名探偵コナン~選ばれた二人の物語~   作:雪夏

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城の中へとエッグを探しに入るコナンたち。城の外に残った哀たちも周囲の探索を始める。
コナンたちはエッグを発見できるのだろうか……


ぶっちゃけると、前半部分は読まなくてもいいです。


注意:映画を視聴済であること前提で、所々省略しています。
未視聴の方には厳しいかもしれません。また、独自設定も含まれています。
   独自設定はFile00 独自設定を参照ください。史実との矛盾点なども含まれます。


File10 世紀末の魔術師

 

 

 

 

 

準備で遅れていた乾と合流したコナンたちは、早速城の中へと入る。その際、小五郎は子供たちに城の中へは入らないようにと念を押す。コナンも哀と阿笠に子供たちのことを頼むのであった。

 

「アイツらが中に入らないよう見張ってくれよ?スコーピオンのこともあるしな」

 

「……やっぱり、スコーピオンは……」

 

「まさか!彼らの中にはいねぇよ。ただ、念の為に……な。じゃ、頼むぜ!」

 

そう言ってコナンは城の中へと消えていく。その背を見送る哀に阿笠が話しかける。

 

「ま、白鳥警部もおることじゃし、中でスコーピオンと鉢合わせでもせん限り大丈夫じゃろ。まぁ、スコーピオンが此処のことを知っておるとも限らんしのぉ」

 

「……そうね」

 

気楽な阿笠の言葉に頷く哀。しかし、哀の心中は気楽とは程遠いものであった。

 

(スコーピオンとしか言っていない私に、彼は彼らの中にはいないと即答した。博士と私を安心させる為に、思わず否定したのだろうけど……。それが、逆にアナタの考えを教えているのよ?……スコーピオンは彼らの中にいる可能性が高いって)

 

 

 

 

 

コナンたちは沢部に城の内部を案内されていた。

 

エントランスを抜けて騎士甲冑がたち並ぶ“騎士の間”、二階にある夏美の祖母がよく使用していた“貴婦人の間”、“皇帝の間”と順に探索していく。

 

その内、乾がトイレに抜けると一同は“皇帝の間”で待つことにした。青蘭と夏美、セルゲイは飾ってある美術品について語りあっており、白鳥は一人で見て回っている。その様子を沢部は部屋の入口から黙って眺めており、毛利親子はスコーピオンについて話していた。

 

「ねぇ。お父さん。スコーピオンは来るかな?」

 

「さぁな。もう一つのエッグが此処にあるって知っているなら、こっちに来るかもしれんが……。いや、寒川さんのビデオを回収しているから知っている可能性はある」

 

「じゃあ、やっぱり?」

 

「ただ、寒川さんの事件で警戒されることは分かってるだろうからな。案外、遠くに逃げてんじゃねぇか?」

 

そこに、白鳥が近づき話しかける。

 

「毛利さんの言う通りですよ。それに、もしもの時の為に僕がいるんです。安心してください」

 

「……そうですね」

 

その会話を聞きながら、コナンはスコーピオンについて考える。

 

(スコーピオンが本当に救命艇で逃げたのなら、すでに近辺にはいない可能性は高い。しかし、それが偽りだとしたら……あの時、船内の人間の硝煙反応は調べていない。まぁ、どっちみちこの場にいる人たちは、夕食前にシャワーを浴びてるから期待出来なかったけど……)

 

そう考えながら、周囲を見渡すコナン。ここに居るのは、確かなアリバイがなかった人たちなのだ。更にコナンは考えを続ける。

 

救命艇がないことから犯人が逃亡したと判断した警察は、船内にいた人間に対し事実確認と不審人物を目撃したかを中心に聴取したのだ。その為、持ち物を検査することも、硝煙反応を確かめることもなかった。つまり、スコーピオンが船内の誰かだった場合の捜査は一切していないのだ。

 

スコーピオンが性別、国籍、年齢、その他正体につながる全ての情報がないことが、警察の判断に拍車をかけていた。船内の誰かがスコーピオンだとしたら、多量の情報を残していることになる。しかも、逃げ場の少ない海上での犯行。これまで、一切の情報を残さずに犯行を繰り返している人物が、その様な場当たり的犯行を行うとは思えなかったのだ。

 

しかし、コナンには、内部犯の可能性を完全には捨て切れなかった。

 

