注意:映画を視聴済であること前提で、所々省略しています。
未視聴の方には厳しいかもしれません。また、独自設定も含まれています。
独自設定はFile00 独自設定を参照ください。史実との矛盾点なども含まれます。
阿笠邸では、コナンからの依頼――硬質ガラス仕様の追跡眼鏡製作――に取り掛かろうとする阿笠の姿があった。
「さぁて。早速取り掛かるとしようかのぉ。全く、硬質ガラスに変えてくれ、なんて簡単に言いおって……」
コナンの意図は分かる。右目を撃つ相手と対峙するのだ。硬質ガラスで右目を守ろうというのだろう。
だが、それに対する備えをするという事は……コナンが、スコーピオンと対峙することを想定していることを意味する。
「本当に危険なことはするんじゃないぞ……新一」
そう呟きながら、阿笠は作業に取り掛かるのであった。
「なんじゃ、まだ起きておったのか」
作業を終えた阿笠が、リビングに戻ると哀がソファーに座っていた。風呂上りなのか、髪は多少湿っており、タオルを片手に雑誌を読んでいるようだ。哀は阿笠がリビングに入って来たことを横目で確認すると、口を開く。
「何をしていたの?」
「ちょっと頼まれごとを……な」
「ふ~ん。で、彼はなんて?」
「ああ、眼鏡を硬質ガラスにしてくれって……ワシ、新一からの頼みって言ったかの?」
阿笠は電話の内容について、哀に教えただろうかと考え込む。別に秘密にしている訳ではないが……
「いいえ。でも、“スコーピオン”がどうのって大きな声で電話してたじゃない」
「そう言えば……」
コナンと電話していたとき、調べた情報に興奮していたからか阿笠の声は大きかった。哀はリビングでテレビを見ていたのだから、聞こえていても可笑しくはない。
「それで、明日何時に行くの?」
「ああ、事情聴取やらを受けてからだそうじゃから……十四時には横須賀におらんとの」
「横須賀?」
「そうじゃ、何でもエッグが隠されている城が横須賀にあるらしくての。聴取の後に皆で行くそうじゃ。その城に行く前までに届けて欲しいそうじゃ」
「そう。じゃ、遅刻しないようにしないとね」
「そうじゃの。あくまでも保険じゃが……あるとないとでは全然違うからのぉ」
そう言うと、阿笠は就寝の準備を始める。哀はその様子を見ながら、考え込んでいた。
(彼が準備しているのは、キッドではなくスコーピオン……?キッドがスコーピオンに襲撃されたのかと思っていたけど……。怪盗の次は国際指名犯って……本当、次から次へと……)
この数ヶ月である程度慣れた気がしていたが、コナンの事件遭遇率に改めて呆れる哀であった。
一夜明けた八月二十四日、阿笠邸にコナンからの電話がかかってきていた。
「はい、阿笠」
『あ、博士?オレ』
「……誰が博士よ?」
『は、灰原!?……相変わらずお綺麗な声でいらっしゃって』
「はいはい、ありがと。それで、聴取は終わったの?」
『ああ、さっき終わったけど……まだ、船内でさ。あと、四十分くらいで横浜の大桟橋に着いて……それからメシを食ったりするから、城に着くのは……』
聴取を先に受けたコナンは、小五郎たちの聴取の合間を見て電話をかけてきていた。
早速、コナンは城へ到着する時間を伝えようとする。
「今からだと……お城に着くのは十五時前ってとこかしら」
『そのくらいだろうな。で、いけそうか?』
「眼鏡はできてるわ。後は免許証が見つかれば……」
『またかよ……。とにかく、頼むな』
「はいはい」
コナンが電話を切ると、哀は時間を確認する。当初は、横須賀に昼前までに行き昼食をとるつもりであったが、未だ免許証を探している阿笠を見る限り無理そうである。哀はため息を吐きながらキッチンへと向かうのであった。
(何か材料あったかしら……?)
コナンたちは横浜で昼食をとった後、準備があると言って別れた乾を除いた面々で城へと向かっていた。白鳥が夏美、沢部、青蘭を乗せて先行し、コナンと毛利親子、セルゲイがその後ろをタクシーで追う形である。
コナンたちのタクシーの中では、セルゲイがニコライ皇帝の三女、マリアについて話していた。三女マリアは灰色の瞳を持ち、四人の姉妹の中で一番優しい子であったそうだ。そして、マリアの遺体は未だに確認されていないことも。
コナンたちが城に到着する。お城の外見は、シンデレラ城のモデルとも言われる、ドイツのノイシュヴァンシュタイン城に似ている。コナンはロシア風ではなく、ドイツ風であることに疑問を抱いたが、その疑問はすぐに吹き飛ぶことになった。
「よう!コナン!」「コナン君!」「元気ですか~」
阿笠のビートルから降り立った少年探偵団の三人を見たからである。
勿論、哀と阿笠の姿もあるのだが、こちらは連絡をしたのだから当然である。
「阿笠博士!どうしてここに?」
何故、博士がここを知っているのか知らない蘭が当然の質問をする。阿笠も誰かに聞かれることは想定していた為、すぐに返答する。
「コナン君に聞いてな。ドライブがてら寄ってみたんじゃよ」
そのまま、阿笠はコナンに近づくとこっそりと眼鏡を手渡す。
「言われた通りにバージョンアップしといたぞ」
「サンキュ。で、なんでアイツらが?まぁ、大方出がけに見つかったってとこか」
「ハハハ、その通り」
そんなコナンたちを他所に、子供たちはお城の外見にはしゃいだり、財宝について夢を膨らませたりと騒がしい。それに小五郎が注意したりと、賑やかな一団が形成されていた。
そんな騒がしい一団に皆の目が向く中、哀はコナンとの距離を詰めると口を開く。
「気をつけなさいよ。スコーピオンはすでに」
「ああ、分かってるよ。その為のコイツだからな」
「ハァ……。言っても無駄だとは思うけど、無理は禁物よ。いくらソレがあっても……」
「心配すんなって。無理はしねぇよ。コイツに頼る事態なんて、そうそうないしな」
「ならいいわ(……うそつき)」
その後も二人は、探偵団がついて来たことや、船からの電話に対して軽口を言い合う。
そして、二人は終ぞ気づくことはなかった。
――自分たちを見つめる蘭の悲しげな雰囲気に
ようやくの投稿。本当は城の探索まで行くつもりでしたが、キリがいいのでここで。
時間がかかってしまい申し訳ありませんでした。
今話でマリアの話がさらっとあります。
放映当時はマリアと皇太子の遺体は確認されていませんでした。
しかし、2007年にマリアと皇太子の遺骨は皇帝一家暗殺現場に近い場所で発見されました。
拙作では、放映当時と同じく未確認のままの設定となります。
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