ようやく許してもらい、セレナとキリトはしばらく歩き回る。
「はぁ……」
と、ため息をつくのはキリトだ。
「なんなのこのアバター……」
「モロ女の子だもんな。まぁいいだろ」
「よくねぇよ!この格好でお前とイチャ付いてたら周りから見たら完全に百合だぞ!」
ていうかイチャつく前提なんだ。
「残念だったな。俺は男っぽいから結局は成立する」
「いつも通りなだけだろ……。ていうか性別逆転なんてそれこそ嫌だ!女の子より女の子っぽい男なんて需要ねぇよ!」
「それに関しちゃ手遅れじゃね?」
「………なんか言ったか?」
「うん。だから手遅れだって」
「そこは『なんでもない』って濁せよ!」
「いやぁ…事実だしなぁ……」
「あれ、俺の気のせいかな…お前さっき謝ったよね?」
「うん?」
「もういいや、なんでもない……それよりこの世界について教えてくれる人を……あ、あの人でいいや」
そのままキリトは青い髪の人に声を掛けた。その人が振り返った瞬間、セレナは微妙な表情になる。女性だったからだ。
「すいません。ちょっと、道を……」
ムスっとするセレナにも気付かず、キリトはその子と話す。
「……このゲーム初めて?どこに行くの?」
「あー、えっと……初めてなんです。どこか安い武器屋さんと、あと、総督府、っていうところに行きたいんですが……」
しかも何故か女性のようなトーンで。それにセレナはさらにイラッとする。
「総督府?何しに行くの?」
「あの……もうすぐあるっていう、バトルロイヤルイベントのエントリーに……」
「え、ええと、今日ゲーム始めたんだよね?ちょっとステータス足んないかも……」
「あ、コンバートなので大丈夫です」
「へえ、そうなんだ。じゃあまずはお金だけど…どれくらいある?」
「え、えっと……1000クレジット?」
「バリバリ初期金額だね。その金額だと小型のレイガンくらいしか買えないかも……」
「どこかガッポリ稼げるところとかないんですか?」
「あるにはあるけど……」
連れてこられたのは【Untouchable】と書かれたゲームのようなもの。
「ルールは…あ、ちょうど挑戦者がいるみたいよ。あれ見てね」
その挑戦者はクリア宣言をすると、始めた。どうやらあの機械のガンマンの銃撃を全部躱して向こうに辿り着けばいいらしい。だが、そのオッさんはすぐにやられてしまった。
「……そんなわけで、クリアした人は今までいないの」
「なるほど……おいセレナ。やってみろよ」
「………あ?てめっ誰に命令してんだコラ殺すぞ」
「え?いや何怒って……いいからやってみろって。お前も初期金額しかないんだろ?」
「チッ、ウゼェな」
言いながらセレナはゲーム機に立つ。
「彼、大丈夫なの?」
シノンが聞いた。あ、シノンって言っちゃったよ。まぁいいや。だが、キリトは余裕の表情。
「大丈夫、どーせ全部躱して帰って……」
その時、ズガンッ!という音が響いた。見れば、ゲームの男の上半身がなくなり、煙が上がっている。
「……あの、弾避けるどころか弾飛んできてないんだけど。ていうか、もう二度と飛んでこないんだけど……」
「ま、まぁ……所詮システムだし……あと数秒すれば直るんじゃないかなー……」
そんな二人の会話を他所にセレナはキリトの元へ。
「おい。なんか金めっちゃ入ったんだけど」
「そ、そうか。じゃあそれで武器でも買いに行こう」
「ち、ちょっと待って。あなたもコンバートしたの?」
「そうだけど?」
「あの…セレナ?どうして怒ってんの……?」
「別に」
キリトに聞かれるが、ツーンとするセレナ。
「ま、まぁとにかく資金は出来たし……買いに行こうか」
シノンの言葉でとりあえず三人は移動。
