名探偵コナン~選ばれた二人の物語~   作:雪夏

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大阪攻防戦


注意:映画を視聴済であること前提で、所々省略しています。
未視聴の方には厳しいかもしれません。また、独自設定も含まれています。


File04 準備完了

 

 

 

 

――今、ロマノフ王朝の秘宝が姿を現す

 

 

 

「見た目は大したものじゃないよ?子供のころ私が知らないで玩具にしてたくらいだし」

 

その言葉と同時に桐の箱を外す鈴木会長。

現れたエッグを見た一同は言葉を探す。秘宝という言葉から煌びやかなものを期待していたのだが、それが見事に外されたといったところだろうか。

 

「これが……インペリアル・イースター・エッグ……?」

 

思わず呟いた蘭の言葉には、本当にこれが秘宝なのかと言う疑問が少なからず込められていた。そして、その疑問は蘭一人だけのものではなかったようである。

 

「なんか思おてたよりパッとせぇへんな。ほんまに秘宝なんか?」

 

「ダチョウの卵みたいやな?」

 

平次と和葉の言うように、エッグの外見は皇帝から皇后への贈り物とは思えない程地味である。無論、地味と言ってもその意匠は素晴らしい。ただ、目を引くような宝石類がないだけである。

 

「そうだね。見た目は地味な方かな?でもね……「これって開くんでしょ?」そうなんだよ。よく知っているね」

 

鈴木会長も外見が地味なことは認める。しかし、エッグを大したことはないと言われた割に、その顔には変わらず笑みが浮かんでいる。その理由はコナンの言葉で判明した。

 

エッグは上部が開く構造であり、内部には金で出来た皇帝一家の模型が配置されている。その上さらにある仕掛けが施されていた。

 

「インペリアル・イースター・エッグの多くは“サプライズ”と呼ばれる仕掛けがあってね。このエッグにもあるんだよ」

 

そう告げると鈴木会長は小さな鍵のようなものを取り出し、エッグに差し込むと回し始めた。すると、皇帝一家の模型がせり上がり、子供たちと皇后に囲まれている皇帝の模型がその手に持つ本を開く動作をする。

 

「へ~、おもろいやん、これ」

 

更に、鈴木会長がメモリーズ・エッグについて説明をする。ファベルゼの古い資料に記載があったこと、メモリーズとはその資料に記載してあるВоспоминания(ボスポミナーニェ)――ロシア語で思い出――を英訳してつけたこと。そして蓋の裏で光っているものは宝石ではなくガラスであること。おそらく、メモリーズ・エッグを作成した時期は財政難であった為、宝石類がないのだろうということなど。

 

その後、茶木、中森の両刑事が会長室に入ってくる。キッドが出現する場所や期間は特定したが、未だ予告時間が不明であることを告げる。

 

一同は予告時間に関して意見を言い合い、そこで小五郎が閃く。

アルファベットの十二番目の文字である“L”が指し示す、午前三時が予告時間はではないか、と。

 

中森警部たちも小五郎の意見に賛同し、これでキッドに対する準備は万全だと一同が騒ぐ中、コナンは一人難しい顔をして考え込んだ後、密かに携帯を取り出しメールを打ち始めた。

 

 

 

 

 

その頃、東京の阿笠邸。

 

 

阿笠邸には少年探偵団の姿があった。彼らは夏休みの始め頃は宿題を皆でやる為に、阿笠邸を訪れていた。しかし、今は夏休みも残すところ十日余り。宿題もほとんど終わり後は絵日記と自由研究ぐらい。その絵日記も毎日の記録ではなく、五日分を提出するものなので元太以外は終わっていたりする。

 

そんな彼らが何故阿笠邸に居るのかと言えば、単純に暇を持て余しているだけである。

現に先程までは、暇だのコナンだけ出かけていてずるいだのと愚痴ばかりだった。

 

それでも、阿笠博士の出題したクイズに正解したご褒美にとスイカを夢中で食べている間は静かだったのだが……。

 

スイカを食べ終えてしまえばすることもなく、外で遊ぶにもまだ日中は暑い。結局、彼らはコナンへの愚痴大会を再開するのだった。

 

「あ~あ、本当コナンのヤツだけズルいよな。きっと今頃、大阪でたこ焼き食ってんだぜ?」

 

「全く……彼の抜けがけはいつものことですが、今回は見過ごせません。怪盗キッドに会うなんて……」

 

「歩美、もう一度キッドに会いたかったなぁ」

 

