」
「ヘタレ」
「うるせー。で、その時スグが俺を庇ってくれたんだ。あたしが2人分頑張るからって。だけど俺は勝手に負い目を感じちゃってさ、本当は他にやりたいことがあるのに無理して剣道続けてるんじゃないかって、俺を恨んでるんじゃないかなって。そう考えてたら、いつの間にか避けるようになってた」
「…………はぁ……」
思わずため息が出た。こいつ考え過ぎだろ……。
「お前、考え過ぎだろ」
「えっ?」
「本当に無理してやってるなら中学に上がるときにやめてるだろ。進学するタイミングなら『新しいことを始める』っていう大義名分があるんだから」
「いや、でも……」
「俺が自分の兄貴を恨んでたら徹底的にいじめるからね。枕に画鋲仕掛けたりするから」
「お前どこの暗殺者?」
「そんなことで一々避けてんじゃねぇよ。家族だろ。お前と違って、持ってない奴もいるんだから」
「…………それも、そうだな……すまん」
「相談に乗ってやったんだから、パフェ奢れ」
「いいよ」
「えっ?いいの?」
「あぁ。本当に、世話になったらな」
マジか……まぉいいや。次の日、仲良くスキーする桐ヶ谷兄妹の姿が見えた。