時間軸は小学一年の十一月。
だれかネーミングセンスください。ストレートなタイトルしか思い浮かばない……
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十一月十五日。阿笠邸のリビングには朝から呼び出されたコナンの姿があった。
コナンの視線の先には、二人の人物がソファーに座っており、そのどちらもコナンがよく知る人物であった。
「……で?」
「ヤダ、そんな言い方はないんじゃない?新ちゃん」
「そうだぞ、新一。せっかく取材のついでに寄ったというのに」
その人物とは、工藤優作、有希子夫妻。コナン――新一――の両親である。
阿笠に話を聞くと、今朝早く荷物を持って押しかけてきたらしい。そして、阿笠にコナンを呼び出すよう言うと、哀の淹れたコーヒーを飲みながら世間話に興じていたそうだ。
そこまで聞くとコナンは、頭を掻きながら両親に言う。
「……ったく、博士や灰原に迷惑かけんなよな」
「いや、博士が絶賛する哀くんのコーヒーを飲みたくてね。本当、美味しいよ」
「そうよ、お店開けちゃいそう」
「そうじゃろ、そうじゃろ。哀君のコーヒーは美味いじゃろ?その上、料理もなかなかのもんじゃぞ?」
「そうですか。いい奥さんになりそうですな」
「ホント、ホント。そう言えば、新ちゃんもよくご馳走になるんだって?」
コナンは両親と阿笠の会話のテンポについて行けず、やや呆然としていた。だが、有希子に話をふられたのをきっかけに、両親がやって来た真意を探ろうと口を開く。
「そんなことより、何で「はい、コーヒー。朝食はもうすぐできるから」……おう、サンキュ」
開く……のだが、タイミング悪く哀に遮られてしまう。反射的に受け取ったコーヒーに口をつけると、両親がコナンを凝視していることに気がつく。
「……んだよ」
「ふふ、新ちゃんを見てるだけよ?」
「ああ、その通りだ。ただ、見てるだけさ」
両親のどこか含みのある言葉に引っかかったものの、朝食が出来たと言われ席につく。
メニューはスクランブルエッグにトースト、オニオンスープとレタスサラダ。サラダにはレーズンが入っている。
「は、灰原?このサラダ……」
コナンはいつもの席に置かれたサラダに入っているレーズンを見るなり哀に問いかける。その脳裏では、灰原の気に障るようなことをしただろうかと、その頭脳をフルに使用して考えていた。
一方、問われた哀はコナンが言いたいことを察すると、自分の隣りの席を指差し告げる。
「アナタのはこっち」
「そ、そうか。今日はいつもの席じゃねぇんだな」
「まぁ、人数が違うから」
「おお、前回来たときは食べれなかったからね。楽しみにしていたんだよ」
「そうね。前回おじゃました時は、外食だったものね」
「優作君、哀君の手料理は美味いぞ?それじゃ、皆席についたようじゃし……」
「「「「いただきます」」」」
優作たちが席につくのを確認した阿笠の言葉で食事を始める一同。時折、優作と有希子が哀の腕前を褒め称えるのを除けば、静かに食事は進む。そのまま、穏やかに食事を終えた一同が、食後のコーヒーを堪能しているとコナンが口を開く。
「それで、オレを朝一で呼び出した理由は?本当にただ寄っただけなのか?」
「まさか!今日は何の日でしょうか?」
「今日?十一月の十五日だから……まさか」
「そ。七五三で~す」
有希子はそう言うと明るく笑う。そして、荷物の方へと足を進める。そんな有希子にコナンは質問をする。
「七五三っても、関係ないだろ?とっくに七歳こしてんだしよ」
「わかってないな~。今の新ちゃんたちは何歳ってことになってる?」
「七……って、まさか。いや、待て。男は三歳と五歳だろ?関係ないって」
「哀ちゃんがいるでしょ?それに、最近は男女がどうのって気にしないとこ多いし。あと、本来は数え年で七歳だって言うのも無しね。最近は、満七歳でやるのも多いし」
コナンの意見を退ける有希子。何とかこの後のことを回避できないかと考えるコナンに、優作はその肩を叩き諦めろと告げる。うなだれるコナンに哀が近づき、質問をする。
「ねぇ。“しちごさん”って何?」
「あん?知らねぇのか?」
「悪い?会話を聞く限り、三歳と五歳が男で、七歳が女に関係あるみたいだけど」
「まぁ、簡単に言っちまえば、三歳、五歳、七歳のときに神社にお参りに行くこと……かな。本来は全部違う行事なんだけど、まとめて七五三って言うんだよ。まぁ、最近は曖昧になってきてる所があるけどな」
「そう。で、何でそんなに嫌がってるの?神社に行くだけでしょ?」
七五三については納得したのか、次に哀はコナンが何故嫌がっているのかを尋ねる。説明を聞く限りでは、お参りするだけなのにと不思議そうである。
「それは……「はい、新ちゃんの袴。折角だから用意して来たわ。それで、こっちが……」
やっぱり?」
返答しかけたコナンだったが、有希子に遮られる。次に有希子は哀の方を向くと、手に持っていた着物を広げる。
哀は突如目の前に広げられた着物を思わず観察する。
(黒地にピンクの花の刺繍が映えていて……金の刺繍もいいアクセントになってるわね。でも、有希子さんには小さい……というか、子供用?)
