名探偵コナン~選ばれた二人の物語~   作:雪夏

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バレンタイン記念小説その2。

小学校五年生のバレンタインのお話。後日談。


翌日15日の放課後のできごと

”EXTRA FILEについて”を先に閲覧の注意があります。
先にそちらをご覧ください。


EXTRA FILE02 バレンタイン エピローグ

 

 

 

米花公園。日頃から米花町民の憩いの場である。

その近くにあるベンチでは少女たちが会話していた。

 

本日は、帝丹小学校五年B組女子たちが企画した女子会の日なのだ。女子会と称しているが、十数人の人数が集まれる場所を小学生が用意できるわけもなく、公園の一角に集まって会話しているのが実情である。

 

そして、集まった面々の話題は当然、昨日のバレンタインについてであった。

 

女子会が始まったばかりの時は、寒さに震えながらチョコを本命に渡せたのかをお互いに探り合っていた。しかし、それぞれの結果報告がされるにつれ熱が入り、寒さなど忘れて話しに夢中になっていく。

 

そして現在――

 

話題の中心は、帝小新聞、美少女ランキングミステリアス部門第一位――帝丹小学校新聞部調べ――灰原哀であった。

 

 

「えっ?コナン君にはチョコあげてないの!?」

 

「え、ええ」

 

哀の言葉に驚愕する歩美。周りにいた女子も同じようだ。

聞かれたことに答えただけの哀は、何故周りがそこまで驚くのかがわからなかった。

 

「だって、哀ちゃん今年は……」

 

「元太と光彦にはチョコをやってたやん」

 

「そうなの!?じゃ二人のどっちかが本命ってこと!?」

「そ、そんな~。コナン君にあげれば良かった」

「元太なの!?円谷君なの!?」

 

「光彦!?」「元太!?」

 

「「「「どっちなの!?」」」」

 

「……なんなの?」

 

哀の本命が元太か光彦ではないかと騒ぎ立てる女子たち。てっきり、哀の本命はコナンに違いないと考えていた彼女たちは、降って湧いた事実に盛り上がる。最も、哀は彼女たちの勢いに押され、否定する暇がないだけでそのような事実はない。

 

「皆落ち着いて!!ここは歩美に任せて」

 

歩美は皆を落ち着かせると、哀への尋問を開始する……

 

 

 

 

 

同時刻、米花公園噴水前ではコナン、光彦、元太が話していた。

彼らは、サッカーをしにここに来ていた。現在は、サッカーを中断して休憩をしているところである。

 

「で、お前らはチョコいくつ貰ったんだ?オレは結構貰ったぜ!!歩美のだろ、灰原にマリアに……クラスの女子からは大体貰ったぜ!」

 

「僕も元太君ほどではないですけど、クラスの方たちからは貰いましたね」

 

「コナンはいくつ貰ったんだ?オレらより多いんだろ?」

 

こちらでも、やはりバレンタインの話になっていた。元太と光彦はかなり貰っているようである。コナンの知名度で目立ちにくいだが、元太と光彦も最近では結構人気なのである。

むしろ、コナンが芸能人のような人気なのに対して、元太たちの方が本気度は高いと言えるのだが……。コナンを基準に考えている為、自分たちは人気がないと思っている。その為、チョコを貰っても義理としか思っていないのだ。

 

「オレか?……クラスメイトは歩美だけだな。あとは他のクラスから五個だな」

 

コナンはリフティングしながら答える。それに二人は驚く。自分たちの方が多いと思っていなかったこともあるが……

 

「え?灰原さんからは?」

 

「オレたちが貰ってるのに、コナンが貰わないとかありえないだろ」

 

灰原から貰ったと言わなかったことに驚いたのだ。しかし、コナンからは訂正の言葉ではなく、肯定の言葉が返ってくる。

 

「チョコは貰ってねぇけど……そんなに意外か?」

 

「ええ。灰原さんの性格からして、探偵団の皆に用意しているものと思っていましたから」

 

「歩美も貰ったって言ってたしよ、オレもてっきりそうかと……」

 

「あ、分かりましたよ元太君!!昨日、僕たちが歩美ちゃんと一緒に貰った時、灰原さん言ってましたよね?」

 

「昨日?……あ、歩美がコナンにはもうやったのかって聞いた時だな?」

 

「ええ。あの時彼女は『渡してないわ』って言って、歩美ちゃんが『この後会うの?』って聞きましたよね?」

 

「ああ。で、灰原が確か……『ええ』って言って帰ったよな?」

 

「そうです!ですが、きっとお二人は昨日会ってないんですよ。で、チョコを渡しそびれた。灰原さんの性格からして、当日渡せなかったら“別にあげなくてもいいか”と思うのでは?僕たち相手ではなく、コナン君が相手ならきっとそうしますよ」