彼らの愚痴は次第に熱を帯びていき、各々が不満に思うことを吐き出し続ける。その内容は多岐にわたり、最早コナンとは関係ない愚痴で溢れていた。

 

「大体母ちゃんはうるさいんだよな。宿題だって後は絵日記だけだって言ってるのに勉強のことばかり……」

 

「姉さんも、いい加減僕をお使いに行かせるのをやめてくれませんかねぇ。自分は暑いから外に出たくないからって、いっつも僕に買いに行かせて……」

 

「あのぬいぐるみ可愛かったのにな~。この前買ったのとは違うのに……」

 

お互いに会話せず、愚痴を言い続ける子供たちに阿笠は苦笑しながら思う。

 

愚痴を聞くと言うことは疲れるが、彼らの日常生活が垣間見えて来て面白い。生活を共にしている哀は本当の意味での小学生ではない為、子供たちの子供らしい愚痴が微笑ましくてしょうがない。素直に不満を口に出来るのは子供の特権だ、と。

 

思えば、哀は不満や欲しいもの――雑誌や最低限の衣服を除いて――を口にしたことがない。有希子が強引に彼女を買い物に連れ回さなければ、そのまま最低限のもので過ごしていただろう。

 

そこまで考えて、阿笠は携帯をいじっている哀に顔を向ける。

携帯も今着ている服も有希子からの贈り物だ。女性同士で会話できたのが良かったのか、あれから哀も心なしか明るくなった気がする。本当に有希子が日本に来てくれて良かったと、阿笠は思った。

 

そんな阿笠に哀が話しかける。どうやら先程からずっと哀を見つめていたのが気になったらしい。

 

「何?」

 

その言葉は非常に短いものであった。

しかし、阿笠には次のように聞こえていた。

 

『何さっきからこっち見てるのよ。ニヤニヤして気持ち悪いんだけど?』

 

勿論、哀は単純に疑問に思っただけで、その様な言葉は言ってもいないし思ってもいない。

哀が携帯を眺めながら告げたその姿が、阿笠が昨夜見ていたドラマで少女が父親にその言葉を告げる姿と重なって見えたが為に聞こえた幻聴である。

 

 

阿笠がそんな状態だとは知る由もない哀は、何故か固まった阿笠に今度はきちんと顔を向けて問いかける。

 

「何?どうかした?」

 

「……い、いや。そのぉ、だ、誰かからメールでも来たのかなぁって……」

 

何とか詰まりながら返事を返す阿笠だったが、その内心は混乱していた。

 

(さ、さっきのは聞き間違いかのぉ?……って、メールのこと聞いてしまった。た、確か、昨日見たドラマだと……)

 

『誰からのメールでもいいじゃん。いちいち聞くなっての』

 

(こ、こんな感じじゃったかのー!!ああ、有希子さんにも『いい、博士?見た目小学生でも哀ちゃんは大人の女性なんだから、余り干渉し過ぎないように気をつけてね?』って言われていたのに!!……ああ、今のはやっぱりマズかったかの!?)

 

阿笠のこの混乱は哀の言葉によって一旦収まることになる。

 

「ああ、これ?後で話すわ。それより、子供たちをそろそろ返さないと」

 

「そ、そうじゃのぉ。今日は早めに帰すように頼まれておったし。……ほれ、君たち帰りなさい。みんな親御さんと約束したんじゃろ?今日は早く帰るって」

 

「あ、もうそんな時間ですか?ほら、歩美ちゃんも元太君も帰りますよ?」

 

「お?おう」「分かった」

 

「「「おじゃましました~!!」」」

 

子供たちが帰ると、落ち着いた筈の混乱が再び阿笠を襲い始めた。

 

(メールについて後で話すってことは、さ、さっきのはセーフ?そ、それとも、実はアウトでお説教とかかの!!)

 

そこに哀がパソコンの前に座りながら話しかける。

 

「それで、先のメールのことだけど……」

 

「ハ、ハイ!お、教えたくないんじゃったら別に……ほ、ほらなんとなく聞いただけじゃし、どうしてもってことじゃ「彼からよ」……彼?」

 

(か、彼!?い、いつの間に彼氏が!?相手は何処の…)

 

「全く、自分で調べておきなさいって話よね。そうは思わない?博士」

 

「へ?な、何がじゃ?」

 

「?だから工藤君よ。インペリアル「新一じゃと!!」……だからさっきも言ったじゃない。工藤君から調べて欲しいってメールだったって」

 

「そうか、新一が彼か……。新一のヤツ蘭く……って、調べ物?」

 

