名探偵コナン~選ばれた二人の物語~   作:雪夏

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バレンタイン記念小説。

小学校五年生のバレンタインのお話になります。


注:多少のネタバレが含まれます。
未来のことなので予定は未定ということで。


EXTRA FILE01 バレンタイン

 

 

 

 

二月十四日。火曜日。

 

ハッピーマンデー制度により、三連休明けとなった本日。

 

お菓子業界の陰謀。気持ちを告げる日。恋が終わる日。

 

様々に呼ばれる……バレンタイン。その当日である。

 

 

世間の男性たちと同じく、帝丹小学校の男子生徒も朝から浮き足立っていた。

ただでさえ、学生という人種はイベントに敏感なのに、三連休中は様々なところでバレンタインセールを実施していた為、チョコへの期待が高まっているのだ。

 

そして、それは少年探偵団の面々が所属する五年B組も例外ではなかった。

 

 

 

「おい元太!本当なのか?吉田と灰原がチョコを用意してるってのは!?」

 

「ああ!!コナンのヤツが全員分用意したって言ったから、間違いねぇぜ!!」

 

「そうですよ。僕も昨日聞きましたから、間違いありません」

 

「よし!!これで母さんに『母さんのチョコだけ?』ってバカにされねぇぞ!!」

「ま、お前のは義理だけどな!!本命は俺が貰った!!」

「く~、手作りかな?」

「兄ちゃんに自慢できる!!」

「見てろよ~。今年こそ賭けに勝ってみせる!」

 

「吉田の本命はオレ」 「バカ、お前は義理だって」

「灰原の本命はオレ」 「バカ、だから義理だって」

「二人の本命はオレ」 「……お前には義理だって」

「……夢くらいみせろよ!!」 「……ごめん」

 

元太と光彦の言葉に大げさに喜び、盛り上がる男子生徒たち。

小学校も高学年ともなれば、チョコの有無や貰ったチョコの多少を気にかけるようになる。

ただ、まだ義理か本命かより数を気にするあたり、やはり小学生と言ったところか。

 

そんな男子たちを冷ややかな目でみる女子生徒たち。

目は口ほどに物を言うとはよく言ったものだ。彼女らの目は、男子生徒たちに対する呆れと“ガキ”という言葉を雄弁に語っていた。

 

「本当ガキよね~」

「欠片でも喜びそうだね」

「あんな奴らに、灰原さんも歩美も用意なくていいのに」

「しょうがないよ。歩美ようやく解禁されたらしいから」

「ああ~、言ってた。五年生までは“早い”とかで、参加出来なかったんだよね」

「そ。だから義理チョコ用意するのも楽しみって」

 

女三人集まればなんとやら……。まだ、小学生でも女性は女性。

彼女たちは、途切れなく話し続ける。そのうち、

 

「ま、何にしても歩美の本命は探偵団の誰かよね」

 

「コナン君じゃないの?」

「いや、円谷かもしんないよ?」

「元太は?」

「いや~やっぱコナン君でしょ。他のガキとは違うよ。円谷も頭はいいけどさ、コナン君のほうがいいし」

「そうだけど……。円谷は大人っぽいっていうか……紳士的だし」

「元太は?子供っぽいかもしれないけど、優しいし、話しやすいし……。江戸川君は近寄りにくいし」

 

次第に彼女らは探偵団男子メンバーの評価を語りだす。

自分の目当ての者を暴露していることにも気がつかないほど、話に熱中していた。

そして、それはある人物たちの登場で遮られることとなる。

 

 

「みんな、おっはよー!!」

 

元気よく挨拶しながら教室に入ってきたのは吉田歩美。

その手には紙袋があり、それを見た男子生徒たちが歩美に群がる。

それに動じることもなく、歩美は紙袋を掲げると笑顔で告げる。

 

 

「今日はバレンタインだから、皆にチョコ持ってきたよ!!

