ストライクウィッチーズ~月からやって来たウィッチ~   作:ダイダロス

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いや、うん。
書いてみたかったんです。

艦これ?もちろん書きます。
まだ、もうちょっと待ってください…。


月より舞い降りし赤き愉悦

「はぁ。もうすぐ夜間哨戒も終わりですね、ご主人様」

 《そうだね…ふわぁ》

 

 白野は昼間と夜間でキャスターと表層人格が入れ替わる。そのため夜間飛行の時は、飛ぶのも警戒するのも基本的に全部キャスターがやるのだが、白野はキャスターに悪いと言って起きている。

 今のところ、白野の額に現れる令呪を象った魔導針に反応はない。

 隣を飛行するサーニャが白野に声をかけた。

 

「岸波さん、夜間哨戒には慣れてきた?」

「まあ、そうですねー。飛ぶこと自体にもようやくという感じです」

 

 その返事を聞いて、サーニャは苦笑した。

 初の夜間飛行でネウロイと遭遇し、ナイトウィッチであるサーニャのサポートもなしに単独でネウロイを1機撃墜したウィッチの言葉とは思えない。

 確かに飛び方はまだ新米の域を出ない。

 だがその戦い方は既に歴戦のウィッチのそれと変わらない。

 飛び方は新人、戦い方はベテラン。矛盾のような気もするも、サーニャにはそうとしか表せない。

 

「(もう大丈夫かな…)」

 

 白野にナイトウィッチの素質があるとわかって1週間が経った。

 ここ数日、2人は夜間一緒に飛んでいるが、白野に特に問題はない。

 飛び方については坂本少佐の方に任せるが、サーニャ自身が白野に教えることはもうない。

 ミーナ中佐に報告して、何度か白野に一人で夜間哨戒をさせて様子を見るのがいいかもとサーニャは眠い頭で考える。

 

 もうすぐ夜が開けようとしていた。

 

 

 ◇◇

 

 

 サーニャと一緒の夜間哨戒から2日が経ったある日の午後。

白野は基地をぶらついていた。

 

「今日は一人で夜間哨戒か…」

《ご主人様、お疲れではございませんか?》

「大丈夫だよ、キャスター。あ、芳佳ちゃんとリーネちゃん」

「あ、白野さん」

 そこに洗濯物がたくさん入った籠を持った芳佳とリーネが現れた。

「やっほー。2人とも。これからお洗濯?」

「はい」

「と言っても干すだけですけど」

「じゃあ私も手伝うよ」

 

 3人は洗った服を干しながら雑談をする。

 

 

「そういえば今夜は初めて一人で夜間哨戒に出るんだよね」

「そうなんですか。それじゃ明日の朝は白野さんが好きな食べ物作りますね」

「本当!?じゃあ芳佳ちゃんって激辛麻婆豆腐作れる?」

 《!?ご主人様それはいけません!絶対ダメですって!今の状態じゃ私もあの劇物を食べることに…!それだけはご勘弁を…!》

 

 頭の中でキャスターの必死な声が響く。だが麻婆の前に多少の犠牲はやむをえない。

 

「げきからまーぼーどうふ?」

「扶桑の料理かな?芳佳ちゃん知ってる?」

「ううん、知らないよ」

「え?激辛麻婆豆腐知らないの?」

「どんな食べ物なんですか?」

「うーん。赤くて、辛くて辛くて激辛でトロトロで」

「赤くて辛い…?」

「…唐辛子を使ってるのかな?」

 

 うーん。と考え込む2人。

 501のメンバーでも料理上手と知られる芳佳とリーネが知らないとなると他のメンバーも知らなそうだ。

 

「キャスター。激辛麻婆豆腐ってどこの国の料理?」

 《ええっと…。申し訳ありません、ご主人様。激辛麻婆豆腐がどこの国の料理かは私存じません》

 

 これは困った…。激辛麻婆豆腐が食べられないなんて…。

 ムーンセルではよく食べていた料理だ。とてつもない辛さだが、辛い以外は美味しい料理だ。

 桜の作ってくれるお弁当も美味しかったが、あの刺激的な味は激辛麻婆豆腐でしか味わえない。

 激辛麻婆豆腐食べたいなー、という気持ちは夜間哨戒に出ている時も消えなかった。

 

 

「良い月夜ですね、ご主人様」

 《………》

 

 確かに今日は見事な満月だ。雲の量もそれほど多くない。

 黄金色の輝きが優しく照らし、ナイトウィッチでなくても十分飛べそうだ。

 ふとある考えが白野に浮かんだ。

 白野は満月に願う。

 