「そ。他のエッグの外見や仕掛け、特に宝石の有無について分かる限り調べてくれだって」

 

「そ、そうか……」

 

(な、なんかどっと疲れた……)

 

 

 

 

 

場面は大阪に戻る。

 

 

あの後、鈴木会長の希望で今までの事件のことについて話す小五郎をその場に残し、コナンたちは時間を潰す為に美術館を後にした。今はおみくじが当たると評判の難波布袋神社を訪れていた。

 

お参りを済ませると早速おみくじを引く一同。女性連中はその内容を皆で見てはワイワイと楽しそうにしている。そこに、蘭のおみくじの“待ち人”の記述が彼女らのテンションを更に上昇させる。

 

「“待ち人……恋人と再会します”だって!」

 

「それって新一君のことじゃない?よかったじゃん蘭!」

 

「へ~、良かったやん!ここのおみくじ当たるって有名なんよ。再会したらアタシにも会わせてーな!」

 

「和葉ちゃんは会ったことないんだっけ。新一君と蘭は恋人というより、アレはもう夫婦ね。幼馴染でお互いのことよく知ってるし」

 

「やめてよ、もう!違うからね、和葉ちゃん!大体、付き合ってもないし!それに……」

 

新一がその場にいないと思っているからこそできる話題である。事実を知る平次は、そんな女性陣を眺めた後、コナン――新一――がどんな顔をしているだろうかと、背後に居るであろうコナンに振り返る。

 

そこには、女性陣の会話など聞こえておらず、考えに集中しているコナンの姿があった。

その様子を見た平次は和葉に向き直り、声をかける。

 

「和葉、お前その二人を案内したれや」

 

「平次は?」

 

「オレはこのちっこいの案内するから。そうやな、今が四時半やから……飯食って八時には合流するか」

 

平次の提案に蘭が異を唱える。

 

「どうして?一緒に行こうよ?」

 

「男は男同士ってやっちゃ。それに、この坊主スケボー持って来とるやろ?せっかくやから、その腕前を見してもらおうか思うてな。行くで、坊主」

 

「うん!」

 

そう告げると、返事を聞かずに歩き出す平次とコナン。そんな二人をやや呆然と眺めていた女性陣だったが、すぐに自分たちはどこに行くかを相談し始めた。

 

「妙に仲いいのよねあの二人。東京来たときもそうだったし」

 

「弟が出来たみたいで、嬉しいんとちゃうかな?平次って案外面倒見ええとこあるし、きっと構いたいんよ」

 

「仲がいいってのはいいことじゃん。そんな事より、私たちは何処行く?」

 

 

 

 

 

神社を出るとすぐに平次がコナンに問いかける。コナンが予告状のことで考え込んでいることを見抜いて、コナンと気兼ねなく話せる状況を作ったのである。

 

「お前、十二番目の文字が引っかかってんやろ?」

 

「ああ、“L”ってのがな。まだ、ロシア語のアルファベットって言われた方が納得できるんだが……」

 

「ロシア語?十二番目って言ったら……「“К(カー)”だ、英語で言うと“K”」それじゃ時計の形にはならへんな~。気にしすぎなんとちゃうか」

 

「いや、ヤツの予告状はよく出来てるんだ。簡単に解けたと思ってもそれがミスリードだったり、それが次に暗号を解読する為のヒントだったりな。その上、実は予告状そのものに答えがあったりするそうだ」

 

「そうだって、誰に聞いたんや?」

 

「父さんさ。ヤツが一旦姿を消す前、よく対決していたらしい」

 

「……せやったら、“L”は確かに怪しいな。解けたと安心してしまう最もらしい答え。それにそんな意地の悪い謎かけが好きなヤツが、英語を答えにするかってこっちゃな」

 

「だから、ロシア語かとも思ったんだが……。それに、“世紀末の魔術師”という言葉。ヤツは今までそう名乗ったことがない。他にもエッグを狙う理由も気になる」

 

「そりゃ、八億出しても欲しい言うヤツがおるんや。変やないやろ」

 

「今のヤツは宝石しか狙わないし、盗んだ品を後で返してんだ。な、気になるだろ?」

 

「まぁ、気になるわな。……そうや、さっきのおみくじどうやった?」

 

いきなりの話題の転換にコナンは目を瞬かせた。そして、平次に何言ってんだコイツと言わんばかりのジト目を向ける。

 

「……まだ見てないけど。それが?」

 

「彼処はよう当たるって評判でな。これからの大事な一戦に役立つことが書いてあるかも知らんぞ?」

 

「そんなもんかねぇ……っと、小吉か。“待ち人…来ます”か」

 

