もし、俺がリンクスタートしたら   作:単品っすね

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一層ボス3

 

 

 

 

ボスのHPゲージは残り一本。このままなら難なくいけそうだと、セレナが思った時だ。だが、

 

「だ……だめだ、下がれ‼︎全力で後ろに飛べーーッ‼︎」

 

キリトの大声。セレナはその声につられてディアベルを見る。ボスの斬り上げ攻撃。宙に舞い上がるディアベル。

 

「…………は?」

 

その後、三連撃がディアベルに叩き込まれ、吹っ飛ばされた。

 

「うおぉぉ、飛んだぁ……」

 

そんなセレナのアホな感想を他所に、キリトはディアベルの元へポーションを持って行ったが、間に合わず消えていった。

 

(へぇー、死ぬ時ってこうなるんだ……)

 

そんなことをぼんやり考えていたセレナとは裏腹に周りは絶望的な雰囲気になっていた。

 

「………何で……何でや……。ディアベルはん、リーダーのあんたが、何で最初に……」

 

と、キバオウが声を漏らす。そんなキバオウの肩を掴み、引っ張りあげるのはキリトだ。

 

「へたってる場合か!」

 

「な、なんやと……?」

 

「E隊リーダーのあんたが腑抜けてたら、仲間が死ぬぞ!いいか、センチネルはまだ湧く可能性が……いや、きっと湧く。そいつらの処理はあんたがするんだ!」

 

と、キリトは言った。その横に立つのはアスナ。

 

「わたしも行く。パートナーだから」

 

「……分かった。頼む」

 

そのまま二人で突っ込んだ。その時、アスナが激しくはためくフードつきケープを邪魔そうに掴み、一気に体から引き剥がした。そして、キリトは全体に聞こえるように大声を出す。

 

「全員、出口方向に十歩下がれ!ボスを囲まなければ範囲攻撃は来ない!」

 

その声と共にザッ!と音を立てて全員が下がった。

 

「アスナ、手順はセンチネルと同じだ!……行くぞ!」

 

「わかった!」

 

敵のコボルトが野太刀から手を離し、左の腰だめに構えようとしてる。それに対応するようにキリトはソードスキルを発動。片手剣基本突進技レイジスパイク。

ボスの剣が交差し、相殺されて二人ともノックバックした。

 

「セアアッ‼︎」

 

その隙をアスナがリニアーを発動してボスの右腹を深々と打ち抜いた。

 

「……次、来るぞ!」

 

キリトがそう叫ぶ。だが、その後にボスの攻撃がアスナに飛んでくる。だが、そのボスの攻撃が止まり、前に倒れ込んだ。何事かと思ってキリトとアスナが周りを見渡すとボスのケツを延々と金属バットで殴ってるセレナがいた。

 

「はい26、27、28〜」

 

「だぁから、何してんだお前はぁぁっっ‼︎」

 

キリトのシャウト。だが、平然とセレナは返した。

 

「いやケツバット」

 

「だからなんでケツバットだ!責めて太刀でやれよ!ていうかどっから持ってきたんだよ金属バット!」

 

「うっせーな。他人に攻撃方法ダメ出しされるいわれはねぇよ」

 

言いながらセレナはハナクソをほじくりながら歩き、倒れているボスのおデコに擦りつけた。

 

「お前コラやりたい放題か!」

 

「いいからさっさと指示出せよ」

 

金属バットを担いで言った。

 

「ディアベルに任されたんだろうが」

 

すると、最初は驚いたような顔をしていたものの、すぐにいつもの表情に戻り、キリトは言った。

 

「ボスを後ろまで囲むと全方位攻撃がくるぞ!技の軌道は俺が言うから、正面のやつが受けてくれ!無理にソードスキルで相殺しなくても、盾や武器できっちり守れば大ダメージはくらわない!」

 

『おう!』

 

