ちょっとだけ普段よりは長めです。
もう少し改行しろや、誤字報告等でも構いませんので、ご意見ご感想等ありましたらお気軽に。
むしろ大歓迎しております。
射命丸文の操る風で巻き上げられ、天狗の住処に下ろされた俺は息も絶え絶えだった。
ジェットコースターなんて目じゃない恐怖感、絶叫では無く絶句、帽子は飛び掛け支え無し、手は空を掴んで何も残らない。
乗った事があるのかと訪ねられると、記憶が定かでは無いので返答には困るのだが。
「し、死んだかと何度か思ったわ」
余りの恐怖に言葉遣いを気にする余裕も無い。
「あやややや、それが貴方の素ですか」
烏天狗はそんな事を言いながら羽団扇で口元を隠しながらも、にやにやと笑う様子を隠さずに、膝が笑って立ち上がれない俺を見下す。
原作の知識からすれば、余りこの烏天狗に弱みを見せるのは得策では無いのだが。
何とか話の方向性を変えねばと辺りを見回すが椛の姿が無い、何処に行ったのだろうか。
何処に行ったのか、その言葉を口にする前に廊下の先に白い姿が見えた。
その横に立つのは見知らぬ天狗らしき姿の男、顔立ちはイケメン俳優の様に整った顔立ちで原作には出て来ない人物である。
恐らくは件の大天狗であろう、鼻が高い赤ら顔と言う所謂天狗の姿では無いのはともかく、イケメンな男だったと言うのは意外であるが。
まるで東方作品では無く、乙女ゲームに出てきそうなキャラをしているのは何の間違いだろうか。
「お待たせしましたナナシ殿、ご苦労だった射命丸、持ち場に戻れ」
「……わかりました、失礼します」
不満ーー取材対象と離された、あるいは上司からの明らかに遠ざける命だからか、はたまた大天狗と離れる事にかは分からないがーーをありありと見せながらも、ふわりと宙に浮き外へ出ていく射命丸文。
「犬走椛、客人に肩を貸してやれ」
「はっ、わかりました……どうぞ」
椛はまだ立てそうにも無い俺の肩を掴み、半分抱き抱える様な形で俺を立ち上がらせる。
気恥ずかしさが先に立つが、まだまともに立てそうにも無いので諦観の念で受け入れ、天狗の住処ーー襖が並ぶ廊下、まるで永夜抄に出てくる永遠亭の様なーーを歩き出す。
しかし、俺を呼び出したのは先導している男では無いのだろうか。
視界の端に映った椛の表情も些か訝しげである。
「あの……失礼ながら質問があるのですが」
どうしても気になる俺は暫定大天狗に声をかける。
「ナナシ……!」
「良い、犬走椛」
俺の言葉に先に反応したのは椛、そしてそれを止める大天狗……何かしらのマナーがあった様だ、反省はするが天狗マナーなんて物は流石に原作知識にも存在しない。
「して、客人殿よ質問は何かな?」
「……俺は大天狗様に呼ばれたと聞いて此方まで来た訳ですが、犬走椛様に命を出したのは貴方様では?」
少なからず椛に命を出したのは目の前の男には違いないだろう、それは密かにではあるが椛の浮かべた表情からも伝わる。
「そうだな、客人殿にはそう伝えて居たがーー」
「あいや、其処まで!」
轟音。
廊下の襖が吹き飛んで新たな人物が現れる。
見た目は勝ち気な美少女、格好こそ射命丸と同様の天狗の装い、ただ彼のブン屋と違い明らかに衣装随所に見られる意匠には金や銀、豪奢な姿の美少女であった。
「そこから先は私が説明しよう!」
「……て、天魔様?」
小さな椛の呟きは俺の耳にしっかりと届いており彼女の正体が知れた。
どうも、原作では登場していない天狗の長、天魔の称号を持つ者こそ、このド派手な登場をした少女と言う事だった。
盛大な登場で荒れた廊下をそのままに連れて来られたのは、恐らくは天狗の住処、天魔との応接間。
天魔が真正面に座り込んで、俺の両脇を椛とイケメン大天狗が挟み込む、まるで偉くなった様な気がするが、明らかな気のせいである。
「あー……大丈夫だ、空飛ばされた程度で腰抜かす奴にどうこうされん、私はコイツに話がある控えろ」
天魔が俺の両脇の二人に対して、追い払う様に手を振る。
「……畏まりました」
一秒に満たない程度の間があったが、大天狗の言葉に二人が応接間を出ていく。
「よし、これでしっかり話せるな……なぁ、トリッパー?」
「何を……!?」
「嗚呼、敬語なんざ気にするな今は私とお前だけにしか聞こえて無い……まぁ、覗き見くらいはされてるかも知れんが、私の事は奴も知っている」
天魔は明らかに俺が『幻想郷の知識がある者』あるいは、『原作知識を持つ者』だと理解して話している。
そうでなければ、突然覗き見なんて言い出さないだろう。
即ち、幻想郷の管理人あるいは妖怪の賢者と呼ばれる者の事を指して、それを知っていると確信している会話。
「何が目的だ」
「なに、そんな警戒しなくても良いさ、ただ『知識』はあるんだろう? そんなご同輩に親切心から援助しようってだけさ」
原作知識持ちだと確信している言い方、一体どう言う思考によりそこに辿り着いたのか、それにご同輩だと言う言葉。
「どうやって知識があるなんて考えに着いたかは知らないが、つまりは二次創作物には付き物と考えて良いんだな……転生者」
「ご名答、辿り着いたのは椛からの報告、深読みしただけさ……見慣れない格好の外来人が氷精、つまりチルノと共に山に近付いて来たが、警告だけで退散……つまり、天狗と争うのを避けた、人里にも向かってない外来人がな?」
余りにも迂闊だった。
確かに出会ったのは、人里に向かう前、そしてチルノは自然から発生する存在、妖精故に余り気にされない、気にしない。
「確信したのは、さっきだが……年季の違いだな」
「……つまり、動揺した事で確信したと言う訳か」
「その通り、おっと自己紹介がまだだったな、原作知識には無いだろ?」
立ち上がり胸を張り仁王立ちする天魔。
「私は山の天狗の総大将、諏佐天神《すさてんじん》、過去のあるいは未来の言葉を借りるなら、私は転生者、転生した時に神様には生憎出会っていないがな」
ニヤリと笑う原作には無いその姿、転生する時に神様に出会うなんてのは確かに間違い無く転生者。
二次創作に有りがちでテンプレにも程がある、そうあるのか無いのか判らない記憶が告げている。
「……確かに転生者だな、俺は今の所名乗る名前がナナシとしか言い様の無い記憶喪失の男だよ」
「確かに記憶喪失だと聞いてるが、トリッパーで記憶喪失なんてお前だって立派にテンプレやってるじゃないか」
笑う天神、確かにその通りであった。
テンプレ同士の会話が次回も続きます、多分。
次回原作キャラは登場するのか、するならまた椛かな。
大天狗のイメージは乙女ゲームに出てくる美形キャラ。
ただ、作者はやった事無いので見た目だけ。
次話執筆が滞っております。
設定厨(厨二病)の血が疼き、ほのぼのの筈が気付けばバトル物の要素がもりもりと。