「そやったら、キッドが来るってことしか分からんやんけ。しかも、小吉って微妙やし」

 

覗き込んでいた平次が不満を言う。コナンも“来ます”としか書かれていない待ち人には苦笑いである。そのまま、他の運勢にも目を通すコナンはある運勢に目を止める。

 

「そんなもんだろ。え~と、他も当たり障りのない感じ……“旅行…秘密が明るみにでます。やめましょう。”」

 

その一文に、蘭のことを思い浮かべるコナン。そうの様子を見た平次はコナンをからかう。

 

「バレるんちゃうか?」

 

「……縁起でもねぇ」

 

うなだれるコナンを一通り笑い倒した後、平次はこの後のことをコナンに提案する。

 

「なぁ。とりあえず早めに飯食って美術館戻った方がええんやないか。“L”が間違いやったとしたら、暗号で悩むよりエッグの傍におった方が早いで」

 

「そうだな。確かに“L”が間違いだった時に備えて美術館にいた方がいいか」

 

「決まりやな。うまい串カツ屋が美術館に向かう途中にあるんや」

 

「お、ちょうどいいじゃねぇか」

 

夕飯のことで盛り上がって歩く姿は、先程までとは打って変わって仲のよい兄弟のようであった。

 

 

 

 

 

場所は変わって、鈴木近代美術館。

 

 

小五郎との歓談に興じていた鈴木会長が、料亭に行こうと誘う。予告時間も判明しているのだから続きはそこでと言うのだ。その提案に小五郎がすぐ様了承した時、中森警部が二人の刑事を従えて入ってくる。

 

これから偽物を展示室に展示し、本物は秘密の隠し場所へと移すのだと、中森が説明する。

その隠し場所は中森とその後ろに居る二人しか知らないとも。

 

 

「ほ~。確かに有効そうですな。ですが、先日の会議ではそのようなことは……」

 

「当然です。アナタが参加されたのは、電話会議。盗聴される可能性がありますからな。それにこれは知る者が少ない程有効な手段。ここに居る物以外は部下たちも知らないことです。」

 

「徹底してますな。しかし、府警の方たちにも黙っていて大丈夫なんすか?」

 

「心配無用。そもそも府警からの提案ですからな」

 

「そうっすか。それで隠し場所は秘密ってことは当然、私にも……?」

 

「ええ、アナタがキッドの変装の可能性もありますしな。勿論、後ろの二人が変装でないことは確認済です」

 

そう言うと中森警部は、後ろの二人の顔を思いっきり手で抓ってみせる。

その様子を見た小五郎は悪戯を思いついた子供のような顔をする。

 

「ほう。では、中森警部がキッドではないという証拠は?すでに入れ替わっているという可能性もありますからな」

 

「そんなことある訳がないでしょう!」

 

「いやいや、ここは確認して置かないと。君たち中森警部の頬を引っ張って」

 

「やめんか!!違うって言ってるじゃないか!!」

 

「ほ~。これは怪しいですな。ここまで拒否するところを見るとやはり……」

 

「ち、違う!!おい、お前たちも手をこっちに伸ばすな!!」

 

「警部!これも確認の為です!!」「大人しくしてください!!」

 

「いっ!い、いひゃいって言ってひゅ!!……ほ、ほう、十分ふぁろ!!」

「いや、まだ分かりません!!」「これもキッドを捕まえる為です!!」

 

中森の背後に居た二名がこれまでの恨みを晴らさんとばかりに、頬を力を込めて抓る。結局、警部は変装ではなかったことが証明されたのだが、その頬は赤くなっていた。

 

頬を抓られることになった中森は、元凶である小五郎も同じ目にあわせてやろうと考えるが、そんな中森を制する様に小五郎が口を開く。

 

「お~良かった。これで安心してエッグをお任せできますな。ねぇ、会長。中森警部もすみませんな。会長に安心して頂くにはこうするしかなくて」

 

「流石は毛利さんですな。私は中森警部が変装である可能性を微塵も考えておりませんでした。とにかく、これで安心してエッグをお任せできます。中森警部、エッグを守ってくださいね」

 

「ハッ!お任せください!」

 

流石に、会長の安心の為と言われてしまうと文句を言えない。その上、会長が小五郎の味方についている。此処でやり返す上手い言い訳が思いつかず、中森は仕返しを諦めるしかなかった。

 

会長室を退出する中森と二名の刑事を見送る小五郎の顔には、悪戯が成功した子供のような笑顔が浮かんでいた。

 

(いい気味だ。あの中森って警部、オレのことを邪魔者扱いしていたからな。こういう悪戯じみたことは得意なんだよ!)

