注意:原作既読推奨。所々端折ってます。
一言: 夏バテ警戒中
ワンボックスカーへと移動した一行は、もがき苦しむ新一を見守っていた。
「ほ、本当に大丈夫なの? 尋常じゃない苦しみようなんだけど……」
「分かりません……。私の時は大丈夫でしたので、おそらく彼も……。すみません、私が完全な解毒剤を作れれば良かったのですが」
新一が飲んだ解毒剤は、哀が言ったように完成品と言う訳ではない。
その薬の副作用で苦しむ我が子をただ見守ることしか出来ない自分の無力さを感じながら、有希子は哀に確認する。
「とにかく、この発作が治まれば……残り約三十時間だっけ? それまでは大丈夫なのよね?」
「私が服用した時は、服用後五時間ほどで発作が起きました。その時は、発作だけで幼児化しませんでしたが、それから約三十時間経過後の二度目の発作の時に再び幼児化しました。彼と私はAPTX4869で幼児化したこと以外に、白乾児を飲んだことで一時的に元の姿に戻ったことも共通しています。それに、今回の試作品の服用時に風邪をひいているという点も共通しています。つまり、性別以外の条件はほぼ同じということになります。服用してから発作が起きるまでの経過も私の時と同じですから、彼がこの後も私と同じような事態になる可能性は高い筈。ただ、私のケースがレアケースだったという可能性も否定出来ません。結局、今出来ることは発作が無事に治まることを祈ることだけです」
苦しむ新一から一瞬も視線を外すことなく、早口でまくし立てる哀。
そんな哀に対し、言葉をかけようと有希子が口を開きかけた瞬間、新一が一際大きな声をあげる。そして、そのまま新一は意識を失う。
「新ちゃん!?」
「……大丈夫です。若干呼吸が荒いですが、脈拍は落ち着いています。気を失っただけのようです」
意識のない新一に呼びかける有希子に、冷静に新一の容態を確認していた哀が心配ないと告げる。その落ち着いた声に、有希子は新一の様子を改めて確認する。
哀の言うように、少し呼吸が荒いようではあるが、次第に落ち着いてきており先程までに比べると穏やかな顔をしている。
その様子に安心した有希子は、取り乱した事を哀に詫びようと哀に視線を向ける。そこには、新一の額に浮かんだ汗を拭き取る哀の姿。その表情は、安堵と心配が入り混じった複雑なものであった。
そんな哀の表情を見た有希子は、こんな状況だと言うのに顔がニヤけるのを耐えることが出来なかった。
(あら、思っていたより新ちゃんのこと……。これで哀ちゃんが見た目幼女じゃなければ絵になるのになぁ~)
意識を失った新一の看病をしながら、哀は有希子と今後について相談する。
「当初の計画では、コナンちゃんに変装した哀ちゃんが……あ~、ややこしいわね。哀ちゃんが蘭ちゃんを新ちゃんのとこに連れて行って、新ちゃんと対面。新ちゃんと、コナンちゃんが別人だと分からせて……新ちゃんが来ていたことを口止めするって手筈だったわよね?」
「ええ。そのあとは、彼の発作が起きる前に撤収。あとは彼が再び幼児化するまでは、工藤邸で経過観察しながら出来るだけデータを集める予定でした」
「そうだったわね……。それにしても、新ちゃんがこの様子じゃ今日は蘭ちゃんに会わせるのは無理かしら」
「無理ですね。彼がいつ目を覚ますのかという問題もありますが……彼女、事件の時に警察の人と話をして、周囲の注目を集めています。こっそり抜け出すというのは難しいでしょう」
その哀の言葉に、事件時の蘭の様子を思い浮かべ有希子は苦笑する。
事件慣れしている蘭は、事件発生時の様子を確認する目暮に自分から話しかけていた。彼女にとっては、いつもの行動なので気にも留めなかったのだろうが、自分から事件捜査に関わろうと行動する人間は少ない。しかも、彼女は煌びやかな衣装を纏ったままであった。暫くの間、学校で話題にあがることは避けられないだろう。
そんな蘭の今後の学校生活を想像していた有希子の耳に、新一のうめき声が聞こえる。ハッとして新一に視線を向けるが、意識が戻った様子はなく、甲斐甲斐しく浮かんだ汗をハンカチで拭いている哀の姿が目に入る。
その後ろ姿に有希子が話しかける。
「交代しようか?」
「いえ……。これは、完全な解毒剤を作れなかった私の責任ですから」
「そう? 疲れたら言ってね?」
「大丈夫です。それに、有希子さんには車を運転して貰わなければいけませんし」
「まぁ、その通りなんだけど……。じゃ、早く移動した方がいいかしら。でも、困ったわね~。事件が解決したってことは、服部君や蘭ちゃんが私たちのこと探しているかも」
その言葉に、新一から視線を外し哀は有希子へと顔を向ける。最も、うめき声をあげた新一にすぐ視線を戻すことになる。
「二人に新一さんの携帯でメールを…」
「新ちゃんの振りして出せばいいのね? え~と、蘭ちゃんには……『しばらくお母さんと新一兄ちゃんの家に泊まります。事件無事に解決した?』ってとこかしらね。うん。事件に興味があったけど、文代に連れ出されたって感じに見えるわね」
そう呟きながらメールを送信すると、次は平次にメールを送信する。
「え~と……服部君には……『後日説明する。』……う~ん、素っ気無さすぎかしら?」
「それで構わないと思いますよ。今は、探しにこないようにすることが重要ですから」
「そうね。じゃ、送信っと」
メールを送信した有希子は、新一の看病を哀に任せ運転席へと移動すると工藤邸へ向け車を走らせるのであった。
次回は翌日以降のお話。
哀が自分で解毒剤を試していることに関しては、賛否両論あると思いますが拙作ではそういうことでお願いします。
哀が解毒剤を試していた。解毒剤の効果時間。
これらは作中設定です。
関連活動報告は【コナン】。
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作中に登場する人物、企業、建物、団体はフィクションです。