「どう?これいいでしょ?哀ちゃん」
「え?……そうですね。いいと思いますよ?私は好きですね。特に、この色合いが」
有希子に同意を求められた哀は、観察を中断し感想を言う。有希子はそれに対し、満足気な笑みを浮かべると哀に着物を手渡す。
「え?」
「じゃ、これに着替えてね?着付けできる?新ちゃんも早く着替えなさい!」
「出来ませんが……。え?これ?」
「そっかぁ。じゃ、着付けしてあげるわね?さ、行きましょ?」
有希子は事態を飲み込めていない哀を引き連れて部屋へと向かう。それを見送るコナンは諦めの表情で着替えを始める。愚痴を無意識にこぼしながら……
「灰原だけでいいじゃねぇか。何でオレまで……」
「そう言うでないぞ、新一。久しぶりに帰国した両親と会っておるんじゃ。普段、好きにやらせてもらっておるのじゃ。たまの頼みくらいは聞いてやらんと」
「いや、それは分かってるんだけどよ……。また、母さんに好き勝手撮られまくるかと思うと……」
「ハハハ、そう心配するな。有希子は哀君が目当てだからな。お前なんてついでだ、ついで。それに神社には行かないよ。私や有希子が行くとパニックが起こるかもしれないからな(それに、あんなカメラを持った人が沢山いるところに行って、哀君が写真に撮られでもしたら困るからな)」
「なら、マシ……か?二、三枚写真を撮れば母さんも満足する……するよな?」
コナンに問いかけられた優作は視線をそらす。その態度に、不安を覚えながらもコナンは着替えるのであった。
着替えを終えたコナンは、優作と話しながら哀たちが来るのを待っていた。阿笠は用事があるからと外出した為、久しぶりの親子水入らずであった。
「それで、NY市警に協力したんだが、丁度締切が迫っていてな。あの時は、大変だった。なにせ暗号を解読してくれと言う話だったから、現場じゃなく家に警察が来てな。編集と鉢合わせて、そんなことより新作をと騒いで騒いで……」
「その編集さんも父さんの担当になるなんて運がないな……。それで、どんな暗号だった?」
「楽譜の示す場所に爆弾を仕掛けたって、カードと楽譜を見せられてな……」
「音階と文字の置き換えか……。そりゃ、父さんには簡単だったろ?」
「ああ。それで、すぐ解けてしまったものだから、即缶詰にされてしまってな……」
「ハハハ、そりゃギリギリまで書き終わってなかった父さんが悪い。自業自得ってヤツさ」
「ほう。そんな事を言うのなら、この新作は要らんな」
「わぁー!!うそ、嘘だから!!」
「ふむ。仕方ないな。ほれ、発売前の品だ。ありがたく思え」
「今度こそ、犯人を当ててやるからな!」
「楽しみにしておこう。ま、お前には無理だがな!」
久方ぶりの再会で話は尽きないかと思われたが、次第にコナンがそわそわし始める。
哀と有希子が入った部屋をチラチラと見るコナンの様子に、優作が口元に笑みを浮かべながら語りかける。
「ふむ。新一、有希子が選んだ着物。どうだった?」
「へ?あ、ああ。母さんが選んだだけあって、灰原に似合いそうだったぜ?」
「そうだろう。有希子のセンスはいいからな。お前のは、白を基調とした羽織だろ?」
「ん?ああ、そうだな」
「有希子が哀君と並んだ時を考えて、その羽織にしたんだ。サイズ見てすぐ決めてたからな。お前は引き立て役なんだろうさ」
「それは良かった……のか?」
「さぁな。ま、兎に角文句を言わずに付き合ってやるんだな。女性を引き立てるのも紳士の役目だぞ?」
「へいへい」
「お待たせ~!!」
有希子が大きな声でリビングに戻ってくる。
「流石、私ね。もう、哀ちゃんってば可愛いすぎて……。あれ?博士は?」
「用事があるとかで出かけたよ。すぐ戻ってくるって言ってたから……」
「いま帰ったぞ~。哀君の準備は終わったかの?」
そこへ阿笠が戻ってくる。その手には、七五三には欠かせないあの飴が入った袋が。
「ナイスタイミング!博士それ貸して!」
「あ、ああ」
有希子が阿笠の手から紙袋を奪うと、またドアの向こうへと消える。どうやら、哀の所に行ったらしいが、何故か中々戻って来ない。時折、かすかに哀を説得しているかのような声が聞こえてくるだけである。
やがて哀が観念したのか、再び有希子が姿を現す。その影になっているが、今度は哀も付いて来ているようだ。
