俺とリーファとキリトは走ってルグルー回路を抜ける。
「……つまり、話を要約すると、あのシグルドがシルフを売って、シルフの皆様が大ピンチって事か?」
「そう」
「だってよキリト。どうする?」
「……………」
「キリト?」
「うえっ⁉︎あ、うん……どした?」
「なに、話聞いてなかったの?話を聞かない奴は社会でも使われないぞ」
「う、うるせーな………誰のせいだと思ってんだ……」
最後の方はなんかよく聞こえなかったが、もういいや。
「だからね、キリトくん。これはシルフの問題だから……これ以上、君が付き合ってくれる理由はないよ。この洞窟を出ればアルンまでもう少しだし、多分会談場に行ったら生きて帰れないから、スイルベーンから出直しで何時間も無駄になるからね……」
「……………」
キリトは奥歯を噛む。妹のピンチか友達のピンチか。いや深刻になってるけど、その辺ただのゲームじゃね?とは突っ込めない雰囲気だった。でもね、そんな事よりもっといい解決方法があるんだ。
「ていうかさ、一ついいか?」
「なに?」
「俺もシルフなんですけど……」
「「………………あっ」」
そんなわけで、キリトの案内はユイに任せて俺とリーファは会談場へ向かった。
サラマンダーがシルフ、ケットシーの頭上に浮いている。その数、68人だ。
「な、なぜこんな所に、サラマンダーが……⁉︎」
サクヤが声を漏らした。それに口をニヤリと歪めてユージーンは答える。
「そんなのは決まっているだろう。貴様ら全員を討ち取らせてもらう」
と、言ったユージーンの後ろに影。そいつはユージーンのケツに浣腸をした。勢いよく人差し指が二本、ダブルマウンテンの谷間の落とし穴に突き刺さり、ユージーンは思わず悲鳴を上げ掛けた。
「んがぁっ………‼︎」
空中で尻を摩るALO最強プレイヤー。それをそこにいる全プレイヤーが半眼になって見ていた。それを捨て置いてそのプレイヤーは全員に言った。
「俺はシルフの女帝ーセレナー。シルフ領の真の女王だ」
シルフだけではなく、サラマンダーやケットシーまでもが何言ってんのこの人、みたいな顔になる。
「えーっと、とりあえずそこのババアとチビ」
言いながらセレナはサクヤとルーを指差す。イラっと目を細める2人。
「邪魔だ。帰れ」
「おい、リーファ。なんなんだあいつは」
「あ、あたし知らない……」
「で、サラダバー」
「サラマンダーな」
「お前らは、全員俺が殺す」
言いながら刀を抜くセレナ。
「ち、ちょっとセレナ!その人はユージーン将軍って言ってALO最強のプレイヤー……」
言いかけたリーファに振り返ってセレナは尋ねた。
「だから?」
「いや『だから?』って……」
呆れるリーファ。すると、セレナの後ろからサラマンダーの2人が剣を持って斬りかかった。
「セレナ!危なっ……」
だが、振り返ることなくセレナは剣を振るい、その2人を一撃で殺した。
「なにっ……!」
「ふんっ、中々やるな……」
ユージーンが口元を歪めた。
「面白い。貴様は俺が直々に相手をしてやろう。ただし、この、えーっと……64人の部下を倒せたらな」
「おい、68−3は65だぞ」
「……………………」
流れる沈黙。だが、ユージーンは全部なかったことにしてスゥ〜ッと空に浮いていった。その瞬間、一斉に殴り掛かってくるサラマンダー。
「ッ!」
セレナもそれに向かって突撃する。
「お、おいリーファ!奴一人で大丈夫なのか⁉︎確かに私とシグルドの二人掛かりでも倒せなかったが……」
「セレナ………」
空中。剣でサラマンダーが突いてくるが、それを小脇に挟んで躱し、顔面に廻し蹴りを決めて叩き斬った。が、後ろから斬ってくるサラマンダー。それを躱して、腹に刀を叩き込む。今度は正面から斬って来たが、刀でいなして無防備になった背中を斬り裂いた。
「な、なんだこいつ……化け物か⁉︎」
「遠距離だ!遠方から魔法で仕留めろ!」
言われて、遠距離から飛んでくる炎の球。だが、
「はい、いーち、にーぃ、さーん……」
金属バットで全部打ち返した。そのまま暴れて半分くらい蹴散らした時だ。ズウゥゥンッ!と重たい衝撃。
「驚いたぞ。そこまでやれるとはな」
ユージーンだった。
「あんたこそ。見た目以上に体重思いのな」
「放っておけ!貴様にはこの魔剣グラムの真骨頂を見せてやろう」
何かが来る気がして、セレナはユージーンを蹴り飛ばして距離を取る。だが、すぐに追い掛けて来た。
「ハァッ!」
ガードしようとしたセレナ。だが、刀身がすり抜けた。
「へっ?」
そのまま叩き落とされ、地面に衝突する。
「セレナ!」
リーファが心配そうに声を掛けるが、セレナは平気な顔で立ち上がった。
「いやぁ、効いた。よっと」
そのまま再び飛ぶ。
「いいなその剣。面白い」
「ふん。面白いのは貴様だ。よく直撃して死ななかったものだ」
「あの程度で死ねるかよ」