小学校での一幕です。元太が動かしにくい……
気づけば20話をこえてました。展開が遅くて申し訳ないです。
教室には既に大半の生徒が登校していたが、光彦の姿は見えない。
きっと職員室で小林先生を困らせているのだろうと苦笑しながら、自分の席に向かうコナン。少年探偵団もクラスメイトに挨拶をしながらそれぞれの席に向かう。
席に着いたコナンと哀はランドセルから教科書を取り出しながら、ここにいない光彦について話し出す。
「光彦はまだ職員室みてぇだな……。ギリギリまで居るのかもな」
「……そうね。昨日の様子や今朝の話を聞くと大分気合入ってるみたいだし」
「まぁ、あと十分で朝の会だしすぐ帰ってくるか……?」
「そういえばアナタ今日はどうするの?あの探偵さん今日は帰ってくるの?」
「ああ?あ~おっちゃん次第ってとこかな。
どっちにしろ博士に連絡するって言ってたけどな」
「そ。言っておくけど今日は魚だからね」
「まぁ、昨日と今朝でかなり高カロリーだったしな。博士も分かってんじゃないか?」
「そうだといいんだけどね……」
朝の阿笠の様子を思い出しため息を吐く哀と乾いた笑いしか出てこないコナン。
二人の周囲には朝から暗い空気が漂い始め、他の生徒たちは遠巻きにその様子を眺めていた。そんな教室の空気を吹き飛ばしたのは教室の扉を勢いよく開けた光彦であった。
「コナン君と灰原さんは来てますか!……ああ、良かった。
お二人とも登校してたんですね。早速ですがこれに目を通してください!」
「お、落ち着けよ!……で、何だこれ?」
「台本の草案ですよ。あとで先生が他の人の分も持ってきますが、お二人は主役ですから先に目を通して頂いた方がいろいろスムーズにことが運ぶかと。
不自然なセリフがないか、今日の学活の時間までに目を通してください。」
「あ、ああ。目を通しておけばいいんだな(……草案って)」
光彦が勢いよく差し出した冊子を受け取ったコナンと哀。コナンは光彦に質問する余裕があったが、哀は冊子を受け取った状態で固まっている。
「ええ。それで今日中に不自然なところを修正して決定稿を皆に配布します。
内容は昨日の学活のときからほぼ変更していません。時間もないですからね。
本当はセリフのある人全員で意見交換できればいいのですが……」
「お、おう?」
「まぁ、主役のお二人のセリフが不自然になっていなければ問題ないでしょう。
あとは実際に練習しながら変更していくことになります。
ま、僕が書いた台本ですからね。修正なんてないでしょうし、実質これが決定稿ですね」
「そ、そうか」
「……」
「ああ、時間もないですし早速お願いします。全部に目を通すのは厳しいかもしれませんので、出来ればご自分と相手役、最低でもご自分のセリフのチェックをお願いしますね」
「あ、ああ。分かったよ。な?灰原?」
「……ええ」
光彦は言いたいことを言い終えると自分の席へと向かう。コナンと哀はしばし呆然と光彦の背中を眺めていたが、振り返った光彦に見られると慌てて手に持った冊子に目を通し始めた。
時間は進み、本日最後の授業――学活の時間――が始まっていた。
現在、教壇上には小林先生の他に光彦、コナン、哀の姿がある。光彦がページを伝え、そのページのセリフで不自然なところを三人が指摘しているようである。
「それでは次のページにいきますね。何かありますか?」
「この女スパイの“それは……仮面ヤイバー!あなたを愛してしまったから!!”ってセリフは変えた方がいいかもね。この女スパイはクールでどこかミステリアスな女性……。
それがいきなり感情的になっているし……こんな風に本心を伝えるというのは違和感があるわ」
「そうね、先生もちょっと違和感があるわね(……これ、学芸会の出し物なのよね?)」
「俺はこのタイミングで愛の告白していることが不思議なんだが……」
「あら、あなたも女心を勉強した方がいいんじゃない?探偵さん?」
「けっ、大きなお世話だってーの」
「そうですか……(……漫画のセリフを組み合わせただけじゃダメでしたか)
分かりました。このセリフは灰原さんが修正してください。他にありませんか?」
コナンたちがセリフの修正作業を順調に(?)すすめている頃、他の子供たちはというと、元太たちが演じる三人の怪人について話しあっていた。昨日までは怪人A、B、Cと仮称であったため、今決めているのである。
「サソリ伯爵とかかっこよくねぇか?」
「う~ん、確かにかっこいいけど……そうだ!