 

光彦の推理に感心するコナンと元太。二人の脳裏には、チョコを見つめて『まぁ、来年もあることだし、今年は別にいいかしら』と言った後に、自分で食べる哀の姿が浮かんでいた。

 

「凄いぞ、光彦!そうに違いないぜ!ったく、お前も勿体ないことしたなぁ、コナン。灰原のチョコ美味かったんだぜ?なぁ、光彦?」

 

「全くです。歩美ちゃんのとは違って、コーヒーパウダーをまぶした甘さ控えめなビターテイストなトリュフチョコで。あ、勿論歩美ちゃんのトリュフチョコも美味しかったですけど……」

 

如何に美味しかったかをコナンに伝え、勿体ないことをしたと告げる元太達。

そして、最後には“来年がある”とコナンを励まし、そのまま解散となった。

 

帰っていく元太達の背中を見送りながら、コナンは心の中で呟く――

 

(チョコの代わりに、毎年他のものを貰ってるなんて……やっぱ、言えないよな。しかも、オレのリクエストだなんて)

 

――と

 

 

 

 

 

哀が女子たちに本命を詰問されている頃に、時間を戻す。

そこでは、今まさに歩美の代表質問が行われようとしていた。

 

「哀ちゃん。正直に答えてね?」

 

「ええ」

 

「昨日の放課後、歩美が元太君たちと一緒にチョコを貰った時のことだけど」

 

「ええ」

 

「コナン君にこの後会うのか聞いたよね?で、哀ちゃんは会うって答えたよね?」

 

「そうね」

 

この発言に周囲はざわつく。バレンタインデーの放課後に会う約束をしている。その時点で、“本命はコナン“と言っているようなものと考えたからだ。

また、歩美が元太たちと一緒にチョコを貰ったのなら、二人へのチョコはどちらも本命ではなく、義理だったのだと安心するものもいた。

 

さらに、歩美は言葉を続ける。

 

「それは嘘だったの?」

 

「いいえ。本当よ」

 

「じゃあ、コナン君と昨日会えなくて、それでチョコ渡さなかったの?」

 

「違うわ(本当のこと言った方がいいかしら……でも)」

 

「じゃあ、会えたんだ……。う~ん、そうなると……分かった!!

待ち合わせ場所にチョコをいっぱい持ってコナン君が来たんだ!!

それであげなかったんでしょ!!」

 

この言葉に更に周囲は騒然となる。歩美がコナン君デリカシーないもんね、続けているが、誰も気にしていない。哀は周囲から聞こえてくるヒソヒソ声に気を取られていたし、女子たちも話に夢中になっているからだ。

 

――灰原さんが嫉妬?想像できないな~。でも、これで本命だって分かったね

――灰原さんでも嫉妬するんだ~。なんか意外

――コナン君も酷いよね~。灰原さんと会うのに他の子から貰ったチョコ持ってくなんて

――灰原さん可哀想。私だったら……

――でも、これで灰原さんがコナン君を諦めたら……チャンスじゃない?

――そうだよ!チャンスだよ!灰原さんがライバルじゃなきゃ……

 

 

哀は周囲の誤解に帰りたい気持ちになったが、ここで帰る方が面倒なことになると口を開く。明日から可哀想な人と思われるのは嫌だ、と思いながら。

 

「それも違うわ。大体、彼はそんなに貰ってなかったわよ。アナタのチョコを合わせて……六個じゃなかったかしら」

 

「え~、違うの?」

 

「残念ながらね」

 

すると、その返答に疑問を持ったクラスメイトの誰かが哀に質問する。

 

「灰原さんが数を知ってるってことは……。江戸川君がチョコを持ってきたことは本当ってことじゃない?」

 

「そっか、そうだね。持ってこなければ数なんて分かるはずないもんね」

 

「しかも、数を知ってるということは……。コナン君に数を聞いたり、直接チョコを見たりしないと……分からない、よね?」

 

「じゃあ、やっぱり嫉妬して……」

 

「だから違うわよ……(ハァ……面倒なことになったわ)」

 

ますます加速する誤解に、失敗したと頭を押さえる哀。

 

(別に隠しているわけではないけど……。本当のこと言っても、この状況じゃ面倒なことになる気もするし……。あぁ、早く帰りたい。帰って八つ当たりしたい)

 

「はいはい、皆落ち着いて。それより続きを聞こうよ」

 

(続きも何も……。小嶋君と円谷君のどっちが本命かって話で、彼にチョコをあげたかどうかの話じゃなかった気がするのだけど……)

 

歩美が皆に落ち着くようにいい、質問を再開させようとする。そんな中で哀は話の内容がずれていることに今更気づく。

 