「そういえば二人はどんなステ振りしてるの?」
「「筋力優先、その次が素早さ」」
ハモった。一字狂わず。
「そ、そう……。じゃあちょっと重めのアサルトライフルか、もうちょっと大口径のマシンガンをメインアームにして……」
「そんなんいいから剣はねぇのか剣は」
「はぁ?あなたこれ銃ゲーよ?」
「銃なんて近付くのにビビってるチキンが使うもんだろ」
言いながらセレナはバズーカを購入した。
「いやあんたが買ったもの見てみなさいよ!」
「あの……これは?」
キリトが金属の筒のようなものを指差す。
「ああ……それはコーケンよ」
「こ、こうけん?」
「光の剣、と書いて光剣」
「「け、剣⁉︎」」
さらにセレナは剣を購入。その様子に「えっ」と声を上げるシノン。
「なぁセレナ!俺にも買えよ!」
「てめーで買え」
「どうしたんだよ!さっきから……」
「ふんっ。浮気者」
「買ってくれよ……俺はあのゲームやってないんだから……」
「だったら今からやってこいよ」
「う〜…わかったよ。リアルでパフェ奢るから……」
「やだ」
「なんで⁉︎お前本当に……」
すると、シノンが大きくため息をついた。
「はぁ…仕方ないわね。私が買ってあげるわ。どーせお金は腐る程あるし」
「え、す、すいません。あの、絶対に返しますね」
「いいわよ別に。その代わり、本番では手を抜かないからね」
「はい!」
そんな二人の様子を見ながらセレナはぺっと唾を吐き捨てた。
で、なんとか大会に登録した。
「予選のブロックはどこだった?」
「Fブロックですね。Fの37番」
「俺は12だ」
「わたしはGだから…本戦じゃないと当たらないわね。じゃ、そろそろ予選の会場に行かないと」
そんなわけで、控え室へ向かう。
「って、なんであなた付いてきてるわけ?」
「…………あ、俺に言ってんの?」
シノンに言われ、俺は思わず反応が遅れてしまった。
「あなた、男でしょ?だったら……」
「俺は女だ。そこのボケナスが男だ」
「えっ……?」
言いながらセレナはネームカードをシノンに差し出した。
「セレ……ナ。ふうん、あ…ほんとだ……その外見で……」
ってことは?と、でも言わんばかりにシノンはキリトを見た。で、無言の圧力でネームカードを出せと言う。キリトはネームカードを差し出した。
「キリト……male……」
で、一気にシノンの目が攻撃の色に変わり、二人の女の廻し蹴りを喰らって追い出された。
着替え終わった更衣室。セレナとシノンは二人でいる。
「ふーん…じゃああなたとあのバカは恋人同士なんだ……」
「あぁ。一応な。あのアホから告白してきた」
「それで、あなたの態度悪かったわけね。なんかごめんなさいね。あのマヌケから来たとはいえ」
「お前は悪くねーよ。リアルであのアンチキショーにパフェ奢らせるから。あと決勝で斬り刻む」
「じゃあ、あなたも決勝まで残りなさいよ」
「誰に向かって口聞いてんのか分かってんのか?………あっいやなんでもない」
「あら、相当腕に自信があるのね。まぁ確かにスピードは一線どころか百線くらい越えてるけど」
「あと、お前用心しろよ。あのチンカス剣士も俺と同じくらい強いから」
「チンカスとか女の子が言わないの……」
「心は男なんだけどな。体型と精神の女子力の反比例がもうね。ほら、おっぱいもお前の倍はある」
「腹立つ……こんなのに、私は……きゃっ!な、なに触ってんのよ!」
「あ、ごめん。壁だと思ったら胸かそれ」
「こっの……!決めた!あのコンチクショウもぶっ飛ばすけどあんたの頭も吹き飛ばしてやるんだから!」
「はっやってみろ。泣くのはそっちだ」
そんなわけで、Bob開始だ。