その後、キリトの見事な指示と男達の協力により、ボスの討伐に成功した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボスの撃退で全員に経験値と報酬のコル、そして獲得アイテム入手のメッセージが入り、うおおおっ!と歓声が上がった。両手を突き上げて叫ぶ奴、仲間と抱き合う奴と色々いた。俺は黙ってぼんやりしている。そんな俺にアスナが手を差し出してきた。

 

「お疲れ様」

 

「別に疲れてねぇよ。ずっと金属バット振ってただけだ」

 

「でも、一緒に戦ったでしょ?」

 

ニコッと微笑むアスナ。まぁ、そうかな。ありがたく差し出された手を握る。俺の手には画鋲が握られている。つまり、アスナの手に刺さった。その瞬間、追い掛け回されるが、その時だった。

 

「なんでだよ!」

 

そんな叫び声がした。

 

「なんで、ディアベルさんを見殺しにしたんだ‼︎」

 

誰だか知らねぇが、そいつは悲痛な声を上げている。

 

「見殺し……?」

 

「そうだろ‼︎だって……だってアンタは、ボスの使う技を知ってたじゃないか!あんたが最初からあの情報を伝えてれば、ディアベルさんは死なずに済んだんだ!」

 

すると、周りも「そういえばそうだよな……」「なんで……?攻略本にも書いてなかったのに……」と広がっていく。

 

「おれ、俺知ってる!こいつは、元ベータテスターだ‼︎だから、ボスの攻撃パターンとか、旨いクエとか狩場とか、全部知ってるんだ‼︎知ってて隠してたんだ‼︎」

 

と、なんかピーピーうるさくなってきた。だが、それを冷静に遮る声がする。

 

「でもさ、昨日配布された攻略本に、ボスの攻撃パターンはベータ時代の情報だ、って書いてあったろ?彼が本当に元テスターなら、むしろ知識はあの攻略本と同じなんじゃないのか?」

 

「そ、それは……あの攻略本が、ウソだったんだ。アルゴって情報屋がウソを売りつけたんだ。あいつだって元ベータテスターなんだから、タダで本当のことなんか教えるわけなかったんだ」

 

何言ってんだこいつ。人の親切も素直に取れねぇのかよ。案の定、アスナと巨大な黒人が反論してやろうと何か言いかけたが、なぜかキリトはそれを制した。

 

「元ベータテスターだって?俺を、あんな素人連中と一緒にしないでもらいたいな」

 

「な……なんだと………?」

 

「いいか、よく思い出せよ。SAOのCBTはとんでもない倍率の抽選だったんだせわ。受かった千人のうち、本物のMMOゲーマーが何人いたと思う。ほとんどはレベリングのやり方も知らない初心者だったよ。今のあんたらの方がまだしもマシさ」

 

えっと……なんの話かな。

 

「でも、俺はあんな奴らとは違う。俺はベータテスト中に、他の誰も到達できなかった層まで登った。ボスのカタナスキルを知ってたのは、ずっと上の層でカタナを使うmobと散々戦ったからだ。他にも色々知ってるぜ、アルゴなんか問題にならないくらいな」

 

「なんだよ、それ……」

 

「そんなの、ベータテスターどころじゃねぇじゃんか……もうチートだろ、チーターだろそんなの!」

 

「チーターって何。キリトってネコ科動物なの?」

 

俺の呟きは無視された。周囲のプレイヤーは、チーターだ…ベータのチーターだ……と声が上がり、いずれビーターと呼ぶようになった。

 

「……ビーター、いい呼び方だなそれ」

 

にやりと笑うキリト。

 

「そうだ。俺はビーターだ。これからは、元テスターごときと一緒にしないでくれ」

 

言いながらキリトは次の層へ繋がる階段を上がった。途中、振り返ってさらに見下したように言う。

 

「二層の転移門は、俺が有効化しといてや……」

 

そこまで言いかけた所で、俺はキリトの後ろに行ってケツバットした。階段から落ちるキリト。周りは一瞬で半眼になった。尻を摩りながら俺を睨み付けるキリト。

 

「………なにしやがんだテメェ」

 

