注意:映画を視聴済であること前提で、所々省略しています。
未視聴の方には厳しいかもしれません。また、独自設定も含まれています。
八月一八日 鈴木財閥所有ビル 会長室
「失礼します。会長、大阪の鈴木近代美術館の方から、会長に急ぎ確認して頂きたいことがあるとこちらの封書が……」
会長室に入ってきたのは会長秘書の西野真人。彼は鈴木会長に外国語に堪能なことを見込まれ、春に秘書として採用された。その後、スケジューリングなども優秀であった為、夏頃からは会長専属秘書となっていた。
彼は封書を会長に手渡すと、コーヒーを用意しに退室した。その後、再び入室した彼はコーヒーを会長の机に置くと退室しようとする。そんな彼に鈴木会長が書類に目を通しながら話しかける。
「いつも済まないね。しかし、西野君はコーヒーの煎れ方も優秀だ。今後の国際企業、特にドイツ系企業との提携の為に、ドイツ語に堪能な人物をと君を採用したが正解だったようだ」
「ありがとうございます。私も会長の手腕を近くで勉強させて頂けますし、秘書になって正解でした」
「ハハハ、そう言ってもらえると嬉しいよ。存分に勉強してくれたまえ。……ん?」
その時、一枚の紙が封書からこぼれ落ちた。その紙を拾い上げた西野は慌てて鈴木会長にその紙を見せる。
「こ、これは……!?会長、見てください!?」
その紙を見た鈴木会長は一度驚愕した後に、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「!?……西野君、警察に通報を。それに毛利さんにも協力を依頼してくれ」
「は、はい」
その紙には暗号と最後に差出人の名が書いてあった――
――怪盗キッド、と
八月十九日 警視庁
「……怪盗キッドから新たな予告状が届いた」
捜査二課の警視、茶木神太郎の口から紡がれたその言葉に一瞬、場は騒然とする。幾度も煮え湯を飲まされ続けてきた因縁の相手からの犯行予告なのだから当然である。
その後、今回のターゲットについて茶木警視から語られ、同じく二課の中森警部からは暗号の解読結果が伝えられる。
そして、茶木警視がターゲットの死守を伝えようとしたその時
「――なんて甘っちょろいことは言ってられん!!死守なんて二の次だ!!我々警察の誇りと威信にかけて、あの気障なコソ泥を――」
「――冷たい監獄の中に叩きこんでやれ!!!!」
「――おぉぉ!!!!」
会議室の一種の殺伐とした雰囲気の中、鈴木会長からの依頼で来ていた小五郎は思った。
(えらいこと引き受けちまったぞ……今からでも断れねぇかな~)
八月二十日 阿笠邸
阿笠邸のリビングではコナンがソファーに座りコーヒーを飲んでいた。その向かいには何時ものように雑誌を読んでいる哀の姿が。
二人はコナンが阿笠邸を訪れ、哀が二人分のコーヒーを淹れた後から、一切話すこともせず黙って過ごしている。
それなのに、二人の間には気まずさなど欠片もなく、ただ穏やかな空気がそこにはあった。
その空気を掻き消すかのように、阿笠がターボエンジン付きスケートボードを両手に抱え大声を出しながら、リビングへと入ってきた。
「出来たぞ!!新一!!改良型ターボエンジン付きスケートボードじゃ。これで充電さえしておれば、夜間も三十分は走れるぞ!!……流石はワシじゃ。短時間で此処まで改良できるとは……」
そんな阿笠をコナンと哀は迷惑そうな顔で見る。ただ、それはほんの一瞬のことであったので、阿笠に気づかれることはなかった。
哀もコナンも阿笠が超特急で作業していたことを知っていたからである。そんな事情を知る二人でさえ、迷惑という感情が浮かぶこと事態が、阿笠の騒ぎ方がどれ程のものかを表していよう。
「へ~、太陽があれば走行中でも充電するんだな」
「そうじゃ。本当はバッテリーを交換できるようにもしたかったんじゃが……」