「はい、注目!哀ちゃんの登場よ!」
その言葉と同時に有希子が横にどく。
そして、哀がその姿を男どもの前に現す。そこには……
「おお、綺麗じゃぞ!哀君!」
「ふむ。素晴らしい」
「……」
その身を有希子が選んだ着物に包み、阿笠が買ってきた千歳飴が入った紙袋を両手で持った哀が、頬を朱に染めうつむき加減で伺うようにコナン達を見ていた。
「じゃ、新ちゃんはこっち来て。それで、コレもってね?」
男性陣の反応に満足した有希子は、手に持った袋をコナンに差し出しながら呼びかける。
しかし、当のコナンからの反応がない。
「新ちゃん?哀ちゃんに見惚れるのは分かるけど、こっち来てくれない?」
「ち、違う!」
否定しながらも、コナンは哀から目を離さないまま移動する。その姿は、何処から見ても見惚れていますと語っている。
哀の横に来たコナンに、哀が問いかける。
「なによ。どうせ似合わってないわよ」
「いや、似合ってる。まるで、女の子みたいだ」
「……失礼ね」
コナンの言葉が、褒めているのか貶しているのか哀には分からなかった。コナンとしては褒めているのだが、あまり哀を女として意識したことがない為に、女の子らしい格好と仕草に戸惑い、妙な言葉を言ってしまったのだ。
ある意味いつものやり取りを終えた哀は、恥ずかしさなど消し飛んだかのように普段の落ち着きを取り戻す。すると、コナンの方も急激にいつもの調子を取り戻す。
「悪いな。母さんが急に」
「別に構わないわ。聞いたら外に出るわけじゃないみたいだし。ただ、写真をあんなに撮られるとは思ってなかったけど……」
「ああ、七五三なんてのは口実だったんだろ。お前を着飾る為の。写真は……まぁ、諦めてくれ。オレん時もああだったから……」
「アナタが嫌がった理由が少し分かったわ」
「だろ?アレを外でやられたら……考えたくもねぇな」
「ところでこの袋は何が?」
「ああ、千歳飴って言ってな。子供の長寿を願って細く長く作った飴さ。紅白に色付けされてるし、ほら、この袋も鶴と亀で縁起がいいだろ?」
「ああ、昔からの伝統ってヤツね」
「そ。多分、神社にお参りに行かないから、せめてと買ってきたんだろうぜ。にしても、お前着物も似合うな。ドレスとかは似合いそうだって思ってたけど。和洋どっちもいけるな」
「ありがと。それにしても……着物なんて着るの初めてだわ。ちょっと恥ずかしいけど、いいわね」
「恥ずかしい……?お前が?」
「……悪い?」
ジト目で見られたコナンは慌てて哀を褒め散らかす。そんな様子を有希子はデジカメで一心不乱に撮影しており、阿笠は微笑ましそうに眺めている。
「あ~、もう!いい加減にしろよな。母さん!もう十分撮っただろ!?」
「怒らない、怒らない。はい、二人ともこっち向いて!そう、そのまま」
「哀君もああいう格好をしておれば可愛いのぉ」
「……あの、恥ずかしいんですけど。まだ、撮るんですか?」
「そうね~。あ、次は哀ちゃんが椅子に座って、新ちゃんは横に立って!」
「いい加減にしてくれよ……。父さんからも……って」
「どうしたの?優作さんが何……か」
止まらない有希子にうんざりしたコナンが、優作に助けを求めようとする。が、優作の方を向くなり固まる。それを不審に思った哀も優作がいる方向を向くなり固まる。
そこには、何時から持っていたのか、ビデオカメラを構えて有希子を含めた三人を撮影している優作の姿が……
その姿を見た二人は、顔を見合わせると諦めたかのようにため息を吐くのであった。
「「ハァ」」
――その後も、撮影会はポーズを変えながら有希子が飽きるまで続けられるのであった。
ネタ提供は世路様。ありがとうございます。
設定をねらない分、勢いで書き上げましたがどうでしょうか。
七五三という事で、神社に参拝など考えましたが、参拝の様子や参拝後なにをするのか分からずこんな感じになりました。
参拝すらしていませんが、ご期待にそえましたでしょうか。
有希子は勝手に動くので、抑えるのが大変でした。
気づいたら、着物の写真以外でもファッションショーを開催していましたから。
優作に至っては、制御不能でした。最終的にビデオカメラ構えてました。当初の予定ではクールに静観を決め込む筈でした。
活動報告にてこっそりリクエスト受付中。まだまだ募集中です。気軽にどうぞ。