あれ、ここはどこ?
確か、オレはサブリエの悲劇の真実を知って。ギルに撃たれたんだっけ……
そうだ、オレはアリスの記憶にたどり着いた。そこで見たものは、自分が100年前のアリスが大事にしていたただの黒ウサギのぬいぐるみであったこと。そのぬいぐるみに、アヴィスの意志が関わり、オレという人格を形成した。
そして、サブリエの悲劇の真相。全てがどんでん返しという真実を知ってしまったオレは、目覚めた後に従者であり親友であるギルバートに撃たれてしまった。
辺りを見渡す限り、森が広がっている。考えられるのは、死んだ自分の体が、どこかの森へ放置されているということだ。
でも、でも。
「オレは……オレは!」
何もかも失ってしまった。家族、友人、仲間、そして想いを寄せた相棒。
もう何も残されていない。ただ残るのは、あの時と同じように誰も救えなかった自分への怒りだった。
「アァ!!」
近くにあった木に頭を打ち付ける。
何度も、何度も、何度も。
かつて美しいと言われた顔が傷つくことも気にせず、ただひたすら、自分の体を痛めつける。
オレは何も変えられなかった。
多くの仲間を亡くし、やっとたどり着いた真実。自分の罪、自分の存在。何もかもがあからさまになった時、俺に残されたのは絶望だけだった。
「オレは!オレは何も救えなかった!」
大鎌を出現させ、本能の赴くままに暴走する。豆腐のようにスパスパ切れる木々、なぎ倒し、自分の気持ちが収まるまで切り倒す。
「はぁ!はぁ!」
数分後、気持ちが収まりその場へ座りこんだ。俺を中心に50mほど植物が存在しない。よほど溜まっていたのだろう、八つ当たり染みたことをしてようやく収まった。
「ははは、はは……」
乾いた笑いだけが夜空へ響く。言葉で表すなら、それは空虚である。
「いっその事、死んじゃおうかな……」
手に持つ大鎌を自分の首元へと持って行こうとする。
「あ、あの!」
「ッ!?」
不意に声を掛けられた方を振り返る。その先には、オレの体より少し大きな女の子がいた。
タッタッタと、小走りで座り込むオレのところまで駆け寄ってくる。
「ひっ!?あ、あの。大丈夫ですか?」
少女はオレの赤い目と大鎌を見て一瞬驚くが、次には何事もなかったかのように心配してくる。そういえば、木に頭を打ち付けたとき、血だらけになっていたかも。
「あ、うん。気にしないで」
「け、怪我をしてるじゃないですか。いま治します!」
そう言った少女は、オレの額に両手を添える。すると、その両手が緑色の光に包まれ、オレの額の傷がみるみる塞がっていく。なんというか、暖かくて懐かしい感じだった。
「これで大丈夫です」
「あ、ありがとう……」
「い、いえ。神に仕えるシスターには当然のことですから」
「神……ね」
「えっ?」
「そんな人いれば、誰だって不幸にならないよ……」
オレの独り言が聞こえたのか、シスターの少女は俯いて黙り込む。
「何があったのですか?」
「関係ないよ。これは、オレの問題だし。治療、ありがとう」
そう言って立ち上がるオレの手を、少女は握って離そうとはしない。
「辛いことがあったのでしょう。迷える子羊を救うのも務めです。話してください」
「……分かった」
オレは逃げるのを諦め、彼女に全てを打ち明けることにした。