「いや、十分さ。ありがとうな、博士。急な依頼だったってのに」
一通り騒いで落ち着いた阿笠から説明を受けたコナンが、阿笠に礼を言う。
昨日、捜査会議から戻ってきた小五郎からキッドの予告状のことを聞いたコナンが、夜間でも走行できるようにできないかと、急遽阿笠に頼み込んだのだ。
「な~に、ワシの頭脳をもってすればこんなこと朝飯前じゃい。今夜走行テストをして、充電を明日しておけば、キッドが予告した時間には間に合うじゃろ?」
「ああ、キッドの予告した時間は二十二日の夕方から二十三日の明け方まで。まだ、正確な時間については解読できてねぇが、日時については間違いねぇだろうからな。テストも充電する時間も十分あるさ」
阿笠とコナンの会話がキッドの予告状の話になると、それまで雑誌を読んでいた哀がコナンに声をかける。
「良かったわね?」
「何がだよ?」
「だって、アナタこの前言ってたじゃない?いつか捕まえてやるって。その機会がすぐにきたのだもの」
コナンは哀の言う“この前”がいつなのかすぐに思い当たった。先日、歩美が怪盗キッドに会ったと言う話をした時のことである。
確かにコナンはその時そう言っていた。哀のからかい混じりの言葉にそう返したのである。
“平成のホームズさんはどうする?“
この言葉と共に向けられた、哀のからかうような笑みを思い出したコナンは再度決意する。
絶対にキッドを捕まえて、哀に“流石は平成のホームズ”と言わせてみせる……と。
コナンがそんなことを決意しているとは知らない哀は、それにしてもと言葉を続ける。
「五十一個目のエッグ……ね。どれくらいの価値になるのかしら」
「さぁな。状態にもよるだろうが、歴史的価値なんかを考えても億を下ることはまずねぇ……。オークションにでも出せば、場合によっては十億超えるんじゃねぇか?」
「“インペリアル・イースター・エッグ”……ロマノフ王朝の秘宝、ね。歴史研究家も欲しがるでしょうね」
「ああ、それも行方知れずだったエッグ……だからな」
「それにしても……そんな大物を狙うとはのぉ。流石は怪盗キッド、というとこじゃのぉ」
エッグについて語る哀とコナンに、阿笠がそのような価値あるものを狙うキッドに感嘆したというように言葉をはさむ。
それを聞いたコナンが考え込む仕草に気づいた哀が問いかける。
「何か気になることでもあるの?」
「ん?……いや、キッドが主に狙ってるのは
「ええ」
「おっちゃんが言うには、写真を見る限り、エッグに大きな宝石はなかったらしいんだ」
「そう……まぁ、気にはなるけど、いつも宝石狙いとは限らないんじゃない?」
「そうだけどさ……」
「そんなに気になるなら本人に聞けばいいじゃない。……捕まえるんでしょ?」
「ああ……。ご丁寧にもこんな予告状なんか出しやがったんだ……捕まえて見ろよって。
お望み通り捕まえてやろうじゃねぇか……」
「“平成のアルセーヌ・ルパン”をこの“平成のホームズ”が……な!!」
コナンが見つめる一枚の紙。
それは小五郎が持って帰ってきた怪盗キッドの予告状の写し。
黄昏の獅子から暁の乙女へ
秒針のない時計が12番目の文字を刻む時
光る天の楼閣から
メモリーズ・エッグをいただきに参上する
世紀末の魔術師
――怪盗キッド
独自設定集をFile00として投稿しています。随時更新予定です。
そして今回書き上げる途中で重大なミスに気づきました。
その為、今後で少々悩んでしまい更新が遅れてしまいました。申し訳ありません。
何があったかいうと、私が設定していた二章終了時点での作中時間は6月下旬。
キッドの犯行予告によると予告日時は8月22日~23日。
……約一ヶ月とばしてしまいました。
授業参観ネタとか海関連のネタどうしましょうってことです。
結局、答えが出ませんでしたので先にこの章を終わらせて考えます。
ご意見・ご感想等頂けましたら幸いです。