 

どうやら、会長を安心させる為でも、エッグの安全の為でもなく、完全に私情によるものであったらしい。

 

その光景を窓にとまる鳩で仕掛けたカメラを使い眺めていた男がいた。

 

「中森警部は予定通りっと。そして、探偵君はエッグの移動を知らないし、暗号も解けていない」

 

男は会長室を写しているモニターとは別のモニターを見る。そこには、平次とコナンの姿。

 

「鈴木財閥が相手だからな。出てくるとは予想してたぜ、探偵君。でも、今回はオレの勝ちだ」

 

「しかし、中森警部も上手く乗せられてくれたぜ」

 

 

 

男は思い出していた。今回の計画の為に変装した時のことを――

 

 

 

大阪府警本部 廊下

 

「すみません、警部。内密なお話が……」

 

「おお、中森警部でしたか。対策会議が終わったばかりだと言うのにどうしました?」

 

「ここではちょっと。こちらに……」

 

中森警部が話しかけているのは、今回キッド逮捕に協力している大阪府警捜査二課の警部である。二人は空いている部屋に入ると話を続ける。

 

「実は私にキッド対策の作戦がありましてな。ご協力頂けないだろうか」

 

「おお、そうですか。しかし、どうして会議では言わなかったんですか?」

 

「ええ、キッドに作戦が漏れないようにと……ヤツは変装が得意でしてな。何処で漏れるか。で、作戦というのは……」

 

 

 

「なるほど。では、我々府警は偽物と知らず現れたキッドを捕まえれば……」

 

「ええ。くれぐれも内密に。今後は私にも作戦のことは言わないでください。それがキッドかもしれませんから。流石にこんな計画を府警の方にも内緒では出来ませんからね」

 

「ご配慮ありがとうございます」

 

 

 

同日、府警本部 廊下

 

「中森警部!ちょうど良かった少しお話が」

 

「ん?どうかしましたか」

 

「実は……此処では誰が聞いているか分かりませんのでこちらに」

 

再び、先程の部屋に入る府警の警部と中森警部。

ドアの外に人がいないことを確認した府警の警部が中森警部に話しだす。

 

「作戦がありまして……」

 

 

 

「おお、それは妙案ですな」

 

「それで、このことはお互いに確認しないということで。キッドは変装の達人と聞いています。その時、確認したのが実はキッドなんてことになったら大変ですから」

 

「確かに。これでヤツに一泡吹かせられますな」

 

「ええ。それで隠し場所として、自家発電装置のある倉庫を用意…「いや、結構」……え?」

 

「そこまでお世話になるわけには行きませんからな。私が探しますよ」

 

「……そうですか。でも、夜間に何が起きても大丈夫なように自家発電装置がある建物を選んでくださいね。停電中にエッグを落としたりしたら……」

 

「分かっていますよ。ちゃんと自家発電できる建物を借りますから」

 

「絶対ですよ。キッドからエッグを守れても警察が壊したなんて始末書で済むかどうか……」

 

「そんな心配せずとも大丈夫ですよ。鈴木会長には私が話しを通しておきましょう」

 

 

 

――モニターを眺めていた男は、何かを振り払うかのように頭を左右に振る。

 

 

「さて、そろそろ時間だ。行くとしますか」

 

 

そう呟きながら男は立ち上がる。

 

 

その姿は、白いスーツの上下に白いマント。

 

 

「仕掛けは上々、後は成果をご覧あれってな」

 

 

右目にモノクルを装着しながら男――怪盗キッド――は呟いた。

 

 

 

 

――Ladies and Gentlemen! さぁ、ショーの始まりだぜ!

 

 

 

 

 




長くなりましたがようやく、大阪攻防編前半終了と言ったところでしょうか。
次回で大阪から舞台は移る筈……

今更な気がしますが、セリフなど原作から変更している部分があります。
言い回しを変えただけだったり、少し付け足してみたり。
そんな小さな原作との違いを探してみるのもこの作品の楽しみ方の一つです(嘘)。

蘭のおみくじの待ち人は“恋人に再会”
これは新一のことじゃないと思います。むしろ恋愛を気にしなさいと言いたい。

コナンの待ち人は“来ます”なのか“来ますか”なのか。ここでは来ますにしています。
まぁ、待ち人=キッドだとどちらでも正解な気がしますが。

どなたかご存知でしょうか。

ご意見・ご感想等頂けましたら幸いです。
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