あの後、メンテナンスが入り、ログアウトした。で、次の日、和人はまったく寝付けずに起き上がった。昨日、セレナに言われた言葉が思い浮かぶ。
「あー……」
(誰のことだ。いやお前だよとは言われたけど……。いやそもそもあいつクレイジーサイコSだぞ。もしかしたらからかってるだけかもしれないし……もしかしたらいじめられてる奴の惨めな面見て楽しくてドキドキしてるだけかもしれねーし……いや、それが俺だったらマジ腹立つけど)
「あーうー……」
困った。実に困った。その時だ。
「お兄ちゃん、ご飯できたよ」
「うぇっ⁉︎な、何⁉︎」
「や、だからご飯出来たって……どうかしたの?」
「いや、なんでもない……」
「………なんか、変だよ?」
「いいから。今日は何作ったんだ?」
「あたしが作ったんじゃないもーん」
「はぁ?」
で、リビング。そこにはエプロン姿のまんま、テーブルに食器を出すエレナの姿があった。
「ぶっふ!」
「お、お兄ちゃん⁉︎」
「ゲホッゲホッ!」
(え、エプロンがクソ似合う……そしてエレナが早起き……ていうか料理が出来る……い、色々思うところが多過ぎて噎せてしまった……)
「おい、なに悶えてんだよ。起きたなら手伝え」
「あ、あぁ。悪い」
「まぁお前の分はねぇけどな」
言われて見てみれば、2人分の朝食しかなかった。
「お、おい!なんでだよ!」
「お前が女の子の手料理を食うなんて一万年と二千年早い」
「はぁ……」
がっかりした表情で和人はトースターにパンを入れた。直葉はエレナをジト目で睨んでいるが、和人にとってはどうでも良かった。
「いいもん、食パン美味しいもん……」
「うんめぇ〜マルゲリータピッツァ」
「お前そんなもんよく作れたな!」
「俺、料理出来るし。ていうか炊事洗濯家事全般なんでも出来る」
「せ、性格以外完璧超人だな……」
「殺すぞお前」
なんて一幕はともかく、ようやく朝食が終了。
「じゃ、俺寝るわ。早起きしたから眠いわ」
「あ、エレナ」
「なんだよ」
「少し、出掛けないか?」
「……なんでよ」
「嫌なら、いいんだけど……」
「嫌って事ないけど……」
「じ、じゃあ行こうぜ」
「どこに行くか知らないけど全額お前負担な」
「え……わ、分かったよ……」
そんなわけで、俺と和人は出掛けた。どこに連れてってくれるのか知らないけど、俺は全く金払わないから関係ない。すると、頭の悪そうなチャラチャラした奴が3人ほど絡んできた。
「おい兄ちゃん達、金出せやコラ」
こういうの川越にもいるんだな……。
「エレナ、無視するぞ……って、あれエレナ?」
和人の言うことを無視して俺はその不良の前へ。
「金が欲しいのか?」
「あぁ、素直に出せば怪我しなくて済……」
言いかけたそいつの腹にボディーブロー。見事に溝に減り込み、そいつは後ろに吹っ飛んだ。
「てめっ!」
再び殴りかかってくるが、躱して股間を蹴り上げた。で、最後の奴の顔面を蹴り飛ばして全滅。ついでに、そいつらの財布から金を全額取ると、ハナクソを三人のおでこに擦りつけた。
「さ、行こうぜ」
「お、おう……」
俺に絡んだことを後悔しな。と、心の中で決め台詞を呟いて俺達はその場を去った。
で、着いた先は服屋。
「なんでここなんだよ」
「お前も知ってるだろ?もうすぐSAO帰還者の学校が始まんの」
「あぁ」
「だから今のうちに女の子っぽい服とか買っとけよ。お前、ジャージとパーカーとスウェットしか持ってないだろ」
「いや制服とかあるんじゃねぇの?」
「無かったらアレじゃん」
「まぁ、そうだけどさ……別にそしたらジャージとパーカーとスウェット履くからいいよ」
「いや学校にジャージとかパーカーとかスウェットはダメだろ。パジャマか」
「お前ジャージとパーカーとスウェットになんか恨みでもあんのかよ。ジャージとパーカーとスウェットの凡庸性甘く見んなよ」
「ていうか全部言うのめんどくせぇな……まぁとにかくスカートとか履いてみろって」
「あー…それは嫌だ」
「なんでだよ」
「あれさ、腰の周りに布巻いてるだけの状態だろ?」
「まぁ、そうだな」
「なんつーか…股間がかなりスースーするんだよね。パンツ剥き出しで歩いてる気分だし。空気がパンツを貫通して穴の中に風が……」
「だから女の子がそういうこと言うな!つーか直葉は平気でスカート履いてんぞ!」
「あんな剣道筋肉オバケと一緒にすんな」
言いながら俺は服屋の中をしばらく見渡す。そして、テキトーに見繕って服を取って試着室に向かった。
「あれ?エレナどこ行くの?」
「試着室だよ。お前がスカート履けって言ったんだろ」
「へ?は、履いてくれるの……?」
「お前だけだからな」
「何が?」
「何でもねーよカス」
そのまま二人で試着室へ。いや和人はちゃんと外で待ってるけどね?で、俺は着替えた。けど……やっぱりスカートは好きじゃないな……スースーする……。
「着たかー?」
「え?う、うん……一応……」
「じゃあ開けるぞ」
シャッと音を立ててカーテンが開いた。当然、和人の姿があった。だが、その目は段々と大きく見開かれ、頬は赤くなり、口は半開きになる。俺はといえばどうすればいいか分からず、ただモジモジするしかなかった。
「…………な、なんか、言えよ……お前が履けって、言ったんだろ………」
「そ、その……なんだ、か、可愛くて、いいんじゃない、か……?」
「うっ……」
うー……なんだこれ。初めてだこんなの。こんな服着たのも可愛いって言われたのも。
……………ちょっとだけ、嬉しかったのも。
「………あー、エレナ……その、さ……」
「………なんだよ」
「それ、買ってやるから、さ……俺と、二人でいるときは、その服を着てくれないか……?」
「ほ、本気で言ってんのかよお前……」
正気かこいつ。
「い、嫌なら、いいけど……」
「分かったよ……」
「ほ、本当か⁉︎」
パァッと明るくなる和人。まあ、これくらいならいいか。
「じ、じゃあ、着替えるから……」
それだけ言って、俺はカーテンを閉めてさっさとスカートを脱いだ。早くズボンに着替えたいから。
「あ、そーだエレナ」
「えっ?」
シャッとカーテンが開いた。
「あっ!ご、ごめ……!」
廻し蹴りが和人の顎に炸裂した。