名探偵コナン~選ばれた二人の物語~   作:雪夏

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その後編その2
少年探偵団や博士は鑑賞中です。


File15 日常 学芸会のその後編 その2

 

 

 

 

 

 

阿笠邸で帝丹小学校学芸会の上映会が始まろうとしていた。テレビの前に陣取っていた三人がコナンと哀に声をかける。

 

「コナン君と灰原さんもこっちで一緒に観ようよ!」

 

「そうだぞ」

「そうですよ」

 

「私と江戸川君は此処で観ているから気にしないで」

 

「もう、こっちで一緒に観た方が絶対楽しいのに……」

 

「だよな」

 

「ハハハ……。二人とも彼処で観ておるし別に良かろう?

さて、他のクラスのから見るかの?それとも先に君たちのから観るかの?」

 

「そうですねぇ……。僕達たちは午後の二番目でしたから……」

 

「歩美、最初からがいいな。緊張してたから、歩美たちの前ってあまり覚えてないし」

 

「俺はどっちでもいいぜ。なぁ、コレ食っていいか?」

 

「じゃあ、最初から見るかの。午前中は合唱が多いから、そんなにかからないしのぉ」

 

 

阿笠が再生を始める順番を決め、いざ再生しようとしていたその時、未だうなだれているコナンに哀が話しかける。

 

「ほら、始まるわよ。最初から再生するようだから、私たちの劇は当分先だけどね」

 

「なぁ」

 

「何?」

 

「本当なんだな?……母さんたちが見たのって」

 

「ええ。博士に映像を送ってもらったって」

 

「母さんには知らせないって約束したのに……」

 

「アナタがご両親が仕事を放ってこっちに来ることばかり心配してたからじゃない?

 映像ならご両親も仕事を放り出して来ることもないし、大丈夫と思ったんじゃないかしら。まぁ、アナタは知らせること自体がNGだったみたいだけど」

 

「そうか、博士は気を利かせてくれたんだよな。……余計な」

 

「ま、諦めなさい。既にご両親は映像を観ている訳だし」

 

哀の言葉に再びうなだれるコナンであったが、今回はすぐに顔をあげる。コナンの視界に入ったのは自分を不思議そうに見る哀の姿。コナンは先の会話で気になることがあった。それを確認するために哀に質問をする。

 

「オメェ、もしかして……母さんと話したのか?」

 

「?ええ。私が電話を受けたから。ちょうど博士が出かけていたし」

 

「その……母さんに何か言われたか?俺のことで……」

 

コナンは有希子が哀に何か告げたのではないかと心配になった。以前、自分が電話越しで紹介した時は言わなかったが、哀は例の薬の開発者なのだ。恨み言を言われたかもしれないと思ったのだ。コナンは両親がそんな事を言う人間ではないと知っているが、自身も最初は哀を糾弾しただけに不安になったのだ。

 

しかし、哀から返ってきた言葉は想定外だった。

 

「よく分かったわね。大体一時間くらいだったかしら?」

 

「い、一時間!?何を言われたんだ!!」

 

「ど、どうしたの?そんな怖い顔して「いいから言え!!」……分かったから静かにして」

 

「わりぃ。……で、何を言われたんだ?」

 

「何って……。アナタの生活とか、学芸会の感想とか、アナタの小さい頃の学芸会の様子だとかを延々と……」

 

「……は?え、それだけ?」

 

「それだけって……。今のアナタの様子と、昔のアナタの話くらいしか話してないわね。他にアナタ関連と言うと……やっぱり、アナタの小さい時のことばかりね」

 

「……オメェのことは?」

 

「私のこと?……演技のこと褒められたわね。それがどうかしたの?」

 

「そうか、良かった。……いや、よくねぇだろ。一時間も母さんが俺のこと喋ってるってのはどう考えてもマズイだろ……灰原に聞くのも怖いし、母さんに確認なんて……」

 

 

急にブツブツ言い出したコナンを不審者を見るように見ていた哀だったが、気にしてもしょうがないと雑誌に目を落とす。そうしながら、コナンに語らなかった内容を思い出していた。

 

それはコナンと哀の学芸会の話を一通りした後のこと。有希子が好きにコナンの昔話――新一が小学生の頃――の話をしていた時のこと。

 

『ねぇ?あなたのこと哀ちゃんと呼んでもいい?』

 

「え、ええ。構いませんが」

 

『ありがと。それで哀ちゃんにお願いがあるのだけど……聞いてくれる?』

 

「分かっています。新一さんを元の生活に戻すために全力を尽くします。ただ、現状ではすぐにとはお約束できません。私が覚えてる薬の組成だけでは……」

 

『ああ、違うわよ』

 

「え?」

 

『もちろん、新ちゃんに元の生活を取り戻して欲しい気持ちはあるわよ?ただ、それが簡単なことじゃないってことも分かっているの。新ちゃんはどうか分からないけどね。だから、あなたに頼みたいことは別のこと』

 

「別のこと……ですか?私に出来ることなら何でもやります」

 

『そんな気張らなくていいわ。簡単なことだもの。ただ、新ちゃんを見て欲しいの』

 

「見るだけ……ですか?」

 

『そう。ほら、哀ちゃんもだけど、新ちゃん子供の振りをしてるでしょ?』

 

「ええ」

 

『で、演技しなくてもいい時って限られるじゃない?』

 

「ええ、探偵事務所も子供たちの前も演技しないとダメですしね」

 

『そうなのよ。だから、博士の家に来ることが増えると思うの。それでその時の様子を見て欲しいの。……演技じゃない新ちゃんの様子を』

 

「分かりました。新一さんが来たら様子を見て報告すればいいんですね?」

 

『ああ、別に報告はいらないわ。聞いて何ができる訳でもないしね。あ、でもそれもいいかも!哀ちゃんとお話できるものね』

 

コナンにこの話は出来ないなと思う。哀と有希子はこの後も話を続け他にもいくつかの約束を交わしたのだ。アメリカの医学書を送ってもらう代わりに、コナンの写真を送るといったものや、定期的に会話の相手になるといったものだ。

 

コナンが知ったら怒るだろうが、アメリカの医学書は是非とも欲しいものなのだ。コナンの為にもなるのだから、きっと許してくれるだろう。哀は心の中で呟き自分の行いを正当化する。

 

(そうよ、問題ないわ。ああ、そう言えばあの探偵さんが撮った学芸会の写真も送らないと……。コナンの親に送ってくれって結構な量だったわ。プリントしないでデータでくれればいいのに)

 

 

小声で自問自答を繰り返すコナンと、その向かいに座り雑誌を読みながら考え込む哀。

そんな二人と対照的に、テレビの前の四人は盛り上がっていた。

 

 

「やはり六年生は凄いですね。小道具の完成度が違いますよ」

 

「俺は四年生の演奏が凄かったな。なんか鈴をいっぱい使ってよ」

 

「あれはハンドベルっていうのよ、元太君。歩美はやっぱりお姫様の衣装が」

 

「ワシは五年生の合唱が良かったかのぉ。途中ソロパートがあって」

 

 




その後編その2と思わせて有希子回

哀ちゃんと有希子の約束はあとあと明らかになります。

コナン君は動揺してわけ分からなくなっています。主に有希子にからかわれるという未来のせいです

あ、哀ちゃんの新一さん呼びは相手も工藤であり、新一の母親相手に話ているからですね
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