 《…ムーンセル、お願いだから明日の朝激辛麻婆豆腐を食べさせてください》

「ちょっ…!?ご主人様、冗談でも勘弁願います…」

 《だって…》

 

 食べたいものは食べたいのだ。生き物の三大欲求の内の一つ、食欲が食べたいと叫んでいるのに我慢などできそうにない。

 欲求不満な白野に困ったご主人様だと思いながら夜空を飛ぶキャスターだった。

 

 

 

 ◇◇

 

 とある空間に長身で近寄りがたい雰囲気の男がいた。その男は目を閉じて立っている。

 

 《…ムーンセル、お願いだから明日の朝激辛麻婆豆腐を食べさせてください》

 

「ふむ、よかろう。その願い、しかと叶えてやる」

 

 男はまさに愉悦とでもいうような笑みを浮かべた。

 

 

 ◇◇

 

 

「ふぁ~、眠い…」

 《さすがに私も眠いです…》

 

 もうそろそろ朝日が水平線の向こうに顔を出しそうだ。

 ネウロイに遭遇することもなく、無事基地に戻ってきた白野。

 ストライカーユニットを定位置に戻して、ベッドへ向かう。

 朝食まで短いお休みだ。

 さて、今日の朝ごはんは何かな?

 そう思いながらあっさりと白野はベッドの上で眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

エイラのベッドに…。

 

「ちょっ、何で私のベッドに岸波がいるンダ!?っていうか、お前もかヨ!!」

 

 

 

 

 

 

 芳佳とリーネは2人そろってキッチンに向かっていた。

 もちろん朝食を作るためだ。

 エプロンを着けて手を洗ったリーネはコンロの上に見慣れない鍋が置かれている。

 

「芳佳ちゃん、これ何かな?」

「え?さあ?私は知らないけど…」

 

 蓋には何かメッセージカードが張られている。

 扶桑語で書かれていたため、芳佳がメッセージを読み上げる。

 

「えっと、『岸波白野。汝が願い叶えん。ここに激辛麻婆豆腐を送ろう ムーンセル』…?」

 

 白野に送られてきたものだろうか?しかしムーンセルとは誰で、激辛(げきから)麻婆(まばば)豆腐(どうふ)とは何だろう?

 

「開けてみる?」

 

 芳佳の問いにリーネは特に考えず頷き返す。

 鍋の中身はまさしく赤だった。

 見る者全てに辛さを印象付ける色。嗅ぐ者全てに辛さを知らしめる臭い。

 この世全ての悪…とまでは言わないが、まるで地獄の一端が開いたかのようだ。

 芳佳達は思わず蓋を閉めて見なかったことにしたいぐらいだった。

 だがパンドラの箱は既に開け放たれてしまった。

 

「リーネちゃん。……味見、してみる…?」

「芳佳ちゃん…」

 

 恐怖はある。しかし料理人たるもの料理に臆するなどあってはならないだろう。例え身の危険を感じていたとしてもだ。

 お玉でスープを掬い、2枚の小皿にそれぞれよそう。

 覚悟を決めた表情で501の料理担当は互いの顔を見つめあった。

 

「行くよっ…!」

「うん!」

 

 一気に赤いスープを飲む芳佳とリーネ。

 直後、キッチンに悲鳴とも叫び声ともつかないものが響き渡った。

 

 

 ◇◇

 

 

「宮藤、朝食はこれだけなのか?」

 

 坂本が不思議そうに芳佳に聞いた。卓に並んでいるのはご飯とサラダだけだ。

 

「す、すいまひぇん。ちょっと(ひた)調子(ひょうひ)が悪くて、お料理できまひぇんでひた」

 

 口を押さえてなぜか舌ったらずの口調で話す芳佳。

 心配そうにバルクホルンが声をかける。

 

「どうした宮藤?風邪でも引いたのか?」

「そういえばリーネさんはどこに?」

 

 ミーナも珍しい事態に問いただす。

 リーネは余りにもあれな激辛麻婆豆腐の味に卒倒し、朝食は用意できなかった。

 そのことをどう伝えたものかと芳佳が悩んでいるところへ、眠そうに白野が食堂に入ってきた。

 

「おはようございます~」

「あ、白野さん。あの、…激辛麻婆(まばば)豆腐があるんですけど」

 

 おずおずと芳佳が声をかける。

 

「激辛まばば豆腐?ひょっとして激辛麻婆(まーぼー)豆腐のこと?」

「は、はい。多分。ムーンセルってところから送られてきたみたいです」

「え?本当!?」

 《うぇっ!?マジですか!?》

 