歩美と哀ちゃんで作ったんだよ」

 

 

その言葉に歓声をあげる男子たち。

即座に一列に並ぶ彼らは、自分が他の女子に引かれていることを理解していないだろう。

 

 

「うわ~。男子たち必死すぎるでしょ」

「だよね」

 

 

そんな男子を冷ややかな目で見ていた女子たちは、歩美が入ってきたドアではない、もう一つのドア――教室の後ろのドア――から入る二人の人物に気がついた。

 

「おはよう、灰原さん。コナン君も」

「おはよう~。わ~、江戸川君そんなにもらったの?」

 

その人物はコナンと哀であり、コナンは紙袋を手にさげていた。

二人はランドセルを席に置くと、女子たちに近づいていく。コナンは紙袋を持ったままで、である。用がなければあまり話しかけてこない二人が、揃って近づいてくることに女子たちは首をかしげる。

 

「おはよう。何か用かな、お二人さん?あ、コナン君はチョコの催促かな?」

 

その二人に話かけたのは、クラスでもお調子者と認識されている少女。彼女が話しかけたのをきっかけに、他の女子たちも二人……というよりコナンに話しかける。

 

「もうそんなにもらったの?見せて、見せて!」

「やっぱり下駄箱に入ってたの?」

「すごいね~、何個くらい貰ったの?」

 

やはり、紙袋いっぱいのチョコを持って入れば、興味を引くらしい。

それに対して、コナンが答えようと口を開く。

 

「ハハハ、これは「なにこれ!?全部同じ包装じゃん!?」……それはそうさ」

 

勝手にコナンの手から紙袋を取った一人が、中身を除いて声をあげる。

彼女が幾つか机の上に置くと、なるほど、チョコは全部同じ包装紙で包装されていた。

 

「それは、コイツと歩美が作った皆の分のチョコさ」

 

コナンの一言にチョコに注目していた者たちは、コナンと哀の方を向く。その後、未だ男子たちにチョコを配っている歩美の方向を向く。

 

彼女たちの視線が、コナンたちに戻ってきたのを確認してからコナンは続きを口にする。

 

「三連休の間に二人で作ったんだよ。あっちで配ってる男子用とこの女子用を」

 

「わぁ~、ありがとう灰原さん!灰原さんが料理上手なのは知ってるから、私すごく楽しみだよ!……ん?なんで、コナン君がそのチョコを持ってきたのさ?」

 

「それは……」

 

お礼を言った女子が、当然と言えば当然の疑問をコナンに聞く。

コナンは哀の方向を見ながら、口を開く。

 

「朝コイツに持たされた」

 

「「「「あ~」」」」

 

あまりにも単純な答えに、一同は納得する。

 

コナンは皆に優しい。これは皆が知っている。

そして、少年探偵団と哀には特に優しいことも知っているからだ。それに――

 

((((コナン君、灰原さんには弱いもんね))))

 

 

――自分たちを見ながら頷く女子たちに、多少腰が引けるコナンであった。

 

 

「中身はトリュフチョコよ。多少不格好だけどそこは許して頂戴」

 

「二人でクラス全員分作ったの?凄いね」

 

「流石に全員分は疲れるから、男子の分は型にいれて固めただけよ。でも、あんなに喜ぶとは思わなかったわ……」

 

そう言うと哀は、狂喜乱舞している男子たちを見る。

哀はたかが義理チョコで、と呆れている。

 

しかし、本人は意識していないが、歩美と哀は美少女なのだ。

 

男子たちはそんな二人がわざわざ手作りをしてくれた。

その事実に感激しているのだ。それが義理と言う事実は、この際気にしない。

 

そこに男子全員に配り終えた歩美が合流し、コナンに最後の一つを渡す。

 

「皆喜んでくれて良かった~。あ、はい、コナン君の。それにしても、皆来るの早いよね」

 

「おお、サンキュ。ま、バレンタインだからな」

 

そこで、クラスメイトが何かに気づいたかのように歩美に聞く。

 

「あれ?コナン君のも同じ?元太や円谷も?」

 

「え?……ああ、皆一緒だけど。どうかした?」

 