「じゃあ、何でコナン君に「ねぇ、円谷君と小嶋君のどっちが本命かって話じゃなかった?」……ヤダなぁ、哀ちゃん。それはもういいの」

 

「え?だって、それが知りたかったんでしょ……?」

 

哀はそこまで言って彼女たちを見回す。その視線の先の彼女たちはと言えば、“一体何を言ってるんだ?”と言わんばかりの表情で哀を見ている。

 

「いい?哀ちゃん。アナタの本命が元太君たちじゃないってことはね?もうみんな分かってるの」

 

「え?じゃあ……「コナン君とどうなったかが気になってるの」……え?」

 

「チョコは渡してないんだよね?」

 

「ええ。最初からそう言ってる……わよね?」

 

実はそのことを伝えていなかったかと不安になる哀。

 

「でも、昨日会った……そうだよね?」

 

「ええ」

 

「それで、なんで渡してないの!!バレンタインに会う約束してるのに!!」

 

「だって……「「「「だって?」」」」……毎年あげていないし」

 

「そ・れ・は!元太君たちも一緒だよね!?……なんでコナン君だけ渡してないの?」

 

「「「「なんで?」」」」

 

クラスメイトの勢いに珍しく押されている哀。

 

「なんで……って。彼がチョコはいらないって言うから」

 

「……そうなの?」

 

「……そうよ?」

 

まだ、何か言われるのかと身構える哀。しかし、追求されることはなかった。

彼女らが一斉に哀から離れた場所まで移動すると、小声で会話しだしたからだ。

 

「どう思う?」

「コナン君が照れていらないって言った……だと思う」

「で、それを哀ちゃんが真に受けちゃったと?」

「多分」「うちもそう思う」「なんていうか……」

 

 

「も~、コナン君ったら何やってるのよ~!!」

 

 

歩美が耐えかねたかのように叫ぶと、それをきっかけに他のクラスメイトも口を開く。

 

「素直じゃないから貰えないんだよ……」

「灰原さんは素直すぎだよ……」

「素直な灰原さん……可愛いい」

「あの二人が進展しないわけだ……」

「きっと今までもこんな感じで……」

「ああ、すれ違ってたってわけだ……」

 

 

「「「コナン君もだけど灰原さんも気づいてあげなよ……」」」

 

 

一通り話をすると彼女たちは、一斉に哀を振り返る。急に視線を向けられた哀は、彼女たちの視線に可哀想という感情が込められていることに気がつく。しかし、そう思われる心当たりのない哀は首をかしげる。

 

彼女たちは再び哀を取り囲む。また、質問されるのかと思った哀が脳裏で、夕飯にレーズンを使ったサラダを……と検討し始める。

そんな哀に歩美が近づくと、肩を掴み顔を近づける。そして――

 

「哀ちゃん……。コナン君の言うことを素直に聞かなくてもいいの!」

 

訳のわからないことを言い放った。そして、クラスメイトたちも一斉に声をかける。

 

「そうだよ、灰原さん!女は我が儘じゃないと!」

「少し困らせるくらいで丁度いいって、雑誌に書いてあったよ!!」

「コナン君なんか諦めて!!」

「照れてるだけだから!!今からでもチョコを!!」

「あんな奴より私と……!!」

「早く進展してよ!!賭けてるんだから!!」

 

哀は全部を聞き取ることは出来なかったが、何か誤解されていることは分かった。

分かったからといっても、何を誤解されたか分からない哀には、どうすることも出来ないのだが……

 

その後も次々に言葉を紡ぐクラスメイトたち。一通り終わるまで、哀は聞き流すことにし、夕飯のメニューを考えていた。

 

(今日の夕飯は……リクエストもなかったし、久しぶりに揚げ物でもしようかしら……。でも、そうするとレーズンは……)

 

思考の海に沈む哀であったが、それも歩美の声で中断される。

 

「哀ちゃん、分かった!?」

 

「え?……ええ。彼の言うことを素直に聞くなってことでしょ?

 

正直分かりません、と言えばどうなるかと思った哀は、とりあえず最初に言われたことに頷いておく。それを聞いて、歩美たちは満足そうに頷く。しかし、その次の哀の言葉で固まる。

 

「そう、それでいいんだよ」

 

「でも、私って……そんなに彼のいうこと聞いてるかしら?」

 

((((ああ、ダメだ。気づいてないよ))))

 

 

 

しばらくして、もういいよと告げると肩を落としながらクラスメイトたちは帰宅の途につく。

それを見送る形となった哀は、一体なんだったのだろうかと思いながら、自宅へと足を進める。

 

(トンカツに……レーズン入りサラダ……は合わない気がするし。ま、今日のとこは勘弁してあげましょうか)

 

 




バレンタイン後日談。コ哀です。
作業中に思いついたので書いちゃいました。

バレンタイン当日投稿しています
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