 眠気が吹っ飛んだ様子で白野は芳佳に聞いた。

 同じく信じられない様子で聞き返すキャスター。

 芳佳が皿によそった激辛麻婆豆腐を運んでくる。

 

「やったぁ!これだよ、これ!」

 《ムーンセルの大馬鹿野郎!何を考えてやがりますか、あれはーーーーー!!?》

 

 狂喜乱舞する白野と違い、キャスターは悲鳴をあげた。

 白野は平気そうな顔で食べるが、あの激辛麻婆豆腐はサーヴァントだって御免なのだ。

 キャスターは聖杯戦争の進行役である男が何か関与しているのではないかと勘ぐってみるがどうしようもない。

 激辛麻婆を持って大はしゃぎする白野を見て501のメンバーは唖然としていた。特に味見した芳佳は信じられない様子で見ている。

 

「宮藤、あれは何だ?」

「…激辛麻婆(まーぼー)豆腐っていうらひいでふ」

「げきからまーぼーどうふ?」

 

 その料理の名前は全員初耳だった。

 見た感じとても辛そうだ。

 納豆の臭いとは違うが、その臭いが鼻の奥を刺激する。

 

「食べてもいいですか?」

 

 目をキラキラさせて白野は言った。

 白野はストライカーユニットを履いていないのに、501のメンバーはなぜか狐の尻尾が待ちきれないようにぶんぶん振っている様子が見えた。

 

「え、えぇ。いいけど…」

 

 ミーナから許可を得た白野は早速一口。

 

「うん、やっぱこれだね♪」

 《ぐああああああああああ!!?ご、ご主人様、それ以上は、ご勘弁……、あがああああああ!》

 

 もぐもぐと美味しそうに食べ進める白野。その頭の中ではキャスターが普段の口調が崩壊するほどにもがき苦しんでいた。

 その様子を見ていた坂本が芳佳に言う。

 

「宮藤、私にもあれをもらえないか?」

「えっ!?…、でも、坂本さん。あれとっても辛いでふよ」

「岸波を見ろ。大丈夫そうだ。それに朝食がこれだけというのもな」

 

 坂本がそう言ったのを皮切りにバルクホルンなども激辛麻婆豆腐を芳佳に要求する。

 芳佳は仕方なく激辛麻婆豆腐を全員分皿によそって持ってくる。

 改めてその辛そうな食品を見る。そして白野を見てからもう一度激辛麻婆豆腐を見る。

 こうして間近で見ると何かプレッシャーのようなものを感じる。また臭いもかなり刺激的だ。

 全員が何か覚悟を決めてスプーンで麻婆を掬う。

 

『い、いただきます』

 

 激辛麻婆豆腐をスプーンですくって全員が一斉にパクリ。

 …………。

 

「がっ!」

「みっ、水!水ぅううううう!!」

「かりゃぁぁぁあい!シャーリー!」

「あああああああああああ!!?舌が焼けますわ!!?」

「かっらぁぁい!!」

「なんダ、コレ!?」

「………(気絶)」

「………」

「美味しい…」

 

 ガタガタッ、と音を立てて椅子から立ち、水を求めに走るバルクホルンとシャーリー。

 泣き出すルッキーニ。

 その場で悶絶するペリーヌとハルトマン、エイラ。

 言葉にするのも難しい辛さに気絶するサーニャ。

 部下のように騒ぎはしないが一口食べた状態で固まる坂本。

 

 楽しい朝食の時間は、一瞬で阿鼻叫喚の地獄に変わった。

 唯一平気そうにミーナは赤い物体を口に運び続ける。

 

「美味しいのにな」

 

 

 その中で白野は平然と激辛麻婆豆腐を食べ続け、完食してさらにはおかわりもする。もちろんミーナもだ。

 その様子を見ていたミーナを除く501のメンバーは恐ろしいような尊敬するような目で白野を見ていた。

 

 

 

 

 ちなみにそれ以降、501のキッチンに激辛麻婆豆腐が入った鍋が3日おきに現れるようになり、白野とミーナ以外の501のメンバーを悩ませることになるのは先の話。

 

 

 




まあ、ミーナ中佐なら激辛麻婆豆腐も大丈夫ですよね?

坂本さんやバルクホルンではさすがに無理だと思いますが。

あと最初の話と全然繋がりがないぞと思った方。
あくまで連載ではなく日常的な話を主に進める短編ですのでどうかご了承ください。
ちなみに白野が501に来たのは原作のアニメでは3話と4話の間の時期と思ってください。

よろしくお願いします。
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