「いや、ビーターだのビターだのどうでもいいから。だけどな……」

 

そこまで言い掛けて俺はニヤリと邪悪に笑った。

 

「二層に一番に上がるのは俺だ」

 

その瞬間、キリトの顔に怒りマークが出る。が、俺は無視して次の扉へ走った。

 

「ふざけろっ!」

 

急いで階段を駆けあがってくるキリト。すぐに俺の隣に追い付いてくるが、そんな簡単に追い付かれてたまるか。うおおおおっと二人で駆け上がり、ドアに飛び込んだ。

で、二層にゴロゴロと転がり込む。

 

「痛た……」

 

「チッ、引き分けか……」

 

「はあ?何言ってんの?俺が先だったから」

 

「いや俺の方が……」

 

と、言いかけた所で、俺とキリトの頭にゲンコツが来た。

 

「痛っ!」

 

「ってぇっ!」

 

頭を摩りながら上を向くと、アスナが立っていた。

 

「あんたらねぇ……あの雰囲気で子供っぽさ全開で競い合うんじゃないわよ!」

 

プンプン怒るアスナ。

 

「あの後、みんな爆笑してたし、『あんなアホがビーターならなんか大丈夫そう』みたいなよくわかんない雰囲気流れてたんだから」

 

そこまで言うと、アスナは言葉を切る。で、キリトに向き直った。

 

「エギルさんと、キバオウから伝言がある」

 

「へえ……なんて?」

 

「エギルさんは、二層ボス攻略も一緒にやろうって。で、キバオウは『今日は助けてもろたけど、ジブンのことはやっぱり認められん。わいは、わいのやり方でクリアを目指す』だって」

 

「…………そうか」

 

「それと、これはわたしからの伝言」

 

「は、はい?」

 

「あなた、戦闘中にわたしの名前呼んだでしょ」

 

「…………あぁ。ご、ごめん、呼び捨てにして。それとも、読み方違った?」

 

「読み方……?ていうか、わたし、あなたに名前教えてないし、あなたのも教わってないでしょう?どこで知ったのよ」

 

「「はあ!?」」

 

思わず俺も声を上げてしまった。

 

「このへんに自分の以外に追加でHPゲージが見えてるだろ?その下に何かかいてないか?」

 

「え………」

 

呟き、アスナは声を漏らす。

 

「キリト……それに、セレナ……?これが、あなた達の名前?」

 

「うん」

 

「どっちがセレナ?」

 

俺は手を挙げた。

 

「なんか、女の子みたいな名前ね」

 

「は?や、それは………いやなんでもない」

 

「? どうかしたの?」

 

「なんでもねぇよ」

 

あまり知られたくないな。まぁ別に気にしちゃいないけどね。

 

「ほんとはねキリト,あなたにお礼を言うために追いかけてきたの」

 

「……クリームパンと、お風呂の?」

 

「そうね、いろいろ。いろんなことのお礼。わたし……この世界で、初めて目指したいもの、追いかけたいものを見つけたの」

 

「へえ…………何?」

 

「内緒。わたし、頑張る。頑張って生き残って、強くなる。目指す場所に行けるように」

 

と、なんの話だが分からんが、俺は黙っていた。

 

「ああ、君は強くなれる。剣技だけじゃなく、もっと大きくて貴重な強さを身につけられる。だから……もしいつか、誰か信頼できる人にギルドに誘われたら、断るなよ。ソロプレイには、絶対的な限界があるから」

 

言うと、アスナは頷いてドアへ引き返した。

 

「じゃあね、またね、キリ……」

 

「じゃ、キリト。俺はこの層での初狩りを体験してくるから」

 

「あぁ!?ふざけんな!それは俺が……」

 

「いい加減にしろバカ男共!」

 

そのままアスナが戻っていく中、俺とキリトは「俺の方が早かった!」「いや俺だね!」「なら次で決めるかんな!」「上等だ!」と、延々と借り続けた。

 

 

 

 

 

 

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