名探偵コナン~選ばれた二人の物語~   作:雪夏

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謎の男の正体は……?

注意:原作既読推奨。所々端折ってます。

一言: 雨が凄い……梅雨ですねぇ


File05 予定外

 

 

「被害者は蒲田耕平さん27歳……。米花総合病院勤務の医師……」

 

 通報を受け駆けつけた警察が捜査を始める中、コナンは隣りに座っていた男と文代に話しかける。

 

「どうする?」

 

「そうねぇ。アナタや私は警察の目に触れない方がいいだろうし、今回は推理は我慢してね」

 

 文代が男に言うと、コナンは最もだと同意する。

 

 何故なら江戸川文代は工藤有希子の変装であり、この世に存在しない架空の人物だからである。今回はコナン=新一ではないかという蘭の疑いを晴らす為に姿を現したが、本来なら江戸川文代のことを知る者は少ない方がいいのである。また、下手に事件に口を出し、調書に名を残すのは避けたいところである。

 

 そして、男も大勢の人間に接触する訳にはいかない理由がある為、今回は大人しくすると決めていた。

 

「そうだな……普段なら捜査に混ざるんだが、今はそう言う訳にはいかねぇ。ま、服部がいるんだ。事件はすぐに解決するだろ」

 

 そう言う男の視線の先には、早速事件に首を突っ込んでいる大阪弁の男――平次の姿が。周囲には、被害者の関係者と、蘭と新出、園子に和葉の姿もある。

 

 コナンたちは知る由もないが、平次は当初工藤新一に変装してくるつもりであった。蘭に新一(に変装した平次)とコナンの二人が一緒にいることを目撃させ、コナンの真実を隠そうとしたのである。

 しかし、その目論見は自室で変装を試しているときにやって来た和葉のせいで崩壊したのである。

 

 

『平次いてる~? やっぱ、日曜の蘭ちゃんの学園祭一緒に……って、何や顔を白う塗りたくって。そんなに色黒なん気にしとったん? 大丈夫やって、平次がなんぼ色黒うてもアタシは気にせんて!』

 

『……和葉』

 

『あ、勿論他の人も平次が黒うても気にせんって。せやから……な?』

 

『ちゃうわ、ボケ! お前は何を人の部屋に勝手に入りよるんじゃ!』

 

『ええやん。ウチと平次の仲なんやし。それに、平次もウチの部屋に勝手に入ったことあったやんけ』

 

『……それは小学校のときの話やないか。それに、アレはオバちゃんがええ言うたから』

 

『それ言うたら、ウチもオバちゃんに許可貰っとるし。ってそんなことより、行こうや学園祭! 工藤君来れるか分からへんらしいし、代わりにウチらが……』

 

『なんや、途中で黙りよって』

 

『平次、その格好……もしかして、工藤君のつもりなん?』

 

 その和葉の指摘に言葉に詰まる平次。ここで誤魔化しても、既に変装を見られた以上学園祭に乗り込んだとしても、和葉に再び看破されてしまう可能性は高い。

 結局、平次は計画を中止することにするのであった。

 

『まぁ、変装して姉ちゃんたちを驚かしたろ思うたんやけどな? お前に見破られるようじゃ、姉ちゃんたちも騙せんやろうから止めるわ。堂々と服部平次様として見に行ったるわ』

 

『何や、偉そうに。でも、平次が一緒に来てくれるんは嬉しいわ。蘭ちゃんたちも喜ぶやろし』

 

『おお、そうかそうか。オレがおらんと締まらんか』

 

『アホなこと言うてからに……。せや、オバちゃんに言われて平次呼びに来たんやった。はよ、その白いの落として()いや』

 

 そう告げると、和葉は機嫌よく部屋から出ていく。それを見送りながら、タオルを手にとった平次は遠く東京にいる友に向かい、謝罪の言葉を紡ぐのであった。

 

『すまん、工藤。次の作戦を思いつくまで耐えてくれ』

 

 

 

 そして、平次は今事件の解決に集中していた。最も、犯人の見当をついており、あとは証拠を見つけるのみと言った所であった。

 

「問題は証拠……。そういや、工藤は来とらんのか?」

 

「何、ブツブツ言うとるん? 犯人が誰か分からへんの?」

 

「和葉か。あとは証拠なんやけど、それがなぁ~。そういや、姉ちゃん。あの坊主は?」

 

「コナン君? そう言えば、いつも事件が起きればすぐ来るのに……。あ、彼処!」

 

 蘭が指し示す先には、文代と手を繋ぎ大人しくしているコナンの姿が。心なしかコナンの表情は疲れているように見える。

 

「何や、あのオバはん。坊主もおとなしゅうしよってからに」

 

「あの人は……コナン君のお母さんよ。多分、コナン君が事件に首を突っ込まないようにしてるんだと思う」

 

「……オカンには適わんということか」

 

