注意:原作既読推奨。所々端折ってます。
一言:最近カラオケいってないな。
米花総合病院813号病室。哀がその病室を訪れたのは、コナンが銃撃を受けてから十日後の夕方のことであった。
「あら、割と元気そうね」
「ま、銃弾は貫通していたし、腎臓や他の臓器も無事。傷の方も大分塞がってきているし、後は体力が回復すれば退院だとさ」
「そ。だからと言って、無理をしてはダメよ。術後は抵抗力が低下しているから、ただの風邪だと甘く見ていると……」
「分かってるって」
そう言うと、コナンは哀から視線を逸らし、天井を見つめる。その表情から、コナンが何を考えているのかを悟った哀は、内心である決意を固める。そして、その決意を隠しコナンへと話しかけるのであった。
「そういえば、あの子たちは毎日来ていたのよね?」
「ん? ……ああ、お前と違ってな」
「あら、薄情とでも言いたいのかしら? それとも……私に会えなくて寂しかった?」
微笑みながらの哀の言葉に、コナンはどう答えたものかと迷う。哀が薄情だと思っている訳ではないし、寂しかった……訳でもないとコナンは思っている。だが、普段隣りにいる哀と十日もの間会わなかったことに、コナンが違和感を感じていたのは事実であった。
そんなコナンの様子を気にもとめず、哀はあっさりと先の言葉を訂正する。
「ま、そんな訳ないわね。それで、退院はいつになるの?」
「……えっと、医者の話だと二、三日後だから」
「土曜か日曜ね。良かったわね。彼女がお迎えに来てくれるわよ」
「彼女って……蘭か? アイツは学園祭があるから無理だってよ」
コナンは蘭の話題が出たことで、昼間大阪から見舞いに来ていた服部平次に尋ねたことを哀にも尋ねてみようと口を開こうとする。平次より哀の方が、蘭の考えが分かるのではないだろうかと思ったのである。
最も、コナンは哀に尋ねることは出来なかった。何故なら、尋ねる前に哀が帰ってしまったのである。
「なぁ……」
「それじゃ、私は帰るわ。ちょっとやることも出来たしね。退院日が決まったら、教えなさいよ」
「ちょ、待て……って、マジで帰りやがった。大体、やることってなんだよ。ああ、メシの準備か」
コナンの病室を後にした哀は、ある人物へと連絡を取るのであった。
「もしもし、今病院を出ました。……ええ。やはり、彼は……はい。あまり気は進まないのですが、それしかないかと。……はい、では、よろしくお願いします」
その頃、自宅に戻っていた蘭は、三日後に迫った学園祭に向け、演劇の練習をしていた。
「ああ……黒衣をまとった名も無き騎士殿……ちょっと、お父さん! 本番まで時間もないんだから、協力してよね」
「ってもな~。こんな臭いセリフ、真面目にやれるかってんだ。大体、もうセリフは全部覚えたんだろ?」
「全部覚えたけど……不安なのっ! 園子もプレッシャーかけてくるし。それに、コナン君も本番までには退院して見に来るし」
「何だ、あのガキようやく退院かよ。で、いつなんだ?」
ビール片手に面倒くさそうに蘭の練習に付き合っていた小五郎であったが、コナンの話題になると自分から話を振る。小五郎も何回か見舞いには行っているが、彼が訪れたときはまだコナンの退院の見通しは立っていなかったのである。
「今度の土日のどっちかには退院だって。私迎えに行けないから、お父さんが……」
「オレも無理だ。依頼で出かけるんだよ……。博士に頼むか。ああ、そういやコナンの親から何か連絡はあったのか?」
小五郎がコナンの親から連絡があったかを聞く。コナンが入院することになったとき、阿笠に頼んで連絡してもらったのだが、それ以後どうなったのか小五郎は知らない。聞かれた蘭が、阿笠から聞いた話を小五郎へと伝える。
「連絡は取れた見たいだよ。海外にいるから時間が取れ次第見舞いに行くって、伝えてくれって言われたらしいよ」
「何というか……我が子が銃で撃たれたってのに、呑気と言うか、冷たいというか」
「まぁ、博士が連絡したのはコナン君の手術が終わってからだし、あのときは命に別状はないことは分かってたからね。それに、コナン君と電話で話したらしいから、それで安心したんじゃない?」
蘭もフォローを入れながら、小五郎が言うことも最もであると内心同意していた。ただの怪我ならいざ知らず、コナンの場合は銃で撃たれ、その上、命を落とす危険もあったのである。親なら、何をおいても駆けつけるのではないかと。
実際のところ、コナンの両親――つまり、工藤夫妻に阿笠は連絡していない。最初は、それどころではなかったというのもあるが、意識を取り戻したコナンに止められたのである。曰く、母さんが来ると面倒だとか。
そんな訳で、阿笠は工藤夫妻には連絡せず、蘭たちにはコナンの指示通りに誤魔化したのである。
その後、しばらく雑談に興じていた毛利親子であったが、台本を手に立ち上がる。
「さ、休憩は終わり! 早く、練習を再開しなくちゃ。ほら、お父さんも立って」
「まだ練習するのかよ……」
毛利親子が、劇の練習をして過ごしていたころ。一人病室で横になっていたコナンは、腕を枕にしながら天井を見つめていた。
彼の脳裏には、昼の平次とのやりとりや、最近の蘭の様子が浮かんでは消えていく。そして、しばし目を瞑ったあと、コナンは小さく呟く。
「……やっぱ、蘭に話すしかねーよな。オレが工藤新一だって」
「ほう。このガキが工藤新一だというのは、本当のことだったようだな。しかし、オレも運がいい。あのジンが殺り損なったガキを殺れば、組織での発言力が増すというもの」
「なっ!?」
突如聞こえてきた声に驚き、声のした方向を見るコナン。そこには、帽子を深くかぶり、マスクをした黒い人影が。コナンは、驚きながらもその人影を確認する。
顔は帽子のつばで隠れており、わからない。声は低く、マスクのせいか、少々こもって聞こえる。性別は体格や喋り方からして、おそらく男。黒い人影にみえたのは、その人物が黒い服に全身を包んでいるから。そして、その手には暗くてよく見えないが……
(拳銃……か。ナースコールは……彼処か)
「おっと、動くな。見た目は子供でも、巷では“平成のホームズ”とか言われてる探偵だからな。油断はしない。さ、まずは両手をゆっくりとあげてもらおうか。ああ、ナースコールなら、事前に切っておいたからムダだぞ。ほら、早くしろ」
コナンがナースコールに手を伸ばそうとすると、人影はコナンへ銃を向けたまま、コナンが寝るベッドへと近寄る。そのまま、コナンの眼前に銃を突きつける。
銃を突きつけられたコナンは、事態を打開すべく必死に頭を働かせる。取り敢えず、会話をすることで時間を稼ごうと、口を開く。
「さっき、ジンって言ったよな。って、ことは……」
「ま、そういうことだ。裏切り者のシェリーを始末しに来たんだが……思わぬ幸運ってやつだな」
「なっ! テメェー灰原をどうした!」
「騒ぐな。心配しなくとも、すぐに会わせてやるさ。お前に関わったヤツ等全員とな」
――パシュッ!
コナンの病室に乾いた音が響き渡る。
土曜は出勤ということもあり、キリがいいとことまでです。
今回から原作と大きく変えていく予定です。今後、蘭絡みのイベントが潰れていく可能性が高まります。ご了承ください。
哀がコナンのお見舞いに十日間来ていない。小五郎が依頼で出かける。
これらは作中設定です。
関連活動報告は【コナン】。
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