スコーピオンが密かに乗り込んでいたのなら、寒川に撮られることはまずありえないからだ。今まで、正体を隠し続けていた人間が、職業柄カメラを持ち歩いているカメラマンの前に姿を現すだろうか。姿を現さなかったとしても、正体につながるような情報を撮られることがあるのだろうか。しかし、実際にはテープを持ち去っている。

 

これらが示すこと。それは――

 

 

――スコーピオンが内部の人間だという可能性。

 

 

スコーピオンが船内に正式に招待されていた場合、それは気の緩みをうむ。それが、個室を割り当てられていた人間なら、尚更である。寒川は各人の部屋を訪れては、カメラを構え驚かせていた。その時、スコーピオンにとって都合の悪い何かを撮影してしまったのではないか。

 

(まぁ、それが誰か分からないし、外部犯ってことも……。どっちにしろ、二つ目のエッグを狙ってスコーピオンがここにいる可能性は高い……か)

 

コナンが改めてスコーピオンに対する警戒を強める。その時、乾の叫び声と金属が擦れる音が聞こえてくる。

 

一同が音が聞こえた部屋へと駆けつけると、そこには天井から吊り下げられた刀剣類とへたり込む乾の姿が。何があったのかと困惑する小五郎たちを尻目に、沢部が懐から鍵を取り出すと、金庫か何かに突っ込まれたままの乾の右手首のあたりに差し込む。その時になって小五郎たちは、乾が右手に枷を嵌められて身動きが取れないのだと分かった。

 

枷を外しながら沢部は小五郎たちに告げる。曰く、城を建てた香坂喜市が防犯の為に仕掛けたものだと。そして、それは城の至る所に仕掛けてあり、外からの侵入者対策も万全だと。

 

「つまり、抜けがけは無理ってことですよ。乾さん」

 

そう言いながら白鳥は乾が持ち込んだリュックの中身を(あらた)める。中にはドリルやノコギリ、開錠の為の道具、ロープと様々な道具が入っている。白鳥はその中から懐中電灯のみを乾に渡す。

 

「懐中電灯だけで十分でしょう。それにしても、こんな仕掛けが至る所にあるのなら、スコーピオンが侵入して来たとしても多少は安心ですね」

 

「そうだな。知らなければ仕掛けにかかっちまうだろうし、抜け出そうとしても……鍵がなければ容易に、とはいかなそうだしな」

 

「ええ。それに玄関で作動している仕掛けを確認できるのですが、作動している仕掛けはありませんでしたから……」

 

「スコーピオンが先に乗り込んでいるってのはなさそうだな。エッグを探しているのなら、乾さんみたいになってるだろうしな」

 

小五郎たちの言葉に安心した様子を見せる一同。一方、コナンは警戒を強めていた。

 

スコーピオンが未だ来ていない。

 

それがコナンには、スコーピオンが己の周囲に潜んでいる何よりの証左に思えた。

 

 

 

 

それにしても、とコナンは吊るされた刀剣類を見る。喜市が自らこの仕掛けを施したのなら、相当な絡繰好きだろう。そこまで考えて、コナンは一つの可能性に辿り付く。

 

「ねぇ、沢部さん。地下室ってないの?」

 

「地下室……ですか?ありませんが」

 

「じゃ、喜市さんの部屋は?一階にない?」

 

「それでしたら、“執務室”がございます」

 

 

 

一同は “執務室”へと移動する。その途中、蘭がコナンに問いかける。

 

「ねぇ、コナン君。なんで地下室がないか聞いたの?」

 

「だって、財宝を隠すなら地下室か、城の主の部屋って気がしない?伝説の武器とかそうだったよ?それに、主の部屋に隠し部屋があること多いし」

 

「ああ、ゲームの話ね。でも、確かにありそうよね」

 

子供らしい返答をしたコナンに、一同は多少和む。

 

“執務室”に着くと、沢部が明かりを点けながら部屋の説明を行う。喜市の写真と、その当時の日常風景が展示してあり、喜市が在命中はこの部屋にいることが多かったそうである。

 

沢部の言葉通り、部屋には多数の写真が展示されている。それらを見回す一同であったが、コナンは妙なことに気がつく。夏美の曾祖母の写真が一枚も無いのだ。夏美に確認すると、夏美も写真を見たことがないという。コナンがその理由を考えているとき、乾が声をあげた。

 

「おい!この男……ラスプーチンじゃないか!?」

 

近くにいたセルゲイが写真を見て、乾に同意する。

 

「確かに。“Г. Распутин(ゲー.ラスプーチン)”とサインがありますし」

 