せっかく三人いるんだからお野菜三人衆とかは?」
「野菜三人衆ってアレのことか?ジャガイモ、ニンジン、ピーマンの?」
「そうそう!衣装もそんなに難しくなさそうだし。
元太君なんかジャガイモ魔人にピッタリだし」
「(ピ、ピッタリ……)で、でもアイツらすぐヤイバーにヤられちまうじゃねぇかよ」
「いいのよ、それで。ほら台本でもすぐにヤられてるし」
どうやら野菜三人衆という怪人三人組に決定したらしい。怪人役の子たちはもっとかっこいい怪人が良かったのだが、歩美の笑顔には逆らえないようで項垂れていた。特に元太はジャガイモ魔人にピッタリなどと言われたためダメージが特に大きいようだ。
その後は小林先生の指導の元、小道具などを作り始める。朝に台本を渡された時から、作るものを決めていたため、スムーズに指示できたことに感謝しながらも、自分が情けなく感じ少々落ち込む小林先生であった。
(また……また、教え子に助けられた……。いけない、気を強く持つのよ!澄子!
……大丈夫、これから挽回すればいいのよ。幸い今日は金曜日。土日で頑張れば……)
小林先生が決意を固めて終えた頃、セリフの修正が終わった光彦が話しかける。
「先生!」
「は、はい!……ああ、光彦君。修正が終わったのかしら?」
「ええ。とりあえずはこれを演者分コピーするなりして演者の皆に配布してください。
今日は練習する時間はないですけど、土日で各自練習してくれれば月曜から楽ですし。
他のみんなには月曜に配布すればいいですしね」
「そ、そうね。お昼休みにしておくわね」
「ありがとうございます」
光彦から冊子を受け取ると四限の終わりのチャイムまであと十分を切ったところであった。
作業の片付けを考えるとここがタイムリミットであった。
「それでは皆さん片付けて、給食の準備をしましょう」
「「「は~い」」」
子供たちが楽しみにしている給食の時間が始まった。各々友達と話しながら楽しそうに食事を進めている中、一人嫌そうな顔をする子供がいた。
「なんで、レーズンをパンに入れんだよ……」
「流石にパンは食べないわよ?残すなり、誰かにあげるなりしなさい」
「だよな~、後で元太にでもやるか。あ~今日が四限授業で良かったぜ。
帰ったら何かつまむか」
「探偵事務所に一度帰るの?博士に連絡がくるんでしょ?」
コナンの言葉に探偵事務所に帰るのかと聞く哀。今朝の話では小五郎から阿笠に連絡くるということであった。他の人なら着替えの用意などあるが、コナンは阿笠邸に着替えが常備してあるため不要である。そのため直接阿笠邸に来ると思っていたのだ。
「ん?ああ、博士の家に帰ったらってことだよ。ガキの頃からよく行ってたからな。
別邸みたいなもんさ。いや、隣りだから別邸つーより離れってのが近いか?」
「どっちも違うわよ。まぁ、客間の一つはアナタの部屋みたいになってるけどね」
「ああ、あの部屋はガキん時から泊まる時に使ってるからな。私物とか置いたままだし。
この前買った小説も置いたままだな、そういや」
「完全に自分の部屋にしてるじゃない。これからあの部屋はアナタが掃除しなさい」
「ん、そうだな。分かったよ」
ぶどうパン以外を食べ終えたコナンは哀に了承の返事をした後、パンを元太に渡す為に席を離れる。それを横目で確認していた哀は、クラスメイトたちが何か言いたそうにしていることに気づく。
哀はどうしたのだろうかと気にはなったが、用があれば話しかけてくるだろうと給食を食べることを優先する。やがて班員同士で話し始めたために気のせいだと哀は判断した。
(やっぱり、江戸川君と灰原さんって仲いいよね)
(うん、よく灰原さんのお家に行ってるみたいだし)
(灰原の家に江戸川の部屋もあるみたいなこと言ってたしな)
(学活の時間も二人で話してることが多かったよね?)
(あ、俺も思った。小林先生と光彦が話してるときは二人で話してた)
(私も見た)
哀と戻ってきたコナンに聞こえないように小声で話す班員たち。
そんなクラスメイトを気にせず哀とコナンはまた会話を始めていた。
(((ほんと仲いいよな~)))
給食の時間が終わり、昼休みの時間となった。子供たちは外に遊びに行ったり、おしゃべりしたりと思い思いに昼休みを過ごし始める。その様子を少し見たあと、小林先生は先程光彦に渡された台本を印刷するために職員室へと向かう。
「……修正箇所だけ修正してプリントアウトすれば……大丈夫、間に合うわ。
良かった~、元のヤツをPCに打ち込んでおいて」
「それにこの枚数なら複合機でホッチキスしても大丈夫でしょ。
これで全員にちゃんとした台本を渡せるわ~」
その後、コピー用紙が切れたり、ホッチキスの針が切れたりとトラブルはあったが、帰りのHRでどうにか全員に台本を配布できた小林先生は達成感を感じていた。
「あっ~!!授業参観のプリント配ってない~!!」
……机の上のプリントを見るまでは
準備編その2でした。
元太と歩美の出番はこれから増えていくハズ……
因みに蘭は当分出てこないです。
小学生の日常を描くとどうしても出しにくくなりますね。名前だけは出てるんですけどね
次回は事件に突入する……ハズ
また阿笠邸を挟むかもしれませ。
ご意見・ご感想の程お待ちしております。
活動報告に記載していたアンケート撤去しました。
またいずれアンケートは実施したいとは思います。