翌日の昼休みの屋上。またまた和人の膝の上に頭を置いて仮眠を取るエレナ。今日はその上に薄い毛布が掛かっていた。
「ダメだったわ」
「「見れば分かる」」
明日奈と里香は声を揃えて言った。
「まぁ、あんたがそれでいいならもうあたし達は何も言わないわ」
「いいっちゃいいんだけど、なんつーのかな……俺がダメになりそう」
「「は?」」
「このままじゃなんつーのかな……俺が、こう……辛い」
「や、だからこき使われてるのが辛いんでしょ?」
明日奈が確かめるように聞くが、和人は首を横に振った。
「じゃあ、何が辛いの?」
「その……え、エレナが、どんなエレナでも可愛過ぎて辛い」
「」
「」
「ちょっと待て引くなお前ら」
「い、いやぁ……」
「だって、ねぇ?」
「だったらお前らこいつと一緒に暮らしてみろよ!マジでヤバイから!」
「私はお母さんがちょっとアレだし……」
「ていうか、直葉は普通じゃない」
「そりゃあいつは甘えられてないからな⁉︎」
「なにそれ、自分だけ甘えられてますみたいな自慢?」
「ちっげぇぇぇよっ‼︎だから、こいつに甘っ……」
そこで、メコッと、和人の顔面にメコッと拳が減り込んだ。しかも自分の下から飛んできた。
「うるさい」
眠た気にエレナは起き上がる。
「ご、ごめんねエレナちゃん」
「ちょっと、騒がしかったかな?」
「だぁから、ちゃん付けやめろ。そっから落とすぞ」
ふわあぁぁぁ……っと、欠伸しながらエレナは倒れてる和人を見つけると、和人の広がってる腕を枕にして、ブレザーをキュッと握って再び眠り始めた。
「はうっ!」
「うあっ!」
ドギュンッ!ドギュンッ!と、音がしたかと思えば、明日奈と里香は後ろに倒れた。
(ごめんね、和人くん……私が、私が間違ってたよ……)
(確かに、普段のふてぶてしくて図々しくてサディストのエレナからは考えられないレベルの威力だわ……エレナを、侮って、いた……)
この後、エレナ以外の三人は揃って授業に遅れ、怒られた。
その日の夜。
「たっだいまー!」
直葉が帰って来た。
「相変わらず剣道くせぇな」
「そういうこと言わないでよ。あたしだって自覚あるんだからさ」
「剣道場にシャワーとか付いてないのか?」
「あるっちゃあるんだけど……家で浴びたいから」
「なにそのプライド。ま、いいや。じゃあ偶には一緒に入ろうぜ」
「いいよー」
「ブフッ!」
和人が吹き出すが、二人は風呂場に向かう。今、母親はいない。つまり、風呂場以外には自分しかいないのだ。和人の中に一つの選択肢が生まれた。
ーーー大人しくする。
ーーー男の道を行く。
「…………………」
頬を汗が流れる。意味もなく奥歯を噛んだ。そして、大きく深呼吸をする。
「〜っぷはぁー」
そして、手に持ってる雑誌を置いた。
「……………行くか」
数分後、男の悲鳴が響いた。それから一週間は口を聞いてもらえなかった。