コナンはその名に引っかかりを覚えるが、蘭の質問にその思考を遮られる。

 

「ねぇ、お父さん。ラスプーチンって?」

 

「俺も世紀の大悪党ってことしか……。ほら、映画とかで悪役で出てくることあるだろ?」

 

その会話に乾が口を挟む。

 

「“怪僧・ラスプーチン”と言われ、皇帝一家に取り入って一時は権勢を欲しいままにしたヤツさ。ロマノフ王朝滅亡の原因を作ったとも言われ、最期は皇帝の親戚筋に当たる人物に暗殺されたのさ。そして、ヤツは予言めいた言葉を皇帝ニコラス二世に残していたんだ」

 

 

「自分は殺されます。自分を殺すものが農民ならば、国は安泰でしょう。もし、陛下の一族が自分を殺すのなら、陛下とご家族は悲惨な最期を遂げ、国は長きにわたり多くの血が流れることになるでしょう」

 

乾の言葉をセルゲイが引き継ぎ語る。

 

「ご存知のとおり、皇帝一家は殺害され、ロシア革命によって血が流れました……」

 

そこに、乾が思い出したかのように告げる。

 

「そうそう、発見された遺体は頭蓋骨が陥没していて、片方の目が……潰れていたそうだぜ」

 

ラスプーチンの逸話を聞いた蘭は知らず息を飲む。コナンは片目が潰れていたと言われ、右目を撃つスコーピオンを思い浮かべていた。

 

蘭の様子を楽しげに見ていた乾を、エッグを見つけるのが先と白鳥がたしなめる。そんな白鳥に小五郎がタバコに火をつけながら、問いかける。

 

「と言ってもな……。どこを探す?隠し部屋を探そうにも、こう手がかりがないとな……」

 

手がかりの少なさに小五郎が嘆く。その様子を見ていたコナンは、小五郎が持つタバコの煙が揺らぐのを目撃する。

 

「っ!オジサン、ちょっと貸して!!」

 

「ちょ、おい!」「どうしたの?コナン君?」

 

突如、タバコを奪い床に近づけだしたコナンに問いかける二人。コナンは煙の揺らぎに注目しながら答える。

 

「ほら、見て。下から風が吹いてる。この下に秘密の地下室があるんだよ」

 

その言葉に一同が集まる。コナンは蘭が差し出した灰皿にタバコを押し付けると、地下室への入口を探す為に木の床を探る。

 

(絡繰好きな喜市さんのことだから……何処かにスイッチか何かが……あった!!)

 

コナンが床に不自然な凹みを見つける。その凹みを使って床を捲ると、そこにはロシア語のアルファベットが書かれたボタンと大きな四角いボタンが一つ。

 

「そ、それは……」「ロシア語のアルファベット!!」

 

秘密の地下室への入口を開く為には、パスワードが必要だと判断した一同はセルゲイを押し手に選ぶと思い思いに心当たりを告げる。

 

「……思い出!Воспоминания(ボスポミナーニェ)に違いない!」

 

「香坂喜市はどうだ!」

 

どちらを入力しても変化はない。そこで、セルゲイが夏美に伝え聞いていることはないかと尋ねるも、夏美は心あたりはないという。

 

「バルシェ・ニク・カッタベカ」

 

そこに、コナンが夏美が覚えていた言葉がロシア語だったのではと言う。セルゲイが思い当たる言葉を探していると、青蘭がある言葉を口にする。

 

「それって『Волшебник Конец века(ヴァルシェープニック カンツァー ベカ)』のことじゃ……」

 

「そうか、それだ!」

 

「どう言う意味なんですか?」

 

納得するセルゲイに、小五郎が言葉の意味を尋ねる。すぐにセルゲイは英語訳を告げる。

 

「え~と、英語だと『The Last Wizard Of The Century』……日本語だと」

 

考えるセルゲイに変わり、青蘭が日本語訳を一同に告げる。

 

 

 

――世紀末の魔術師、と

 

 




やっと、章タイトルが登場。

前半部分が難航した原因です。しかも、そのせいで進行も遅いとか…。
申し訳ありません。前話から映画でいうと十分間しか進んでません。

あとはクライマックスに向けて一気に行きたいところですが……どうなることやら

疑問なのですが、蘭や新一は理系、文系どちらなのでしょうか?
高2となるとどちらかに分かれていると思うのですが……。

文系で地歴科目に世界史を選択していたら、ラスプーチンのことを知ってる気が……

ラスプーチンの片目がどうのってのは映画オリジナル?です。多分。

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