 平次の問に答える蘭は、一度言いよどんだ後に文代のことを話す。未だ、コナンが新一だという疑いを捨てきれずにいる蘭にとって、文代がコナンの母だという確信がなかったのである。

 また、蘭の答えを聞いた平次も一瞬考えるが、適当なことを口にしコナンたちから視線を逸らす。

 

(存在しない江戸川コナンの母親。おとなしゅう手を握っとるちゅうことは、工藤が用意したんか。母親の証言があれば、姉ちゃんの疑いを晴らせるかもしれんちゅうことか。ちゅうことは……今、オレが話しかければコナンの母親として更に強く認識させることが……)

 

 そこまで考えてコナンの方へ歩きだそうとした平次だったが、コナンの冷たい視線を感じると歩みを止める。すると、文代がコナンの手を引きながら人気(ひとけ)のない方へと歩いていく。

 それを黙って見送った平次は、先程の視線の意味を考えていた。

 

(接触を避けるちゅうことは、仕込みは十分したっちゅうことやな。それにしても、さっきの工藤のヤツ……なんちゅう冷めた目でオレを見るんや)

 

 後でコナンに文句を言おうと誓う平次の耳に、高木の声が聞こえてくる。

 

「警部!! 蒲田さんの車のダッシュボードから、少量の薬物を発見しました! おそらく、中身は青酸カリかと」

 

 その言葉に、高木と共に車へと向かっていた被害者の関係者たちに視線を向けた平次は、そこで証拠の存在に気がつく。そして、自信に満ちた表情で目暮たちの元へと歩き出すのであった。

 

 

 

 

 一方その頃、人が少ない場所へと移動したコナンたちは、平次が推理を披露するのを眺めていた。

 

「あの大阪の探偵さん……こっちに来る気だったわね」

 

「おおかた江戸川文代のことを確かめようとしたんだろ。ま、オメェの視線にビビったみてぇだけどな」

 

 文代たちと一緒に移動していた男を、コナンが睨みつけると、男は軽い調子で謝る。そんな二人を笑いを堪えながら見ていた文代――有希子が口を開く。

 

「でも、事件は解決に向かうみたいね。何か証拠でも見つけたのかしら? 新ちゃんは分かる?」

 

 その疑問に答えたのは、コナンではなく、睨まれていた男の方であった。

 

「ああ、それは……」

 

「フードね。彼女は雨の中、パーカーのフードを被らなかった。つまり、被ることが出来ない理由があったという事」

 

「……ま、そういうこと。おそらく、彼女は青酸カリを仕込んだ氷を被害者と自分のドリンクに入れたんだ。で、急いで中身を飲んで、氷をフードの中へ。誰もフードの中なんて覗かないし、氷が溶ければ証拠はなくなる。だからこそ、フードを被れなかったんだ。青酸カリを頭から被りたくはねぇだろうからな」

 

「という事は、彼女のフードを調べれば青酸カリが検出される。これ以上の証拠はないわね」

 

 男とコナンが言い終わると同時に、平次が犯人の女性のフードへと10円玉を投げ入れる。フードから取り出した10円玉は、酸化還元反応を起こし錆が取れていた。

 それを確認すると、犯人の女性は自白を始めるのであった。

 

「すご~い。本当にフードが証拠になっちゃた……」

 

 感心する有希子に、彼女と手を繋いだままのコナンが口を開く。

 

「あの……」

 

「どうかした? ()()()()

 

「そろそろ、手を……。それと、新一さんのことで」

 

「オレのこと?」

 

 答えたのは、先程コナンと会話していた男。彼こそが、変装した工藤新一――その人である。変装と言っても、髪型を変えて、眼鏡をかけ、頬に絆創膏を貼ると言った程度である。

 新一の知名度からすれば簡単な変装ではあるが、それだけでも十分に効果はある。人が人を認識する時、眼鏡の有無や髪型は大きな判断材料となるからである。

 

 そして、新一と会話していたコナン。その正体は、有希子の変装術と阿笠特製マスク型変声機で変装した灰原哀である。

 その哀から、有希子と新一にある懸念が告げられる。

 

「想定外の事件のせいで、時間が結構経ってるのよ。想定では、そろそろ効果が……」

 

「ちょ、マジかよ! 何のために……」

 

「そ、それより車に向かいましょ! 事件も解決したし、こんなとこで戻ったりしたら……」

 

 その言葉で急いで、有希子が借りてきたワンボックスカーへと向かう一行であった。

 

 

 

 




 謎の男の正体は工藤新一でした。そして、誰が予想したでしょうか。まさかの蘭とは会わないという展開。これからどうやって、蘭の疑いを晴らすのか。それは次回明らかになる……筈。

 今更の疑問なのですが、日曜に学園祭をした場合、翌日(月曜)は振替休日で学校は休みになるのでは? 体育祭とかも振替休日になりますよね?


 平次の変装計画が始動前に失敗。
 これらは作中設定です。

 関連活動報告は【コナン】。
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  作中に登場する人物、建物、団体はフィクションです。
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