犬走椛が来訪した翌日、朝の水汲みに行った時にはチルノと大妖精に出会い、遊びに誘われるが今日は用事があるからと断った。
悪戯好きだろうが、意志疎通が可能ならば少なくとも知恵が無い訳では無い、しっかりと通じるのだ。
その後、畑への水やりをした際に芽が出ている事に気付き、密かに笑みを浮かべる。
このまましっかり成長してくれれば良いのだが。
嫌な事はさっさと済ませるに限る。
昨日の今日だが、妖怪の山で自然の恵みを得る為にも、大天狗とやらに面会しに行く事にした。
革ジャンに付いた埃を払い、昨日一人になった後で洗濯したワイシャツの上に羽織る。
爪先に鉄板の入った安全靴のブーツを履き、帽子を被る。
ポケットには昨日受け取った入山許可書が入っている。
煙草とライターは腰に付けたベルトポーチとでも呼ぶのだろうか、これまた革製の小物入れに入れてある。
また、このポーチには昼飯代わりに、残った最後の干し肉も入れてある。
背中側には小屋にあった、先日も持ち出した錆の浮いた鉈を差している。
「……準備完了だな」
呟き、小屋から出る、鬼が出るか蛇が出るか。
歩き初めてから一刻、山の麓に近付いた辺りで、上空から影か降りてくる。
昨日も見た姿、昨日とは違い武骨な太刀に円形盾を持つ椛である。
「呼び出しにより、大天狗様に会いに来た」
短く告げる、椛は頷き飛べぬ俺を先導し山道へと歩いて入る。
山道に入った瞬間、あちこちから見られている気配を感じる。
好奇あるいは奇異、はたまた敵意か。
判別する術など無く、椛に先導されるまま歩く。
目の前の少女の様に飛べるならば、もっと楽に辿り着くのだろうが。
流石に抱き抱えられながら飛ぶのは流石に遠慮したいし、彼女が抱き抱えながら飛べるのかも知らない。
そもそも、俺より背の低い少女然とした彼女に抱き抱えられると想像しただけでも気恥ずかしく、そんな姿で飛ぶならば歩いて行く方が良い。
四半刻程歩いただろうか、突風が吹き荒れる。
飛来する礫に顔をしかめ顔をかばう。
「あやややや、これはこれは見掛けない外来人の方で……椛、この方は?」
「大天狗様の命によりお連れしております、麓の林に住まうナナシ様です」
突然聞こえた声に返事する椛、俺が様付けなのは『大天狗の客人』扱いだからだろう。
風が収まると相手を見る、其処には予想通りの姿、幻想郷最速のブン屋烏天狗射命丸文の姿があった。
ある意味似た様な性格の人物、強い者にはへり下り弱い者はおちょくる、ある意味では性格が悪くある意味では正直な妖怪少女。
俺が原作キャラ達との会話で敬語を使うのは、彼女の思考に近い。
俺には戦う力が無く、彼女達はそれを持つ。
敬語と言う言葉によりまずは敵対する意思など無いとへり下り、自らの保身をーーこの身の安全と一時の生活の保証をーー図ると言う訳だ。
しかしながら、彼女の様に力を持ったからと言って高圧的になりたい訳では無い、そこにはやはり敬意は持ち続けるべきだろう。
「成程、なら何故飛ばずにこんな所を歩いてるの?」
「彼は飛ぶ事が出来ない様で、私も彼を抱えて飛ぶには不安がありましたので」
そもそも抱えて飛ばれるのは此方としても勘弁していただきたい。
「わかったわ椛、私が風で飛ばすから早く行きなさい」
言うが早いか、俺の意思など無視で身体が宙へと浮く。
椛が頷き宙に浮く、俺の手を引くでもなく高度を上げて行く。
俺の身体も勝手に高度を上げる、これは非常に恐ろしい。
自分の意思以外で身体が勝手に動かされる上に、向かう先は何の支えも存在しなーー突然の加速、意識をハッキリと残せるか、声にならない叫びを上げて俺は天狗の住処に運ばれて行った。
力量
人里一般人≧主人公
現状こんなもんです。
その内、彼は無双出来るのか、出来ません。
余り話が結局進まなかった今回、次回オリキャラ(秋姉妹では無い)が出ます。
ご注意下さい、多分話も進みます、多分。