「ちょっとこっち来なさい」

「え、ちょ、助けて~!哀ちゃ~ん!」

 

歩美を引きずり囲み出すクラスメイトたち。何故か歩美は楽しそうだ。

 

「アンタ、探偵団に本命いなかったの?じゃ一体、どこの誰なのよ」

「歩美が渡さないなら、ダメ元で私が渡したのに~」

「元太も違うの!?本当!?」

「円谷も違うのか……よしっ!」

 

「ちょ、待って、待って。落ち着いて~」

 

四方から質問攻めにされる歩美。その勢いに戸惑いながらも、何とか落ち着かせようとする。何とか理解できたことは、歩美の本命について聞きたいのだと言うことだった。

 

「ほ、本命なら……」

 

「「「「本命なら!?」」」」

 

「それは一人でチョコ作れるようになったらって……」

 

その言葉を聞いた女子たちの反応は様々だった。

 

歩美を可愛いと思うもの

 

自分のチョコが手作りではないことを気にしだすもの

 

本命を渡さないことにホッとするもの

 

 

 

そんな女子たちの輪を眺めていたコナンが哀に問いかける。

 

「お前はあっちに混ざらねぇの?」

 

「冗談」

 

「だよな……」

 

コナンは女子の輪に視線を向けながら哀に問う。

問われた哀がジト目で返すと、二人は自席に向かう。

 

席につくと、コナンは視線を廊下側に向ける。そこには未だに感激し、狂喜乱舞する男子。

 

(元太はまぁ、食い意地張ってから分かるけど……。光彦……そんなに嬉しいか?義理だぞ?)

 

校庭側に視線を向ければ、女子の輪。

 

(歩美は……というか、他が盛り上がってんのか。何話してるかは知らねぇけど……女子は話すのが好きだねぇ)

 

そして、一つ息を吐くとコナンは隣りに視線を向ける。

そこには、すまし顔で雑誌を読む哀の姿が……

 

(何だ?この空間は……)

 

この混沌とした状況は、担任が教室に来るまでの約十分続くことになる。

 

 

 

 

 

コナンが教室に戻ってくると、既に全員下校した後のようで誰もいなかった。

ため息を吐きながら、席に戻るとランドセルから携帯端末を取り出す。

 

メーラーを起動すると、一件のメッセージが入っていた。

 

「アイツからか……。『醤油買ってきて……あと、袋入れといたから』……って、『○○で待ってるわ』とか『貰わないで』とかはないのかねぇ」

 

ぶつくさと文句を言いながら、ランドセルに入っていた紙袋を取り出すコナン。

その紙袋に持っていた箱を入れると、コナンは教室を後に昇降口へと向かう。

そこで更に箱を袋に突っ込むと、醤油を求めてスーパーへと向かうのだった。

 

 

 

 

 

「お~い、醤油買ってきたぞ~」

 

玄関のドアを開けるなりコナンは、奥に居る筈の人物に声をかける。

すると、返ってくる筈の返事がない。そのことを疑問に思いながらも、コナンは靴を脱ぎ中へと入る。

 

「なんだ、いるじゃねぇか。返事ぐらいしろっての」

 

「丁度、手が離せなかったのよ。っと、後はオーブンで焼き上げるだけね」

 

コナンがキッチンに向かうと、その人物はキッチンでなにやらやっていた。

醤油を買い置き用の棚にしまったコナンは、近寄ると肩ごしにそれを覗き込む。

 

「お、今年もうまそうじゃんか?」

 

「焼きで失敗するかもしれないわよ……?」

 

「オメェが失敗するかっての。毎年上手に焼きあげるじゃねぇか」

 

オーブンの温度を確かめると、中に入れタイマーをセットする。

そこまでやって、はじめてその人物――哀――はコナンに振り向く。

 

「……おかえり」

 

「ああ、ただいま」

 

 

 

 




バレンタイン話。コ哀?です。


深夜に起きて、本日がバレンタインだと気づいたので急遽書いてみましたが……
二度寝する為、ここまでとなりました。
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