生産者は幻想で何をつくる/東方想造譚   作:鈴ノ猫鳥

5 / 8
その男、畑を作り先を考える

「――こんな物か」

 俺は小屋の隣のスペースで昨日人里で買ってきた鍬で使い、畑の畝《うね》を耕していた。

 見よう見まねどころか、出所不明の記憶を元に作業している為、実際に成功するかすら不明である。

 だがやらないよりマシだと思いながら耕し苗を植えた。

 水は少な目に与える事にする。

 湖のそばと言えど、歩いて10分程度の時間はかかる、その距離を何度も水を運ぶのは辛いと言う訳だ。

「此処に井戸があれば良いんだが」

 流石に無い物ねだりが過ぎると思い直し、首を振って残り本数が少なくなってきた煙草をくわえるが、勿体無く感じて戻す。

「……煙管《きせる》でも買ってくるべきか」

 記憶は無い筈だが、外でも煙管を吸っていた事があると感じ、紙巻よりも幻想郷なら煙管のが似合うと感じていた。

 いや、もしかしたら水煙草が香霖堂にある、あるいはあったと言うのは原作知識なのか、二次創作だったか。

 どちらにしても水煙草なんて物は、実物を見た事が無い。

「……いや、あったとしても使い方が分からんだろうなぁ」

 呟きながら鍬を担いで小屋に入る。

 今日は畑を作る以外にもやる事が、考える事が多いのだ。

 

 

「まずは……どれからやるべきか」

 人里で買ってきた半紙に筆で簡単ながらもやる事、やらなくてはいけない事を書いて眺める。

 即ち『自分の能力を調べる』『原作の状況把握』『原作キャラへの対応』『原作介入の有無』『これから先の収入源』『自分の記憶』の6つである。

「被る物もあるが、基本的にはこんな感じか」

 頷き筆を置く。

 独り言が多いのは元からなんだろうか。

「まずは能力……これは記憶の問題と同時に、考える必要がありそうだな」

 俺が持っている……らしい能力、『つくる程度の能力』。

 何かを能力によって作れた訳では無いが、能力を持っていると言う『確信』だけはある、これが能力持ちだと言う証左なのだろうか。

 記憶が戻れば能力が使えるのか、それとも能力が使えれば記憶が戻るのか、それすらハッキリとはしない、卵が先か鶏が先かと言う奴である。

 次に原作関連であるが、この問題の一つはハッキリしている。

「恐らくは紅霧異変の終了後、来た時の霧を考えてもそれしか思い付かん……即ち、紅魔郷のエンディング後」

 他の異変の際に紅霧が出たと言う話は聞いた事が無い、あり得るとするならば次点で非想天だろうが。

「別に紅い霧だって話は聞かないんだよな」

 紅い館の主は安楽椅子探偵の如く、件の異変の際に館から出なかった筈だ。

 だが、紅い霧では無く気質は濃霧だった筈。

 此処は次に来るであろう、長い冬に関して備えておけば良いだろう。

 能力は現状で使えないと言う面から無し、霊力や魔力も分からない、空も飛べない、異変介入等は出来そうも無い。

 原作介入は考えない方向性で一切問題がない、考えた方が問題だろう。

「問題は残りの二つ……だよな」

 今更ながらに幻想郷の管理人に見られて居るかもと気付いて、半紙を丸め囲炉裏の種火にする。

 原作キャラとの付き合いも、求聞史記の英雄に書かれる博霊の巫女や、普通の魔法使い、先にも浮かんだ香霖堂の店主ならば害は無いだろう。

 だが、その他多数の妖怪に関しては余り宜しくない。

 妖怪は恐れにより生きる物、人喰いの妖怪等数多に居る訳だ。

 紅魔郷で考えても、宵闇の妖怪に紅魔館の主、何の妖怪か明言されていない門番もまたあり得る。

「……つまりは作戦いのちだいじに、だな」

 なるべくは積極的には関わらない、関わった場合は命優先って事だな。

 昨日出会ってしまった山の哨戒天狗犬走椛も、一歩間違えば俺は死んでいただろう。

 金策に関しても、余り山に近づくのは得策では無く、なるべくならば人里あるいはこの小屋で行える事が好ましいと言う訳だ。

 其処まで考えた所で煙草を一本取り出して火を点ける。

 赴くまま、紫煙を燻らせて考える。

 何故俺なのか、何故幻想郷に居るのか、何故能力は使える気がしないのか。

 とりとめの無い思考は紫煙と共に宙へと消えていった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。