クリスマスの翌々日。冬休みに入ったコナンたち、少年探偵団の面々は冬休みの宿題をしていた。そこに差し入れとしてケーキを持ってくる阿笠。ちゃっかり自分の分のケーキも用意していたが、哀の監視の目を逃れることが出来ず少々落ち込んでいた。
「皆、年末年始はどうするんじゃ?」
「ねんまつねんし?」
「大晦日とお正月のことですよ、元太君。ボクは明日から三が日まで父の実家に行きます。母方の実家は都内なので、父の実家から帰ってからですね」
「歩美は明日からお婆ちゃんの家に行くよ。帰ってくるのは四日だったかな」
「正月の間は店閉めて、じいちゃんの家だな」
子供たちはそれぞれ予定を告げると、すぐにケーキを頬張ることに夢中になる。それを微笑ましく見ていた阿笠だったが、その顔は何やら思案しているようである。その様子を見たコナンが、どうかしたのかと尋ねる。
「ああ、ワシは年末年始暇しとるが、子供たちはどうかと思ってじゃな。予定がなければ、遠出でもしようかと思っとったんじゃが……」
「それは残念だったな。オレはどうしようかな……」
「どうするって?」
コナンに言葉を疑問に思った哀が問いかける。その際、コナンが自分の贈ったブックカバーを使っているのをしっかりと視界におさめて。
「流石に年末年始くらいは親と過ごさないとダメかなって」
「まぁ、そうね」
子供たちがケーキに夢中になっているのを確認して、小声でコナンは阿笠に話しかける。
「なぁ、年末年始コナンは親のとこに帰ったってことにして、ここに泊まっちゃダメか? 折角蘭に別人だと思わせたのに、今度はコナンの親の方に疑問を持たれちまうからさ」
「ふむ。そうじゃのぉ。ワシは構わんが、その間は近所を出歩けんぞ?」
「それは分かってるよ。大丈夫、オレにはこれがあるから退屈はしねぇよ」
そう言って、手に持った小説を見せるコナン。それに納得した阿笠が、そういえばとコナンに尋ねる。
「今までブックカバーなんてしたことなかったのに、一体どういう心境の変化じゃ?」
「あ、これ? 別に心境の変化とかじゃねーよ。ただ、外で推理小説を読むのに必要かなってさ。ほら、今まで奇妙な目で見られること多かったし。これなら、海外の原書でもわかんねーしな」
「そうかも知れんが……文庫本とハードカバーでは本の大きさが違うじゃろうに」
「そこも大丈夫。ちゃんと、それ用の奴も入ってたから」
「入ってた?」
「そ、そんなこと言ったか?」
コナンのブックカバーが自分からのプレゼントだと知られなかったことに、少し安堵した哀であったが、頑なに隠そうとする態度には少しイラついてしまう自分にも気がついていた。本当に気持ちというのは、分からないものだと考えていた哀に、ケーキを食べ終えた歩美が話しかける。
「ねぇ、哀ちゃんのそれってプレゼント?」
「え?」
歩美が指差したそれは、哀が家の鍵を入れているキーケースであった。バッグにしまっていたのだが、先ほど物を取り出した際に零れ落ちていたらしい。幸い、テーブルの上に落ちた為、失くしたと騒ぎ立てることにはならなかったが、これはこれで面倒なことになったと哀は思った。
「ええ。ちょっと、知り合いからね」
嘘はついていないと思う哀。その知り合いがこの場にいて、歩美も知っている彼だとは言っていないだけだと。
そんな哀の内心に構うことなく歩美は追求してくる。
「それって、フサエブランドの新作だよね? 家にあったファッション雑誌に載ってたの見たよ」
「そ、そう」
「何だよ、ふさえぶらんふぉって」
「フサエブランドですよ。イチョウをモチーフにしたデザインで、アメリカで人気が出たブランドなんです。日本で手に入れるのは大変だと、姉が言っていました」
哀は顔を覆いたくなった。これがコナンからだと知られれば、彼に幼い恋心を持つ彼女が傷つくと思うし、追求されれば自分が彼にプレゼントを渡したこともバレるかも知れない。そんな事態は絶対に避けたい哀に、阿笠が助け舟を出す。
「これこれ、そんなことより宿題は終わったのかね?」
「あ、そうだった。早く終わらせないと!」
阿笠の一言で宿題に戻る子供たち。助かったと哀が思っていると、阿笠が耳元でささやく。
「有希子さんのプレゼントなんじゃろ? 大事にするんじゃぞ?」
「ええ。大事にするわ。ありがと、博士」
クリスマス編その3。というか、後日談ですね。
次回は年を越したコナンと哀が、名台詞あり、名場面あり、伏線ありのあの事件に遭遇します。
探偵団の年末年始の過ごし方。
これらは作中設定です。
関連活動報告は【コナン】。
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作中に登場する人物、企業、建物、団体はフィクションです。